オラリオに最悪の呪詛師がいるのは間違っているだろうか?   作:五月雨@ノン

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誓約

 

 

五条悟(最強)の元片割れさ」

 

そう言い、夏油は穏やかにそしてどこか寂しそうに笑った

 

もう二度とこれ(最強)を名乗ることは、いや名乗る権利は無いと思っていた夏油。だが、いざそれを名乗ってみると暖かい感情と寂しい感情が胸の中を満たした

 

それは嘗ての青春の証であり、夏油が理想郷を創造する為に手放してしまった(最強)

 

 

(あぁ、懐かしいなこれ(最強)は....そして

 

 

 

 

         

 

 

       なんて悲しい

 

 

これは夏油が夏油たる数ある内の要素の一つであり、自らが捨てた(置いてかれて)もの。禪院甚爾との戦いで無様に叩きのめされ、面倒臭いという理由で生き延びた夏油

 

致命傷を受けたにも関わらず自らの力で死の瀬戸際から復活し、進化を遂げた後に禪院甚爾を圧倒的な力で押し潰した五条悟

 

 夏油の劣等感は取り返しのつかない程に膨れ上がっていた。もう、五条悟(最強)の片割れなんて口にすることさえ出来なくなっていた。

 それ程までにも呪術師として立っているステージが違くなっていた。()()()()の呪術師の五条悟と只の()()()()()である夏油傑では肩を並べる所か、影すらも踏めることすら出来なかった

 

 

もう誰も夏油を五条悟のパートナーとは言わなくなっていた

 

(けれど、もし、まだチャンスがあるとするのなら、私は目指ずにはいられない)

五条悟(親友)が裏切ってしまった自分を最期までたった一人の親友と言ってくれた親友(とも)に報いたいと思ってしまったから。あの時の目は変わらず夏油を相棒(片割れ)として瞳に映していたから。

 

だから、名乗る五条悟(最強)の片割れを、そしてここで誓う(最強)に辿り着いてみせると。それは嵐の吹き荒れる果てしない道を地図も持たずに突き進むような無謀

 

それでも止まることは出来ない。何故なら夏油傑は五条悟のたった一人の親友(とも)なのだから

(私は、もう逃げない(最強)から)

 

『早く此処()まで来いよ、傑』

 

耳元で親友の声が聞こえた。オラリオ(此処)には五条悟はいない、だが夏油はその声が只の幻聴ではないことを根拠は無いが確信していた

 

(直ぐにでも追い付いて、いや、追い抜いてやるさ)

 

その為には力を付けなければいけない。闘争が、経験があまりにも五条悟(最強)に追い付くにはあまりにも少なすぎる。傑は腰が抜けているのかペタリと腰を着いているヘスティアの元へと向き変え、コツコツと近付いて行く

 

するとヘスティアはわたわたと忙しない様子で慌て出すがそれを無視して夏油はズンズンと足を進め、遂にヘスティアの前まで着き、片膝を着いて目線を合わせる

 

 

「突然ですまないが、私をファミリアに入れてはくれないか?」

 

するとヘスティアは大きく目を見開いた後に下へと俯いた

 

「虫が良い話だと自分でも自覚している、けれど私にはどうしても力が必要なんだ。だから」

 

――頼む

 

そう言うとペコリと夏油は頭を下げた

 

夏油はプライドが高く、頭を下げるという自分が下だと受け入れるような行為をすることはなかった。

 

 

だが、夏油はヘスティアに頭を下げた、しかも相手は夏油が嫌っている神である

 

もし、これがヘスティア以外の神ならば夏油は謝ることなどなくファミリアにも入らずにダンジョンに無断で入っていただろう。だが、ヘスティアという純粋で人を気遣い、無邪気に笑う姿は夏油の知っている神という存在から大きく外れていた

 

むしろ、その姿は嘗て自分が守ることが出来なかった天内理子という善人を彷彿とさせた。だから、夏油は頭を下げる

 

守られるべき人を傷付けてしまったから

「名前教えてくれないかな」

 

「夏油、傑」

 

ヘスティアが夏油の顔を見る。その目には先程の弱々しい様子はなく、神としてのヘスティアがいた

 

「君は僕のファミリアに入って、何を成したい?」

 

そうと問い掛けたヘスティアの顔には嘘偽りなく話して欲しいという心の声が聞こえてきそうな程に真剣だった

 

 

「私は、果たしたい約束がある」

 

「私は取り返しのつかない裏切りをして()を一人にした。自分勝手に傷付けてしまった、苦しめてしまった、悲しませてしまった。そして、二人で誓った約束を破ってしまった」

 

「だけど、()は裏切り者の私をたった一人の親友と言ってくれた。信用してくれていた、前と変わらずにずっと信じていてくれた」

 

「だから、私は果たしたい。嘗て自分で捨ててしまった約束(最強)を」

「自分勝手なのは、自分が良く分かっている。だけど、私はその約束を果たしたいんだ」

 

 

「どうして?」

 

ジッと此方を見つめながらヘスティアが問い掛ける

 

 

「簡単なことさ」

 

 

 

「私のたった一人の親友だからさ」

 

夏油は笑った。憑き物が落ちたように、子供のように、柔らかく微笑んだ

「そっか」

 

ヘスティアも笑った。目の前の青年の憑き物が落ちたことが嬉しくて、夏油と同じ位に柔らかく微笑んだ

 

 

「僕のファミリアの団員は一人もいない」

 

「お金だって全然ない」

「ホームはボロボロの教会さ」

 

 ヘスティアの目に涙が溜まっていく

 

 

「それでも、僕の家族になってくれる?」

 

夏油は愚問だとばかりにまた笑った

 

 

「あぁ、君じゃなきゃ駄目なんだ。君以外有り得ない」

 

「そっか、そっか....!」

 

 

ヘスティアが涙を拭う。目端は赤く、目も少しだけ赤く、声は鼻声で泣いたことが容易に察せた。だが、ヘスティアは言葉口を開く

 

「夏油君!」

 

 

 

 

「君を、ヘスティア・ファミリアの団員に任命する!」

 

 

「僕はこう見えて独占力が強いんだ!もう離してやらないぞ!」

 

そう言ってヘスティアは笑った。その笑顔は一枚の完成された芸術品のように美しかった

 

「あぁ、離れるつもりなんて毛頭ないさ」

 

ヘスティアは嬉しそうにまた笑って夏油と手を繋ぎ、ファミリアへと足を進めた。夏油は少し驚いた顔をした後に、ヘスティアの隣へと並んだ

 

夏油は繋がれた小さい手を見て微笑んだ。ここから全てが始まるのだと。どんなに辛いことがあろうともこの()が引き裂けることは無いだろうと、そんな根拠のない確信を抱いて

 

「今日はご馳走にしようか!」

 

「お金は大丈夫なのかい?」

「任せておきなよ!」

 

ヘスティア・ファミリアの物語がここで始まりを告げた

それを祝福するように月光は光を強め、二人の笑顔をより一層明るく照らした

 

 

 








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