オラリオに最悪の呪詛師がいるのは間違っているだろうか? 作:五月雨@ノン
今回も勢いで書きました。ちょっとキャラ崩壊気味です
「僕の名前はヘスティア!これでも一応神様なんだぜ!!」
ウェイトレスを着用した黒髪の麗しいツインテールの少女がそう名乗った
夏油はその名前に既視感を覚える。脳は突然の事態でも高速度で回り、その答えを導き出した
(ヘスティア、ギリシア神話の処女神....)
夏油は何時でも戦えるように体勢を相手に気付かれない程度に構え、ヘスティアを観察する
その体躯は余りにも戦いに向いておらず、強者特有の覇気を纏っていない。如何にも戦ったことがないとその体が暗にそう伝えていた
だが、夏油は何事にも例外という存在があることに気が
付いている。
それこそ、嘗ての親友のように
故に夏油は警戒する
「へぇ、そうだったのかい。それで、その神が私に何か用かい?」
「最初に言っただろ?“何か困ったことがあるなら助けになる”って」
ヘスティアがニコニコと人畜無害な笑みを浮かべて、こちらへと近付いてくる。
その様子は小さい幼子のようであるが、夏油は神の悪辣さを身を以って知っている
(ふ、助けになるか.....心にもないことを)
夏油傑は神が嫌いだ。いや、正しく言うなら
夏油傑は幾つもの呪霊と対峙してきた。中には人々の信仰が失われ堕ちた神や、罰せられて当然とも言えるべき行為をし、堕ちた神もいた。
そして、そんな神と対峙していく度にその醜悪さと冷酷さを見せつけられ、夏油の心に神という生物がどれだけ愚かで醜悪な生き物なのかということを刻んでいった
そして、堕ちた神は夏油を敬愛している一つ下の可愛い後輩を無惨にも殺した
それがトドメとなり夏油傑は神を嫌いになった
(だが、丁度良い....情報はいくらあって困るものではないからね)
「それは助かるよ....じゃあ、ちょっと質問をさせてもらっても良いかい?」
「もちろんだとも!」
パァとまるで子供のように笑う姿に何故か既視感を覚え、騙していることへの罪悪感で心の奥がチクリと針を刺されたかのように傷んだ
それに夏油は違和感を覚えた
(何故私は神如きに罪悪感を感じているんだ....?)
夏油は自らのの心臓部分に異常がないか、手で確認するが、何も異常は感じられなかった。
夏油が気のせいだと自らを納得させていると、目の前にヘスティアが心配そうに立っていた
「?大丈夫かい?胸が痛むのかい??」
ヘスティアは心臓部を抑える夏油の手をそっと、優しく握る。夏油はその手の温もりと目の前のヘスティアの顔に又もや既視感を覚え、その温もりに心の奥のドロドロとし、絡まり合ったナニかが解けていくような感覚に安堵を覚える
だが相手はあの忌々しい神であることを思い出し、咄嗟に手を払った
「ッ!触るな!」
「わっ!」
ペタンと神がヘスティア地面へと尻餅を着き、痛みの声を漏らすが夏油にはそれを気にする程の余裕を全く無かった
夏油の顔に冷や汗が流れ、顔は悲痛に染められる
(私は今何を感じた?神を相手に安堵だと.....?)
頭はズキズキと痛む
(私は一体どうしてしまったんだ....何故、何故こんなにも神相手に心が乱されるんだ)
目の前が真っ暗になるような感覚と共に、自分が立っているのか、崩れ落ちているのかも分からなくっていく
段々と意識が、闇に呑まれ――――
「イタタタ」
ハッと夏油の意識が急上昇する
「す、すまない」
(私は何をしているんだ....)
夏油はペタンと尻餅を着いたヘスティアの手を引っ張ることで立ち上がらせる。
所々が土埃で汚れていたので、手でそれを取っ払う
「大丈夫だよ!それよりも君は大丈夫なのかい...?」
じっとこちらを心配そうに見つめる
「あぁ、大丈夫だよ....」
夏油はニコリと作り笑いをなんとか浮かべる
「嘘、だよね」
「ッ!何を根拠に....」
「分かるのさ、神に人の嘘は通用しないからね....」
「なッ!?」
ジリッと無意識に後退する
(人の嘘が通じないだと....!?なんてデタラメだ....!)
「それに君の気配....普通の人じゃないよね?」
一歩とまた1歩と目の前の神がこちらへと近付く
夏油はそれに恐怖するように一歩、また一歩と後退する
(不味い....!このままでは私の正体がバレるのも時間の問題だ....!)
夏油はなんとか回らない脳をグルグルと動かし、この場での最適解を探し出そうとするが、遂に壁へと遮られ、後退する選択肢は消え去った
どうすれば良いのか焦る脳を必死に回し続けるが、右手から伝わってきた温もりによって遮られた
「な、にを」
「君は自分が今どういう顔をしているのか分かってないみたいだね....」
目の前の神がスッと私の顔に触れる
「まるで迷子になった子供のような顔さ....」
そう言い、目の前の女神はクスリと笑みを浮かべる
(やめろ....)
「僕は君のことを何も知らない」
スルリと私の顔を撫でる
(やめろ)
「けどね、僕は君の助けになりたいんだ」
(やめろ.....!)
「だから、君のことを僕に教えてくれないかい?」
我慢の限界だった
「やめろッ!!」
激情の赴くままにヘスティアの白く細い首を絞める
「ぅぐッ!?」
「そんな目で私を見るな!これ以上私の心を乱すな!!
神の分際で、神のような醜悪の存在のくせに私を助けるだと?ふざけたお題目も大概にしろ!!私は知っているお前達の本性を!その根源に潜む醜悪さを!!」
夏油の情緒は最早グチャグチャで言っていることも激情に支配されている今、言っていることは全て滅茶苦茶であり、支離滅裂だった。
けれど今はそれでも良かった。胸の内にある神への嫌悪感が決壊したダムのように流れ込み、次々にそれが口から溢れ出す
「散々、
ギリギリと手の力が強まっていく
“やめろこのままでは死んでしまうぞ”と私の冷静な部分が警鐘を鳴らす
「ッ、で、まかせ、なんかじゃない、よ」
「戯れ言を....!」
ギリギリて更に力を強めていく
「やめろと言っている!!何故、こんなことをしている私にそんなことが言える!?」
「あぐッ、や、やめな、いさ」
ニコリと目の前の神が歪な笑みを浮かべる
(やめろ、やめろ!そんな目で私を見るな!!神のくせに、醜悪な存在のくせに!!その瞳に暖かな慈愛の情を浮かべ、母の様なその温もりで私に寄り添おうとするな!!)
「死ね」
ミシリと骨が軋む音が聞こえ、ヘスティアの命が危ないことを知らせる警報のように聞こえたが、それでも夏油は首を絞めるのを止めない
「死ね!死んでしまえ!!お前なんて、お前なんて...!」
ポロリと目から生暖かい液体が流れる。それはポタリポタリと重力に従い、地面へと落ちていく
(あ、れ。私は何故、泣いて――)
目元をヒタリ撫でる温もりを感じた
「泣か、ないでほしい、なぁ」
首を絞められているヘスティアが腕をプルプルと震わせながら夏油の目元を優しく撫でていた
「ッ!」
夏油は思わず手を放すと、ドサリとヘスティアは重力に従い、地面へと崩れ落ちた
「ゲホッ!ゴホッ!」
「ッ!」
夏油はその場から走り出した。ただ我武者羅に、親に叱られ、泣き去る子供のように、ただひたすら、この胸に灯った温かさ掻き消えるようにと
(私は、神が嫌いだ!!)
あの神のニコリとした暖かい笑みが脳裏へと過る
(私は神が嫌いだ!!!)
あの神の温もりが顔を伝わったような気がした
(私、は)
あの慈愛の情を浮かばせた瞳を思い出す
(わた、し、は)
『僕は君の助けになりたいんだ』
「神が、嫌いな、筈なんだ····!」
その呟きは街の喧騒によって掻き消され、誰にも届くことはなかった
閲覧ありがとうございました。評価バーに色がいつの間にか付いていてとても驚きました。前話で評価、感想、お気に入り登録してくれた方本当にありがとうございます。投稿は不定期ですが、広い心で待って頂ければ幸いです。では、次回の話でお会いしましょう。さようなら
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