オラリオに最悪の呪詛師がいるのは間違っているだろうか?   作:五月雨@ノン

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勢いで書きました




原作開始前
見知らぬ世界


「そうくるか!女誑しめ!!」

 

「失礼だな....純愛だよ」

 

 特級過呪怨霊である里香に口に出鱈目な量の膨大な呪力が集まっていく、そのあまりの量に風は台風のように渦巻き、地面が罅割れ、亀裂が広範囲に広がる。

 夏油はその様子を見て改めて里香の規格外の呪力量にど肝を抜きながらも、里香を手に入れればこの間違った世界を完全に革新することが出来ると

 

 

「ならばこちらは大義だ」

 

 夏油傑の全力の一撃と文字通り命を懸けた乙骨と里香の一撃がぶつかり合い、ズドンと大きな衝撃が辺りに走り、凄まじい轟音が響き渡る。

 そのぶつかり合いに辺りの建物はまるで豆腐のようにいとも簡単に崩落し、瓦礫へと姿を変える

 

(なんて威力.....!)

 

「ッ!まさか、ここまでとは―――」

 

 夏油傑の正真正銘の全身全霊は乙骨と里香の一撃によって打ち消される。

 それだけでは二人の一撃は止まることなく、夏油の右腕が激しい熱に包まれ、根元から右腕が抉られる。その衝撃の余波に夏油の体は激しい風に攫われ、その体躯を大きく吹き飛ばした

 

こうして、最悪の呪詛師と特級被呪者の激しい戦闘は幕を下ろした。夏油傑の敗北を以て

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フフフ、素晴らしい。本当に素晴らしいよ、正に世界を変える力だ」

 

 ズルズルと夏油傑は血液不足で重い体をなんとか動かし、建物の裏道を歩いていた。乙骨に正面から挑み、敗北したにも関わらずその顔からは悲壮感はなく、寧ろ獰猛な笑みすら浮かべている。

 彼の頭にあるのは自身が敗北したという絶望感ではなく、里香さえ手に入れば世界を革新出来るという確かな確信と希望だった

 

「里香さえあれば、せこせこ呪いを集める必要もない」

 

まと一歩また一歩と確かに歩みを進めていく

 

「次だ、次こそ手に入れる!!」

 

興奮と感動で声を震わせる夏油には重症を負っているという事実が霞む程のおどろおどろしい雰囲気があり、並の呪術師では近付くことすら出来ないだろう。

 

だが、そんな夏油に向かって近付いて来る男の影が一つあった

 

その男は両目に六眼を持ち、無下限呪術を完璧に操ることのでき、現代最強と唄われた男

 

 

その名前は――――

 

 

「遅かったじゃないか、

 

現代最強の男 五条悟

 

 

「まさか君で詰むとはな。家族達は無事かい?」

 

ヘタリと夏油は地面へと座り込み、五条悟へとそう問い掛ける

 

五条悟は溜め息を吐いた

 

「揃いも揃って逃げ果たせたよ。京都の方もオマエの指示だろ」

 

「まぁね、君と違って私は優しいんだ。あの二人を私にやられる前提で乙骨の起爆剤として送りこんだな」

夏油はジトリした目で五条悟の方を見ながらそう言う

 

「そこは信用した。オマエの様な主義の人間は若い術師を理由もなく殺さないと」

 

 五条悟がそう言うと夏油は大きく目を見開いた後に、皮肉めいた笑いを思わず溢した

 

「クックックッ、信用か。まだ私にそんなものを残していたのか」

 

夏油の脳内に嘗ての親友と過ごした日々が流れる

 

(あぁ、懐かしいな)

 

 夏油は少し感傷に浸った後に、胸元からあるものを取り出し、それを五条悟へと投げつける。

 五条は突然投げられたそれに動揺することも無く、しっかりと受け止める

 

「コレを、返しといてくれ」

 

「!」

 

 

五条悟は夏油に投げつけられた物を見てみるとそれは乙骨優太の学生証だった

 

(確か、優太は小学校のどこかで落としたって言ってたな......ということは、)

 

「小学校もオマエの仕業だったのか!!」

 

「まぁね」

 

「呆れた奴だ....」

 

 五条悟が胸ポケットに乙骨優太の学生証を入れ、三回程深呼吸をした後、五条悟は問う

 

 

「何か言い残すことはあるか」

 

「.......誰がなんと言おうと非術師(さるども)は嫌いだ。でも別に高専の連中まで憎かったわけじゃない」

 

夏油が一呼吸空ける

 

 

 

「ただこの世界では、私は心の底から笑えなかった」

 

それは夏油傑の本心だった

 

 彼の心は呪霊を呑み込む度に蝕まれ、仲間を傷つけられていく度に磨り減っていった。

 ある日、彼は特級呪術師九十九由基の話を聞き、ある真実を知った。“呪霊は非術師からしか生まれてこない”ということだった

 

その事を知った時真っ先に頭に浮かんだのは『じゃあ、非術師(さるども)がいなくなれば呪術師(私達は)は傷つかなくてすむのではないか?』という考えだった

 

それでも彼は非術師は守るべき者だと自分に言い聞かせてきた

 

 

 しかし、そんな彼を嘲笑うかの様に運命は追い打ちをかけた。それは彼のことを慕っていた後輩の死、そして非術師による呪力を持つ双子の迫害。

 そして、自身の片割れである五条悟との埋まることの無い圧倒的な迄の実力の差

 

彼の心はもう限界だった。彼はその場で迫害をした非術師達を皆殺しにし、双子と共にその場から逃亡した

 

その後、彼はひたすら呪霊を呑み込み続けた。全ては非術師を皆殺しにし、呪術師達(仲間達)が傷つくことなく、笑い合い暮らせるように、楽園を築けるように

 

そんな彼の仲間を思う優しさを知っている五条悟はフッと優しい笑みを浮かべる

 

 

「お前は今でも俺の唯一の親友だよ」

 

 夏油傑は一瞬ポカンと口を半開きにした後、まるで初めて星を見た子供のように無邪気に笑った

 

「はっ、最期くらい呪いの言葉を吐けよ」

 

 バシュと音を立て、夏油傑の心臓が五条悟によって撃ち抜かれる。

 視界が流転し、暗転する中で今までの人生を振り返る

 

(あぁ、碌でもない人生だったけど....悪くはなかった)

 

「ごめんねミミ、ナナ、それに私の家族達。先に逝かせてもらうよ」

 

 

 そうして夏油傑はこの世を去った

 

 夏油傑は数多の非術師を騙し、そして殺した。そんな彼は紛れもなく悪人であり、赦されざるべき人間だろう

 

 故に彼の行く末は地獄への一本道の筈だった

 

 

 だが、何の因果か彼の運命は歪み、想定外の結果を生み出した。それは本来有り得ざる禁忌、常人では耐えきれぬそれに耐え切れずにたましいそのものが消滅するだろうが、最悪の呪詛師である夏油は決してそんな常識に囚われる男などではなかった

 

 

 

 

 

 

 

 パチリと夏油が目を覚ますがあまりの眩しさに顔を顰め、目を守るように手で覆う

 

「ッ!眩しいな....」

 

 何回か瞬きをするとやがて目が慣れ始める

 

「私は乙骨優太に負けて、悟に殺された筈....」

 

 しかし、彼の体には傷一つなく、失った筈の右腕もそこには確かに存在していた

 

「これは一体どういうことだ.....?」

 

 夏油はそのまま座り込んでいる訳にもいかず、路地裏から出ようと足を進める。

 辺りを見回すと周りの建物は夏油が今まで目にしてきたものとは掛け離れていた

 

(見たことがない建物だな.....何者かによって何処かに移動でもさせられたのか)

 

スタスタと歩き続けていると、やがて出口が見える

 

「やっと出口か」

 

夏油はそこから出ると目を大きく開かせた

 

「は」

 

 

 一時代前だと彷彿とさせるような建物と天まで届くのではないかと思わせる程に巨大な塔、そして獣人やエルフなどの様々な人々が賑わう様子が夏油の目に映った。

 夏油はポカンと口を開き、呆然とする

 

「一体何処なんだここは.....」

 

 

 その都市の名は迷宮都市オラリオ

 

 様々な神が下界に未知を求め、集まった場所だった

 









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