ウマ娘耳かき小説   作:雨宮季弥99

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トレーナーとして彼女と何年もみっちり付き合うというのは、ある意味では一般ではない特殊な訓練を受けるのと同義ではないだろうか? そんな事を思ってしまった今日この頃です。


サクラバクシンオー(地の文あり、女トレーナー)

 

 むー……やっば……寝そう……昼間なのに寝落ちしそう……やっぱ、夜にちゃんと寝ないとダメっぽいかも……。

 

いやいや、気を抜いちゃだめよ私。バクシンオーはG1ウマ娘。彼女の今後の為にも私が気を抜いちゃいけないの。あの子の今後は私にかかってるんだから、集中集中。

 

 ……うーん、トレーニングメニューはこれでいいかなぁ……雑誌の取材やテレビ出演が邪魔くさいけど、ファンの為にもメディア出演は欠かせないし、それから……それから……

 

 ……う……ん? なに? なんだろう……視界が横向いてる気がする……し、なんだか柔らかい物が頬に当たってて……あ、良い匂いが……なん……だろう……

 

「ん……ん……? な、なに……?」

 

「おはようございますトレーナーさん。どうやらお疲れのようですね」

 

「わああああ! バ、バクシンオー!?」

 

 思いもよらぬ声に私は体が浮き上がり、そのまま下に転げ落ちようとしたのをバクシンオーに支えられた。そのまま周りを見渡して、ようやく、ベッドの上で彼女に膝枕されてる事を理解した。

 

「本日のトレーニング内容を聞くためにここに来たところ、トレーナーさんが机に突っ伏して寝入っていたのでここまで運びました。どうですかトレーナーさん? 私の膝枕は気持ちいいでしょう」

 

「う……うん、ごめんね、寝ちゃってて。す、すぐに起きてトレーニングの準備を……」

 

 慌てて起きようとしたけど、バクシンオーが片手であっさりと私を抑え込む。ちょ、離し……離して……。

 

「では、トレーナーさんも起きたのでここから耳かきを始めましょうか」

 

抵抗する私をよそにバクシンオーの顔が近づいてきて、耳の中を覗き込むのが横目に見えた。耳にかかる彼女の吐息がくすぐったくて、恥ずかしくて……。

 

「ね、ねぇ、バクシンオー。い、いきなりすぎて何が何だかわからないんだけど……」

 

 私が説明を求めると、彼女も納得したのか、説明を始めてくれた。

 

「トレーナーさん、私は日頃トレーナーさんに大変お世話になっています。なので、今日はそのお礼も兼ねてトレーナーさんに耳かきをしたいと思います。トレーナーさんも、耳かきをするのは随分と久しぶりのようなのでちょうどいいわけです」

 

「あー……? そう言えば、前にしてもらってからけっこう日にち開いたっけ……って、それでも寝込みを襲うのはやめて欲しいかなぁ……」

 

 机で仕事をしていたはずが、気づけばベッドで膝枕されてるとか、普通に混乱する。ワケガワカラナイヨ。になっちゃうよ。

 

「はい、大変失礼しました。では、説明もしたのでこのまま耳かきをしていきましょう!」

 

 あ、もうわかった。これ、次も同じ事するパターンだ。愛バだもん、わかっちゃったよ……なんて現実逃避してる間にも、温かいタオルが耳を包み込んでくる。

 

 ゴシゴシ……ゴシゴシ……

 

 ギュッギュッ……ゴシゴシ……

 

 タオルの熱に包まれた耳全体を、窪みも念入りに、ゴシゴシ、ギュッギュと擦られて気持ちよくなっちゃう。んー、おしぼりで顔とかを拭く人の気持ちが分かっちゃうけど……前にはこれ、してなかったよね?

 

「ん……んー……気持ち良いんだけど、バクシンオー、これって前はやってなかったよね? どこで覚えたの?」

 

「以前ミホノブルボンさんから教えてもらいました。その様子ではトレーナーさんも気持ちよさそうで何よりです」

 

 へー、ミホノブルボンかぁ。仲が良いというか、バクシンオーの押しが強いというか……キタサンブラックちゃんにもグイグイ行ってるもんねぇ、バクシンオー。

 

 そんな事を考えてると耳からタオルが離されて、熱が離れて、代わりに濡れた耳に当たる外気のおかげでひんやりとした感じがする。

 

「トレーナーさんの耳垢は粉っぽいので、綿棒で絡めとっていきますね……ふむふむ、水分を吸った分、粉がペースト状になっていますね。なるほど、これは取りやすいです」

 

 ……うわ、嫌な想像しちゃったじゃん。バクシンオー、もうちょっと言葉選んでほしかったなぁ。

 

「ゾリッ……ゾリッ……ふむふむ、外側の広い部分も、窪みの部分も、綿棒で念入りに、掃除をしていって……」

 

 ゾリッ……ゾリッ……

 

 ズリッ……ザリッ……

 

ん……綿棒が耳を擦っていくと、なんだか変な感じがしちゃう。感触だけでもそうなのに、聞こえてくる音が、嫌でも自分の耳のドロッとした汚れを絡めとっているんだというのを想像しちゃって、思わず身震いしてしまう。うう……不快な音のはずなのに、掃除が進んでいくと気持ちよくなっちゃう……。

 

「ん……風呂上りの耳垢を掃除してるみたい。普段はこんな耳垢の状態で掃除することがないから……ちょっと慣れてないかも……」

 

「ふむふむ、そう言う視点もあるのですね。さて、外側はこれぐらいにして、中を掃除していきましょう」

 

 そう言うと、バクシンオーは外側を掃除していた綿棒を捨てて、新しい綿棒を中に差し込んできた。

 

「ゾリゾリ……ザリザリ……トレーナーさんの耳の中をお掃除していきますよー」

 

 ザリッ……ザリッ……

 

 ゾリッ……ゾリッ……

 

 外側を掃除ていたときよりも大きい音が耳の中に木霊する。ドロッとした耳垢を綿棒で絡めとっていくたびに背筋にゾクッとした気持ち良さが走る。

 

「ふぅ……耳の中をそうやって擦られると……ゾクッてしちゃうよ……」

 

「それは迷走神経を刺激してるからですね。トレーナーさんが気持ち良くなって何よりです」

 

 ……ねぇバクシンオー。それ、意味わかってる? 分かっていってるの? 私、貴女に対してそう言うイメージないんだけど。

 

「ゾリゾリ……んー、やはりトレーナーさんの耳垢は粉っぽい為か、大きい塊になる前に崩れているようですね。ザリザリ……」

 

「んー……確かに、昔から耳かきで大きな耳垢が取れたことって全然ないけど……大きくなる前に崩れてるのかぁ」

 

 うん、そう言えば今まで耳垢が詰まったとか、そう言うのになった事なかったけど、そう言う事ね。たまに耳垢が詰まって耳鼻科行った人の話聞いた事あるけど、私は全くそう言うのなかったし。

 

「はい、ですのでこのまま、綿棒で擦り取っていきますね」

 

 ザリザリ……ザリザリ……

 

 ガッ……ペリッ……ベリッ……

 

 綿棒で耳の中を擦られると、たまに微妙な痛みと一緒に固い物がベリッて剥がれてるのがわかる。でも、綿棒で取れるって事は、やっぱり取れやすいのかな? 崩れやすいって事は脆いって事だし。

 

「ふむふむ……ふーむ、粗方取れたでしょうか。やりすぎては耳の中を傷めますので、この辺りで終わりましょう」

 

「ふー……これでお終いかぁ……ヒャッ! つめ……たッ」

 

 終わったと思って、ハーッ……ってため息をついてると、いきなり耳の中に冷たい物が塗られ始めた。な、何? 何これ?

 

「後は肌荒れ対策のローションを塗っていきますので、もう少しお待ちください」

 

 ヌリヌリ……ペチャペチャ……

 

 ズチュ……ヌリヌリ……

 

「はい、これでローションもお終いです。では、最後に……」

 

 ふ~……ふ~……

 

 ふ~……ふ~……

 

 ひょおおっ!? 濡れてる耳の中に息を吹きかけられると背筋がゾクッて、ゾクッ……てっ! ビ、ビックリしたよぉ……。

 

「ッ……! み、耳の中が濡れてる状態のそれは……ちょっとビックリしちゃうなぁ……アハハ」

 

「なるほど。では、もう一度行きますね」

 

「え、ちょ、まっ……」

 

 ふ~……ふ~……

 

 ふ~……ふ~……

 

 止めようとしたのを問答無用に息を吹きかけられ、背筋がビクッと動く。ちょ、これは本当にクル、きちゃうから。

 

「ッ……つ、次はもうやらないで、お願い……本当にお願いだから……」

 

「おや、気持ち良いと思うのですが……仕方ないですね。それでは、反対側もやっていきましょう」

 

 ねぇ、バクシンオー、なんで不思議そうな顔するの? わかるでしょ? 貴女も女の子なんだからわかるでしょ? 察してよ。

 

 そんな無言の訴えを通じず、私はゴロンと体を反転させられ、彼女のお腹側を向く形になった。

 

「さてさて、こちらも……粉が多いですね。では、先程と同じようにしていきますよー」

 

「う、うん……宜しく」

 

 何を言っても通じそうにない気配にため息をつきながらも、身を任せる。うん、こうなったらもう諦めたほうがいいかも。

 

 ゴシゴシ……ゴシゴシ……

 

 ギュッギュッ……グリグリ……

 

 そんな気疲れしてる私だけど、耳がタオルで優しく擦られていくと、気が抜けていく。

 

 ゾリッ……ゾリッ……

 

 ザリザリ……ゴシゴシ……

 

 水気によって浮かび上がった耳の外側の汚れを、綿棒でゴシゴシと擦られ、こそぎ落されていき。

 

 ザリザリ……ガリガリ……

 

 ゾリッ……ベリッ……ガリッ……

 

 耳の中の、水気でドロドロになった粉と取れやすくなった耳垢を、これも綿棒で纏めて掻き取られていく……耳垢はちょっと手間取ったせいで少し痛かったけど。

 

 汚れた綿棒が捨てられて……よし、ローションは止める。絶対に止めるんだ。トレーナーがウマ娘に負けちゃいけないんだ。

 

「ねぇ……ねぇ、バクシンオー? ここまでにしよ? ほら、私、もうここまでで十分気持ち良かったしさ。ね?」

 

「何を言うのですかトレーナーさん。さぁ、おとなしくしてください」

 

 ウマ娘には勝てなかったよ……。全力で逃げようとするのを片手で抑え込まれるとか、ウマ娘に人間が勝てるわけないんだよなぁ……。あ、そんなに息を吹きかけられると……ヤバッ……

 

「ふむふむ……トレーナーさんは耳が弱いのですね。んー、でもここまでするのが耳かきのお約束ですから、次からもしていきますね」

 

 ええ……真顔でそんな事言われても……。

 

「ちょ……えぇ……」

 

 いや、割と真面目にヤメテ欲しいんだけど……この子、良い子なんだけど、なんでこんな直線的なんだろう。短距離走型だから? でもそれならカレンチャンとかどうなるの?

 

「それではトレーナーさん。このままお昼寝をしましょう。大丈夫、私がこのまま膝枕をしてさしあげますから」

 

「……うん、ここまで来たらもう諦めるけど。で……もしかして、また子守歌?」

 

「勿論です。さぁ、トレーナーさん、行きますよー。バクシンバクシンバクシーン」

 

 ……ねぇ、それで本気で寝れると思うの? バクシンオーの子供なら寝れるかもしれないけど、私はそうじゃないよ? それで寝るのってけっこう特訓が必要だよ? ……あー……でも、うん。なんだか眠くなってきてるって事は、私も特殊な訓練を受けてきたのかな……。

 

「バクシンバクシンバクシン、バクシンバクシンバクシン、バクシン、バクシン、バクシンシーン♪」

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