オラリオに最悪の呪詛師がいるのは間違っているだろうか?   作:五月雨@ノン

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ベート視点のお話になります

前話に引き続き、ネタバレ要素+過去の設定の改変等ありますので御注意を








追憶

ベート・ローガにとってアイズ・ヴァレンシュタインという存在は、自らの理想そのものだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ベートは平原の獣民族の長の息子としてその生を受けた

 

 ベート・ローガの父であるその男は実力主義的な考えを持つ狼人の中でも、特にそれを重視する人物だった。

 故に、ベート・ローガは幼い頃から父の教えである弱肉強食をよしとし、その教えの通りに幼少期から鍛錬に明け暮れていた。

 

 メキメキと実力を高めていくベートに大人達は流石族長の御子息だと褒め称え、ベートと同年代の子供達はベートのその強さに畏怖を示した。

 大人達は勿論、子供達から畏怖を抱かれていたベートは孤独であり、それを無視するかのようにひたすらに鍛錬を積み重ねていく

 

だが、そんなベートを気に掛ける人物がいた

 

それは自分と同じ日に生まれた幼馴染だった

 

その幼馴染は元来の性格である落ち着いた性格やその優しさ、顔が整っていることもあり、老若男女、誰からも好かれるような素晴らしい女性だった。

  

 その幼馴染をベートは力で勝ち取り、守っていくことを誓った。

 幼馴染が部族の中でも最も弱いということもあり、ベートの鍛錬はより一層激しくなっていく。

 それを知っている幼馴染は鍛錬で疲れ果てたベートにタオルを渡したり、限界を超えてまでも鍛錬し続けようとするベートにストップを掛けたりなど、ベートに対して様々なことを施した

 

そんな幼馴染を、ベートは好ましく思っていた

 

 

ある日、鍛錬に熱中するベートにこれは流石にマズいと感じたのか、幼馴染である女性はベートの手を引いて、部族の子供達が普段使用している、言わば公園に強制的に連行する

 

 公園へと着き、ベートを集まっている子供達の輪の中へと引っ張る幼馴染にその思惑に気付いたベートは声を荒らげる。

 そこで、ベートの存在に気付いた子供達はベートの顔を見た途端に、石像のように動きを止めた。その様子に“やっぱり、こうなるんじゃねぇか”と溜め息を吐きたくなったベートだが、表にはそれを出さない。

 

何故なら、自分の些細な行動一つで目の前の子供達は恐怖で身を震わせることを知っていたから

 

そんなベートの一種の諦めの感情を感じ取ったのか、幼馴染は子供達へニコリと笑い掛け、言葉を放つ

 

「ベートも、入れていい?」

 

「は?」

 

 ベートは意味が分からないとばかりにそんな意味を成さない言葉を漏らした。

 この男は、自分が居ることによって与える影響を正しく理解している。なのに、何故自分と子供達を関わらせようと行動するのか理解出来なかった

 

“ま、どうせ断るだろ”そんな思いが頭に浮かび、ベートは目の前の子供達の返答を待った。

 だが、ベートそんな考えは裏切られることになった

 

「い、いいですよ....」

 

 子供達の中の一人の小柄な男の子が恐る恐るとそう返答した。

 それに同意するように周りの子供達もコクリと頷いた

 

「は!?」

 

 驚きを隠せないベートをその隣でニコニコと笑う幼馴染がグイッと引っ張り、子供達の輪の中へと入れる。

 普段ならば、抵抗されるそれも動揺で頭が回っていないベートならば容易にすることが可能だった

 

「じゃあ、鬼ごっこしよっか!」

 

「「「「さんせー!」」」」

 

「じゃあ、鬼はベート!二十秒数えてから鬼ごっこ開始ね」

 

よーい、スタート!という男の声と共に子供達は様々な方向に狼人特有のその俊敏さを活かしながらも、散っていく。それをベートは口をポカンと間抜けに開け、呆然としていたが、正気に戻ったのか頭をガシガシと乱暴に搔き、幼馴染の罠に嵌ったことを悟る

 

「......やるしかねーか」

 

 ベートは陰鬱そうにしながら、そんな言葉を吐き、秒数をカウントし始めた。

 そんなベートの口は僅かに吊り上がり、確かにベートはこの時間を楽しみ始めていた

 

 

「18、19、20。さぁて、行くか」

 

そんな声と共に、ベートは疾風の如く駆け出した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 普段から鍛えているベートが遅れを取る訳でもなく、幼馴染を含めた子供達は全員、ベートに捕まえられる。

 ベートの汗すらかかずに全員を捕まえるというその姿に子供達は憧れを覚えると同時に、悔しさも感じた

 

 それを見て幼馴染が再戦開始の宣言を発表すれば、子供達は喜び、またベートから逃げ出し、それをベートがまた捕まえるという循環。

 そうしている内に、夜の帳は落ちかけ、夕暮れになる

 

「じゃあ、もうそろそろ解散にしよう」

 

「「「「うん!」」」」

 

 

またねー!と元気な声と共に、子供達は去って行く

 

それを幼馴染は手を振り、優しそうな笑みを浮かべながら見送った

 

「さて、ありがとね?ベート付き合ってくれて」

 

「暇だったから付き合っただけだ」

 

そんなベートに言い草に幼馴染は苦笑を浮かべる

 

「楽しかった?」

 

その問い掛けに、ベートは一瞬沈黙する

 

 

「....悪くはなかった」

 

「そう!それなら良かった」

 

そっぽ向くベートに向かって、幼馴染は先程の苦笑とは違い、本当に嬉しそうに笑った

 

 

そこからベートの日常は変わった

 

鍛錬に明け暮れる日々から、極彩色に彩られた日々へと

 

 交流する度に他人と自分との間に広がっていた溝が埋まり、仲を深めていった。

 相手はベートが優しい人物だと悟り、ベートはより一層親しまれていく

 

前の自分ならばくだらないと吐き捨てていたであろう日常を、今のベートは愛した

 

この日常に、何気ない幸福に笑い、思い出を積み重ねる毎日が一生続けば良いと思っていた

 

この当たり前の日常が続くと思っていたのだ

 

 

そうなる筈だったんだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんだよ、なんなんだよコレ!?」

 

 狩りを終え、村に帰ってきたベートを迎えたのは、紅色に燃え盛る炎と鉄臭い匂い、そして跡形もなく崩壊した建造物だった。

 辺りを見回せば、押し潰され、肉塊となった死体や、まるで貪り食われたかのように内臓を抉られた死体、首と四肢をもがれた死体などが転げ回っていた

 

そこには無惨な姿になった自らの両親の姿もあった

 

「ヴ、オ゙ェ゙ェ゙ェ゙」

 

辺りに立ち込める鉄臭さもあり、ベートは思わず胃の中にある全ての物を吐き出した

 

(なんで、どうして、なにが、おこって、しんだ、おやじも、おふくろも、あいつらも、ぜんいん、しんだ)

 

纏まらない頭の中でふとあることに気が付く

 

「あ、いつは.....?」

 

それは幼馴染の死体がないことだった

 

(あいつは、どこだ。あいつなら、きっと、いきて)

 

「さが、さねぇと」

 

ベートは駆け出した

 自分の服が紅く染まることも厭わずに、ただ救いを求めるように駆けた。

 目に見えるのは転げ回る死体と、激しく燃える炎のみ

 

 

(どこに――――)

 

自分以外の荒い息遣いが崩落した建物の隙間から聞こえた

 

「!」

 

ベートはその崩落した建物の隙間を覗き込むと、そこには頭から血を流しながらも、確かに生きている幼馴染がそこにいた

 

 

「べー、と?」

 

「あ、あぁ!おれだ!今すぐに助けてやる!」

 

 ベートが幼馴染を引っ張り出そうとするが、足が瓦礫に押し潰されている為、どれだけ引っ張ろうが結局のところ子供でしかないベートでは助けることは不可能だった。

 それでも幼馴染を助けようとするベートだが、地面が地震が起きたように大きく揺れた

 

「な、なんだ?」

 

その揺れは段々とベート達に接近し、その正体を表した

 

「な、なんだよあれ....」

 

 

その正体は巨大な竜だった

 

 その体躯は自身のそれより大きく上回っており、その皮膚はまるで岩石のようにな硬さを持ち、その鋭い目からは膨大な殺意を含んでいた。

 口からチラチラと垣間見える炎が、それの恐怖を煽り、ベートの足はガクガクと震え出した

 

「え、あ」

 

恐怖から動けないベートを龍は呑気に待つ訳でもなく、

踏み潰すかのようにその巨大な足を大きく上げた

「ベート!」

 

「ッ!」

 

 その声で正気に戻ったベートは危機一髪のところでそれを避けるが、急な回避行動に加えて、体勢が整っていなかったこともあり、地面に倒れ、その整った顔は土まみれになり、タラりと瞳子髎から頬にかけて紅い液体が流れた。

 幸いにも顔から地面に倒れたことが幸をなしたのか足には一切の怪我を負うことは無かった

 

「グォォォォォ!!」

 

竜が咆哮を上げ、ビリビリと空気を揺らす

 

それだけでベートは自らの負けを察した

 

圧倒的な格差、どう足掻こうとも全てが無に帰る程の絶望的な程の実力差

 

 

「にげて、逃げてベートッ!」

 

「ッ、けど!お前を見殺しにする訳には」

 

「いいからッ、はや―――

 

グチャりという粘着音と共に、目の前で紅が弾けた

 

 

「は」

 

幼馴染がいた場所には竜の巨大な足が存在しており、その竜の足の下からは赤い、紅い水溜りが出来ていた。

 

それは段々とベートの足元まで伸び―――

 

「あ、あぁぁぁ」

 

 

 

「アァァァァァァァ!!」

 

ベートはその場から走り出した、ただひたすらに、目の前の怪物から逃げるように、涙で顔を濡らし、自らの不甲斐なさで顔をグチャグチャにしながら、ただ走った

 

 

その姿は負け犬そのものだった

 

「畜生、チクショォォォォ!!」

 

自分の不甲斐なさを吐き出すように、絶叫するように、そんな言葉を吐き出した

 

 

 

 

その後、極度の疲労で倒れたベートだったが、偶然通り掛かった行商人に拾われ、ベートは一命を取り留めた

 

村に戻ると、嘗て自分が愛した村は見る影もなく、ただ焼け焦げた建築物と、血の匂いだけが残っていた

 

ベートは村の中を散策し、肉塊や骨になってしまった仲間達を土に埋め、簡素な墓を作り、埋葬した

 

「おれ、冒険者になる」

 

幼馴染の墓の前でそんな言葉を漏らした

 

 墓の中には幼馴染の残骸は入っておらず、炎に全てを燃やされてしまっていた。

 それでも、ベートは言葉を吐き続ける

 

「冒険者になれば、神からステイタスが与えられるってお前言ってたよな」

 

「誰かの下に付くなんて御免だが、強くなれるなら、そんなプライド捨ててやる」

 

「お前達みたいな奴が、もう二度と出てこない為に」

 

「もう、誰も哭かないように、強くなってやるッ!お前が!お前の死が、無駄じゃなかったって、お前が天国で誇れるようにッ」

 

 

「俺が、最強になってやる!!」

 

「だから!」

「どうか、どうか安らかに眠っていてくれ」

ベートは流れる涙を無視して、その村から去って行く

 

そんなベートを見送るように、暖かな風がベートを包んだ

 

 

 

 

 

 

 

 

数年後、彼はヴィーザル・ファミリアの団長となり、レベル3と二級冒険者への仲間入りを果たしていた

 

 レベル3という領域へ至るまでどれだけの冒険者が無念に散ったことか、万年レベル1で終わる冒険者も少なくない中で、ベートはそれを嘲笑うかのように急スピードで成長していた。

 それは才能だけではなく、元来のストイックな性格もあり、強くなる為にただひたむきにダンジョンに潜り、様々な死線を踏破してきた

 

 そんなベートの姿は元々の目付きの鋭さや、整っているが何処か厳つさを感じさせるその風貌から人々から恐れられていた。

 だが、ベートの性格の良さを知っているヴィーザル・ファミリアの団員達はとても慕っており、その中にはベートを好く者までいた

 

 ベートに対し、アプローチを掛ける女性陣にベートが靡くことは無かった。

 何故なら、ベートには既に好いていた存在がいた

 

それは、自らのファミリアの副団長だった

 

 彼女はベートがファミリアに入って来た時から気に掛けていた人物であり、ベートに対し、ダンジョンで役立つ様々な知恵を教授した。

 そんな彼女の施しに、ベートは深く感謝をし、それにつ報いるように急スピードで成長していった

 

いつの間にか守る存在から隣に立つ存在へ、そして守られる存在へと変わってしまった副団長だが、常人ならば嫉妬に駆られそうなその変化にも嫉妬なんて感情をそ少しも感じられない程にベートの成長を誰よりも喜んだ

 

 

そんな彼女を好きになるのは最早、当然のことだった

 

それと同時に、彼女もベートに好意を寄せていた

 

そんな二人は両思いではあるが付き合ってはいなく、二人でいる時は何処か余所余所しい雰囲気になったりと、とても初々しいその様子にベートを狙っていた女性陣もベートのことを諦め、どうやってくっつけようかと策を練り、男性陣はそんなベートを弄り倒していた

 

そんな騒がしくも、彩られた毎日にベートは頬を緩ませ、この愛おしい日常を今度こそ守ろうと決心した

 

 

そんなベートにある、情報が入った

 

それは.......

 

 

「竜の谷付近の平原に竜が確認された、だと.....?」

 

竜の谷とはベートの故郷の近くにある場所らしく、そこから出た竜がベートの故郷を滅ぼしたのだ

 

「やっとだ、やっとアイツらの仇を.....!」

 

ベートは自らの主神に事情を話し、了承を貰った後にオラリオから旅立つ準備を進めた

 

「オラリオ少しの間出ていくんだってね」

 

「あぁ、遂に尻尾を捕まえた。このチャンスを逃す訳にはいかねぇ」

 

「そっか、少し寂しくなるな」

 

 彼女はそんな独り言にも近い小さな声で少し悲しそうにそう漏らした。

 彼女には何時でも笑っていてほしいベートにとってそんな哀しみを無くしたいと思うが、不器用な彼はそんな器用なことが出来る訳もなかった

 

「....俺は、強くなった」

 

「....うん」

 

「だがら、信じろ。俺の強さを他の誰でもない、お前自身が、俺がお前の強さを信じるように」

 

「!うん、そうだね」

 

彼女が嬉しそうに笑う姿を横目にベートも頬を緩ませた

 

 

その日、ベートは旅立った。必ず生きて帰ってみせるとと心に誓って

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

竜との激闘の末に勝利をもぎ取ったベートを迎えたのは悲劇だった

 

「アイツが、死んだ...?」

 

ベートは目の前でそう言葉を吐いた仲間の言葉を信じることは出来なかった、だが、目の前にいる仲間も満身創痍の怪我を負っており、周りにいる他の仲間も重症を負っていた。

 

故に、その言葉に確かな信憑性を増させていた

 

「副団長は、俺たちを逃がす為に....」

 

「そうか、そうか....」

 

「すみません団長!俺たちが、もっと、強ければ....」

 

「.....外、出てくる」

 

ベートは現実から逃げるようにホームから出ていった

 

 

そこからベートとヴィーザル・ファミリアとの溝は広がっていった

 

現実から目を背けるようにダンジョンにソロで潜り、浴びるように酒を飲み、乱闘を起こすベートを団員達は何度も注意するが、それを無視され、また問題を起こす

 

そんな循環によって団員達はベートに愛想を尽かし、ベートは孤立した

 

 

何時ものように酒を飲み、冒険者を煽り、乱闘を起こした時に、それは起こった

 

「ち、くしょぅ」

 

「ハハッ、雑魚は雑魚らしく地面に這いつくばってろ」

 

ベートは倒れている冒険者の頭を踏みにじりながらそう嘲笑うようにニタニタと笑っている。その姿は正に悪役そのもので、周りの人間はそれを良く思わないが、ベートのその強さを知っているが故に、反抗はしなかった

 

「そこのお前!何か言ってみろよ、なァ!!」

ベートはドカドカと髭を生やしたドワーフに近付き、肩に手を掛けたその瞬間

 

 

頬に凄まじい衝撃が走り、ベートはその体を吹き飛ばされる

 

「犬がキャンキャン騒がしいしわい。酒が不味くなる」

 

ドワーフの男が振り返ると、周りにいた冒険者達は息を呑んだ

 

 

「ガレス、ランドロック」

 

そこにはロキ・ファミリアの幹部であるガレス・ランドロックが確かな覇気を纏わせ、そこに存在していた

 

「じゃ、じゃあそこにいる金髪小人族と緑髪のエルフはフィン・ディムナとリヴェリア・リヨス・アルーヴ!?」

 

「おや?バレてしまったようだ」

 

「そのようだな」

 

フィンは少し楽しそうに笑いながら驚愕を隠せないでいる冒険者達の方へ振り返り、そんなフィンを見てリヴェリアは内心溜め息をついた

 

 

「ガレス、ランドロック、ロキ・ファミリアの幹部」

 

「む?本気ではなかったとはいえ、レベル3なあれを食らってまだ立ち上がるとは、根性はあるようだな」

 

ガレスの湧き上がる覇気にベートは笑った

 

「俺と戦えよ」

 

「お前さんと儂ではかなりレベル差がある。これでは戦いにならんと思うが」

 

「うるせぇよ、そんなもん関係ねェ」

 

「フィン....」

 

ガレスがフィンへと目配せするとフィンは静かに頷いた

 

 

「フィン....」

 

リヴェリアが頭痛を訴えるかのように頭を抑えた

 

「大丈夫さ、少しお灸を添えるだけさ」

 

フィンはにこやかに笑って、そう返した

 

「相手してやるわい」

 

「ハハッ!そうこなくちゃなァ!!」

 

二人はほぼ同時に拳を構える

 

「掛かってこい」

 

「行くぜぇぇ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 案の定、ベートは圧倒的にガレスにステイタスで負けており、戦闘経験でもガレスの方が圧倒的に上な為、ベートはボコボコにされていた。

 だが、どれだけ倒れても、どれだけ殴られようともベートは何度も立ち上がった。

 これにはリヴェリアが驚いており、フィンとガレスはベートへの評価を一段階上昇させた

 

「まだだ、まだおわっ、て、ねぇ」

 

血を滲ませながらも立ち上がろうとするベートの目の前に、誰かがしゃがみ込んだ

 

 

「アンタ、ウチのファミリアに入らん?」

 

それはロキ・ファミリアの主神であるロキだった

 

これには流石のフィンも予想していなかったのか、動揺したように口を開いていた

 

「は?」

 

「だぁーからぁ、ウチのファミリアに来へんか誘ってるねん」

 

 

「.....お前のファミリアに入れば、俺は強くなれるか?」

「あぁ、ウチのファミリア入れば、お前はもっと強くなれるで」

 

ロキがそう答えるとベートは笑い声を上げた

 

「良いぜ、入ってやるよロキ・ファミリアに。だが、馴れ合うつもりはねぇ、お前達は俺の糧だ、何時かお前達を喰らって(倒して)最強へと、成る。だから、精々その力、磨いておけ、よ」

 

それだけ言うとベートは気絶した

 

「期待のルーキーだね?ロキ」

 

「せやな、フィン。コイツは強くなれる器を持っとる」

 

そんな言葉を交わす二人にガレスは豪快に笑い、リヴェリアは再度頭を抑えた

 

「ようこそロキ・ファミリアへ、今日から君も我々の家族(仲間)だベート・ローガ」

 

その日、ベート・ローガはヴィーザル・ファミリアのベート・ローガからロキ・ファミリアのベート・ローガへとなった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は戻り、ベートはその厳つい風貌で道行く人々をモーセの如く割っていると、ある人物を目にした

 

(あれは、オッタル....何して、なッ!?)

 

 ベートが目にしたのはオッタルの得物である大剣の刀身が無惨にも真っ二つに折られ、それを抱えるオッタルの姿だった。

 よく見ればオッタル自身の服も血で汚れており、土埃で汚れていた

 

「おい」

 

「む、凶狼か」

 

気が付けばベートはオッタルに話し掛けていた

 

「その剣、どうしたんだ」

 

「あぁ、これか。これはある男との戦いの際で折られてしまったものでな」

 

(ある男だと?モンスターではなく、人だと?有り得んのか、コイツの大剣には貴重な鉱石が使われてる筈だ、それを真っ二つに折るだと.....)

 

「その男は」

 

「さぁ、名前すら知らない。だが、この借りは必ず返す......!」

 

そう言い、オッタルは口角を僅かに上げ、オラリオ最強の名に相応しい覇気をその身に纏いながら

 

「そうかよ」

 

ベートは不機嫌そうにそれだけ言うと、その場から早足で去っていった

 

(くそ、くそ、クソ、クソッ!)

 

ベートの口から舌打ちが漏れる

 

(今、俺はなんて感じたッ、()()()()だと?クソがッ!!何時から俺はそんな腑抜けになった!!戦ってもねぇのに、勝てねぇだと?巫山戯んじゃねぇ!!)

 

オッタルの姿にただ呆然と自分では勝てる訳がないとそんな諦めの感情を一瞬だが、抱いたというその事実がベートこれ以上なく苛立たせた

 

(俺は、最強になる。なのに、勝てねぇなんて弱気吐いてんじゃねぇよ!!)

 

ギリリと自らの奥歯を強く噛み締めた

 

 

「クソッ、クソが!」

 

ベートは止まらない苛立ちを無視するように目的地へと足を早めた

 

 

 

 

 

 

 

時は現在に戻り、夏油とベートは相対していた

 

周りには民家一つない空き地であり、戦うにはもってこいの場所だった

 

(今回に関しては別にあの男(ゲトー)には何の非もねぇ、これは俺の醜い嫉妬とイラつきに対する八つ当たりだ)

 

それでもベートは決闘を止める気はない。何故なら、これはあの男(ゲトー)の為でもあるのだから

 

(アイズが態々構うってことは、それなりの才能かなんかがアイツにあるってことだ。だが、才能だけでやっていける程冒険者は甘くねぇ。これで、折れるようもんなら、冒険者なんて辞めさせた方がいい)

 

第一冒険者が与える影響をベートは正しく理解している

 

例えば、フィンがある料理店を絶賛したのならば次の日には、その料理店には人で溢れかえるだろうし、リヴェリアが一つ批判を述べるだけで、店一つ潰すことだって可能なのだ

 

それを理解しているが故に、フィンやリヴェリアは迂闊な言葉を発さないのだ。それ程、第一冒険者が与える影響は大きいのだ

 

 

だが、アイズはそれを理解していない節がある

 

ある時、アイズが新人冒険者のとある男の才能を見抜き、褒め称えたことがある。

 

それにその男は酷く喜び、ダンジョンへと潜り込んだ

 

一ヶ月後、モンスターの大群に呑まれ、男は帰らぬ者になった

 

その時のアイズの悲しそうな顔はベートの瞳に強く、焼き付いていた

 

(もう、あんな顔はさせたくねぇんだよ。あんな顔させるなら、俺が罪を被ってやる)

 

ベートの横をフィンが通る

 

「気を付けた方が良い。彼にはナニカがある」

 

「ハッ、たかが新人に遅れを取る訳ねぇだろ」

 

「そうか」

 

そうだ、俺がやることは何時だって一つだ

 

 

「強者としての、その使命を果たすことだ」

 

ベートは月光に照らされ、そう不敵に笑った

 





感想欄や評価欄でベートが改悪されてる!改悪タグ付けろとの声が複数あったので、本来書くつもりが無かったベート視点のこの話を急遽書くことに致しました。

私は別にベート君のことは嫌いではありませんし、寧ろ好きです。

ベート君の嫉妬による視野の縮小や夏油の能力の高さも含めて、前話を書いたんですけども私の文章力ではそれを上手く表現出来ませんでした。コンランさせてしまい、申し訳ないです

ベート君と夏油の一騎討ちを楽しみしていた方々は誠に申し訳ございません。

次回こそは話を進めます

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