オラリオに最悪の呪詛師がいるのは間違っているだろうか? 作:五月雨@ノン
魔石について独自設定入れました
「ふむ、先ずは来たるべく時の為の準備を進めなくては
な」
夏油は冒険者から奪い取ったマントを頭から被り、自らの服装や顔を晒さないようにする。夏油の現在の服装は相も変わらずに袈裟服であった
仏教が存在をしないこの世界では簡単には忘れられないような奇抜な格好であり、夏油が美形ということも相まり、一度見れば嫌でも夏油という存在を忘れることの方が不可能であった
そのことを夏油も正しく理解しているが故に、夏油は顔を隠し、まるで成り立ての冒険者の力量に自らの実力を調整することによって違和感を消している
コソコソと動くことはあまり好きではないが、元の世界でもやってきた事である為、印象に残らないコツやバレないように行動することに慣れていた
(正直、世界の中心と言っても良い
故に、夏油は緻密に情報を集める。ベテランや実力者ではなく下級冒険者を装い、自分が知らない情報やこの世界での常識を違和感無く、より確実に収集する為に。
「ありがとうございます」
夏油はじゃが丸と言うネーミングセンスの欠片も感じさせない売店で働いていたチョロそうなツインテールの女性にオラリオについて聞いたが、どうやら最近下界に降りてきたばかりの女神らしく、オラリオについては詳しく知らないようだった。
だが、それでも常識については知ることは知ることは出来た
目の前の女性が女神ということに思わず殺意が漏れ出しそうになるが、鉄の如き理性でそれを無理矢理に封じ込める。
神は人の嘘を見抜く
もし、少しでも疑問を抱かれ、問い掛けられればそれだけで私の計画を見抜かれ、頓挫する可能性すらある。それだけは避けなければいけないことだ
「では、これで」
「また、会おうねぇ〜!!」
目の前でニコニコと笑い、大きく手を振る女神も化けの皮を剥がせば私が知っている醜悪な存在だと知っていても、その面の皮の厚さにはある意味私も脱帽する
(取り敢えず、ダンジョンに潜るとしよう。それで、
私は天すら穿たんと聳え立つバベルの塔を一瞬だけ睨みつけ、ダンジョンの入り口へと気配を消しながら歩き出した
「第七階層でこれか.....」
(この程度で新米殺しと言われる程なのか...これならば下級冒険者ならば幾ら数が多かろうが全て三級又は四級の呪霊でも対処可能と考えても良いだろう)
夏油はキラーアントが落とした魔石を拾い、興味深そうに眺める。そこからは呪力にも似た力である魔力が凝縮されているように感じられた
だが、夏油はそこに注視などしていない。夏油が目を向けているのは、その中心部分の魔力に浸透している人間に対しての
冒険者ならば感知出来ることのないそれは、負の感情に誰よりも触れて来た夏油だからこそそれを正確に見抜くことが出来た
(これは、もしかすると...)
夏油は呪力を魔石に流し込み、呪力を浸透させる
十秒程経てば、魔石の中にある余分な魔力は炎に炙られ、蒸発される水のように弾き飛ばされ、残るのは殺意が浸透していた魔力だった部分のみ。
人間への殺意というある意味純粋な負の感情という下地があったことにより魔力は呪力へと形を変え、残されたそれは夏油にとって忘れられる筈も無い呪力を帯びた黒い玉がその手に存在していた
「ククク。これは思わぬサプライズだね」
(魔石を売り、金を得ている冒険者が、よりにもよってその魔石に襲われるなどなんと愉快の事だ)
夏油はそれを呑み込むと、確かに自分の呪霊のストックの数が増加したことを感じ取った
「出てこい」
そう言うと、夏油の足元に黒い影が現れる。それは、キラーアントの形をしているが大きさは先程よりも多少ばかり小さくなっており、何よりまるで影そのものかのような影を纏っていた
それに夏油は大きく満足した。その理由は主に二つであった
一つは、普通のそれとは違うキラーアントの姿により錯乱を狙えるということ
もう一つは、キラーアントの丈夫な殻と呪霊と化したことにより得た呪力が相まり、呪力を扱うことの出来ない冒険者にとって手強いものに成ったということ
「戦力調達はダンジョンのみで事足りるかもしれないな....後は、私自身の装備、強化が問題だな」
(装備は、ダンジョンの奥深くで採れるという素材や鉱石で解決する。私自身の強化は....どうするべきか)
思考をしながらも、今まで取った魔石を収納しつつ、取り敢えず今日はこの辺でダンジョンから地上へと戻ろうとし、自分が歩いて来た道を戻って行く
(私自身の強化、どうするべきか....)
どれだけ考えてもそれの明確な答えは何時まで経っても出てこないことを察し、夏油は自身の強化について一旦、考えることを止める
それと同時に、夏油はあることに気が付く
(人通りが無さすぎる。時間帯的にも人通りはある筈.....それなのに、何故こうも人が居ない?)
「ねぇ」
「ッ!」
その艶やかな女性の声が夏油の耳に入った瞬間、ゾクリと言いようもない悪寒が夏油の背筋に走り、夏油はその場から飛び上がり、後方へと下がることにより退避をする。
着地した瞬間に、夏油の視界の先には数メートル程離れ、フードを被った女性とガタイの良い獣人がそこに立っていた
その二人を目に映した瞬間、夏油の体は重圧なプレッシャーによって悲鳴を上げた
数多の人を殺してきたその手は、まるで北極の雪原を歩いているが如く震え、鍛えられた両足はまるで地震でも起きているかのように大きく震えている
「、誰なんだお前達は」
「あら?このローブ越しとはいえ、この私が分からないなんて随分と浅いのね。良いわ、特別に見せて上げる」
女がそう言うと、ローブを脱ぐ。ローブを投げ捨てた女性の姿に夏油は大きく目を見開き、目の前の女性が女神だと察した
「私はフレイヤ」
「ッ!」
(フレイヤだと!?なら、その隣にいる男はッ)
「オッタルだ」
美の女神フレイヤとその眷属であり、現オラリオ最強の猛者オッタルが夏油の目の前に立ちはだかった
(あまりにも、想定外ッ。接触するには今の私では速すぎる....!)
夏油に絶望が告げられた
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