ウマ娘ってゴルマク、テイルドは作品数が多いですが、それ以外のホースの暗黒面ネタってそんなに見ない気がするんですよね。キンカワとか、バクキタとか。比較的多いタキスカですら500作品もないし。
なので、これからも史実親子、史実祖父孫ネタは書いていこうと思う今日この頃です。
トレセン学園。ウマ娘からトレーナー、各種職員など、数多くの人々が過ごしているこの学園では日夜トラブルが絶えることはない。そして、今日も新しいトラブルが発生していた。
「ひえええ……やっちまったですわー」
自分の手の中にあるドアノブを見ながらカワカミプリンセスが悲鳴を上げる。ウマ娘としても突出した腕力を持つ彼女はこうしてよく備品を破壊してしまうのだ。そして。
「カ~ワ~カ~ミ~! またやったのか貴様は!」
「ひー! わざとじゃないんですわ!」
エアグルーヴによって怒られるのも学園の日常風景の一つである。だが、今回は普段の光景にも変化があった。
「……はぁ、私がいくら言っても聞く気がないようだな……わかった、それなら今回は適任なやつに任せよう」
深いため息をついたのちにエアグルーヴはカワカミプリンセスを解放した。解放された彼女は深く理由を考えず、取り敢えず普段通りに過ごしたのちに寮の部屋に戻ると、そこには先客が彼女を待ち構えていた。
「……あれ? キ、キングさんがなんでここに!?」
カワカミの部屋に居たのはキングヘイローであった。同室でないはずの彼女の存在にカワカミプリンセスは慌てふためく。
「……エアグルーヴさんから聞いたわよ。貴女、またやらかしたんですってね。このキングを慕う身でありながら、どういうていたらくなの!?」
「ひー! ご、ごめんなさいですわ!」
一歩踏み込んで怒鳴るキングヘイローにカワカミプリンセスはひたすら平服する。
「……はぁ、これまでも何回も怒られたのにこれとは……どうやら貴女の耳は穴がないようね。耳垢で詰まってるんじゃないのかしら」
「そ、そんな事は……」
キングヘイローの言葉に言葉を詰まらせるカワカミプリンセス。そして、そんな彼女の様子を見たキングヘイローは大きなため息を付きながら、カワカミプリンセスのベッドに腰掛けた。
「ほら、座り込んでないで早く来なさい」
「……はぇ?」
突然の言葉にカワカミプリンセスの頭が理解できず、首を傾げる。そんな彼女を見たキングヘイローが再びため息を吐いた。
「貴女の耳が詰まっているなら、掃除するべきでしょう? ほら、さっさとこっちに来なさいったら」
「ははは、ハイですわ!」
キングヘイローに促され、カワカミプリンセスは彼女の膝の上に頭を置く。真正面からキングヘイローの顔を見上げる彼女は、じっと合う視線に思わず顔を赤らめる。
「それでは始めるわよ。ん……ちょっと、カワカミさん。本当に耳が汚れてるじゃないの。穴の中も……汚いわね」
ジッとカワカミプリンセスの耳を観察していたキングヘイローが眉間に皺を寄せる。
「ヒィッ! ごごご、ごめんなさいキングさん!」
その様子を見たカワカミプリンセスが必死に謝るが、キングヘイローは再びため息を吐くと、カワカミプリンセスの片耳を両手で包み込んだ。
「まず、マッサージで血行を促進させていくわ。こう、ツボをギュッギュッとして……」
片耳をキングヘイローの指が順番に刺激していく。全体を包み、ツボをギュッギュッと力強く押して、血流を促進させていく。血流による体温の上昇と、キングヘイローから伝わる熱によって、カワカミプリンセスの耳が熱を帯びていく。
「ああ……キングさん……気持ち良いですわぁぁ」
「そう、痛くないのは良かったわね。モミモミ……グッグッ……」
繊細な部分であるウマ娘の耳。当然ウマ娘のほうがその扱いには慣れている。カワカミプリンセスの柔らかい耳を、キングヘイローの指が優しく、そして確実にツボを刺激する力加減で刺激していく。
「キ……キングさんの指が……私の耳に絡みついて……」
「嫌らしい言い方はやめなさい。単なるマッサージじゃないの」
そう言ってマッサージを続けるキングヘイロー。憧れのウマ娘にマッサージを受けることで、カワカミプリンセスの体はどんどんと熱を増していき、徐々に汗がにじみ出てきた。
「……思ったよりも早く汗をかいてきたわね。それじゃぁ、このまま耳かきをしていくわよ」
マッサージをしていた耳から手を離し、耳かきを手にしたキングヘイローが耳を覗き込む。顔が近づいた事でキングヘイローの視線を、吐息を強く感じるようになった事に対してカワカミプリンセスの鼓動が早くなる。
「キ、キングさん……近すぎますですわ……」
「近づかなければ見えないでしょ。おとなしくしてなさい」
カワカミプリンセスの耳に集中するキングヘイロー。カリカリと耳の外側を耳かきで掻いていき、薄く溜まっている耳垢や埃を搔き集めていく。
「カリカリ……カキカキ……外側はそんなに汚れてない……と言いたいけど、ダメね。そこそこ荒れてる部分もあるし、ちゃんと普段から手入れをしてない証拠ね」
「う……は、恥ずかしいですわ……」
繊細な部分の粗を指摘され、更に顔が赤くなるカワカミプリンセス。そうしている間にも耳かきは進み、程なく外側の掃除は終わり、集められた耳垢や埃は全てティッシュの上に捨てられる。
「さぁ、それじゃぁ耳の中を掃除していくから……痒かったりしたらかならず言葉で言いなさい。変に動いたら痛い思いをするわよ」
「は、ハイ!」
念入りにくぎを刺され、カワカミプリンセスは体を固くする。それを見たキングヘイローは軽くため息を吐きながら、彼女の手を握った。
「……そんなに緊張する必要はないわ。このキングが耳かきぐらいできないはずないじゃないの。貴女は私を信じて……身を任せていればいいのよ」
「ひゃ……ひゃぁい♡」
ギュッと握られるカワカミプリンセスの手、優しく語り掛けるキングヘイローの声。それらはまるで親に優しく声を掛けられるかのような安心感をカワカミプリンセスに与えた。
「さて、耳の中は……本当に汚いじゃないの。これはしっかりと掃除しないと駄目ね」
厳しい事を言いながらも、キングヘイローは耳かきを差し込み、耳垢を掻き出していく。
「カリカリカリ……カリカリカリ……」
キングヘイローの口から囁かれるオノマトペ。敏感なウマ娘の耳は、耳かきによって耳垢が取り除かれるごとに大きく感じていく。徐々に大きくなるキングヘイローのオノマトペを心地良く堪能するカワカミプリンセス。
「はぁ……キングさん……最高の気分ですわぁ……」
「はぁ……本当なら、ご褒美にやってあげたかったのよ? まったく……怒られたのが原因でやりたくなんてなかったんだから」
「う……それは……申し訳ありませんわぁ……」
私服の気分を味わうカワカミプリンセスにキングヘイローの苦言が刺さる。そうしている間にも耳かきは進み、粗方の耳垢を掻き出した。
「さ、これで大体取れたんだけど……本当に多いわね」
ティッシュの上に捨てられた耳垢を見ながらキングは思わずため息を吐いた。そこには小さい物、大きい物、合わせて10ぐらいの耳垢が捨てられていた。
「……今後、耳のお手入れは念入りにしますですわ」
キングヘイローのため息にカワカミプリンセスは目を瞑って反省の意を示す。
「……まぁ、いいわ。さぁ、反対側をしていくから……おとなしくしているのよ」
「わかりましたわ!」
キングにそう言われて元気に返事をするカワカミプリンセス。それを喜ぶべきか、反省の素振りが見えない事を嘆くべきか、少し悩むキングヘイローだが、そんな気持ちを押し殺して、耳かきを手にするのだった。
しばらくしてもう片方の耳かきを終え、達成感にホッと息を吐くキングヘイロー。そして下を向き、カワカミプリンセスの頬を撫でた。
「まったく……このキングの膝で寝るなんて、心臓の強さは流石よね」
彼女の視線の先では穏やかに寝息を立てるカワカミプリンセスの顔があった。耳かきの途中で眠気に襲われた彼女は、耳かきが終わるころ合いには眠りに落ちていたのだ。
「耳かきが終わるまで耐えたのは褒めてあげるけど……まったく、こんな満足そうに眠るなんて、そんなに気持ち良かったのかしら」
そんな呟きをしつつも笑みを浮かべるキングヘイロー。そして、カワカミプリンセスの頭を下ろし、部屋から出ようとした時に、カワカミプリンセスの手がしっかりと彼女の服を握っていることに気づいた。
「ちょ……この……離しなさい……!」
なんとか手をこじ開けようとするも、万力のようにしっかりと服を掴まれ、まったく外せそうにない。暫くの間奮闘したキングヘイローだが、やがて諦め、大きなため息を吐きながら手を離した。
「はぁ……もういいわ。キングには寛大な心も必要。今日は……このまま付き合ってあげるわよ」
そう呟いたキングヘイローはカワカミプリンセスの頭を撫でる。そうすると、カワカミプリンセスが寝返りを打ち、キングヘイローの腹部に顔を埋めた。
「んん……お父様ぁ……♡ 好きですわ……お父様ぁ……♡」
キングヘイローの腹に顔を埋めながらも聞こえてくる寝言。それにキングヘイローは少し耳を後ろに向け、カワカミプリンセスの耳を引っ張った。
「誰がお父様、なのよ。私に貴女みたいな年の子をなんているわけないじゃない……まぁ……でも……」
耳を引っ張っていた手を離し、頭を撫でるキングヘイロー。
「……貴女が私の子供だったとしても……悪い気分はしないのよね。なぜかしら」
そう小さく呟き、カワカミプリンセスを見つめるキングヘイロー。それは親が子に向けるような慈愛に満ちた眼差しをしていた。
「カ~ワ~カ~ミ~!」
「ひいいい、ごめんなさいですわー!」
壁をぶち抜いた事でエアグルーヴに怒られるカワカミプリンセス。あの耳かきの日以降、彼女の物損はある程度は減った。減ったのだが、それでも時折やらかしてしまい、こうして怒られてしまっている。
「……はぁ……手間のかかる子ね、本当」
その様子を偶然見かけたキングヘイローは、ため息を吐くのだった。