ウマ娘耳かき小説   作:雨宮季弥99

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マチカネフクキタル(地の文あり)の女トレーナー視点となります。

女トレーナーだと、彼女の身だしなみとか、そう言うものにもラッキーアイテム関連を提案してきてる気がしますね、フクキタル。



個人ごとですが、間違っていなければ、先日ハーメルンの一ページ内の検索表示件数が10件に減りましたね。

20件で慣れてたせいか、10件になってからちょっと使い辛い。前の表示なら5ページぐらいで表示されてた作品が、10ページ以上遡らないといけないのが面倒くさいですね。


マチカネフクキタル(地の文あり、女トレーナー視点)

 んー……お布団さいこー。今日は休みだから、お昼までゴロゴロするぞー。

 

 こないだまでフクキタルのレースの為にあれこれしてたからなぁ……うん、今日は徹底的にお休みする。リフレッシュ休暇だもん。さて、それじゃぁ二度寝でも……。

 

 なんて思ってたのに、なんかインターホンが鳴ってるんですけど。誰よー……まだ朝じゃーん。起こさないで欲しいのにー。

 

 そんな事を思いながら扉を開けると、そこに居たのはフクキタルであった。

 

「というわけでトレーナーさん、耳かきしましょう」

 

「……ごめん、何言ってるかわからない……」

 

 開口一番の耳かき宣言に頭の上に?マークがダンスし始める。なに? 前々から突然変な事を言ったりしてたけど、その延長?

 

「トレーナーさーん、良いですよね、耳かきしても。シラオキ様も夢でお告げしてくれたんですよ」

 

「いや……寝起きでするもんじゃないよね? ……というか、シラオキ様のお告げなの?」

 

 この子、何かにつけてシラオキ様って言うけど、シラオキ様って本当、なんなの? 新手の宗教?

 

「本当です! さぁさぁ、こっちに来てください」

 

 私の疑問をよそにフクキタルは腕を掴んで部屋の中を進み、ベッドに座らされた。 

 

「……ねぇ、耳かきってあの金の耳かき使うの? あれ、壊れたりしたら怖いんだけどなぁ……普通の耳かきじゃダメなの?」

 

 私の呟きを聞いたフクキタルは手を動かしながら器用に後ろを振り向いた。

 

「何を言うんですか、道具は使ってこそです。それにあれは特注の純金耳かきなんですから、使わなかったら意味ないじゃないですか」

 

「いや、怖いのは怖いし? というか、混ぜ物してるって事は純金じゃないんじゃないの?」

 

「いいえ、日本では99.99%あれば純金ですので純金で間違いありません。そもそも、金は柔らかいので、硬度維持のためにちょっとの混ぜ物をするのはおかしい事ではないのです。さぁ、ごちゃごちゃ言わず、おとなしく耳かきを受けるのです」

 

 そう言うと、フクキタルはこれ以上の問答は無用とばかりに正面を向き直った。あー、これダメだ、こっちの言う事聞いてくれないや。仕方ないなぁ、もう。

 

 そんな風に諦めていると、彼女が用意した道具を持って私の隣に座ったので、大人しくその膝の上に頭を置く。……なんであれだけ鍛えてるのに、心地よい弾力なんだろ、なんかくやしい。

 

「まずはこの、富士の水をお湯にして、温めたタオルで擦っていきますよ」

 

「だから、それは別に市販の水だから霊験も何もないんじゃ……」

 

 私が疑問を呈するが、彼女は反応しない。うん、これももう言っても聞いてくれないのね。まぁ、いいけど。

 

「ゴシゴシ……ゴシゴシ……どうですかトレーナーさん? 痒い所はないですか?」

 

 霊験云々は置いといて。温められたタオルで優しく擦られると、それだけで十分気持ちいい。やっぱ、女の子だから手の動かし方も柔らかくて痛くないのもありがたい。小さい頃にお父さんに頭拭かれた時は痛かったなぁ。

 

「うん大丈夫、この力加減で擦ってくれたら大丈夫だよ」 

 

「はい、わかりました」

 

 ゴシゴシ、ゴシゴシ。耳を優しく擦られ、反対側ではフクキタルの頭の置き心地の良い膝枕を堪能する。んー、同性同士だからこそ楽しめる至福の時間よね。寝起きにするもんじゃないと思うけど。

 

「さて、それでは。お待ちかね、この純金の耳かきを使いますよ」

 

 あー……来ちゃったー。考えないようにしてたけど、金製品なんて馴染みなさすぎるんだよねぇ。

 

「……やっぱ使うのかぁ」

 

 非常に見おぼえある耳かきに思わずため息が出る。んー、綺麗すぎて使うのが勿体ないというか、恐れ多いというか。だってこれ、お値段十万ぐらいはするんでしょ? 使い辛いよー。

 

「勿論です!」

 

 そんな私の葛藤をわかってるのかわかってないのか、フクキタルは実にいい笑顔で答えた。ちくしょう。

 

「カリカリカリ……カリカリカリ……どうです? トレーナーさん、この黄金の触れ心地は」

 

「……うん、気持ちいいんだよね。うん、それは認めるよ」

 

 うう、確かになんか柔らかくて、金属製の耳かきって思い辛いぐらいだけど、やっぱり慣れないよぉ。でも気持ちいい。

 

「カリカリカリ……カリカリカリ……トレーナーさんの耳垢を、カリカリっと掻いていきますよー。カリカリカリ」

 

 カリカリと、ゴリゴリと、耳掃除が進むたび、フクキタルの声がどんどん聞こえやすくなっていく。あー、この子、耳かき上手なのよねー。どんどん気持ちよくされちゃってるのが自分でもよくわかる。

 

 そんな気持ち良さに身を委ねていると、ガリガリ……ベリッて音が聞こえたと思うと、そのまま耳かきが引き抜かれ、耳垢がティッシュに捨てられた。うーん……やっぱり、こんな綺麗な耳かきが自分の耳垢で汚れるのは見たくないなぁ。

 

「やはり、シラオキ様のお告げは正しいのです。トレーナーさんの耳の中、ちょうど掃除頃ですよ。ほら、次の耳垢に、カリカリカリ……カリカリカリ……」

 

 そう言うと、再び耳かきが掃除を始める。ていうか、本当にシラオキ様とやらのお告げなの? フクキタルがやりたいから言ってるだけなんじゃないの?

 

「ねぇフクキタル。本当なの?」

 

 疑問に思ったから聞いてみたけど、彼女は集中してるのか、返答は返ってこなかった。うーん、これはこれ以上返事を期待してもしかたないかな。

 

「カリカリカリ……カリカリカリ……次の耳垢も、カリカリカリ……ペリッといって……はい、取れましたよ、トレーナーさん」

 

 そんなこんなで次の耳垢も無事に取れて、再びティッシュの上に捨てられた。ふぅ、順調に耳掃除、進んでるね。

 

「ではトレーナーさん、次は梵天をしていきましょう」 

 

「ん。うん、わかった」

 

 ありゃ、もう耳掃除終わったんだ。んー、耳掃除の頃合いって言ってた割に、終わるの早かったなぁ。あー、でも、梵天も気持ちいいんだよねえ。コショコショーってされるのが楽し……ふええええ!? 

 

「ゴーシゴシ、グールグル、トレーナーさんの耳の中をゴシゴシ、ゴシゴシ」

 

「ああ……あひぃ……ちょ、この梵天なに……? フワッフワ……」

 

 何これ? 私、こんな気持ちいい梵天知らないよぉ。滑らかーに動いて、柔らかく擦ってくれて……あああ……耳の中が幸せー。

 

「ふふふ、トレーナーさん、そんなにこの梵天が気に入りましたか?」

 

「うん……こんなにふわふわして……柔らかくて……こしょこしょされると耳の中が幸せいっぱいになっちゃう……こんな梵天、どこで手に入れたの?」

 

 多分金の耳かき同様特注品なんだと思うけど、これは本気で欲しい。一度使ったら、もう市販の梵天なんかに戻れないよ。

 

「んー。では、実物を見せるので、当ててみてください」

 

 当てる? え? 何々? どういう事? あ、これがその梵天なん……んー?

 

「え、何これ? 白色じゃなくて……フクキタルの尻尾と同じ色合い? ……え、え? これ、ってまさか……」

 

 思わず頭を上に向けると、俺の愛バは実にいい笑顔を浮かべていた。 

 

「はい、トレーナーさんの想像通り、これは私の尻尾の毛を使った梵天です」

 

 ……はい? マジ? この梵天、フクキタルの尻尾の毛で作ってるの!? え、ええーー!? 

 

「ま、待って、待って! え、フクキタル? 良いの? こんな……梵天作るのに自分の毛使って、本当に良かったの?」

 

 思わずそう聞くと、フクキタルは笑みを浮かべたまま答えてくれた。

 

「良いんです。トレーナーさんが気持ち良くなってくれてるんですから、これぐらい、貴方の愛バとして当然の範疇です! さートレーナーさん、もっと気持ち良くなってください」

 

 そう言ってフクキタルは私の頭の向きを優しく戻すと再び梵天を入れてきた。ふぁぁ……フクキタルの健気な言葉に、それを象徴する梵天がゴシゴシと耳の中を擦ってくれるたびに背中に気持ちいい。が走っていく。はうう……癒されるぅ……。

 

「さて~、それでは掃除は終わったので……顔を近づけてと……ふ~……ふ~……」

 

 ふぁ……フクキタルの吐息が耳の中を走っていく。ゾクゾクッて、ゾクゾクッてしちゃうよぉ。

 

「ふっふっふっ。トレーナーさん、気持ちよさそうですねぇ。さぁ、反対側もしましょうねー」

 

「お、お願い……します」

 

 思わず敬語でお願いしちゃうぐらい、私はいそいそと反対側の耳を上に向ける。ああ、早く早く。と思ってる間に、温かいタオルが耳を優しく包んでくれて、そのまま揉み解してくれる。

 

「んん……なんか、さっきよりも気持ちいいかも……フク、何か変な揉み方とか、してないよね?」 

 

「むむ、何を言ってるのですかトレーナーさん。これは健全なマッサージの一種であり、何一つやましい事はありません」

 

 私の言葉はフクキタルはド正論で返された。うう、普段は頓珍漢な事を言うフクキタルにツッコミを入れる側なのに……!

 

 そんな私の内心をよそに、いつの間にかタオルが無くなっていて、金の耳かきが耳の中に入ってきた。温かいタオルで温められた耳の中に入った耳かきは、最初こそひんやりしたが、すぐに熱が移って、程よい暖かさで耳の中を掃除していく。

 

「ふふ、トレーナーさん、なんだかんだと言いながらも、やはりこの耳かきはお気に入りですね。作った甲斐があるというものです」

 

「そりゃぁ……気持ちいいもん。それも、フクが用意してくれたんだから猶更じゃん」

 

「……トレーナーさん、真顔で凄い事言わないでください」

 

 私の言葉にフクキタルが妙にまじめに返してきた。えーと、そんな調子で返されるとこっちも反応に困るなぁ……。

 

「さぁさぁ、気を取り直して耳掃除しますよ。カリカリカリ……カリカリカリ……」

 

 少ししていつもの調子に戻ったフクキタルが耳かきを再開した。カリカリカリ……と呟かれる彼女の声を聴いていたら、思いのほかあっさりと終わってしまった。あーん、ちょっと物足りない。

 

「ではでは、梵天でクシュクシュ……ゴーシゴシ……」

 

 そんな耳かきの物足りなさを補い余りある程に、梵天が気持ちいい。ちょっと……これ、反則……。 

 

「さぁ、梵天も終わりましたので……ふ~……ふ~……。はい、これで耳かきお終いです。トレーナーさん、どうでしたか? 癖になりそうですか?」

 

「んー……いや、耳かきは癖にはできないからさぁ……耳、痛めるのも怖いし」

 

 すぐに終わってしまった至福の時間は至極残念だけど……怖いんだよねぇ。耳かきのし過ぎで耳傷めるとかさ。だって、耳の調子が悪いのってなんか怖くない? 私は怖い。

 

「ええ、勿論。耳かきそのものは癖にはできませんが……ですので、こちらを差し上げます」

 

 そう言ってフクキタルは梵天を私の手に握らせてくれた。

 

「え? い、良いの? これ、気軽に作れるようなものじゃないでしょ?」

 

「ええ。勿論手間はとてもかかりました。この毛の質を維持するのに何か月も手入れをしましたからね。大変なんですよ、これだけの艶を出すのって」

 

 うん、こうやってまじまじと見てるとわかるけど。この梵天に使われてる毛は相当に手入れがされてる上質な毛だ。普段レースやトレーニングで走っているフクキタルがこれだけの質を維持しようと思ったら相当な手間暇がかかるはず。

 

「トレーナーさん、これだけ手間暇かけて作られた梵天……気持ち良かったですよね? これなら、頻繁に使っても耳を傷めませんし、何より、これでいつでもどこに居ても私の存在を感じられますよ」

 

 うぐ……なにも否定できない。だって本当に気持ち良かったし。でも、最後らへん、なんか重くない?

 

「えーと、そこまで深い意味を与えられても困るんだけど……まぁいいや。ありがたく頂戴します」

 

 これをくれる。と言うならこれ以上は何も言わない。ありがたく頂こう。あー、良いなぁ、手で撫でても柔らかい触感が気持ちいい。うん、これから毎晩これで耳掃除するかも。あー、でも、使いすぎるとすぐに劣化しちゃうよね。どうしよう、フクキタルにもう一度作って貰うのも申しないし……どうしよー。


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