やってもらう側の視点で書くと、カレンチャンの破壊力を味わえる……ように書けていれば幸いです。
「今日のカレンのウマスタは……これなら大丈夫そうだな」
トレーナー室で仕事をする傍ら、俺はカレンのウマスタを確認する。担当ウマ娘のネットへの書き込みはちゃんと確認しておかないと、今の世の中何が炎上に繋がるかわからないからな。
「さて、ウマスタのチェックも終わった事だし……あー、レースに関する資料はしばらくは大丈夫だったっけ」
この間のレースが終わった事でカレンはしばらくレースへの出場予定はない。次のレースへの特訓メニューも組んでるし……あー、そうか、ようやく時間が空いたのか。
「さて、どうしようかな……。折角だし、今日はゆっくり休養を挟みつつ、他のウマ娘の視察でも……」
そんな事を思っていると、不意に部屋の扉が叩かれる。誰だと思い扉を開けると、そこにはカレンの姿があったんだが……なんか、色々持ってるな。
「と言うわけでお兄ちゃん。耳かきしてあげるね」
「……すまん、突然すぎてわけがわからない」
前振りのない言葉に俺は困惑し、彼女の手に持っているものを見てみると……ああ、確かに耳かきやらなんやらがあるな。前に耳かきしてもらった時にもこんな風に持ってきてたっけ。
「ねー、良いでしょお兄ちゃん。前にやった時からけっこう時間が経ってるし、お兄ちゃんもそろそろ忙しさが一段落した頃じゃない? 時間あるよね」
「時間はまぁ……最近余裕ができてきたけど、耳かきしてもらうのは正直恥ずかしんだよ、10歳近く年齢が離れてる異性にしてもらうってのいうのはな……」
俺は既に成人していて、それに対してカレンは高等部ですらない中等部だ。今の年代においてこの年齢差は大きい。おまけに相手は異性で俺の担当バだ。恥ずかしくないわけがない。
「えー、でもでもー、お兄ちゃんは私の恥ずかしい秘密……いーっぱい知ってるでしょ? それなら少しぐらい、私がお兄ちゃんの恥ずかしいを知ってても良いと思うけどなー」
「んぐっ……いや、誤解を招くような言い方しないでくれ。レースで必要な情報だけだから」
上目遣いで言われて言葉に詰まるが、あくまで知っているのは彼女のレースで必要な情報だ。体重とか、そりゃ恥ずかしいだろうけど、これもレースで勝つために必要だから疚しい事なんてない。
「でーもー……お兄ちゃんも……気持ち良かったでしょ? ほら、カレンのお願いも聞けて、お兄ちゃんも気持ち良くなる。お兄ちゃんにとって何の損もないでしょ? winwinってやつだよね」
「いや……でもなぁ、俺もいい年した大人だからな。いくらなんでも年の差が……」
なおもカレンが上目遣いをしてくるが、ここで流されるわけにはいかない。担当バには絶対に負けない!
「もー。そんなに年の差が気になるって言うなら、皆に聞いてみようよ。それで皆が普通だよって言ったら、耳かきしても良いよね」
「いや、聞くって、いったい誰に……はぁ!?」
カレンが見せてきたスマホの画面には、笑顔を浮かべる自撮りカレン。そしてその膝の上で寝てる俺の顔があった。ちょ、ま、いつの間に!?
「これをウマスタに上げて皆に聞いたら、きーっと、皆答えてくれるよ」
「ちょ、いつのま……いや、待て! マジで止めろ! 炎上じゃ済まない!」
こんな画像が流れようものなら大炎上だ。俺のキャリアは勿論だが、それ以上にカレンが世間から叩かれる。それはマズい、本気でマズイ! 慌ててスマホを奪おうとするが、彼女は片手だけで俺を抑え込む。くそ、スプリンターだからって筋力トレーニングをし過ぎたか!
「それじゃぁ……耳かきさせてくれるよね? お兄ちゃん♪」
その言葉に俺はなんとか否定しようと、反論しようと言葉を探すが……結局思い浮かばず、頷く事しかできなかった。担当バには勝てなかったよ……。
「じゃぁお兄ちゃん、さっそくここに頭を乗せてね」
床に正座し、ポンポンと膝を叩くカレンの横に行って、彼女の膝に頭を乗せる。見た目からは想像ができないであろう、張りと弾力のあるしっかりとした脚だ。可愛いだけの柔い足では断じてない。だが、こんな形で彼女のトレーニングの成果を味わいたいと思った事はない。
「んーと、まずはウェットティッシュでお耳をゴシゴシ……お兄ちゃん、裏側とか、耳たぶとか、その辺りに汚れが溜まってるよ。指で触るとザラッてしてるもん」
おいおいおい。何をやってるんだこいつは。そんな汚い部分を素手で擦るんじゃない。
「いや、直接触らなくていいから。それに言わなくていいから」
俺が制止の言葉をかけるがカレンは聞く気がないのか、指を擦り付けてくる。すると、ポロポロと垢が零れ落ちていく感覚がしてきてとても恥ずかしい。
「じゃぁ、裏側はこの辺にしてと。外側を綿棒でゴーシゴシ、ゴーシゴシ♪ やっぱりお兄ちゃんのお耳って、掃除のやり甲斐があるんだよねー。楽しいなぁ」
声音的に確かに楽しそうなんだが……こんな事に楽しみを見出すより、もっと他の事に楽しみを見出してほしい。
「あんまりこんなのでやり甲斐なんて感じなくて良いんだぞ。俺の耳なんだし、俺が掃除したら……」
「ふーん、こんなに汚れてるのに、自分は掃除ができてるって言い張るのー?」
そう言ってカレンが俺の目の前に綿棒を持ってくる。本来なら白色の綿棒は、俺の耳垢で汚れて黄色く染まっている。改めて目の前で見せられると、耳掃除がちゃんとできてなかったと言うのをイヤでも思い知らされる。
「こ、これからちゃんとやるから……」
「お兄ちゃん、そ・れ・は。前に耳掃除した時に言って欲しかったかなー?」
ぐぅっ……確かに、前に耳かきしてもらった後にちゃんと耳かきをしてたらこんな事にはならなかったか……。
「それじゃぁ、お外の掃除はこの辺りにしてあげるね。さー、中をしていくよー」
そう言って綿棒を下げたカレンは耳の中を覗いてきた。うわ、それだけ近いと吐息と気配が近づぎて、こっちが恥ずかしい。
「カリカリカリ……カリカリカリ……お兄ちゃんの耳垢は取り甲斐があって楽しいなぁ♪」
オノマトペを呟きながら耳かきを動かしていき、俺の耳垢を掃除していくカレン。耳垢が剥がされるたび、カレンの声が大きく聞こえるような、そんな気がしていく。そして、頭の中にカレンの声がしみ込んでいく。そんな錯覚すら覚えてしまう。でも、俺の耳かきを楽しいと評するのはどうかと思う。
「楽しそうなのはなによりだけど……そんなに楽しいなら友達とかにやったほうがいいんじゃないか? ウマ娘の耳なら人間より大きいんだし」
「もー、わかってないなー、お兄ちゃんは。お兄ちゃんの耳かきをするのが楽しんだから。言わせないでよ恥ずかしいなぁ」
どこかで聞いたような言い方をしながら俺の頬を指で突いてくるカレン。それが恥ずかしくて思わず顔が熱くなるのが自分でもわかった。
「それじゃぁ、掃除を続けていくねー。カリカリカリ……カリカリカリ……♪」
そんな俺に更にカレンが耳かきを続けてくる。ヤバイ、恥ずかしさを自覚してる中で更にこうして耳かきを続けられると、色々と意識してしまい、余計に恥ずかしくなる。
「おおお……カ、カレン……あんなり囁かれると……」
「えー? ダーメ、綺麗になったお兄ちゃんの耳が一番に聞くのは、カレンの声なんだから」
俺の嘆願はあっさりと否定され、そこからも念入りに耳かきをされていって……身悶えする俺は逃げることもできず、それでもなんとか耳かきは終わりを迎えた。
「ん、これで大体取れたよ。それじゃぁ次は、保湿ローションでケアしていくね」
耳かきが引き抜かれ、今度はねっとりとした液体が耳の中に塗られていく。擦られ、熱を帯びてる部分を塗り潰すように、ローションが耳の中に広がっていく。
「ヌリヌリ……ヌリヌリ……えへへ、冷たくて気持ち良いでしょ?」
「ん、気持ち良い……のは良いけど、前は梵天してなかったっけ?」
俺が尋ねると、カレンがあっちゃー。と言わんばかりの表情を浮かべた。
「……あ、いっけなーい。うっかりしちゃった、ごめんね」
テヘペロと言わんばかりに自分の頭を小突くカレン。いかん、可愛いなぁ。
「次はちゃんと忘れないようにするからね。と言うわけで……お約束の、ふ~……ふ~……」
「ふぉぉ……」
ローションで濡れてる耳の中に息を吹きかけられると、普通よりもゾクゾクが増して変な声が出る。それをカレンに聞かれるのが更に恥ずかしい。
「お兄ちゃんのこうした可愛い姿、知ってるのがカレンだけって考えると楽しいなぁ♪」
「……俺は恥ずかしくてそれどころじゃないよ……」
「えへへー、照れちゃうお兄ちゃんも可愛い♪ それじゃぁ反対側、やっていこうね」
そう言われて俺は体を起こそうとするが……上げた瞬間にカレンの手が下に入ってきたと思うと、そのままコロンと転がされ、反対側を向いていた。視界いっぱいに広がるカレンの腹に、俺は焦る。ヤバイヤバイヤバイぞこれは。本気でヤバイって。
「さぁお兄ちゃん、こっち側の耳かき、していこうね」
「いや、この体勢だとカレンの腹を見ちゃうから、反対方向で……」
体を起こして逃げようとするが、頭を抑えられて動けない。
「ダーメ。我儘言わないで、このまま耳かきしちゃっていくよー」
逃げようとする俺に無慈悲な宣告が下されてしまった。カレン、本気でヤバイって。マジでやばいから!
「ウェットティッシュで、外側裏側をゴソゴソゴソ♪ あー、ティッシュが黄色くなっちゃった。こっちも掃除できてないねー、お兄ちゃん」
目の前に汚れたウェットティッシュを見せつけられ、思わず目を背ける。羞恥責めか? 羞恥責めなのか? 俺はこんな年下の異性に羞恥責めされてるのか?
「だから、あんまり言わないでくれって……次からは注意するから」
「次からは~~……は、やらない人の常套句だよ?」
「ぐぬぬ……」
身に覚えがありすぎてなにも反論できない。注意する奴はちゃんと一回目から注意するもんな。
「穴の中をカリカリカリ……カリカリカリ……小さいの~♪ 大きいの~♪ ぜ~んぶカリカリ取っちゃうねー♪」
「ふお……おおお……」
羞恥心が刺激され続ける中での耳かきは、最初よりも恥ずかしくて身悶えしてしまい。
「耳垢が取れたら、梵天でコシュコシュー♪ シュッコシュコ♪ 細かい汚れも絡めとっちゃえー」
「ぬああ……やっぱり梵天は梵天で、ゾクゾクするな……」
背筋を走るゾクゾクとした快感に、俺は思わず体が反り返る。逃げたい、この快感から逃げたいのに逃げられない。
「最後にローションでぬるぬる~♪ ねちょねちょ~♪」
「ぬぐぅ……耳の中がぬちゃぬちゃになると……これはこれで気持ち良い……」
これはこれで悪くないんだが、それでも梵天の気持ち良さを塗り潰されたことで少し落ち着ける。だが、この後がな……。
「ふ~……ふ~……はーい、これで耳かきお終いだよ、お兄ちゃん」
「ふぅ……ふぅ……お、終わった……じゃ、じゃぁ、俺はこれで……」
よし、耐えた。耐えたぞ! 来るとわかっていれば耐えられる。さぁ、今のうちに逃げ……ぬあああああっ!
「あれれ~、どこに行くのかなー? 耳かきは終わったけど、お約束はまだだよ、お兄ちゃん♪」
「いや、ちょ……ま、待ってくれカレン。も、もう流石に限界が……」
ヤバイヤバイ! ここで寝たらもうヤバイ! 脳みそが壊される!
「限界なの? それじゃぁ、なおさらお昼寝して、体力回復しないといけないよねー」
そう言ってカレンは笑顔のまま、俺を自分の腹に押し付けてきた。ムグッ! か、顔が、顔が柔らかい物に! それに、良い匂い、良い匂いがあああ!
「ムグッ……! カ、カレンッ! この体勢はまずい! マズいから!」
「それじゃぁ、もう逃げないかな? 逃げるつもりならずーっと押し付けちゃうよ」
「わかった、わかったから……!」
このままじゃ確実に脳みそが破壊され、カレンに何をするかわからない。必死に抵抗していると、なんとかカレンが手を離してくれたので慌てて腹から顔を遠ざけ……そして、もう全てを諦めて目を閉じた。このまま無心で寝るしかない。
「お兄ちゃん♪ 今日はお兄ちゃんが寝るまで……カレンがずっと囁いてあげるからね♪ カレンの生ASMRをタップリ堪能してね♪」
無心になろうとしたところでなぜ追い打ちをかけるんだ。耳元で囁かれたカレンの声に俺は再び逃げようとして抑え込まれる。やめ……マジで止めてくれ……!
「大好きだよ、お兄ちゃん♪ 大好き……大好き……大好きなお兄ちゃん、お昼寝しよう♪」
「やめ……マジで止めてくれ……脳みそがおかしくなる……!」
「おかしくなってもいいよ♪ カレンがずっと一緒だから。一緒にお昼寝しよう♪ 大好き、大好き、大好きなお兄ちゃん♪」
「ぬあああああっ」
暫くの間カレンの囁きを味わわされ、本気で限界を迎えた事を告げると、カレンはようやく囁く事を止めてくれた。そして、暴れた事とかで疲れたのか、俺はやがて睡魔に襲われ、そのまま眠りに落ちていった……。
「……大好きなお兄ちゃん、カレンはずーっと、お兄ちゃんの愛バだからね♪」
そんな嬉しいような、怖いような……そんな声が、聞こえた気がした。