ウマ娘耳かき小説   作:雨宮季弥99

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マルゼンスキーで耳かき、男トレーナー視点で書きました。

リアルに考えたらトレーナーの時点でマルゼンスキーより年上になるはずなんですが、それでも彼女から君付で呼ばれる事に抵抗がなくなるぐらい親しくしてるなら、彼女の膝枕で寝れるのは気持ち良いのではないかと思う今日この頃です。


マルゼンスキー(地の文あり、男トレーナー視点)

 ふー……疲れたなぁ……。

 

 トレーナー室でスケジュールを組みつつ、俺は自分の肩を叩いている。原因は先日のレースの結果だ。

 

 俺の担当ウマ娘であるマルゼンスキーはその圧倒的な実力から、レースが不成立になる事がしばしばあった。それゆえに彼女は自分の実力を発揮できず、その足をくすぶらせる日が続いていた。

 

 なにせ、彼女が本気を出したらG1レースですら下手すれば不成立になりかねないのだ。だから、あれやこれやと調整しながらやっていって……彼女のモチベを維持するのが本当に大変だった。

 

 だからこそ、先日のURAファイナルは絶好の機会であった。あそこでマルゼンスキーは全力で走り……そして勝利した。そして後のインタビューではどのウマ娘も打倒マルゼンスキーを掲げると宣言したのだ。

 

 これで、マルゼンスキーは今後のレースでもセーブせずに走る事ができるだろう。それはいい、それは良いんだけど……。

 

「……突然忙しくなりすぎじゃないですかね……?」

 

 机に積まれた勝利の山に全ての気力が吸われていく。これまであまりレースに出場してなかったマルゼンスキーだが、URAファイナルで優勝した影響で一気にやる事が増えて……正直俺のキャパシティを超えている。ガチで超えてる。

 

「はぁ……眠……疲れ……た」

 

 キャパシティを超える仕事の量に俺の瞼が少しずつ落ちていき……そのまま意識を手放していた。

 

 

 

 ふと体が揺さぶられた事で意識が目覚める。あれ、俺は机に座ってたはず……頭の横に柔らかい何か……!?

 

「んん……え? ちょ、何これ? マルゼン?」

 

 目覚めた俺が頭を動かすと、そこには俺を見下ろすマルゼンスキーの姿があった。この立ち位置……膝枕されてるのか。

 

「おはようトレーナー君。疲れてるのはわかるけど、机で寝るのは体に悪いわよ。もう全身バッキバキになっちゃうんだから」

 

「そ、それはすまない……けど、なんで膝枕?」

 

 メッと怒られた俺は萎縮してしまったが、なんで膝枕されているんだ?

 

「あら、私の膝枕は嫌かしら? トレーナー君が鍛えた足はお嫌い?」

 

「い、いや、嫌とかそう言うのじゃなくて! と、ともかくどくから……って、あれ?」

 

 体を起こそうとしたら体を抑えられ、動けなくなってしまった。な、なんで止められるんだ。

 

「まだ動いちゃだめよ。トレーナー君ったら耳の中が汚れてるんだもん、ちょうどいいから掃除しちゃいましょう」

 

「え? い、いや、それは流石に……」

 

「ほらほら、恥ずかしがらなくても良いじゃないの。前に一回やってるでしょ? 今更恥ずかしがっても仕方ないわよ」

 

 そう言われるとグウの音も出ない……仕方ないので大人しくしていると、耳を濡れたティッシュで拭かれ始めた。んー……あんま好きじゃないなこれ。

 

「んー、中が汚れてるから外も汚れてると思ったけど、そうでもないわねー。耳垢が溜まりやすいのかしら?」

 

「うお……冷たいな、そう言うので擦られるのは」

 

「あら、嫌だったかしら? メンゴメンゴ、次は温かいタオルで綺麗にしてあげるわね」

 

 マルゼンスキーに文句があるわけではないけど、好きじゃない物は先に言っておかないとな。

 

「それじゃぁ、耳の中の掃除をしていくわね。綿棒でゴシゴシゴシ……ザリザリザリ♪」

 

 ティッシュで冷たくなっている中で綿棒が耳の中に入ってくる感触が嫌にハッキリと伝わってくる。だが、程なくして綿棒が引き抜かれて横に捨てられるのが横目に映った。そして、そのままさして間を置かずに、耳かきが差し込まれる。

 

「ふんふんふん♪ カリカリカリ、カーリカリ♪」

 

 楽しげに囁くマルゼンスキーのリズムに乗ったオノマトペ。それを聞くのはとても楽しく、程よい痒みを伴った耳かきによって耳垢が取れるのも快感だ。ああ、気持ち良いなぁ……。

 

「今回は簡単に取れたわね。じゃぁ次のをやっていくわ。カリカリ……カリカリ?」

 

 なんて思っていたら、耳かきが引っかかり、マルゼンスキーも首を傾げた。どうやら前と同じく固いのに引っ掛かったようだ。

 

「ガリガリガリ……ガリガリ……んー、上からやっても取れそうにない……横……下ね」

 

 耳かきが引かれては位置をずらされて、耳垢があっちこっちから引っ掻かれていき、少しずつ剥がされていく。いや、これは痒い……マジで痒いな。

 

「はい、これもちゃんと取れたわね。ん? もしかしてそんなに痒かったかしら?」

 

 痒みで悶えてる間になんとか耳垢は剥がれたようだが、あっちこっちから中途半端に剥がされていったせいか、痒い。滅茶苦茶痒い。

 

「はぁ……か、痒かった……」

 

 それでも耳垢が剥がれたのでなんとか我慢できる範囲での痒みで済んでよかった。もしこれ以上掻かれていたら、我慢できなかったと思う。

 

「メンゴメンゴ、ちょっち集中しちゃってたわ。次は注意するわね」

 

 悪びれてるのかそうじゃないのか……ともかく耳垢を剥がした場所をカリカリと耳かきで掻かれてなんとか痒みが収まったので一心地付いていると、耳かきが完全に引き抜かれた。

 

「綿棒でザーリザリ、ゾリゾリゾリ……んー、大体の汚れは取れたかしら。それじゃぁ……今回は保湿用ローションもぬーりぬりっと♪」

 

 ローションが耳の中で塗られると、外側をウェットティッシュで擦られるのとは違い、熱を帯びた部分が冷やされるのを感じるので、これは心地良い。

 

「ふ~……ふ~……」

 

「ふひゃい!?」

 

 その冷たさを味わい、油断していた俺の耳の中に不意にマルゼンスキーが息を吹きかけてきた。突然の事に、思わず自分でも変だと思うような声が出てしまった。

 

「もう、驚きすぎよぉ、可愛い反応しちゃって♪ さぁ、それじゃぁ反対側もしていくから、反対向いて頂戴ね」

 

「いや、あれはびっくりするって……はぁ……」

 

 呆れながらも俺は体を動かして反対側の耳を上に向ける。まぁ、楽しみなのは本当だから良いんだけど。

 

「外側をウェットティッシュでゴーシゴシ、ゴーシゴシ」

 

「うーん……冷たい」

 

 むぅ、やっぱりこう、この冷たいのはそんな好きになれないなぁ。贅沢なのはわかってるけど、温かいタオルの方でやってほしい。

 

「先に綿棒でガザガザガサっと。うんうん、細かい汚れを取ってからの方が、本命の耳垢が見えやすくなるわね」

 

「そこまで見えにくいのか……?」

 

 そんなに言われると正直不安になる。俺、もしかして何か病気になってるとかじゃないよな? 粉が多いだけだよな?

 

「んー……これも固いわねぇ……反対側のよりはまだマシだけど……掻くところに注意しないと……」

 

「ぬお……うぉぉ……早く取ってくれぇぇぇ」

 

 耳垢を掻き取ろうとする耳かきの動きが、剥がれかける耳垢が、痒みをどんどん増して行って、できるなら自分で指を突っ込んでしまいたくなる。でも、それだと届かない場所だから、なんとか我慢……我慢しないと……!

 

「それじゃぁ、残った汚れを綿棒で……ザーリザリ、クールクル。綺麗になっていくのは、見ていると楽しいわ♪」

 

 ふぅ……もう少しで耳かきも終わるな。嬉しいような、寂しいような……なんとも言葉にしがたい気持ちだ。

 

「最後にローションをぬりぬりぬり。ぬりぬりぬり。全部塗ったら息を……ふ~……」

 

「ひょぉぉ……ひゃぁぁぁ……」

 

 ちょ……ローションを塗ってからの間髪入れずの息の吹きかけは卑怯だろ……!

 

「さてと……それじゃぁ耳かきはこれでお終いね。お疲れ様」

 

 耳かきが終わって肩をぽんぽんと叩かれ……普通ならそのままどくべきなんだが……俺は大きく伸びをして……そのまま目を閉じた。

 

「トレーナー君? もう終わったわよ?」

 

 きょとんとしたマルゼンスキーの言葉と共に、体が揺さぶられる。自分から言うのが恥ずかしくてついそのまま寝入ろうとしたが……うん、言わないとダメだよな。

 

「……このまま、寝てもいいか?」

 

 横目でマルゼンスキーの様子を見ながら頼むと、彼女は嬉しそうに笑った。

 

「勿の論よトレーナー君。さ、ゆっくりお休みなさい」

 

 優しい彼女の声に安堵して改めて目を閉じると……眠気が襲ってきて……耳に彼女の心地よい子守歌も聞こえてきて……

 

「んん……母さん……」

 

 無意識にそんなことを呟きながら……俺は眠りに落ちていった。

 

 

 

 心地良い眠りから覚めた後、マルゼンスキーに耳を引っ張られながら怒られる事になるとは、夢にも思う事もなかった。

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