オラリオに最悪の呪詛師がいるのは間違っているだろうか? 作:五月雨@ノン
リクエスト貰ったアストレア・ファミリアに夏油が入団した場合の話です
アストレアの口調が違ったり、展開が可笑しい場所等があると思いますがご容赦ください
正義の女神
正義とは、大義とは一体何なんだろうか?
嘗ての私ならば考える意味も無い、そんな思考
私にとっての
自分達よりも高位である呪術師を貶め、甚振り、排除しようと騒ぎ立て、呪霊を生み出し続ける
私が求めた理想は
けれど、そんな理想は乙骨優太と特級過呪怨霊である折本里香。そして、片割れであった悟によって砕かれた
しかし、そんな私の理想は、目の前にある
迷宮都市オラリオ、古代に神が未知を、娯楽を求めて降り落ちた大地であり、エルフや小人などの元の世界では存在などしない幻想が多く住まうこの大地に私の身体は在った。非術師など存在しない世界、それと同時に私の求める同胞もこの世界には存在しなかった。
私は、生きる理由を見失った
この身体は未だに後悔の念に焼かれ、怠惰に生きることなど私自身が赦す筈も無かった。
ただ歩き続けた。同胞が、大義が見つかるとそんな有りもしない希望を抱きながらも。当然、幾ら歩けども、探せども見つかる訳も無く、私はその身を細らせていくのみだった
(もう、いっそのことを死んでしまおうか)
仄暗い路地裏、ポケットに忍ばせているナイフに手を滑らせ、首筋へと添える。万が一、死に損なうことなどないように、ナイフに呪力を流し込んで斬れ味を増させる
「結局私如きでは、何も為せないようだね」
そう嗤って、首へとナイフを突き立て―――
「何しているの!?」
そんな路地裏に響く女性の声に、私は手を止めた
私は、ナイフを手に持ったまま声のした背後へと振り向いた。そこには、サラサラとまるで絹糸のように艶やかは茶髪、まるで透き通る空のような青い目を持つ美しい女性がいた。彼女の名前は
「女神、アストレア」
オラリオの民に心優しき女神と慕われる正義の女神 アストレアがそこにいた
「何してるの貴方!?早く、そのナイフから手を離して!」
女神である彼女がこんな薄汚れた路地裏にいることに驚くが、行動力があるとも聞いた事があったので“成程、こういうことか”とまるで他人事のようにそんな感想を抱いた
「別に、君にとって私など取るに足らない存在だろう?それに、君に私が死ぬことを止める正当な権限があるとでも言うのかい」
「別に権限なんて物はないわ。だけど、目の前で人が死ぬとこを黙って見ているなんて真似を私はしたくないの!」
アストレアの目には決して譲れぬと言わんばかりの信念がそこに浮かび上がっていた。これに夏油は幼稚だなと言わんばかりに、鼻で嗤う
「ハッ。例え、君にとってそれが善の行いであっても、それが他人にとって必ずしも善に成り得るなんてことは有り得ないんだよ。それは君の傲慢の押し付けだ。それを私に強要するな」
すると、アストレアはじゃあと口を開いた
「じゃあ、どうしてナイフを握っている貴方の手は震えているの?」
「!?」
夏油はそう指摘され、ナイフを握っている自らの手を目の前へと掲げる。そこには微かに震えている自らの手がそこにあった
(そんな馬鹿な!?私が死を恐れているとでも!?こんな世界に未練など何も―――
「ねぇ、貴方はどうして死のうとしているの?」
パッと手を取られ、優しい熱が夏油の手を包み込んだ
夏油にとって全ての神とは嫌悪の対象であり、自らの大切な後輩の命を奪った憎き相手だった。けれど、この手は、この温かさがこの神が夏油の知っている醜悪な神とは全く違う存在だと主張しているような気がした。
これまでの疲労感も相まって、夏油はアストレアの問い掛けに対して口を開いた
「私は多くの人を殺した」
「!」
夏油のその言葉にアストレアは目を見開いた
「当初は、弱き人間は守るべきだと、守られるべきだとそう漠然と思っていた。それを為せる力が自分にあると過信していた」
「だが、本当に生きるべき人を、彼女を守ることは出来なかった。ただ、地面に這い蹲ることしか出来なかった。憎かった、自分の無力さが。悔しかった、ただ自らの片割れを見上げることしか出来ないのが。悲しかった、彼女という優しい人の死が。彼女は多くの人々に愛されるべき人だった」
「だが、
「そこから、私は疑問を持ち始めた。“非術師に我々が守る価値はあるのか?”と」
「ッ」
自分が想像していたものよりも、悲惨な夏油の人生にアストレアは思わず息を呑んだ。まるでそういう運命だと定められたか如く、夏油の人生の一幕にアストレアは同情を禁じ得なかったが、それは夏油に対しての侮辱だとその感情を消した
「そんな時だ、私の後輩が。人間の信仰を失ったが故に堕ちた神に殺されたのは」
「私達が...」
アストレアは何となく、夏油が自分達とは違う所から来たということを薄々察しながらも、神が直接人間を殺めたということに心を痛めた
「私は打ち拉がれたさ。“また何も出来なかった”と。私では、
「そんな時だった。ある人からこんな話をされた、
「それは....」
アストレアは言葉を詰まらせる
「勿論、その時は直ぐ様に何を考えているんだと自分の考えを否定したさ。けれど、
「そんなことが何日も続いた日だった。
「気が付けば、私はその子供以外の村人を皆殺しにしていた」
「彼女達の手を握り締めながら、私はある
「その為には、どんな困難も、辛酸も舐めてきた。それが私の同胞達が手を取り合って笑い合える未来の為だと、そう思えば、そんな辛抱も乗り越えた」
「だが、私の
(やっぱり、貴方は....)
夏油の言葉にアストレアは夏油が自分達とは違う所から
「
「だが、私の同胞は存在しなかった。大義を、生きる理由を私は失った」
「教えてくれないか、正義の女神アストレア。私はこの
ハラリと夏油の瞳から雫が零れ落ちた瞬間、アストレアは夏油のことを抱き締めていた
「生きてて良いのよ...!貴方は確かに、悪いことをした。それは未来永劫赦されることなんてないわ」
「けれど、私は貴方を悪人なんて思わない!」
「だって、貴方はこんなにも苦しみ、辛い思いを経験していても、貴方は人の為に動ける人なのだから!」
「正義だって人それぞれ、貴方がそうしたいと思ったそれこそが正義なの!だから、お願い!死ぬなんて、悲しいことは辞めて....!」
まるで砂糖を煮詰めたかのような甘い、甘すぎるアストレアのその言葉に夏油は笑った
「まるで子供のような意見だね」
「それでも構わない!私は、貴方に生きていて欲しい!幸せになって欲しい、笑っていて欲しいと感じたの!」
「そうか」
アストレアの心からの叫びに、夏油は嬉しそうに笑った
「私は生きていて良いのか」
肯定したのがアストレア以外ならば納得しなかっただろう。アストレアだからこそ、夏油は納得した。彼女の裏表の無い言葉が。正義を掲げる女神である彼女が、このオラリオに住まう民に慕われて止まない彼女だからこそ夏油はその言葉を受け入れた
「ありがとう。女神アストレア、君という存在に多大なる感謝を」
「大丈夫。私はただ、貴方に生きていて欲しかっただけだから」
そう笑うアストレアに夏油は口を開いた
「更に求めるようで悪いけど良いかな?」
「?何か用があるの?」
「君のファミリアに入団させてくれないかい?」
「私のファミリアに....それは一体どうして?」
「君のもとで私の正義を探してみたいとそう感じたからだ」
「......分かったわ!貴方が私の初めての眷属として歓迎するわ!」
暫く、考え込んだ後に彼女は夏油を初めての眷属として迎え入れることに決定した。
その答えに夏油は更に頬を緩ませ、口を開いた
「ありがとう。君と共に在れることを心から嬉しく思うよ」
そう夏油が言うとアストレアは少し顔を赤くするが、コホンと気を取り直すように咳払いをする
「改めて、私は女神アストレア!貴方の名前を教えて下頂戴!」
「私の名前は夏油傑。君の初めての眷属さ」
「では、これからよろしくお願いします、傑!」
「此方こそだよ、アストレア」
そう言い、二人は握手を交わすと、そんな二人を祝福するように月光が照らした
(一から始めよう。此処で、彼女のもとで)
目の前にいる優しき女性を瞳に映しながら、今度こそ零れ落とさないように護ってみせると夏油は心に誓った
閲覧ありがとうございました。少しでも面白いと思って頂けたのなら、お気に入り登録、評価、コメント等して頂けたら嬉しいです。
取り敢えずは始まりだけ書きましたが、もし需要があればこの作品の外伝的な形で書こうかなと思っています。
他にもリクエスト等があれば此方にコメントして頂けると嬉しいです↓
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