オラリオに最悪の呪詛師がいるのは間違っているだろうか? 作:五月雨@ノン
投稿遅れて申し訳ないです
開幕
鐘が響く
愛する我が子の旅立ちを惜しむように
鐘が響く
英雄の旅路を祝福するかのように
鐘が響く
物語の幕開けを告げるように
荘厳な音を鳴らし、鐘が響き渡る―――
「····鐘の音?」
「夏油様?どうかしましたか?」
「いや、鐘の音が聞こえたのだが、」
夏油は辺りを見回しても鐘らしき物はなく、夏油以外の人々は何事もなくこのオラリオを闊歩していた
「―――いや、気の所為か」
「そうですか。それより、これからどうします?」
「そうだね。君のステータスも上がってきたようだし、武器や防具を見に行こうか」
「!はいっ!」
リリが嬉しさからか道を先行するのを夏油はゆったりとその後を着いて行く
(鐘の音、か)
夏油が後ろを向き、オラリオと外を繋ぐ唯一の門へと目を向けた
「夏油様!」
「あぁ、今行くよ」
夏油が少し呆れたように返事をし、リリへと歩いて行く
鐘は未だに鳴り響いていた
「ここがオラリオかぁ····!」
一人の少年が周りを物珍しそうに、興奮を隠せないようにキョロキョロと見回たす。その姿はどう見ても初めて都会を知った少年そのものであり、周りのオラリオの住人達はクスクスと微笑ましそうに笑った
それに少年も気が付いたのか、顔を赤くした
(わ、笑われちゃった····恥ずかしい··!)
少年はその視線から逃げるようにその場から早足で立ち去る
少年の名はベル・クラネル。迷宮都市オラリオへと希望を抱き、村から遥々遠くのオラリオの門を叩いた無垢な少年である
(やっぱり、世界の中心と言われるだけあって大きいなぁ)
足早に道を歩きつつも、先程の恥ずかしい出来事を忘れたのかキョロキョロとまた周りを見回している。
ベルにとってはオラリオにある全てが自身の“初めて”であり、目をキラキラと輝かせている
(凄い!あんなに武器が置いてあるなんて、それに防具と一式揃ってる!かっこいい!!僕も冒険者になったらああいうのを着けたりするのかな···!)
ベルは今よりも背が高くなり、筋肉の付いた己が目の前にある鉄の鎧をその身に纏って恐ろしいモンスターをバッタバッタと倒す今とは違う雄々しい自らの姿を夢想し、頬を緩ませる
「欲しいなぁ···けど、今はそれよりもファミリアを探さなきゃ」
ベルはポケットから先程買ったオラリオの地図を両手で広げ、ロキ・ファミリアやフレイヤ・ファミリアなどとオラリオにいる誰もが知っているであろうダンジョン攻略の最前線を担うファミリアやそれには及ばないが名を馳せているファミリアへと指を滑らせ、わかりやすいようにペンで印を付ける
「取り敢えずは此処から近いロキ・ファミリアに行こう!」
ベルは地図を見ながら、ロキ・ファミリアがあるであろう道へと足を進めていく。曲がり角を一つ、二つ、三つ目を曲がろうとしたところでドンと自身の胸元辺りに何かがぶつかり、トスンと尻もちを着く
「いてててて·····って、女の子!?」
どうやらベルがぶつかったのは背の小さい女の子であったらしく、その女の子は背丈には合わない大きい鞄を背負っていた
「···びっくりしました」
「ごっ、ごめんなさい!?」
ベルは地面に頭を擦り付ける勢いで頭を下げ、目の前の小さい女の子に謝罪をする。その姿は事情を知らない人から見ればアブナイ現場そのものであり、冷静さを失っているベルはそんなことを知る余地もなく、ただただ頭を下げる
「大丈夫です。それよりも、貴方も大丈夫でしたか?」
「は、はい。怪我もしてないので、大丈夫、です」
「そうですか。それより、いい加減頭を上げて欲しいのですが····」
「あ、はい!」
ベルが顔を上げるとそこには小柄な女性が立っており、琥珀色の綺麗な目がベルを見つめていた。女性の顔が整っていたこともあり、恥ずかしそうに顔を背けるベルに目の前の
(どっ、どうしよう!?どうすればいいのか分からない!)
ベルは慣れない女性との会話にどうすればいいのか分からずに口どもってしまい、それを見ている小人族の女性は困惑するように眉を下げることしか出来なかった
そんな時だった
「リリ、どうしたんだい?」
そんな二人をに割り入るかのように女性の背後から大柄な男性がぬっと現れる
「夏油様!」
どうやら二人は知り合いであるらしく、リリと呼ばれた女性はゲトウサマという男性へとパァと明るい笑みを見せる
「遅いですよ!夏油様!」
「リリが早すぎるだけじゃないかな?それより、目の前のその子は?」
「あ、そうでした!ほら!いい加減立ち上がって下さい!!こんなところを見られて誤解でもされたら大変ですから!」
そう言うとリリはベルの手を引いて、立ち上がらせる
その時に感じた、その体からは出るとは思えない自らよりも強い力に呆気に取られながらも、目の前にいる女性が冒険者なのだと思い至った
「あ、ありがとうございます」
「いえ。此方こそ私の注意不足でぶつかってしまって申し訳ないです」
「全然大丈夫です!だから頭を上げて下さい!」
ベルが慌てたようにそう言い、あわあわと慌てる
「ふっ」
その忙しない様子に夏油は嘗ての後輩を思い出し、思わず小さく笑ってしまう。それに二人は反応し、困惑したように夏油を見つめている
「あぁ、済まない。別に馬鹿にした訳ではないんだ。なんだか、懐かしくてね」
夏油がそう言い、懐かしそうに目を細め、口元をゆるりと綻ばせる。その様子に二人は声を掛けるのに戸惑い、三人に沈黙が走る
その沈黙を破ったのはその原因である夏油だった
「ところで、君はロキ・ファミリアに何か用事があるのではないかい?」
「え、なんで····」
正確に言い当てた夏油にベルは呆気に取られたように声を出す。するとペラリとベルの目の前に見覚えのある地図が差し出された
「君が落とした地図だよ。特段見るつもりは無かったんだけれど、広げられていたから自然と目に映ってしまったんだ」
はいと自らが落とした地図を手渡され、ベルはありがとうございます····と少し顔を赤くして受け取る
「あの、リリさんとゲトウさんはロキ・ファミリアの冒険者なんですか····?」
「いえ。私たちはロキ・ファミリアの冒険者ではないです。それに関わったこともありません。そうですよね?夏油様」
「·····うん。私達はロキ・ファミリアと違ってまだまだ小さいファミリアだからね、ダンジョン攻略の最前線を駆け抜けるロキ・ファミリアと接点なんてある筈がないよ。うん」
「そうですか···実は僕、これからロキ・ファミリアの入団テストを受けようと思っているんです」
「そうだったんですか」
「·····」
夏油は特段驚いたリアクションもなく、ただベルをじっと見つめている
(ロキ・ファミリアは
これは落ちるだろうなと夏油は確信した
だが、それを口にすることはないだろう。所詮、夏油とベルは会ってまだ間もない只の他人であり、他人にそんなことを言われれば精神的にも良い影響を及ぼすとは到底考えられないからだ
夏油は何処ぞの五条とは違って気遣いが出来る男なのだ
「受かることを願っているよ」
「はい!ありがとうございます!!」
じゃあ、失礼します!と足を進めようとしたベルに夏油は待ったを掛ける
「どうかしました?」
「一つ、警告しておこうと思ってね」
「警告?」
「そう。悲惨な末路を辿りたくのないならば今から言うことは守った方が良いだろう」
「!それは、一体····」
「
「へ?」
ベルが呆けたような声を上げるが、これ以上フレイヤの名前や話題に触れたくないのか夏油はリリを連れてヘファイトス・ファミリアへと足を進める
「それってどういう意味ですか?」
「そのままの意味だよ」
夏油は振り向かずにそう答え、やがてその姿はベルの目の前から完全に姿を消した
「·····」
残されたベルはただ呆然としていた
(フレイヤって、あの女神フレイヤだよね····この世で最も美しく、可憐て言われてる。そんな人が危険だってこと···?でも、なんでゲトウさんがそんなことを?)
「取り敢えず、ロキ・ファミリアのホームに行こう」
ベルは身を翻し、ロキ・ファミリアのホームへと向かった
「やッ!」
リリは新しく手にしたハルバードを目の前にいるキラーアントへと叩き付けた
しかし、キラーアントのその特徴的な鋼鉄のような外殻によりその一撃は外殻を凹ませる程度に収められた
「ギギッ!?」
背後からの突然の不意打ちと、外殻から響く衝撃に衝撃にキラーアントは驚愕の鳴き声を上げるが、リリはそんなことをさほども気にせずに何度も、何度もハルバードを外殻へと打ち付ける。
キラーアントは何度も反撃に出ようとするが、ハルバードを何度も打ち付けられることによって、その身は地面へとめり込み、立ち上がることは出来なかった
そこで初めて、自分が危機的状況に陥っていることに気が付いたキラーアントは仲間へと助けを求める為にフェロモンを放出させようとするが、ビキリとキラーアントの外殻に大きな罅が入る
「これでっ、終わりですッ!!」
リリが振り落としたハルバードが鋼鉄の如き外殻を砕き、キラーアントの魔石を粉砕した
だが、リリは直ぐ様に背後へとハルバードを振り抜いた
ガキン!と鋼鉄同士がぶつかり合う音と共に、リリを襲った主が壁へと吹き飛ばされる
壁にのめり込んでいたのはキラーアントであり、死ぬ直前にフェロモンを放出することに成功し、付近のエリアにいたキラーアントが此処へ駆け付けてきたのであった
「チッ」
リリは新たに呼び出されたキラーアントに苛立ちと自らの未熟さに思わず悪態を着いてしまうが、この事態をどうにか切り抜けるべくリリはハルバードを構え、頭を回す
(リリはまだキラーアントを一撃で殺す程の力を持っていません。首を正確に狙えたとしても三回程でしょうか···三回も振っていれば、他のキラーアントに邪魔されることは目に見えます。複数体での対処となれば、私のステイタスだと何れ綻びが出ます。ここは――)
「夏油様」
「これを使うんだね?」
はい、とリリがそう答えると夏油は片手に持っていたそれをリリの眼前へと投げ渡す
ドスンとまるで巨大な岩石が降り落ちたかのようなそんな重低音と共に、階層全体が揺れているのではないかと思ってしまう程の衝撃がビリビリと床を鳴らした
リリの眼前にあったのは巨大なハンマーだった
「出来れば、使いたくありませんでした。この武器は本来のリリのステイタスでは持つことすら出来ませんから」
リリは目の前の巨大なハンマーを両手で掴み取り、まるで旗を掲げるようにハンマーを振り翳した
「けど、そんな悠長なこと言っていられる程今のリリは強くありません。故に、使わせてもらいます」
リリがハンマーを振り下ろし、地面とハンマーが激突した瞬間、リリを中心としてダンジョンの地面に罅が入り、キラーアントはその衝撃によって宙へと飛んだ
「!?」
キラーアントは自身の体が宙を飛んでいることに驚愕するが、そんなキラーアントの眼前には巨大な鉄塊が迫っていた
「ふッ!」
リリはハンマーを振り抜く
グシャリと生々しい音、キラーアントの外殻ものともせずに粉砕し、その魔石すらも正しく木っ端微塵に砕いた
「やぁッ!!」
右足を軸にリリは回転をし、手首のスナップを効かせ、三匹のキラーアントを横薙ぎに振り抜き、その姿を魔石へと変えさせる
「キシャァ!!」
地へと戻ったキラーアントがリリへと胴体を両断せんとばかりにその巨大なアギトをキチキチと大きく開き、リリへと接近する
「!」
リリはハンマーを頭上へと投げ捨て、近くに刺しておいたハルバードを再び手にし、接近するキラーアントへと横薙ぎに打ち付ける。リリが横薙ぎに払った隙を狙ってリリへと接近したキラーアントにリリはハルバードの先の槍のような形状になっている部分でキラーアントの口を的確に狙い、串刺しにする
ドスンとリリの近くへと降り落ちたハンマーをリリは手にする。するとそれとほぼ同時に先程横薙ぎにしたキラーアントが再度リリへと迫る
「ギィァァァ!!」
「これで、最後ですッ!!」
キラーアントのアギトが届く前に、リリのハンマーがキラーアントへと叩き付けられ、グシャリと砕かれた
ふぅ、とリリが一息つき、周りにモンスターがいないことを確認した後に戦闘の構えを解き、手に持っているハンマーを地面へと置いた
「疲れましたぁ···」
「お疲れ様。中々動けていて良かったよ」
「ありがとうございます!けど、キラーアントに手こずっているようでは
「
夏油がそう言うと、リリは勿論です!夏油様!と嬉しそうに笑った
「さて、今日はここら辺にして、ホームへと帰るとしようか」
「そうですね。リリもかなり疲労してますし、ダンジョンは何が起こるか分かりませんから、ここら辺にした方が良さそうですね」
よいしょとリリは鞄へとハンマーを仕舞い込み、ハルバードを手に持つ。それを確認した夏油はそれじゃあ帰ろうかと言って、ダンジョンから出るべく上の階層を目指して歩き始める
それにリリは縦に並ぶよに夏油の後ろへとちょこちょこと着いて行く。その姿は宛ら親鳥の後をつける小鳥であった
何事もなくダンジョンへと出ることが出来た二人は今日一日で集めた魔石を換金した後に、ホームへと歩き始める
何時もならば人並みも少なくなり、夕陽でも眺めながら穏やかに帰り道を歩いているところだが、今日はどうやら違うようであった
ガヤガヤと道通りに人々が溢れており、その口々には“オッタル”という名前がポツリポツリ聞こえてくる
「何でしょうか?」
「····オッタル?」
夏油とリリは首を傾げながらも、ホームへと帰ろうと足を進め、ざわめく人々の横際を過ぎ去ろうとするとこんな声が聞こえた
“オッタルがバロールを倒し、レベル8に至った”と
「は?」
ピタリと夏油はその場で足を止めた
「夏油様?」
リリが不思議そうに夏油へと問い掛けるが夏油は聞こえていないのか、ただ呆然とその場に棒立ちしていた
(レベル8?上を行かれた···?オッタルに―――)
「夏油様!」
「ッ!」
リリの声によって意識が現実へと再浮上した夏油はリリが此方を心配そうに見ている姿で自らが立ち尽くしていたことを察し、申し訳なさそうに済まないと少し頭を下げた
「いえ、それよりどうしたんですか····?」
リリの素朴な疑問に夏油はなんでもないよとだけ返し、帰ろうかとまた歩き出した
「ちょ、待ってください〜!」
リリが小走りに夏油の後ろを着いていき、心配そうに夏油の背中を見つめているがそんなことも気付かない程に夏油はオッタルのレベルアップの件で頭が一杯だった
(オッタルは更に上へと至った、私よりも先に····!)
ギリリと夏油は悔しさから奥歯を噛み締め、掌を痕がくっきり残るという程に強く握り締めた
オッタルとの戦いでレベル7に至った夏油と、元々ステイタスがほぼカンストし、レベルアップの為の偉業が足りなかったオッタルではオッタルの方がレベルアップするのには有利な条件である。
流石の夏油といえどもこの一ヶ月程度でレベルアップをするのには期間や、乗り越えるべく壁、そしてステイタスの向上が間に合わなかった
オッタルが先にレベルアップをする理由など幾らでもある
けれど、
(私は、此処に最強に至る為にやってきた。だが、なんだこの体たらくは····!)
夏油の掌からポタポタと血が流れる
(そうだ、私は悟の隣に立つ為にダンジョンへと潜っているのだ。故に、私は昇り続けなければいけないんだ、
夏油の目に覚悟の炎が燃え上がった
(負けてたまるものか。この程度の
ホームへと辿り着いた夏油とリリ。夏油は扉に手を掛けながら、明日に深層へと挑むと決心をし、道具などの準備をしなければということを考えつつも扉を開く
「おかえり!夏油君とリリくん!」
「お、お邪魔してます」
そこにはヘスティアと白銀の髪と赤い眼を持つ少年、ベル・クラネルがそこにいた
「は」
「え?」
驚きを隠せないように固まる二人にヘスティアは気が付いていないのかベルを前へと押し出し、ニコリと笑った
「紹介しよう!彼はベルくん!僕達の
「よ、よろしくお願いします···」
ベルはペコリと頭を下げた
そんなベルの様子とワクワクと褒めてほしそうに此方を見ているヘスティアの姿に夏油は顔を手で覆った
「そっかぁ····」
夏油の弱々しい声がホームに響いた
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遅れた理由ですが、期末試験と公務員試験というダブルパンチに追われ、書く暇が無かったからです。終わった後も燃え尽きたように創作意欲が湧かなかったので遅くなってしまいました。誠に申し訳ないです
取り敢えず、試験等は落ち着きましたのでちょくちょくと投稿していこうと思います