オラリオに最悪の呪詛師がいるのは間違っているだろうか? 作:五月雨@ノン
目の前で不敵に笑うベートを冷めた目で夏油は見つめる
ロキ・ファミリアの団長であるフィンがベートへと何かしら耳打ちをしていたが、そんな事は夏油にとってどうでも良いことだった
正面からその圧倒的な実力で目の前の愚者を叩き潰す。ただ、それを実行するだけが夏油の目的だった
「逃げても良いんだぜ?」
「黙れ。お前程度の相手に逃げる要素など一つも無い、さっさと構えろ」
「ハッ!その威勢がどこまで続くか楽しみだなァ、
「.....黙れよ」
ベートの言動一つ一つが夏油の気分を大きく下降させる
ベートは自分が圧倒的強者という自負があるのか、口角を吊り上げて余裕の笑みを浮かべ、それに反比例するように夏油は表情を消し、額に青筋を盛り上がらせる
ベートはまるで獣のように体勢を低くし戦闘態勢へと入るが、夏油は堂々と構えすら必要無いとばかりに棒立ちだった
「おい、それがお前の構えか」
「そうだが」
「ハハッ!こりゃ傑作だ、なァ!」
そんな言葉と同時に、ベートは自慢の足での蹴りを夏油の側頭部へと放つ。
ベートはレベル5である第一級冒険者であるため、そこいらに蔓延る一般人など容易に殺すことが可能だった。故に、加減されたその蹴りは、本来のベートの速度、威力、どれを取っても大きく下回っているが、
「!?」
ベートの蹴りは夏油の手によって受け止められ、ベートは驚愕に目を大きく見開かせ、周囲にいたロキ・ファミリアの幹部クラスの者達もこの結果に動揺を隠せずにざわめき、フィンは自分の勘が正しかったことを悟る
「やはり、間違いでは無かったみたいだね」
「フィン、アイツのことを知っていたのか?」
「いや、全く分からない。だけど
「!!まさか、奴は私達に
「かもしれないね」
フィンは夏油をじっくりと観察する
佇まいや構えそのものはレベル1の冒険者そのものであり、その身から放たれている魔力も、同様にレベル1の冒険者の正に平均値そのものだった。
だが、少し違和感があるとするならば
(
「本当に只者では無いらしい」
余裕そうにニッコリとフィンは笑うが、その瞳は夏油という男を見極めんと鋭い視線を放っていた
「テメェ....!」
「いや、これが第一級冒険者の攻撃か。いやはや、速度といい、威力といい、本当に
本来ならば、その言葉は第一級冒険者であるベートに対する賞賛の言葉だが、この状況においては皮肉の効いた言葉でしか無かった。
それを理解したベートはギリリと奥歯を噛み砕かんとばかりに噛み締め、青筋を浮かばせる
「ブッ潰してやるよ!!」
ベートの地雷を見事踏み抜いたそのあまりにも効きすぎた皮肉に、ベートの耳が弓を引き絞った如く逆立ち、瞳孔は残忍さが垣間見える狩人を彷彿とさせるような鋭く、獰猛な目付きへと変化する。
雰囲気も先程のような手を抜いた雰囲気から、ダンジョンへと潜っている最中のような猛々しい気配を纏っていた。それは、見る者全てに牙を剥き、力無き者ならそれだけで気絶してしまうような迫力を孕んでいた
だが、夏油にとってそれは牙になり得ない
「フッ、精々やってみせろよ
「――ッ!調子に乗るんじゃねェ!!!」
ベートがまるで弾き出されたように夏油へと蹴りを放つ
その蹴りは先程のそれよりも威力も、速度も、殺意も、全てにおいて桁違いだった。
それは最早、人智の域を超え、音の世界にも届きうる程の疾速。それが、夏油へと明確な殺意を孕み、放たれた
(先程よりも疾い。故に、その威力も先程よりも桁違いに上昇している、私に害を与える程に。だが、呪力で防御を固めればダメージは無に等しい)
だが、夏油は後手に回る気など元より無い
夏油の頭にあるのは目の前の
(なら、話は簡単だ。得意分野で真正面から絶望的な程までに力の差を見せつけ、潰す)
夏油の側頭部に、月光に照らされ鈍く輝きを放つベートの白銀の一撃が突き刺さろうとしたその瞬間に、夏油から火花が弾けた
「迅雷」
その呟きの瞬間、夏油がベートの目の前から消失し、その蹴りは虚空を切り裂くのみに留められる
「ッ!何処に「背後」ッ!」
耳元で囁かれる夏油の声に、ベートは腕を鞭のようにしならせ、迎撃しようとするが、先程のようにその腕は虚空を切った。
ベートの瞳に夏油は存在せず、映るのは弾ける閃光と、夏油の残影のみだった
「ッ!」
(速すぎて、目で追え切れないってのか!?)
ベートは目の前の無情な現実に、まるで幻でも見ているかのような錯覚に陥るが、夏油の動きに合わせて吹く余風の熱が嫌という程に、
「巫山戯んな...巫山戯んじゃ――「隙だらけだね」!」
影も踏めずにいた夏油が突如として、目の前に現れたことにベートは驚きから大きく目を見開き、動揺を隠せずにいたが、ここは流石の第一級冒険者と言うべきか、自らの限界をも超え、反射的に夏油へと膝蹴りを放つ。
その一撃は例え、アイズのような第一級冒険者であっても躱すことはおろか、防ぐことすら不可能な程速く、フィンなどといった第一級冒険者の中でも、ベテランと呼ぶべき人物ですら防御することで精一杯であった。
だが、夏油はそれを嘲笑うかのように超越する
自らに向かって放たれたベートの膝蹴りに対して、夏油が行ったのは肘打ちによる迎撃....のみに終わらず、それとほぼ同時に刈足をし、ベートの体勢を完全に崩した
「なッ!?」
「まずは一発」
夏油の拳が深く、鋭く、ベートの鳩尾を穿いた
「――――!」
声にならない、叫びが上がった
ベートの口から血が吐き出され、地面を濡らしていることが、夏油のその一撃が如何に重いのかが伺えた
「どういうことや、あれ....」
ロキの口から、自然とそう零れていた
そうなるのも当然だろう。何故なら、ベートは二つ名持ち且つ冒険者の中でも類稀なる才能と血が滲む程の努力を積み立てた者のみが辿り着ける領域、第一級冒険者なのに対し、夏油は二つ名などあらず、何よりオラリオに来たばかりの新参者、無名で冒険者の中でも底辺の下級冒険者が夏油だった。
下級冒険者なと本来ならば、ベートの先制の一撃に為す術もなく沈むだけだが、夏油はそれを余裕で防ぎ、それだけにも留まらずにロキ達の常識を覆すようにベートに一撃を与えてみせた。
ロキは目の前の
「チビ、アイツはなんや」
「?夏油君は夏油君だよ」
ヘスティアがそう答えると、ロキは溜め息を着く
「言い方変えるわ、アイツのレベル何や」
「それは....ステータスの事に関しては、探らないのが、暗黙の了解だろ」
「別にレベル位構わへんやろ。それはスキルや魔法を看破されたりせぇへん為に作られたもんや。レベル位なら別に知られても問題無いやろ?ホンマに
「ッ.....!」
ヘスティアの反応に、ロキは夏油がレベル1では無いことを確信する
「他言はせぇへん。アイツは一体レベル何なんや」
ロキの普段のおちゃらけた言動からは掛け離れたその真剣な目と言葉に、ヘスティアはこれ以上隠し通す事が出来ないことも相まって、真実を話すことにした
「本当に他言しないんだね?」
「勿論や。もし、ウチのファミリアの誰か一人でも洩らしたなら、お前の言うこと何でも聞いたる」
「....夏油君のレベルは6だよ」
その答えに、フィン以外のロキファミリアの面子が驚愕し、口を大きく開け、驚きに目を見開いた
「れ、レベル6、やと!?嘘ついてないやろな!」
「嘘なんてつくもんか!本当のことだよ!!」
「マジか...只者ではないと思っとったけど、まさかレベル6とはな....」
ロキがそう呟くと、ヘスティアは少し気まずそうにまた口を開く
「いや、多分だけどそれにも誤りがあると思う」
「?どうゆうことや」
ヘスティアが夏油の方へと視線を向けながら、言葉を続ける
「夏油君は、レベル7にランクアップ出来るかもしれない。オッタル君との戦い、そして勝利を経て」
「!まさか、噂は本当だったちゅーことか!?」
これにはフィンも動揺し、夏油へと視線を向ける
(オッタルを倒しただと!?君は一体何者だと言うんだ)
フィンは目の前で余裕綽々と歩いている
「
(都市外の神の仕業か?いや、それだと恩恵が最初から刻まれてる筈や....それに、外でそんなにレベルが上がるとは考えにくい。アイツの狙いは、オラリオの崩壊?いや、一人で実行は限りなく不可能。なら複数人で...いや、そんなことすれば確実に目立つ、それに神相手なら直ぐにバレてお終いや。じゃあ、恩恵無しで....?いや、それこそ無理な話やな)
「これは、直接聞くしかないんやな」
ロキはジッと戦いの行く末を見つめた
「ッガ!ハァ、ハァ」
ベートは地面に転がり、土埃で汚れた装備も気にすることもなく、ただ痛みを堪えるように息を吐く
そんなベートに夏油は見せつけるように歩いてベートへと徐々に近付いていく。
夏油の顔は残虐な笑みを顔に浮かばせており、体からは隠しようも無い程の重圧と気配を纏っており、その姿は正に弱者を蹂躙する強者の姿であった
「私はサンドバックじゃなかったのかい....このザマじゃ、どっちがサンドバックか分かったもんじゃない。一撃でそれとは随分と脆い」
「ッ!うる、せぇよ。調子に、乗るんじゃ、ねぇ!!俺は第一級冒険者だ!こんな、攻撃、余裕なんだよ!!クソがァァァ!!!」
ベートは痛みで足を震わせながらも立ち上がり、吼えてみせる
その姿は土埃で汚れ、例え足がガタガタと震わせているとしても、確かにそこには第一級冒険者としての誇りを背に背負っていた
だが、夏油にとってはベートの第一級冒険者の誇りなどどうでもいいものだった
「吠えるな、耳障りだ」
夏油の蹴りがベートの脇腹を確かに捉え、ミシリと何かが軋む音がベートの鼓膜を揺らした。その瞬間、ベート体は吹き飛ばされ、勢いよく壁へと叩きつけられる。
「ガッ!」
ベートは大量の血を吐き出し、顔から地面へと倒れる
ベートの血は地面を紅く彩った後に、紅い池を作った
「第一級冒険者?だから、どうした。この結末はもう既に決まっていたことだ。そう、お前が私に!よりにもよってその忌々しい名でこの私を呼んだその瞬間から!」
夏油の抑えつけられていた呪力が解放され、夏油という存在が世界に、オラリオに刻み付ける
「死ねよ」
夏油の足が振り上げられ、ベートの頭を踏み潰さんと呪力を込めた
その威力は、鉄をも簡単に踏み砕き、第二級冒険者であっても即死は逃れられない。
負傷しているベートではこの一撃を防ぐことは不可能であり、運が良ければ重症。悪ければ死ぬ可能性すらある
夏油の無慈悲な一撃が、ベートへと振り下ろされた
「風よ」
ガキン!夏油の足を何かが遮る
夏油は目の前に現れた存在へと舌打ちを漏らす
「剣姫」
「もう、決着は着いてます」
夏油が飛び退き、体勢を立て直す
「そこを退け」
「嫌、です」
「.....ならば、強行突破するま―――」
夏油は迫る来る槍の穗を感知し、呪力で拳を強化して迎撃する
ぶつかり合う拳と穗の衝撃に風が吹く
夏油が拳を払うと槍の持ち主は体勢を崩さないようにその場から飛躍し、地面へと着地する
「
夏油は目の前の
「もし、このまま続けるというのならば―――
夏油の周囲に人影が降り立った
―――――――
そう言い、フィンは笑った。だが、その目は笑っておらず、レベル6として、ロキ・ファミリアの団長として申し分のない重圧を放っていた
雲から顔を覗かせた月の光が、両者を照らした
「邪魔をするというのなら、お前達も潰すまでだ」
「さて、やれるのかな?君に」
夏油の呪力が炎のように渦巻き、フィンの槍が月光に照らされ、光を灯した
モチベ/zeroです
https://twitter.com/fNJieNXrnvZDG63t=RtHJfkOqndg9PldO6hzzhA&s=09
作者の小説用の垢です。こっちで進捗とか没ネタや色んなもの呟こうと思います。話のネタとか言ってくれる人とかいたら助かります
投稿頻度は?
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作者のお任せ