ウマ娘耳かき小説   作:雨宮季弥99

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タキデジで耳かきものを書きました。この二人のCPってなんか全然見ない気がするので、もっと増えて欲しいと思う今日この頃です。

後、アグネスデジタル誕生日おめでとうございます。


タキデジ

「むっふふ~、今日もウマ娘ちゃん達の尊さで幸せです~」

 

 自室でそんな事を呟きながら窓の外を見つめるデジタル。彼女の頭の中にはこのトレセン学園で輝く多くのウマ娘の事が渦巻いていた。全てのウマ娘が推しであると豪語する彼女にとってこのトレセン学園で過ごす全ての日々が尊さに満ちているのだ。

 

「……やれやれ、相変わらずだねデジタル君」

 

 そんな彼女に声をかけたのは同室のタキオンであった。

 

「あ、タキオンさん。御迷惑でしたか? でしたらちょっと外に出てますので……」

 

「待ちたまえデジタル君、別に迷惑というわけではないのだ。だが、君に頼みごとをするつもりなのだが……その様子では後にした方が……」

 

「頼み事!? 言ってくださいタキオンさん! このデジタル、何でもしますよ!」

 

 タキオンの言葉に反応したデジタルは一瞬でタキオンの元に移動した。

 

「ふむ。ではお願いしようか。ではデジタル君、ベッドに座っていてくれたまえ。準備をしてくるのでね」

 

 そう言うと、タキオンが何かの準備をし始めたため、デジタルは自分のベッドに座っておとなしく待ち続ける。程なくしてタキオンがいくつかの道具を持ってデジタルの方へ振り向いた。

 

「おや? それは……もしや耳かきですか?」

 

「その通りだよ。実は最近耳かきをすることに興味があってね。恐縮だが、君にはその練習に付き合ってもらいたいのだ」

 

「なんですと!?」

 

タキオンの言葉にデジタルは驚き、反応ができなくなる。

 

「おや、私が耳かきをするのがそんなに意外かな?」

 

「いいい、いえ、そうではありません! ああ……タキオンさんの耳かき……わかりました! このデジタル、存分に練習台になりましょう!」

 

 そう言ってデジタルはベッドに横になる。それを見て苦笑するタキオンは、ベッドに座り、後ろから見下ろす形でデジタルの頭を自分の膝の上に置いた。

 

「さて、それでは早速始めようか。まずは、温めたタオルで耳を温めよう。これで君の耳を片方ずつマッサージしていく。これによって君の耳の血流を促し、発汗によって耳の汚れを浮かび上がらせる」

 

 そう言ってタキオンはタオルでデジタルの耳を片方ずつ、丁寧に揉み解していく。

 

「ふむ、この辺りが凝っているようだね。この辺りは念入りに解しておこうか。これは先程も言ったようにマッサージも兼ねているからね」

 

「あああああ……タキオンさんの手が……指がぁ……」

 

 タキオンの細い指がしっかりとデジタルの耳の凝りを揉んでいくたび、デジタルの口からなんとも表現できない声と息が漏れ出し、表情も歪んでいく。だが、タキオンはそれを気にせず、耳へのマッサージを続けていく。

 

「どうだいデジタル君? どこか痒い所はないかい?」

 

「だ、だいじょうぶれすぅぅぅぅ」

 

 デジタルの片耳にタキオンの十本の指が触れていき、凝っている部分をゆっくりと、念入りに解していく。凝りが解され、滞っていた血流が流れていき、デジタルの耳に熱が篭っていく。

 

「ふふ、気持ちよさそうだねデジタル君。いつにもまして、君の顔が蕩けてるのが良く見える」

 

「あへえええ、み、みないでくだしゃいいぃぃ」

 

 上から見下ろされているデジタルの顔は、タキオンに全て見られていた。その事に羞恥心を覚えるデジタルだが、それ以上に今の幸せを味わっている。

 

 それを見つめつつ、タキオンはマッサージを続けた。デジタルの耳を両手で包みつつ、表と裏、両方からゴシゴシと擦り、汗で浮き上がった垢をティッシュで擦り落とし、マッサージを続ける。

 

「あ~……タキオンさん、そこ……掻いていただければぁ……」

 

「ここかな?」

 

「はいぃ……」

 

 時折、痒みを覚えたデジタルが訴えると、タキオンはカリカリと爪でそこを掻いていく。カリカリカリ……と、爪が動く時に聞こえる音もまた、デジタルを蕩けさせる。

 

「ふむ、良い感じに汗をかいてきたようだね、凝りもほぐれてきたし、そろそろ耳の中の掃除に移ろうか」

 

 そう言うと、タキオンは耳かきを手に取り、デジタルの耳の中をジッと見つめる。

 

「さて、中の様子は……ふむ、大きな汚れはなさそうだね。それでは早速……カリカリ……カリカリ……」

 

 オノマトペを口にしながら動くタキオンの耳かきは、まずは一番手前にある耳垢を引っ掻き始める。

 

「ほぁぁ……」

 

 繊細な、普段は自分でも触る事のない耳の中、そこに推しのウマ娘によって耳かきが差し込まれ、耳垢が掻き出されていく。その事実にデジタルはただただ口から妖しい声を上げつつ、蕩けた顔でタキオンを見つめる事しかできない。

 

(タキオンさんのお手が、私の耳を摘まんで、耳の奥をコリコリと……た、たまりません!)

 

「カリカリ……ガリガリ……ふふ、こうして耳かきをしていると、いかにして耳垢を取るのかと言うのが楽しくなってしまうね。とは言え、やりすぎれば耳を傷めるから、程々にしなくてはな」

 

 タキオンはそう言うと、器用に耳かきを動かし、まずは一つ、アグネスの固い耳垢を掻きとった。

 

「はうぁ……み、耳垢が取られるの……気持ちいいれすぅ……」

 

「その感覚はわかるよデジタル君。さぁ、それではもう一度味わうと良い」

 

 そう言ってタキオンは次の耳垢に取り掛かる。最初よりやや大きいその耳垢を、カリカリと、ガリガリと、オノマトペを呟きながら的確に少しずつ剥がしていく。そのたびにデジタルは体を震わせるが、タキオンがそれを意に介することはない。

 

「カリカリカリ……さぁ、そろそろ取れそうだよデジタル君」

 

「はいいいぃ……」

 

 タキオンの耳かきが既に半分ほど剥がれている耳垢の隙間に的確に差し込まれ、二、三回様子見で動かされたと思うと、一気に耳垢を引き剥がした。

 

「はう……ふぁ……気持ちいいれすぅ……」

 

「そうかそうか、それは良かったよデジタル君。さて、耳垢はこんなものでいいだろう。次は梵天だから、このままおとなしくしていてくれたまえ」

 

 耳垢をティッシュに捨てたタキオンは、そのまま耳かきを横に置き、梵天を手にする。その時ふと、デジタルの目に映ったのは、市販でよく見る梵天とは違う、栗毛色の梵天だった。

 

「あれ……? タキオンさん、珍しい色ですね」

 

「ああ、それはそうだろう。なにせ、市販されていない特別製だからね」

 

 特別製。その意味をアグネスが聞く前に梵天が耳の中に入ってくる。そして、アグネスは驚愕した。

 

「はわ!? なな、なんですか……これ……?」

 

 その梵天は、アグネスが思ったいる以上の滑らかさで彼女の耳の中を擦っていく。そして、これまでデジタルが味わった事のないほどの繊細で、滑らかな感触で、彼女の耳の中を動き回った。

 

「コシュコシュ……コシュコシュ……ふふふ、どうだいデジタル君? 気持ち良いかい?」

 

「あひゃ、あひゃあぁぁ、な、なんなんれしゅか、この……この梵天は……?」

 

「ああ、これは私の尻尾の毛を使って作った特製の梵天だよ。市販の物よりは良くできてると思うんだが……どう思う?」

 

「はうっ!?」

 

 推しウマ娘の尻尾で作られた梵天。その言葉にデジタルは尊死した。そして少しして蘇生した。

 

「さて、梵天での掃除もこれでお終いだ。最後に……ふ~……ふ~……」

 

「はうぁっ!?」

 

 デジタルの耳に近づき、息を吹きかけるタキオン。その表情、行動にデジタルの頭の理解力を超え、彼女は再び尊死した。そして復活した。

 

「はぅああああ……タ、タキオンさんにここまでしてもらえるなんて……ファンはお触りは禁止なのに……拒めません……」

 

「ふむ、それは重畳。さて、それでは反対側の耳もやっていこうじゃないか」

 

 そう言うと、タキオンはデジタルの反対側の耳の掃除を始める。最初と同じように、耳を念入りにマッサージし、汗や熱でふやけた耳垢をカリカリと掻きとっていく。そして、梵天でコシュコシュと耳の中を掃除する段階まで来た。

 

「はうぅ……はうぅ……私……この学園に来て、今一番幸せかもしれませんんん……」

 

「おやおや、それは良い事を聞かせてくれたねデジタル君……さて、そんな君に一つお願いがあるのだが、良いかな?」

 

「ききます……今ならなんでもききましゅぅ……」

 

「ほう、そうかい。それじゃぁ、君の中の推しの順番を、私を一番にしてもらえるかな?」

 

「……はい?」

 

 タキオンの言葉にデジタルは言葉を失う。そのまましばらく目線が宙を彷徨い、それからタキオンの顔を凝視する。

 

「あの……タキオンさん? 先程なんと?」

 

「おや、耳掃除をしたのに良く聞こえなかったのかい? 私を、君の推しウマ娘ナンバー1にしてくれないかい?」

 

 再びの言葉にデジタルは口をパクパクさせ……それから申し訳なさそうに口を開いた。

 

「あの……すみません。私、それだけはちょっと……」

 

「わかってるよデジタル君。君にとって、全てのウマ娘が推しでありナンバー1と言うものは存在しないのだったね」

 

「ははは、はい。そうです、私にとって全てのウマ娘ちゃんが推し。ですので、一番と言うのは……」

 

「でも、私達は縁があると思わないかい?」

 

「ふえ!?」

 

 タキオンは体を屈め、デジタルの顔に近づく。推しのアップになっていく顔に、デジタルは顔が赤くなり、思わず逃げようとするも、しっかりと頭を掴まれ、逃げることができない。

 

「私達は同じ部屋で、そして、同じアグネスの名を持つウマ娘だ。血縁関係はないが……それでも、どうやら私達は方向性は違っても性質は似ているように思う、そうは思わないかい?」

 

「はわわわ、そ、それは確かにちょっと思いましたが……」

 

「で、あれば。少しぐらい私を特別に思ってくれても構わないだろ? 何、別に他のウマ娘達への想いを下げるわけじゃない。ほんのちょっと……私を特別視する。それだけで十分だ」

 

「はわわ、はわわわわわ……はわー!」

 

 互いの吐息が感じられるほどに近くなった二人の顔。そして、タキオンから話される言葉にデジタルの精神は多大な負荷を与えられ……そして、限界を迎えた彼女は速やかに尊死した。

 

「……ふむ、少しやりすぎたかな」

 

 尊死したアグネスを見下ろしながらタキオンが呟く。

 

「私としてはてっきり明確に拒否されると思っての冗談のつもりだったんだが……こんな反応をされるのでは少々楽しくなってしまうじゃないか。なら……いっそ、本当に堕としてしまおうかな」

 

 尊死したデジタルを見下ろしつつ、タキオンは面白そうに呟くのだった。


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