ウマ娘耳かき小説   作:雨宮季弥99

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スマートファルコンの耳かきで女トレーナー視点で書きました。

そう言えば、あまりスマートファルコンの女トレーナー物って見かけた記憶が無いのですが、私が見つけたないだけなのか、それとも作品数が少ないだけなのか、どっちなんでしょうね。自分自身で書いた結果、私はありだと思いますが。

追記 最近仕事の残業とウマ娘の周回イベントでしんどい今日この頃。ウマ娘の周回は……しんどい。残業? しんどいに決まってるでしょう。


スマートファルコン(地の文あり、女トレーナー)

「よし、よし。今日のライブも無事に終わった……ファル子、今日も輝いていたぞー」

 

 ライブを終えてファル子がステージ袖に姿を消すのを確認し、私は一人小さくガッツポーズをする。ダートでめきめきと実力を付けた彼女のファンは日を追うごとに増えていき、こうしてライブにも多くの人が来てくれるようになった。これまでは勝手にライブして怒られたりしてたもんなぁ。私も頭下げに行ったっけ。

 

「さて、ファル子に会いに行かないと。疲れてたら肩でも揉んであげようっと」

 

 そんな事を呟きながら、私はファル子の居る楽屋へと歩いていく。そして楽屋の扉を開けると、そこでは椅子に座りながら満足そうに笑っている彼女が居た。

 

「お疲れ様ファル子、今日も最高のライブだったよ」

 

 私が声をかけるとファル子は私の方を向いて、先程とは違う笑みを浮かべた。

 

「えへへ、トレーナーさんにそう言ってもらえると嬉しいな。これからもファル子、もーっと頑張っちゃうよ」

 

「うんうん。これからもずっと応援していくからね。なんたって私は、ファル子のファン第一号なんだから」

 

 嬉しそうに笑うファル子を見ていると、私も彼女の為に更に頑張らないと。と気合が入る……が、そこで不意に眠気が襲ってきた。

 

「ふぁ……ぁ……」

 

「あれ? トレーナーさん、もしかしてお疲れ?」

 

「んー……最近ちょっとやることが多くて……ふぁ……ぁ……」

 

 うーん……ダメだ、ファル子のライブが無事に終わって緊張感が解けたのか、眠気が猛烈に襲ってくる……後でちょっとお休みしよう。

 

「ねぇ、トレーナーさん。私に何かできる事ってない? トレーナーさんにはいっつも助けられてるもん。私も何か力になりたいな」 

 

「ん? いやいや、大丈夫大丈夫。ファル子もライブの後で疲れてるでしょ? 今日はもう帰ってしっかり休んで……ふぁ……」

 

 気持ちは嬉しいけど、ライブが終わった後のファル子に無理をさせたくないし、早く帰ってもらって、十分お休みしてもらわないと。私も諸々を片付けてお休みしちゃおっかな。

 

「……そうだ、トレーナーさん。後でトレーナー室で待ってるから、絶対に来てね。絶対だよ」

 

「へ? え、ええと……? よくわからないけど……後で必ず行くね」

 

 ……よくわからないまま返事したけど、なんなんだろう? まさかこれからライブの復習とか言い出さないよね? 疲れを残さないためにも早く休んで欲しいけど……まぁいいや。何にしろ、付き合ってあげましょう。

 

 そうしてファル子と別れた私は後片付けを終えてからトレーナー室に向かうと、ファル子が既に待っていた。

 

「ファル子。それで、用事ってなんなの?」

 

「えへへ。トレーナーさん、今日は普段のお礼に耳かきしてあげるね。最近してないでしょ?」

 

 そう言ってファル子が私に見せてきたのは耳かきだった。あー……そう言えば最近は忙して耳かきとかぜんぜんしてなかったな。特にファル子のゲリラライブとかゲリラライブとかゲリラライブとか……。

 

「そう言えば最近はしてなかったな……うん、お願いするね」

 

「はーい。それじゃぁトレーナーさん、こっち来てね」 

 

 正座したファル子の横に腰を下ろし、そのまま彼女の膝の上に頭を置く。んー、ファル子の膝の上に頭を置けるなんて、トレーナー冥利ってやつよねぇ。ふふふ、例えどれだけファンが増えようとも。ここは譲らないんだから。

 

「ブルボンさんやスズカさんもトレーナーさんに耳かきをしてるって聞いて、色々教えてもらったんだ。えーと、まずは温かいタオルで耳を擦っていくんだね」

 

 そう言うと、ファル子は丁寧に上を向いてる方の耳をタオルでゴシゴシと擦り始める。温かいタオルで擦られると、思わず、はぁ……と息が漏れてしまう。

 

「ほらほらトレーナーさん。気持ちいい? 耳の汚れが落ちていくよー」

 

「うん、とっても気持ち良いよ。これ。今日のお風呂上りにでも自分でもやろうかな」

 

 今までって割と雑に拭いてただけだから、今日のお風呂からはちゃんとしっかりとやってみよう。そうだ、その時に耳つぼマッサージも……って。痛い痛い痛い痛い!

 

「ファル子痛い! 痛いよー! なんでそんなに力入れてるの!?」

 

「ふーんだ。折角私がやってるのに、自分でもやれる。なんて考えてるトレーナーさんにはお仕置きだもん」

 

 私が抗議するとファル子は頬を膨らませてそっぽを向いた。ええ……その表情も可愛い……んだけど、何? 何でそこまで怒るの? よくわからないけど取り合えず謝ったら機嫌を治してくれた。よくわからなくても謝る。社会人としての必須スキルだね。 

 

「それじゃぁ改めて……って程じゃないのかな? うん、これでタオルはお終い」

 

 ファル子はそう言ってタオルを横に置いて、耳かきを手に持った。んー、前は綿棒だったけど、耳かきだと上手にできるのかな?  

 

「うーん。トレーナーさん、最近耳の中掃除してないでしょ。前にやった時より汚れてるよ」

 

「うぐっ……さ、最近はちょっと時間がなかっただけだから。普段はちゃんとしてるから」

 

 ……ごめん嘘。レースだけじゃなくてアイドル活動もしてるファル子に使う時間は多分他のウマ娘よりも多いんだと思う。でも負けないもん、ファル子の為だから。 

 

「さてさて。前は綿棒でやったけど、今回は耳かきでチャレンジだよ。まずは、手前から順番に、カリカリカリ……」

 

 カリカリカリ……ガリガリガリ……

 

 ザリザリ……ベリッ

 

 耳かきが動くと、綿棒の時とは違う、どちらかと言うと軽くてというか、軽快というか、そんな音が耳の中に響いて……あ、なんか取れた。浅い所に小さい耳垢があったみたい。 

 

「カリカリカリ……カリカリカリ……トレーナーさんの耳の中をカーリカリ♪」

 

 一つ取っても耳かきは止まらず、ファル子の楽しそうな、鼻歌のような、そんなリズミカルな囁きを聞きつつ、耳かきの動きに集中する。カリカリカリ。と耳の中を掻かれて、耳垢の塊だけじゃなくて、粉上の物をティッシュの上に捨てられていく。ふぁぁ……あー……眠気がきつくなってきた……。

 

「んーと、次はこの耳垢をカリカリ……トレーナーさん、痛くない?」

 

「ん……うん……大丈夫……」

 

 ダメだぁ……これ、寝るって。ただでさえ眠い時に耳かきとファル子の膝枕とか、寝なきゃダメなぐらい眠くなるよぉ……。

 

 カリカリカリ……という耳かきの音とファル子のオノマトペが子守歌のように私を眠気に誘い……あ、ダメだ……もう……ダ……メ……。

 

「ふ~……ふ~……」

 

「うっひゃあああ!?」

 

 突然耳に刺激が走り、私は奇声を上げていた。な、なになに!? 何が起きたの!?

 

「おはようトレーナーさん、まだ片方だけだから、もう片方が終わるまでお昼寝はもうちょっと待ってね。はい、反対向いて♪」

 

「あ……う、うん……」

 

 頭の中がパニクッたまま、ファル子に促されるままに体を横に向けると……あ、ファル子のお腹が目の前だぁ……可愛いんだけど、この子、これでも腹筋バッキバキに割れてるんだよねぇ……。

 

「えへへ。それじゃぁこっちの耳かき、いっくよー」 

 

 私の混乱が収まらないうちに耳掃除が再開され、上を向いている耳が新しいタオルでゴシゴシと擦られていく……うん、落ち着こう……落ち着いて、現状をありのまま受け入れよう。それが多分一番いい行動だ。

 

 ……あー、ダメだぁ。混乱して覚めてた目がまたトロンとしてくる……もうタオルは終わったみたいだけど……耳の中……耳かき……気持ち良い……。

 

「カリカリカリ……カリカリカリ……」

 

 ふやぁぁ……ファル子の声、それだけで気持ち良いなぁ……もう、寝よう。寝ても大丈夫……ファル子は……私の愛バは許してくれるから……グー……グー……。

 

「ふ~……ふ~……」

 

「おっひょう!?」

 

 な、なになに!? なにが起きて…………あ、そうか、息か。息かぁ……あー……心臓に悪い。最初もだけど、後の方がほぼ寝てたから余計に心臓に悪い。

 

「ねぇトレーナーさん。耳かき、気持ち良かった?」

 

 上を見上げると、ファル子が笑顔で私を見下ろしている。んー-……驚いた拍子に目が覚めたと思ったけど……まだ眠い……寝ちゃおう。このまま寝てしまおう。

 

「んん……んー……ほぼ寝てたよ……気持ち良くて……ごめんだけど、このまま寝させて……」

 

「それは良いんだけどさ。ねぇトレーナーさん、枕営業ってなんなの? 前は結局教えてくれなかったよね」 

 

 その言葉を聞いた瞬間、私の眠気は一瞬で吹き飛んだ。そのまま扉に向けて全力で逃げようとして……う、動けない! 頭と腕を抑えられ身動きが取れない! 体を起こそうとしても完全に抑え込まれてる!

 

「ファ……ファル子……私にはそれを言う事はできないの!」

 

「むー。なんでー? 友達に聞いても知らないって言うし、トレーナーさん、知ってるんだったら教えてよー」

 

 頬を膨らませてプリプリしてるファル子だが。こればかりは何がどうあっても口を割る事はできない。純情なファル子に汚い大人の言葉の意味を教えるなんて、トレーナーとして絶対に教えることはできない!

 

「い、言えないの! 絶対に言えないの!」

 

 悲痛な叫びをあげてなんとか逃げようとするが、ファル子はまったく力を緩めてくれない。だが、私は言わない。なにがどうあっても絶対に言わないからね! 私の愛バに絶対負けない!


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