オラリオに最悪の呪詛師がいるのは間違っているだろうか?   作:五月雨@ノン

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捕捉

 

 

 

「ギィアァ!」

 

 夏油はダンジョンの一階で全身が緑色で醜悪な顔をしたモンスター、ゴブリンと対峙していた

 

 

「ゴブリンか、いるとは聞いていたけどまさか本当に漫画のような姿そのままだとは思わなかったよ」

 

(呪力、いや魔力量から見るに四級かそれ以下といったところか?)

 

 

「様子見も兼ねて四級の呪霊にしようか」

 

 夏油は術式を発動させ、自ら取り込んだ呪霊の中で今この場に最も最適なものを選ぶ

 

 

「これかな?」

 

 夏油が選んだ呪霊は、尻尾の先端に鉛筆程度の鋭さの針を持つ魚や虫にも見える呪霊だった

 

 

「ギ!?」

 

 ゴブリンは突然の呪霊の登場に大きく目を見開き、驚きを隠せないでいる様子だ。夏油がその隙を見逃す筈もなく、夏油は呪霊を操ってゴブリンの心臓部分へと針をズブリと刺し込んだ

 

 

「オェ!?ギィヤァァア!!」

 

 汚いを悲鳴を上げ、ゴブリンは紫色の血を心臓部分から噴き出しながらサラサラと呪霊が消えていく時のように黒い灰となって消えていく。ゴブリンが消えた後にコロンと音と共に魔力を孕んだ石、魔石が地面に無造作に転がった

 

 夏油は呪霊を一旦仕舞った後に地面に転がった魔石を興味深そうに見る

 

 

「ふむ、呪骸にある核に酷似しているね....?これを砕いたり、致命傷を与えれば消滅するということかな」

 

 夏油は収納型の呪霊を取り出し、魔石をその呪霊の口の中に仕舞い込み、また戻そうとするがそこで手を止めて夏油は呪霊にある武器を取り出すように指示する。呪霊は手馴れたように口からその武器を吐き出した

 

 

「ふむ、呪具も特に失ったということでもないな」

 

 特級呪具である游雲を手に取り、少し手で弄びながらもそう呟いた。夏油は手馴れた游雲の固い感触を楽しみながらまた呪霊へと仕舞った。夏油はのんびり歩きながらも今分かった情報を整理し始めることにした

 

 

(ゴブリンは四級程度....なら一から五階までは四級程度のモンスターといったところか?そして、六階には新米殺しと言わているウォーシャドウやキラーアントは殺傷能力の高い三級に近い四級か三級の下の辺りか)

 

 夏油の後ろからゴブリンが湧き出し、夏油の背後から殺さんとばかりに棍棒を振り上げる

 

 ゴブリンは目の前の大柄の男が痛みに悶え倒れる姿を幻想し、ニタァと醜悪な笑みを浮かべたが次の瞬間にはゴブリンの頭はパァン!と爆発し、ゴブリンがサラサラと黒い灰となって消えていく

 

 コロりと転がる魔石を夏油は手に持ち、夏油は消えていく様を冷たい目で見下ろしていた

 

 

「全く、その程度の奇襲で私がやられるとでも?滑稽だよ、まぁもう聞こえてないか」

 

 夏油はまたゆったりとまるで自分の庭でも歩いているかのようにゆったりと優雅にダンジョンを歩き出した

 

 

(呪霊の能力も先程試した通り、呪力によって能力を多少上げることが出来る。そして、呪霊は出し続けると一定の呪力を使わなければいけない。四級や三級ではほぼそのデメリットは無いに等しいが、準一級から上に上がるとそのデメリットが段々と重なっていくといった感じかな?中々に面倒だ。自分より同等又は格上との戦いの場合では考えて呪霊を使わなければ私の呪力が底を尽きる可能性もある)

 

 はぁと夏油は溜息を吐いた

 

 

「呪霊操術の強みである複数体の使役には気を使わなければいけないな....本当に面倒だ」

 

(呪力が底を尽きそうになってもポーションと言ったアイテムを使用すれば呪力変換によって呪力を回復出来るが、最悪の場合には魔石も摂取する羽目になるね...)

 

 

 夏油はチラリと手にある魔石を見る。呪霊を取り込む際のあれには慣れたと言っても今自分の手にある魔石を進んで食べるかと言われれば勿論ノー

 

 だが、必要とあればどんなに不味かろうが夏油はそれ食べるだろう。嘗ての自分がそうしてきたように

 

 

「まぁ、命の危機にでも陥らない限りは大丈夫だろう」

 

 夏油はまた魔石を収納型の呪霊に取り込ませた

 

 

「取り敢えず調べたいことも分かったことだし、地上に戻るとしようか」

 

 夏油は自分の服に着いた少量の土を手で払い、スタスタと出口に向かって歩き始める。夜といえど、まだダンジョンに潜っている冒険者も何人かおり、冒険者とすれ違う度に夏油は自分の呪力を出来るだけ抑え、あたかもLv1の冒険者を装いながら地上へと歩く

 

 

(迷路のような作りになっている、道を覚えていなかったら最悪の場合、迷うということも有り得そうだ)

 

「ヘスティアに、地図があるか聞いてみるか」

 

 そんなこと言っている内に出口へと辿り着き、夏油は地上へと戻る。外はまだ暗く、魔石による街灯がオラリオの町を小さく照らしていた。夏油は少し暗い道をまるで普段から歩いているかのようにズンズンと歩いていく

 

 今日来たばかりと言えど、夏油の優秀な頭は自分の拠点へと帰る道や何処に何があるのかを大体把握していた。夏油が鍛冶屋を通り過ぎようとした時、夏油はピタリと足を止めた

 

 

「ふむ、武器か....」

 

(こちらの武器がどういう物なのかも知る必要がありそうだな....何かしらの情報や新しい武器が手に入るかもしれないしね)

 

 夏油が飾ってある剣を硝子の上からソッと擦ろうと手を伸ばした瞬間、視線を感じた

 

 

 まるで自分の体を掻き分け、自分の過去を、感情を、正体を見通すようかのような視線。ゾッと夏油の背筋を悪寒が走り、視線の元を辿るとそこは雲をも突き抜ける遥か高い塔、バベルの塔があった

 

 

「神か....!」

 

 夏油は直感だが、視線の主は神だということを理解したと同時に苛立ちを覚えた、まるで自分が上位者であると言わんばかりの傲慢なその視線に、自分の内を不躾に踏み荒らしたその不遜な行為に

 

 

(私を見下すだと?巫山戯るなよ、全てが自分通りになると思っている餓鬼のような存在の癖に上位者気取りか?腹立たしい、腸が煮えたぎるようだ)

 

 だが、夏油は何となくだが理解していた。あちらの世界の神と此方の世界の神とでは隔絶した実力差があること。そして、今の自分では忌々しい神には遠く及ばないことを

 

 

(腹立たしい、その傲慢さが、その餓鬼のような感性が、腹立たしい、そんな存在の下にいる自分が!)

 

 夏油は堪えるように口を噛む。こうでもしなければ自らの激情に体が支配されそうだったから。夏油の歯が唇の皮膚を切り裂き、一筋の紅い道を作った

 

 

「精々、たかが人間だと慢心してるがいい。泥水を啜ってでも、どんな苦難に襲われようとも貴様ら上位者を全て越え、孰れ私が頂点(最強)に立つ」

 

 夏油は激情からか少し、呪力が体から漏れ出しながらクルリ前へと向き直り、また足を進めた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まるで人間の負の感情を煮詰めたような色ね」

 

 

 

「目障りだわ」

 

バベルの塔の最高階で美の女神は従者を侍らせながらそう呟いた

 

 

 

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