ウマ娘耳かき小説   作:雨宮季弥99

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メジロライアン(地の文あり)の女トレーナー視点となります。

多分ライアンのマッスルなら女性であっても虜にできる。そう思う今日この頃です。


メジロライアン(地の文あり、女トレーナー視点)

「うー……痒い……痒い……」

 

 耳の奥の方から痒みを感じるようになってから数日。何日経っても痒みが収まる気配はない。かと言って自分で耳かき突っ込むとか怖くてやりたくない。でもお医者さんに行こうにもライアンのレースの事を考えたら時間もない。うーん……仕方ない、ライアンに頼もう。

 

 いや、教え子にこんなの頼むはどうかとは思うんですよ。でも、ライアンが悪いの。ライアンが自分から耳かきをしましょうか? なんて言ってくるからこんな発想が出てくるんであって、私は悪くない。私は悪くないんだ。

 

 誰に対しての言い訳かもわからないまま、ブツブツとそんなことを呟きながらミーティングルームに入ると、そこではライアンがストレッチしていた。あ、ちょうどいいじゃん。

 

「あー、ライアン、良い所に居てくれた。ねぇ、今時間ある?」

 

「あ、トレーナーさん。どうかしましたか?」

 

 ストレッチを止めたライアンがこっちを向いた。あー、トレーニングでもしてたのかな? なんか汗かいてるし。わざわざミーティングルームでまでやらなくていいと思うけど、ライアンだしなぁ。いっつもマッスルって言ってるし。

 

「ごめん、ライアン。そのー……耳かきお願いしたいの。こないだから耳の奥が痒くて痒くて……」

 

「はい、わかりました」

 

 う、笑顔が眩しい。私が悶々と悩んでいたのを全部吹き飛ばすかのような眩しい笑顔。うーん、マッスルマッスル言ってるけど、良い子なんだよねぇライアン。

 

「それじゃぁ、ちょっとシャワー浴びてきますので、待っていてください」

 

「え? 私、別に気にしないけど」

 

 そりゃ異性ならともかく同性だし。それに普段トレーニングに付き合ってたらこれ以上の汗だくのライアンと接するのも普通だし。

 

「私が気にするんです!」

 

 そう叫んでライアンは部屋から出ていった。えーと……本当、気にしないんだけどなぁ。

 

 そんな事を思っていながら彼女が戻ってくるのを待っていると、程なくして彼女が戻ってきた。

 

「さぁ、それでは耳かきをしていきましょう。どうぞこちらへ」

 

 正座をしてポンポンと膝を叩く彼女の膝の上に頭を置く。んー、固柔らかい……? 基本的にウマ娘って全員筋肉あるんだけど、ライアンはその中でも更に筋肉質で。でも、女の子特有の柔らかさもあるし……うう、なんだか女として負けた気分にある。

 

「では、まずはマッサージしますね。耳をグッグッと……指圧して……」

 

 彼女の滑らかな指先が私の耳を摘まんで、そのまま揉み解したり、ツボと思われる場所をギューッと指圧してくれる。あー……これだけでもすっごい気持ちいいなぁ。

 

「トレーナーさん、以前も言いましたが、耳もちゃんとケアをしないといけませんよ」

 

 体から力を抜いて安心しきってるとそんな事を言われた。んー、言いたいことはわかる。わかるんだけど。

 

「んー……ライアンがマッサージしてくれるから、いいかなぁって……変な人に当たるよりライアンのほうが安心できるし」

 

「もう、そんなこと言わないでください」

 

 だってぇ、ライアンのマッサージが気持ちいいのがいけないんだと思う。自分で下手なマッサージするよりライアンの方が手慣れてるんだし。

 

 あー……マッサージ気持ちいいー……今は耳からちょっと前の方をグッグッと指圧されてる。耳と言うかちょっと顔じゃないここ?

 

「んー? ……ライアン、そこもマッサージするの?」

 

「はい。ここは顔のたるみやむくみを押さえる効果があります。トレーナーさんも、小顔効果がありますよ」

 

「え、小顔効果? 本当?」

 

 小顔効果かぁ。やっぱり私も可愛らしく思われたいのよね。……いっつもライアンと比較されて微妙な感じにされちゃうけど。ここだけなら私も自分でマッサージしようかなぁ。

 

「では、マッサージはこの辺で……うん、程よく汗が出てますね。このまま耳かきをしていきましょう」

 

 あ、マッサージ終わっちゃった。いやいや、本目的は耳かきだから、ここからが本番じゃん……お、おお……ゾリッて……耳の外側をゾリッ、ゾリッと綿棒で擦られると自分でもよくわかるほどドロッとした汚れが掻き取られていく。

 

「ゴゾッ……ゴゾッ……水分を吸ったら随分と取りやすくなりますね」

 

「うわぁ……なんていうか、普通に耳かきするよりも別の意味で気持ちいい……次の耳かきでもマッサージお願いしね、ライアン」

 

「もう、その前にちゃんと自分でケアをしてください」

 

 ありゃ、怒らせたかな? いやいや、ライアンがこんな事で怒るわけないし。大丈夫大丈夫。

 

「カリカリカリ……カリカリカリ……どうです? 痛かったりししません?」

 

「ん、大丈夫。このまま続けてくれる?」

 

 ドロッとした汚れを取り終えた後、耳の中をカリカリと掻かれていくと、軽快な音が耳垢を取る過程が良くわかる。その動き、音の変化、それだけで気持ちいい。

 

「カリカリ……カリカリ……ちょっと固いですけど、このまま、カリカリ……ガリガリ……」

 

 ん、端っこの方から少しずつ剥がされていって、大きく剥がれてきた所に耳かきの先端が潜り込む。そのままグイッ、グイッとてこの原理で上に持ち上げられ、剥がされていく耳垢。そのまま耳かきに剥がされ、下に落ちないようにズリーッと耳の中を引っ張り上げられていく。

 

「お、もうちょっとで……はい、取れました。後は……うーん、なさそうですね。トレーナーさん、そんなに耳垢が溜まらない体質なんでしょうか?」

 

「んー? 確かにそんなに耳かきはしないけど……でも、今日は耳の奥の方が痒いのよ。ライアン、奥の方に何かない?」

 

 言われてみれば耳かきなんて普段はほとんどやらない。でも、今日は本当に奥の方が痒い。我慢できなくはないけど四六時中ずっとこの痒みが続くと流石に辛い。だから、できればすぐにでも取ってほしいんだけど……。

 

 痒みを訴えると、ライアンが耳の中をもう一度見直してくれている。んー……あー……ちょっと……恥ずかしい……かも。

 

「よく見たら……奥の方、あるっぽいかも? ちょっと試してみますけど、深めですから、怖くなったらすぐに言ってくださいね」

 

「う、うん……」

 

 んー、わかってたつもりだけど、やっぱり奥のほうなんだ……が、我慢。ライアンならうまく取ってくれるから、怖くない、怖くない……。

 

「どうです? この辺り、痒いですか?」

 

「はうう……痒い……そこ、本気で痒いいいいい」

 

「なるほど、この辺りに耳垢がありそうですね。では、このままやっていきます」

 

 おあああ……これまで何も入った事がないような、奥のほうに耳かきが入っていき、痒い部分をガリガリと引っ掻かれていく。搔かれれば掻かれるほど痒みが酷くなっていく。取って、早く取ってー。

 

「カリカリ……ガッ……ガッ……うん、少しずつ取れてきてますから……トレーナーさん、動かないでください」

 

「は、早く……これ、本当に怖いから……は、早く取って……お願いッ」

 

 早く取ってほしいと急かすけど、耳かきは中々取れず、時間だけが過ぎていく。早く、お願い、本当に早くして……!

 

「ガリガリ……ガリガリ……ん、剥がれてきましたから……このまま一気に……よしっ!」

 

 あ、剥がれてきた。うん、このまま、このまま、早く取れて……取れて……取れ……ッた!

 

「ああ……すご……痒みが取れて……耳の中の風通しが一気にスッとなった気がする……」

 

 耳垢が取られ、それからもう一度耳かきが耳垢のあった周辺の汚れを改めて掻き出すと、詰まってた耳の中がスーッと風通しが一気によくなる。ふあぁぁぁ、これこれ、これを待っていたのよ。

 

「それは良かったです。その様子ですと他にはなさそうですし、梵天で軽く掃除していきますね」

 

はー、もう無いと言われてほっとして、梵天でコシュコシューって擦られるのに身を任せる。あー……幸せ、解放感が半端ない。

 

「コシュコシュ……コシュコシュ……トレーナーさん、そんなに気持ちいいんですか?」

 

 そんな声が聞こえたけど、気持ちいいに決まってるじゃん。痒くて痒くて仕方なかった部分が解消され、柔らかい梵天でコショコショされる。これが気持ちよくないわけがない。

 

「うん。痒みもなくて、コショコショが気持ち良くて……あ……お休みぃ……」

 

「もう、反対側も残ってるんですから、寝るには早いですよ」

 

 ハッ、そうだ、まだ反対側があるんだ。すっかり終わった気分だった。んー、反対側にはあんな耳垢、無いと良い……あるほうが嬉しいかも……うーん、悩ましい。

 

 うんうん唸っていると、ふとライアンの手が私の下に潜り込んだ……と思った時にはコロン、と転がされ、彼女のお腹の方を向いていた。

 

「……なんかなぁ、いくらウマ娘って言っても、私より年下の子に簡単に転がされると……もにょる」

 

「あはは、前も言ってましたねトレーナーさん。でも私の鍛え上げた筋肉の前には、トレーナーさんをひっくり返すぐらい朝飯前です。マッスルマッスル」

 

 力こぶを作りながらそんなこと言うけど……ライアン、あなたメジロ家のお嬢様なんだよ? そりゃ、マックイーンとかアルダンとかのが目立つけど、貴女だって立派なお嬢様なんだよ? マッスルマッスル言ってて本当に大丈夫?

 

 ……あー、そんなのどうでもいいや。ライアンのマッサージだけで惚けちゃいそう……本当にライアンのマッサージ気持ちいい……。

 

「あー……やっぱりライアンのマッサージが気持ちいい……指が暖かくて、揉まれてるだけでため息が出ちゃう……ライアンのマッサージなしだと生きていけない体にされちゃうよぉ……」

 

「もう、あんまり恥ずかしい事言わないでください」

 

 んにゃー……恥ずかしそうなライアンの顔が可愛い。どうして私の愛バはこんなに可愛いんだろう……幸せすぎる。

 

「さ、さぁ、耳かきしていきますよ」

 

 なんて事を考えていたらマッサージが終わった。あちゃー、バカな事考えてないでもっとマッサージに集中すれば良かった。 

 

「ペースト状になった粉を掬っていって……外側が綺麗になったら中を……」

 

 ん~……今度は集中集中。普段は聞き逃しそうな音まで聞こえるように、ゾリッ、ゾリッという音と共に粉が掻き出されていき、外側が綺麗になっていくのを感じる。あー、これが終わったら次は耳の中だぁ。

 

 あ、耳の中に耳かきが入ってきた。よし、集中集中。耳垢が剥がされる瞬間を、今か今かと待ち続けて……あれ? なんか、耳かき全然動いてなくない?

 

「うー……ん。んー……と、うん、こっちは汚れてないですから、掃除の必要はないですね」

 

「え? 嘘? 本当に」

 

「ええ。よく見てみましたが、奥の方も大丈夫です。良かったですね、トレーナーさん」

 

 ええー! 肩透かしも良い所だよぉ……折角集中してたのに……残念過ぎる。

 

「むー……ライアン、梵天。梵天だけでもお願い! 梵天して!」

 

「え? ええと……良いですけど」

 

 これじゃぁ生殺しもいいところだとライアンに梵天をお願いすると、困惑したまま了解してくれた。ごめんねライアン。でに、あれだけ期待してたのに何もなし。は寂しすぎるの。

 

 というわけで梵天をしてもらって、息の吹きかけも、今してもらってるけど……物足りない。期待が大きかった分、物足りなさが半端ない、不完全燃焼この上ない。

 

「ふ~……ふ~……はい、これで終わりました」

 

 耳かきが終わってしまった。いや、まだお昼寝、お昼寝がある。せめてこれだけでもやってもらわないと、悶々として仕事なんて手が付かないよ!

 

「ねぇ、ライアン。このままお昼寝……しちゃだめ?」

 

「え? えーと……トレーナーさん、片耳だけでしたし、そんなに眠くないですよ……ね?」

 

「それはそう……だけど……最近仕事で疲れが取れなくて……お願い、ライアン」

 

 困ったような顔をしているライアンを横目で見上げながら懇願する。こうなったらせめてこのまま昼寝をさせてもらわないと不完全燃焼もいい所だよ。お願い、ライアン。

 

「うう、そ、そんな上目遣いで見ないでください。わかりましたけど……早めに起きてくださいね」

 

「ありがとう……流石私の愛バだね」

 

 困った顔をしてるライアンに罪悪感を覚えるけど、それはそれ、これはこれ。やったー、これでライアンの膝枕でお昼寝できる!

 

 半分以上浮かれながら目を瞑り……浮かれてるからすぐには寝れないと思ってたけど、意外なほどにあっさりと襲ってきた眠気。私はそれに身を任せながら、ライアンの膝の上でゆっくりと自分の意識を手放した。

 

「……お疲れ様です、トレーナーさん」

 

 ……なんだろう、何か聞こえたような……なんだったんだろう……


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