ウマ娘耳かき小説   作:雨宮季弥99

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予告通り、タマモクロスで耳かき、女トレーナー視点での投稿となります。

女トレーナー側からのタマちゃん呼びと、それを許すタマモクロスの図って良くありません? 私は思います。


タマモクロス(地の文あり、女トレーナー視点)

「んー……どうしよっかなー……」

 

 トレーナー室で一人、私は盛大にため息を吐きながら仕事をしていた。理由は、私の担当ウマ娘、タマモクロス事タマちゃんの事である。

 

 彼女は先日、3つのG1レースにて一着になるという快挙を成し遂げた。そして、この勢いに乗って有マ記念も……と言うのが私の理想なんだけど、仕事の量がもはや私のキャパシティを超えそうである。正直に言えばタマちゃんの練習メニューとかを考える余裕すらない。

 

「……いや、そもそもタマちゃんだって疲れてるんだから、これ以上の特訓よりもまずは休憩させないと……」

 

 三つのG1レースは全て中距離走だったけど、有マは長距離だ。本来なら専用の特訓メニューを組むべきなんだけど、そもそも彼女に疲労が溜まったままでは特訓どころじゃない。となると、体が訛らない程度のトレーニングと勉強だけにして、それ以外は休養に充てるほうがいいだろう。うん、それで行こう。取り敢えず一週間は休みを取らせることにしよう。

 

 そんな事を考えていると、部屋の扉が叩かれて、タマちゃんが中に入ってきた。

 

「トレーナー、邪魔するでー」

 

「邪魔するなら帰ってー」

 

「ほんなら帰るわ、邪魔したな。…ってコラ~!」

 

 部屋に入ってきたタマちゃんにお約束のやり取りをする……いや、私がやりたいって言い出したわけじゃないんだけどね。なんかタマちゃんがやってくれって言い始めたからやってるだけなんだけど、正直メンドウくさい。

 

「……ねぇ、タマちゃん。これ毎回やるの面倒なんだけど」

 

「何言うてんねん。お笑いにお約束はつきもんや。お約束をせな大阪のお笑いには通じる事ができへんで」

 

「……私は別にそう言うの興味ないんだけど……」

 

私の言葉にタマちゃんは盛大にため息を吐いてきた。んー……関西人のノリってよくわからないなぁ。

 

「ちゃうちゃう、そう言う話をしにきたんとちゃうわ。トレーナー、ちょっとしばらく休養期間貰えへんのか? 流石にウチも疲れたで」

 

 あー……うん、タマちゃんもそうなってるよねぇ。休みを取ろう。って考えておいて良かったー。

 

「うん、大丈夫大丈夫。ちゃんと休養期間を入れる事前提で考えてるから。今日から一週間は最低限のトレーニング以外は完全な休養期間にするつもりだよ」

 

「ホンマか。いやー、そりゃ良かったわぁ。ほんじゃぁ、今日はどう過ごさせてもらおうかな」

 

 私の言葉にタマちゃんは満面の笑みを浮かべる。やれやれ、危ない危ない、休養を取るって考えておいて良かった……あー……なんか、気が抜けちゃったなぁ……あー、耳の中の違和感をタマちゃんにお願いしたいけど、また茶化されるのも嫌だしなぁ……。

 

「トレーナー、どうしたんや? なんか言いたそうにしとるやん」

 

「あー……うん、良いよ。大丈夫だよタマちゃん」

 

私を見上げてくるタマちゃんにを誤魔化して視線を逸らす。うん、やっぱりなんでもタマちゃんに頼っちゃだめだよね。

 

「水臭い事言わんでええやんかトレーナー。ウチらは人バ一体、二人三脚や。なんか言いたいことあるなら遠慮なく言ってくれるほうが嬉しいで」

 

 うう……罪悪感が……! 私の手を握って見上げてくるタマちゃんの純粋な視線に罪悪感が……! こ、これは仕方ない、言わなきゃ罪悪感が凄いの!

 

「いや……ね、また耳の中が変な感じがしてね。耳かきを頼もうかと思ったけど……」

 

「なんや、また耳かきかいな……ははーん、前にウチにチビ達よりも子供っぽいって言われた事を気にしとるんか?」

 

 はぅ……ッ 図星を突かれて、私は視線を逸らしてしまう。

 

「かまへんかまへん。前はウチもちょっと言い過ぎたわ。ほら、お詫びにタダで耳かきしたるから、おとなしくしときーな」

 

 落ち込む私の背中を軽く叩かれて、視線を戻した私に笑顔を見せたタマちゃんは耳かきの準備を進めていく。

 

「ほら、こっちきーやトレーナー」

 

ポンポンと、笑顔で私を招くタマちゃん。それに誘われて私はベッドに寝そべってタマちゃんの膝枕に頭を置いた。

 

「んー、外側の汚れはっと……相変わらずやなぁ、綿棒で擦るとよー汚れが出てくるで」

 

 綿棒で耳の外側を擦られていると、タマちゃんがそんな事を言ってきている。んー、確かに捨てられた綿棒を見てみると、黄色く染まってるなぁ。

 

「ゴーシゴシ、ゴーシゴシ……ほい、粉掃除はこんなもんや」

 

「んー、外側はこんなものかな」

 

 でも、あっさりと終わっちゃうと正直物足りないなぁ。タマちゃんにお願いしてる立場でこんなの贅沢なんだけどね。

 

「トレーナー、んな物欲しそうにこっち見んでもマッサージが欲しいならそう言うてくれたらええんやで」

 

「あ、いや、そんなつもりじゃなかったんだけど……」

 

 その気持ちが伝わったのか、タマちゃんにあっさりと見抜かれてしまった。誤魔化そうとするけどタマちゃんは気にする様子もなく、私の耳を両手で包んでくれた。

 

「トレーナー業は書類との戦いやからなぁ……腰痛に効くんは、上のここ、後は疲れ目に効くとこと、ストレスに効くところやな」

 

 はぅぁぁ……タマちゃんの柔らかくて温かい手が耳を包み、あっちこっちを指で指圧してくれて……もう、これだけでも気持ち良い。

 

「どうやトレーナー。気持ちええか?」

 

「あー……タマチャンの手が気持ちいい……」

 

 ツボを押される事で耳の血流が促進されて、それが耳を熱く気持ち良くしてくれているんだけど、それ以上にタマちゃんの手に包まれてると言うのが気持ち良い。

 

「うりうり、嬉しそうやないかトレーナー。耳かきはともかく、耳のマッサージなら毎日やってもええんやで」

 

「はぁ~……いや、これは毎日頼んでも良いかも……」

 

 タマちゃんの手でギューッ、ギューッと耳のツボを押してもらえるなら毎日お願いしようかなぁ。いやまぁ、担当ウマ娘に毎日マッサージしてもらうのって問題あるんだと思うけど。

 

「じゃぁそろそろ耳かきしていくで。んー……トレーナーの耳ってほんまそんな汚れとらんなぁ。なんや、ちょうど痒い部分にピンポイントで耳垢が固まっとるんか?」

 

「どう……だろう。自分じゃよくわからないよ」

 

 自分で耳の中を見れたら楽なんだけどねぇ。それで自分で見て自分で掃除できるならタマちゃんにお願いする必要もないんだけどねぇ……。なんて思っていると、耳かきが耳の奥の方をコツコツと突いてきた。

 

「じゃぁこれを取ってみるで。ガリガリガリ……ガリッ……んー、固いけど、このまま取れそうやな」

 

「はあああああ……痒い……めちゃくちゃ痒い!」

 

 耳垢を掻かれれば掻かれる程に痒みが増して、早く……早く取ってえええええ! 早く取ってくれないと、自分で指を突っ込んじゃうよー!

 

「よーし、さっさと取ったるからな。ちょい痛いかもしれんけど我慢するんやで。後、動くんやないで、事故っても知らんからな」

 

 手をバンバンとベッドに叩いていた事で事態がわかったのか、タマちゃんは私の頭をしっかりと抑え込んできて、耳垢を掻く力を強めてきて……あれ? あー……あっさりと取れた。ベリッて音がしたと思ったらそのまま取れちゃった。

 

「よっしゃ、このまま落とさんように慎重に剥がして……よし、取れたでトレーナー。ほれ、後はもうちょいカリカリと掻いて……痒みは取れたんか?」

 

「はぁ……はぁ~……スッキリした……」

 

 はふぅ……痒かったぁ……そのまま耳垢のあった場所をカリカリ、カリカリと耳垢で更に掻かれる事で残っていた痒みも収まって……あー……良かったぁ。

 

 おっと、耳かきが引き抜かれたと思ったら梵天が入ってきて、クルクルー、ゴソゴソー。と耳の中を掃除してくれる。あー……気持ち良いなぁ。

 

「サリサリサリ……ボソボソボソ……どうや? 細かい汚れも取れたし、これでスッキリしたやろ」

 

「はぁ~……ああ、スッキリできた……痒かったから本気で助かったぁ……」

 

 ここ最近で一番の満足感と解放感に心からのスッキリを味わっていると……あれ? なんかタマちゃんの息遣いが聞こえてくるような……。

 

「ふ~……ふ~……」

 

「おひょうい!?」

 

 突然耳の中に息を吹きかけられて、思わず体がビクッとして、ベッドから転げ落ちそうになった。そんな私が面白かったのか、タマちゃんが愉快そうに笑う。

 

「ちょ……タマちゃん! いきなりなにするの!」

 

「アッハッハッ……悪い悪い……でも、耳かきに息の吹きかけはお約束やで。ほら、機嫌治してえな」

 

 思わずタマちゃんを横目で睨むと、不意にタマちゃんの手が私の体の下に潜ってきたと思うと、不意に体が持ち上げられ、くるりんと引っくりかえされて、タマちゃんのお腹を凝視する形になっていた。

 

「ちょ!? タ、タマちゃん?」

 

「ほれ、前も両方とも頼んできたんや、頼まれる前にちゃんとやったるからな」

 

 優しい声で耳元で囁かれ、頭を優しくポンポンと叩かれて……あー……安心しちゃう。安心して、タマちゃんに全部任せてしまう。

 

「こっちもツボ押しからしたらんとな。ほれ、ギュッギュッギューッ」

 

 安心している私の耳のツボを、さっきと同じようにギューッと指圧してくれて、タマちゃんの温かさに安らぎを感じる。

 

「あー……タマちゃんの指って、触れてると気持ち良くて安心しちゃうなぁ。小さくてプニプニして、優しくて……」

 

「なんや、そんな褒めてもなんもでーへんで」

 

 蕩ける脳みそのままに喋ってると、タマちゃんが照れたように返してきた。

 

「耳の外側の汚れもサリサーリ……ゾリゾーリ……まぁ、粉だけやから早いもんなんやけどな」

 

「んー……まぁ、粉だけだとそりゃ早いよね」

 

 綿棒で耳の外側を丹念に隅々まで擦られていく。まぁ、耳の中と比べてこなしかないからすぐに終わっちゃうんだけど。

 

「耳ん中は……あー、こっちも別段汚れとらんな。トレーナー、やっぱ特に耳垢が溜まるタイプじゃなさそうやな」

 

「それなのにピンポイントで痒い所に溜まるって事なんだねぇ……はぁ……」

 

 なんだろなぁ……他の場所に固まってくれたらいいのに、なんでピンポイントで痒い部分に固まるんだろう? 何かの嫌がらせ?

 

「んー、耳垢は大して取れへんし……後は梵天でゴーシュゴーシュ……クールクル」

 

「んん……梵天だけってのもこそばゆいなぁ」

 

 梵天の中をクルクル、ガサガサ、と擦られていくと、柔らかい梵天に耳の中を擦られて、気持ち良くて痒みと違うくすぐったさで、これはこれで気持ち良いけど、正直指を突っ込んでゴシゴシしたくなる。

 

「ふ~……ふ~~!」

 

「おひょおおおい!?」

 

 梵天が引き抜かれて間髪おかずに息を吹きかけられて、さっきよりも変な声が出てしまう。横目でタマちゃんを睨みつけるけど、彼女は何も気にする様子もなく平然としている。

 

「さて、と。じゃぁ耳かきはお終いやな。後はお昼寝やってしまいや」

 

 私が声を上げようとした時に先んじてそんな事を言われちゃって……怒りをぶつけるタイミングを除かしてしまい……結局そのまま体勢を整えてタマちゃんの膝枕で寝る準備を整える。でもやっぱり、申し訳ないなぁ。

 

「……タマちゃん、ごめんね。疲れてるのに」

 

「構へんてそんなん。有マに向けてお互い頑張らなあかんのやから……トレーナーに倒れられるんはウチも困るんやから。こうして甘えてくれるほうがええんやからな」

 

 タマは優しくそう囁いて、私の頭を撫でてくれる。小さい手なのに、とても温かく、大きく感じるその手に安心してしまった私は、そのまま心地良く眠りに落ちていった。

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