ウマ娘耳かき小説   作:雨宮季弥99

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ミホライで耳かきを書きました。ライスシャワーが人気のあるキャラなのと、他にもCPの組み合わせが多いのとで、なんかこの二人のCPってあんまり見かけないなぁ。気のせいなら良いんだけどなぁ。なんて思っていたら書いていました。

こちらは私の企画したウマ娘耳かき小説合同への投稿作品となります。今回参加して下さった「あふぁ」さんの投稿された作品はこちらとなります。

https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=17620764



ミホライ

(ふんふんふん、今日は、何も起きずに買い物ができて良かったー。お兄さまに褒めてもらえるかな)

 

 トレセン学園の近所にある商店街をライスシャワーが軽く鼻歌を歌いながら歩いている。普段何かにつけて不幸に見舞われる彼女だが、今日は珍しい事にここまで特に不幸に襲われることなく済んでいるのだ。そんな彼女がご機嫌なまま商店街を歩いていると、ふと、見覚えのある姿を見つけた。

 

(あれ、ブルボンさん?)

 

 彼女の視線の先に居るのはミホノブルボンであった。クラシック三冠において激しい戦いを繰り広げた彼女達であるが、周りの熱気をよそに、二人は仲良しであり、親友と言っていい間柄である。

 

 そんな彼女達だが、今日のミホノブルボンは普段ライスシャワーが見ることがないほど真剣な表情でショーウィンドウを眺めている。気になったライスシャワーは声をかける事にした。

 

「ブルボンさん、こんにちは」

 

「ライスさん、こんにちは。今日はお買い物ですか?」

 

「うん。ブルボンさんもお買い物……? えっと、これって、耳かき?」

 

 ライスシャワーがショーウィンドウを覗き込むと、そこには何本かの耳かきが置かれていた。

 

「はい。マスターへの耳かき用として何か良い物がないかを探していました。ライスさんは耳かきはよくされるでしょうか? それなら、何かアドバイスを頂きたいのですが」

 

「え!? えっと……ライスはその……薬局で売ってたのをそのまま使ったから……」

 

 ミホノブルボンに聞かれ、ライスは思わず声を詰まらせてしまった。先日ライスシャワーはハルウララがトレーナーに耳かきをしたという話を聞いて、自分も自身のトレーナーに耳かきを行ったのだが、道具は手ごろに揃えられる物しか使っておらず、ミホノブルボンのように道具に拘るという発想がなかったのだ。

 

「そうですか。それでは一緒に見てみませんか? もしかしたら、ライスさんのトレーナーさんが気に入るようなものもあるかもしれません」

 

 そう言うと、ミホノブルボンは再びショーウィンドウに視線を向けた。真剣な眼差しで耳かきを見つめるミホノブルボンに、ライスシャワーは思わず尋ねる。

 

「あの、ブルボンさんはよくトレーナーさんに耳かきをするの?」

 

「よく。というほどではありません。耳かきはやりすぎれば耳の中を傷めますので。ただ、定期的にできるように心がけてはいます」

 

「そ、そうなんだ。定期的に……かぁ……」

 

 定期的にできるように心がける。という事は恐らく既に何回かしているのだろう。そう思いついたライスシャワーは、一つの決心を固めた。

 

「ブ、ブルボンさん! ライスに、耳かきを教えてくれませんか? ライス……お兄さまにもっと耳かきをしてあげたいんです」

 

 真剣な表情でブルボンに頼み込むライスシャワー。それを見たミホノブルボンは少し考え、そして答えた。

 

「わかりました。どれだけ教えられるかはわかりませんが。ライスさんのお願いなら私もできる限り応えます」

 

 ライスシャワーの願いに答えるミホノブルボン。それを聞いたライスシャワーはホッと安堵の息を漏らすが……。

 

「では、今日は私の部屋でライスさんに耳かきをしましょう」

 

「……ほぇ?」

 

 ミホノブルボンの言葉にライスシャワーは豆鉄砲を食らったかのような顔になる。それに構わずミホノブルボンはライスシャワーの手を取ると、そのままトレセン学園に向けて歩き出した。

 

「ひゃああっ!? ブ、ブルボンさん!?」

 

「百聞は一見に如かずです。私がやってる耳かきを体験していただくのが、まずは手っとり早いと判断しました」

 

「そ、そうかもしれないけど~」

 

 困惑するライスシャワーを連れてミホノブルボンはトレセン学園に戻り、自分の部屋にライスシャワーを連れ込む。幸い同室のニシノフラワーはトレーニングで部屋を空けているので、ミホノブルボンは気兼ねなく行動できる。

 

「それでは道具を用意しますので、少し待っていてください」

 

 そう言ってミホノブルボンはライスシャワーをベッドに座らせると、道具を用意しはじめた。その様子を見ながら、ライスシャワーはただただ感心する。

 

(凄い。耳かきって色々道具を用意するんだ。わ、私も見習わないと」

 

「さて、それでは準備が整いました。ライスさん、私の膝の上に頭を置いてください」

 

「わ、わかった。えっと……これでいい?」

 

 ベッドに座ったミホノブルボンを見上げるようにライスシャワーが頭を置く。上から見下ろすミホノブルボンと視線が合い、ライスシャワーは思わず目を逸らした。

 

「ライスさん、恥ずかしいなら目を瞑っていても大丈夫ですので。それでは、開始します」

 

 ミホノブルボンはライスシャワーの片耳を指で摘まみ、軽く引っ張る。そして汚れの観察を行うと、次にお湯で温めたタオルを手に取った。

 

「まずは、タオルで全体の汚れを取りつつ、水分を含ませることによって汚れを浮き上がらせます。ゴシゴシ……ゴシゴシ……」

 

 ミホノブルボンのオノマトペに合わせてタオルがライスシャワーの耳を擦っていく。温かいタオルに包み込まれ、擦られる快感に、ライスシャワーは思わず息を吐いた。

 

「はふぅ……暖かくて気持ち良い……こうして自分で体験すると、お兄さまも気持ち良かったんだって実感できるね……」

 

「それは良かったです。それでは、粗方拭き上げられたので、次は綿棒で残った汚れを掻き出していきます」

 

 タオルを外したミホノブルボンは次に綿棒を手に取る。そして、タオルで取り切れてない細かい汚れを綿棒で絡めとっていく。

 

「ザリザリ……ザリザリ……ライスさん、少し汚れが多目ですね。入念な耳のケアを推奨します」

 

「は、はぃぃ」

 

 ミホノブルボンに指摘され、ライスシャワーは顔を赤くしながらも頷く。そうしている間にも掃除は続いていく。

 

 ザリザリ……ザリザリ……

 

 グリグリ……ガザッ……ゴゾッ……

 

 ミホノブルボンが綿棒を動かすたびにライスシャワーの耳から汚れがこそぎ落され、綿棒は黄色く汚れていく。それは当然彼女の耳がそれだけ汚れていたという証拠であり、それを目にしたライスシャワーは恥ずかしさのあまり、どんどん顔が赤くなっていく。

 

(恥ずかしい……ブルボンさんにこんな汚い耳を掃除してもらうなんて……)

 

 羞恥に悶えるライスシャワーだが、ミホノブルボンは意に介さず掃除を続ける。片手で耳を摘まみ、窪みや端っこに残っている汚れを掃除していく。

 

「ザリザリ……ザリザリ……どうですか、ライスさん。痒い所とかは大丈夫ですか?」

 

「う、うん……ライス、大丈夫だから……」

 

 ミホノブルボンの問いに答えるライスシャワー。それを確認したミホノブルボンは更に耳掃除を続け……使っている綿棒が黄色に染まりきる頃に、手を止めた。

 

「これで外側の掃除は終わりです。次は内側の掃除を行います。繊細な場所ですので、何かあればすぐに言ってください」

 

「う、うん……」

 

 綿棒を捨て、耳かきを手に取ったミホノブルボンは慎重にライスシャワーの耳の穴を広げる。そして、手前から慎重に耳かきを差し込み、動かし始めた。

 

「カリカリカリ……カリカリカリ……奥からやりがちになりますが、やはり手前にも耳垢は溜まっているものですから、手前から慎重に、カリカリカリ……」

 

 無理に奥に耳かきを入れず、手前から慎重に掻いていくミホノブルボン。角度の関係上奥の方は見え辛い為、体を倒してライスシャワーの頭の上に自分の頭が来るようにする。

 

(ひゃぁぁぁぁぁ、ブ、ブルボンさんの顔が頭の上にいい、息が、息がああああ)

 

 接近するミホノブルボンの顔、そして耳に感じる吐息にライスシャワーの顔は更に赤くなるが、ミホノブルボンは耳かきに集中し続ける。

 

「ふむ……見たところ、小さい耳垢と……大きいのが一つあるぐらいですね。気を付けながらやりますので……何かあったら言ってください」

 

 カリカリカリ……カリカリカリ……

 

 ガリッ……ガリッ……

 

「ひゃあああ!? き、聞いた事ないような音がするよぉ、ブルボンさん!」

 

「はい、少々大きめの耳垢に取り掛かっています。少しずつ剥がれてきていますので、ここは一息に取ってしまう事を提案しますが、宜しいですか?」

 

「え……えっとぉ……」

 

 聞き慣れぬ音、慣れていない耳かきの感触にライスシャワーは自然と体が硬くなる。それに気づいたミホノブルボンはライスシャワーの手をそっと握った。

 

「大丈夫です、耳垢は大きいですが、取りにくい位置にはありません。このままなら問題なく取れますから……どうか、信じてもらえませんか?」

 

 ライスシャワーの手を握り、彼女を見つめるミホノブルボン。ライスシャワーはしばらくの間悩んだが、ミホノブルボンの事を信じることにした。

 

「……あの……ブルボンさん。優しくして……ね?」

 

「了解しました」

 

 ライスシャワーの了解を取り、ミホノブルボンは耳かきを再開する。一面から掻いただけでは取るのに時間がかかると判断し、耳垢の左右や後ろから掻いていき、全体的に剥がしていく。

 

 カリカリカリ……カリカリカリ……

 

 ガリガリ……ベリッ……ガリガリ……

 

(うう、耳の中が痛いような、気持ちい良いような……早く終わってほしいのに、もっとやってほしいよぉ……)

 

 これまで自分自身の耳かきというものをほとんど経験した事のないライスシャワーにとってまったく慣れてない感覚に、ライスシャワーは目を閉じ、無意識に体に力を込めてしまう。そんな彼女を見たミホノブルボンは、耳かきの手を止めてライスシャワーの手を握った。

 

「大丈夫です、ライスさん。耳垢は順調に取れていますから……力を抜いて……息を吸って……吐いて……」

 

 ライスシャワーに静かに、ゆっくりと語り掛けるミホノブルボン。ライスシャワーは目を閉じたまま、その言葉に従い、体の緊張を解していく。

 

「ライスさん。体に力が入った場合には耳元で囁くのも効果的です……このように……」

 

 カリカリ……ガリガリ……

 

 ガリガリ……ガリガリ……

 

(はう……はうう……ッくすぐったいよぉ)

 

 声量が落とされ、囁かれるミホノブルボンの声にライスシャワーの体から力が抜けていき……そして、一息に耳垢が剥がされた。

 

「一番大きい耳垢が取れました。後は特に取る必要もなさそうですし、簡単に粉を取っていきます。カリカリカリ……カリカリカリ……」

 

 耳垢を捨てた後、周囲にあった粉を全て掃除していき、そうしてミホノブルボンが耳かきをベッドの上に置いたのを見て、ライスシャワーはこれで耳かきが終わったのだと感じた。

 

「では、ローションによる保湿処置を行います。温めにしていますが、もし冷たかったら言ってください」

 

 耳かきが終わったと思っているライスシャワーの耳の中に今度は綿棒が差し込まれた。耳かきで少し荒れている耳の中に温めにローションが塗りこまれ、火照りを優しく覆っていく。

 

「はぅ……これ、ライス知らなかった……ローションって、こんなに気持ち良いんだ……」

 

「はい、耳かきや綿棒で擦られた耳の中は皮膚が荒れますので、ローションを塗るのが効果的です。ライスさんも、次回は試してみると良いと思います」

 

「うん……ライス、頑張る」

 

 次のトレーナーへの耳かきを思い浮かべ、ライスシャワーは決心を固める。そうしているうちにローションが塗り終わり、綿棒が引き抜かれた。ローションの余韻に浸り、ライスシャワーがホッと一息をついていると。

 

「では、息の吹きかけを行います。ふ~……ふ~……」

 

「ひゃうっ!?」

 

 油断したところでの息の吹きかけ。人間よりも敏感なウマ娘の耳に取ってそれは大きな刺激であり、ライスシャワーは大きな声を上げて驚いた。

 

「これで耳かきの基本的な流れはお終いです。後は人間の耳の場合にはウマ娘の耳とは違うローションを使ったケアや、耳かきの前に耳ツボマッサージを行うなどもありますので、ライスさんのトレーナーの耳の状態をみて、その辺りが必要かどうか判断すると良いと思われます」

 

「う……うん……そうする……」

 

 片耳の耳かきだけでかなりの体力を消費したライスシャワー。そして、ミホノブルボンが反対側の耳を摘まんだ事で、その小さい体が一瞬ビクッと震えた。

 

「それでは、反対側の耳の掃除を行います。ライスさんの体の力も良い感じに抜けていますので、先程よりもスムーズに終わる事が予想されます」

 

「が……頑張る……」

 

 ミホノブルボンの言葉にライスシャワーは、この気持ち良さに堪え切れる自信はまったく湧いてこなかった。

 

 

 

 数分後、もう片方の耳かきも終わったライスシャワーは息も絶え絶えとなっていた。勿論ミホノブルボンの耳かきは十二分に気持ち良いものであった。だが、普段と比べてあまりに近い彼女との物理的な距離と触れ合いが、耳というウマ娘にとってとても敏感な場所を弄られると言う行為そのものが。ライスシャワーにとって刺激が強すぎたのだ。

 

「どうでしたか? まだ未熟ですが、痛くせずに済んだと思いますが」

 

「うん……気持ち良かった……よぉ……」

 

「それは良かったです。それでは、次の耳掃除は大体2週間後を予定します」

 

「……ふぇ? また……するの?」

 

 ミホノブルボンの予想外の言葉にライスシャワーが聞き返す。

 

「はい。こう言ったものは回数をこなす事が重要です。ライスさんが今後もトレーナーさんと親密になるために耳かきをしたいのなら、継続して耳かきの経験を積むことが重要だと考えます」

 

「え……えぇと……」

 

「それに、私もライスさんとは親密になりたいと考えています。なので、ライスさんが良ければ、是非これからも耳かきをさせて頂ければと思います」

 

「ふえええ!?」

 

 更なるミホノブルボンの予想外の言葉にライスシャワーはあたふたと慌て……そしてなんとか落ち着いてから、深呼吸をし、ミホノブルボンの顔を見ながら答える。

 

「あの……ブルボンさん。これからも宜しくお願い……します」

 

「了解しました。ライスさんの期待に応えられるよう、私も精進していきます」

 

 それから、ミホノブルボンによるライスシャワーへの耳かきは定期的に行われる事となった。これによって二人の距離は心理的にも物理的にも近くなっていったのは言うまでもない。




今回の作品と先週投稿したタキデジとでは地の文におけるウマ娘の呼び方を正式名称か略称かでわけていますが、皆さんはどちらの方が良いと思いますか?

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