河童は不思議な生活がしたい   作:東風ますけ

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第23話「忍び寄る終焉」

 

 

俺たちがポルトポルト郊外へ向かうと、もう既にそこは戦場となっていた。

 

ポルトポルトの兵士たちが必死になって応戦してはいるものの、黒影(シャドウ)化したモンスター相手には勝てないだろう。

 

ポルトポルトの美しいビーチが次々と壊されていく。ヤシの木や、オレンジの木が薙ぎ倒され、ポルトポルトで人気な乗り物のカメは、モンスターに怯えて逃げていってしまっている。

 

兵士たちが何人も倒れ、何処からか子供の泣き声が聞こえる。

 

この景色は、そう、まるで、地獄のようだった。

 

「くそっ!嫌な予感が的中した!ルーベルト!アタシは兵士たちの援護や救助を行う!ルーベルトは最前線でモンスターを食い止めてくれ!」

 

「了解!」

 

オリビアに指示されたように、俺の役割はタンク。最前線でモンスターの進行を食い止める役割だ。厳しい役割だが、俺も歴としたライフマスターの1人だ。

 

このくらい、どうってことない。

 

「まあルーベルトさんは人じゃなくて河童なんですけどね」

 

そうそう。それな。

 

………………………走りながら俺は、声がした左の方を向く。

 

そこには見覚えのある光るチョウチョが居た。

 

「私たち!相棒ですよね!!」

 

「………そうだな。たしかに、俺たちは相棒だ。………よし、チョウチョ。帰れ」

 

「だが断ります!」

 

「だと思ったよ。ったくしゃあねぇーなぁ。………覚悟はいいか?」

 

「私はできてます!」

 

なんかコイツ、今日はやけに『スゴ味』があるな。

 

ま、そんなことはどうでもいいか。

 

「そうと決まれば行くぞ!俺たちを待っている人たちが居るんだ!」

 

「えぇ!急ぎましょう!」

 

俺たちは最前線へと全速力で向かった!

 

■■■■■■■■■

 

モンスターが大量に進行してきている桟橋に到着した。そこには何名かの兵士と、1人。恰幅のいい傭兵風の男がいた。

 

「ハンニバル兵士長!増援です!増援が来ました!」

 

「なんだと!?いや、しかし、生半可な実力ではかえって邪魔だ!今俺様は後ろを向けない!そいつらはどんな見た目だ?強い奴か?お前が判断しろ!」

 

「え、えっーとですねぇ、………全身緑色のクチバシの付いた変なやつと、キラキラしたチョウチョです」

 

「は???お前はいったい何を言っているんだ???」

 

恰幅の良い男の名はハンニバルというらしい。どうやら、会話から察するに、ハンニバルが兵士長らしい。

 

「ようハンニバル兵士長。俺はルーベルト。13個目のライフ『河童』のマスターだ」

 

「こんにちわ………あっ!今はこんばんわでしたね!………コホン!私の名前はチョウチョ!ルーベルトさんの相棒です!」

 

「河………童?13個目のライフ?………ダメだ。何言ってるのかさっぱりわからん。────ってぐおっ!!コイツ、しまガメの化け物か!?」

 

ハンニバル兵士長が戦っているのは「しまガメ」の黒影(シャドウ)化した奴だ。

 

しまガメは通常でも、「うできき」の傭兵が苦戦するレベルの強さだ。それが、黒影(シャドウ)化したんだ。ランクが「マスター」じゃないと対応できないレベルの強さだろう。

 

推定レベルは………「25」くらいか?

 

「下がってくれハンニバル兵士長。俺が仕留める」

 

「いや、しかし、コイツはとてつもなくヤバイぞ!?兵士長の俺様ですら食い止めるので精一杯だ!?」

 

そりゃそうだろう。逆にこんなヤバい奴止めれる奴がそうホイホイといてたまるか。

 

「いいから下がっててくれ。俺はオリビアから頼まれて来たんだ」

 

「オリビア様から!?………わかった。いいか?無理だったら逃げろよ?」

 

「ルーベルトさーん。出来るだけ早く倒してくださいねー」

 

温度差が酷いことになっている。まるで、キリタチ山の『溶岩の洞窟』と、キリタチ山『山頂』みたいだ。

 

マグマとスノウ。全くの対極に位置するものが共存していて、俺の頭がバグりそうだ。

 

『グラガァァァァァ!?!?!?』

 

っとと。くだらないことを考えている余裕は無さそうだ。俺は相手を分析する。

 

身長は3メートルってとこか?

チャージトロウはまず無理だな。

水宝石(ウォータージェム)も、この先の連戦を考えると、あまり使いたくない。あくまでアレは切り札だ。

 

となると、やり方は一つ。

 

「握りつぶしてやるぜ!」

 

レベルアップした俺の握力はおよそ『1.5トン』。

 

うん、なんかヤベェくらい強いな?

 

まあレベル1でも150はあったし、正当進化ってやつだな。

 

レベルが1レベル上がるごとに50キロ追加だ。そして今の俺は27レベル。ちょうど1.5トンだな。

 

どうやら、ほかの奴らはレベルが上がってもこんなに握力は上がらないらしい。つまりこれも『河童』の能力ってわけだ。そうだよな、他の奴らと違って、俺、武器ないもんな。というかなぜか武器、使えないんだよな。多分ライフの制約だろう。魔法使いが強い両手剣を持てないのと一緒だ。

 

でも、だからって、この身一つってのは、なかなかキチィもんだ。

 

『ギュラァァァァー!!!!!』

 

「お前の甲羅を握りつぶして、俺の甲羅の装飾にしてやるぜぇ!!!」

 

しまガメはその巨体を活かして体重を乗せたスタンプ攻撃をして来た。それを右にかわして、俺はしまガメの左前脚に足をかける。

 

「なかなか登りやすいいい背中してんじゃねぇか。今度また乗せてくれよな?」

 

登りきって、甲羅のてっぺんまできた俺は────甲羅に手を添えて、甲羅を割った!!!

 

『ギュルガァィィィィ!?!?………バタン』

 

気絶したな。よかった、流石に頭を握りつぶしたくはなかったからな。安心したぜ。

 

「………なあお前。俺様の目がおかしいのか?あの、ルーベルトとか言ったか?アイツが、俺たちが何人がかりでも倒せなかった奴を、たった1人で倒したように見えるんだが…?」

 

「おかしいですね、僕たち、夢でも見てるんでしょうか?」

 

「お互いにほっぺをひっぱってみようぜ?」

 

「賛成です」

 

ぎゅぅぅぅぅ。

 

「「………痛い。………ってことは現実!?」」

 

「アホなことやってないでさっさと他のモンスターを食い止めていてくれ」

 

「ルーベルトさんルーベルトさん。早くドクロ石を探しに行きましょう!」

 

「ああ!急ぐぞ!」

 

俺たちはドクロ石があるであろう、マパラッパ諸島への桟橋を渡り出した!

 

■■■■■■■■■

 

「ひぇぇぇぇ!こないでくーださーい!」

 

『がぁぁう…』

『うぅぅあ…』

 

かいぞくゾンビに追いかけられている、キグルミ族がいた。

 

「今更なんですけどルーベルトさん。ファンタジールでよく見かけるあの人?たちはなんなんですか?」

 

「あれ?俺、チョウチョにキグルミ族の説明したことなかったっけ?」

 

「無いと思います」

 

「たーすけてくーださーい!」

 

「キグルミ族っていうのはな、空から降って来た種族なんだ。世界各地にいてな、環境適応力がずば抜けて高いんだ。ほら、キリタチ山山頂とかにも居ただろ?」

 

「あぁ!たしかに!あんな寒いところでも平気そうでした!………ちなみになんですけど、キグルミ族って、『キグルミ』……なんですか?」

 

「中に綿が詰まっているただの人間だよ」

 

「それって本当に人間ですか!?………まあ全身緑色のクチバシがついた人もいますし、たしかにキグルミ族は居てもおかしくないかもしれません!」

 

「なんでもいいから、はやーくたすけーろくださーい!!」

 

『ぐるぁぉ…』

『うげぃぃ…』

 

ずっと追いかけられ続けていたキグルミの口調が荒くなって来た。

 

「ルーベルトさん!出番です!」

 

「司令塔みたいな雰囲気出せば、働かなくてもいいと思ってないか?」

 

「………そんなことないですよ」

 

オイ、こっち見ろ。

 

………とりあえず、かいぞくゾンビを倒すか。

幸い、コイツらは黒影(シャドウ)化してないみたいだしな。サイズもかいぞくゾンビってだけあって普通の人間サイズだ。コレならチャージトロウでいいな。

 

「せいっ」

 

『ぐげぼぉ!』

『ひでぶぅ!』

 

かいぞくゾンビたちはなんだか世紀末みたいな声をあげて気絶した。

 

「あ、あーりがとうござーいまーす!あなたたーちは、ファボの命の恩人でーす!」

 

とんがり帽子を被った、小さな紫色のキグルミはファボと名乗った。

 

「ファボさんは魔法使いさんですか?」

 

たしかに、とんがり帽子を被るのは総じて魔法使いの連中だ。

 

「な、なーんでファボが魔法使いだーあってわかったんでーすか?そうでーす!ファボは師匠、クローネのおつかーいをしにポルトポルトに来たんでーす!」

 

「クローネ……ってたしか、魔法使いの「マスター」のあの黒猫か!」

 

「あぁ、あの喋る猫さんですね。動物が人の言葉を喋ったので、私、とってもびっくりしました」

 

「俺はツッコまねぇからな???」

 

チョウチョがユエリア状態で舌をペロっと出してる幻影が見える見える。

 

「とりあえず、ファボ。お前はポルトポルトの街の方に戻れ。ここはとても危険だ」

 

「わかーりましーた。ファボ、いい子なのでききまーす」

 

「えらいですねファボさん。私なんてルーベルトさんのいうこと一回も聞いたことないです!」

 

「チョウチョさんすごいーでーすー!ルーベルトさんも、また会いたーいでーす!ファボは先にかえーるでーす!ばいばーいなんでーす!」

 

「おう、ばいばい」

「えぇ、ばいばいです!」

 

ファボはわっせわっせと桟橋を渡って帰っていった。

 

「可愛かったですね。わたし、キグルミ族さんのことが好きです!」

 

「そりゃあいいな。世界中にいるからいつでも会えるぜ?クルブルクに帰ったらキグルミ族が何人いるか、数えてみるか?」

 

「いいですね!やりましょう!是非!やりましょう!!」

 

ユエリアの熱量がすごい。俺、溶けちゃうよ。

 

「うわぁぁぁぁぁぉぁ!!!!!!!ぼ、ボクの聖剣アルテミカ(仮)がぁぁぁぁぁ!?!?!?」

 

「なんかうるさい奴がいるな」

 

「えぇ、近所迷惑ですよね。夜遅いのに」

 

■■■■■■■■■

 

正直嫌だったが、何かあってからでは遅いから、一応確認として、俺たちは声の主の元へと向かった。

 

「うっ………うっ、ぼ、ボクの聖剣アルテミカ(仮)が……どうしてなんだ…」

 

なんか金髪のガキンチョが泣いていた。

 

「どうしたんだよ、そんなに泣いて」

 

「………モンスター?」

 

「ちげぇよ、歴とした人間だ」

 

「ルーベルトさんは河童です!」

 

「うわぁ!?チョウチョが喋った!?!?」

 

そういやそうだよな。うん。最近は周りの奴らがその反応しなかったから忘れてたけど、普通のリアクションって、そうだよな。様式美ってやつだよな。侘び寂びってやつだよな?

 

この金髪の少年の王道なリアクションに、俺はなんだか、無性に感動した。

 

「ぼ、ボクの聖剣アルテミカ(仮)が……」

 

「ただのアイアンソードじゃねぇか」

 

なんか泣いてたけど、折れた剣は、至って普通の、ごく普通の、市販のアイアンソードだった。

 

「………ルーベルトさん、ルーベルトさん。もしかして、イタイ人って奴ですか?厨二病ってやつですか?(ヒソヒソ)」

 

「あぁ、間違いねぇ。その類の患者だ。優しい目で見守ってやろうぜ(ヒソヒソ)」

 

「おい!聞こえているぞ!ボクを馬鹿にしているな!?」

 

してないしてない(大嘘)

 

「してるじゃないか!!!」

 

「なんでお前初対面なのに俺の心の声わかるんだよ」

 

「不思議ですねルーベルトさん」

 

存在そのものが不思議な奴がなんか言ってらァ。

 

「ボクは勇者なんだ!そこにある邪悪そうな石を倒そうと試みた英雄なんだぞ!!」

 

英雄………ねぇ?

 

英雄ってのは、他の人から言われて初めて英雄なんじゃねぇの?自分で言うのはただの自称ってやつだ。

 

「ほらっ!その石を見ろっ!見るからに怪しいだろ!?」

 

金髪のちびっこ厨二病が指差した方を見ると、至って普通の、ごく普通の、禍々しい石が………

 

「────って!!!コレ!!!ドクロ石じゃねええええかああああ!?!?!?!?」

 

ドクロ石だった。

 

「おっきぃですねぇ………」

 

………。

 

「チョウチョ、もう一回言ってくれ」

 

「え?お、おっきぃですねぇ………?」

 

………。

 

「もう一回!もっと想像以上だった時みたいなリアクションで!」

 

「お、おっきぃ………おっきぃ///」

 

やっと俺の意図を汲み取ったらしい。

 

「る、ルーベルトさんのえっち!すけっち!!わんたっち!!!」

 

チョウチョが触覚でポカポカ殴ってくる。

 

「ハハハ!悪かったって!!フハハハハハ!!!」

 

「ボクはいったい何を見せられているんだ???」

 

ハハハ、聞くな。俺にもわからん(元凶)

 

「………それにしても、本当に大きいですねぇ(もう一回言って)………本当に小さいですね。そんなので恥ずかしくないんですか?(グハァ!?そ、それもまた………イイ!凄くいいッ!激ヤバかもしれないッッ!!)……もういいです」

 

「諦めんなよ。俺はどんなプレイでも大丈夫だぜ?」

 

「私がダメなんですよ………はぁ、相棒として恥ずかしいです」

 

「愛………棒?………なんで甘美な響きなんだ!俺かんd(『魅了(チャーム)』)………アレ?俺、何考えてたんだっけ?」

 

「ルーベルトさんは黙っててください」

 

「はい」

 

ユエリアの命令は絶対だ。ユエリア様、ユエリアサマ………ユエリアサマ………ダイスキ!!

 

「な、なんかボク、見てはいけないようなものを見ている気がすr(『魅了(チャーム)』)………あれ?ボク、何してたんだっけ?」

 

「あなたのお名前は?」

 

「チュリオスです」

 

「チュリオスさん。あなたは帰ってください。ここは危険です」

 

「ココハ……キケン」

 

「私はあなたのことが心配で言っています」

 

「シンパイ………ユエリアサマカナシム……ソレ…ダメ」

 

「いい子ですね。さぁ、お家に帰りましょう?」

 

「カエル……ボク…カエル」

 

キンパツガ……ユエリアサマノ……コトバヲキイテ……カエッタ。

 

「………あれだけノーラに魅了(チャーム)はダメって言ってたのに………お姉ちゃん失格かしら?」

 

「ユエリアサマ………カナシイ?」

 

「あぁルーベルトさん。ずっとこのままでいてくれたら可愛いのに………でも、それじゃあファンタジールを救えませんからね!元に戻ってください!」

 

キラッ。

 

ユエリアサマノ……光が………ん?

 

ユエリア『様』?ん?

 

え?

 

「………え?」

 

「どうしましたルーベルトさん?ぼっーとしちゃって?」

 

「え?俺意識なかった?」

 

「えぇ、なぜだかわかりませんけど?」

 

「そっか、ごめんな?」

 

「いえいえ。あ、さっきの人はもう帰りました」

 

「そっか。うん。俺、ぼっーと、していたんだな」

 

………本当にぼっーとしてたのかなぁ?

なんだか操られていたような気がするんだけど。

 

「ルーベルトさんルーベルトさん!コレ!このドクロ石!願いの『入れ物』として使えませんかね!!」

 

「たしかにな!いつものドクロ石の2倍はあるぞ?100人分くらい入るんじゃねぇのか?」

 

「そうと決まれば壊しちゃいましょう!」

 

「おうよっ!」

 

パリッ。

 

シュー……と音を立ててドクロ石から影が抜けていく。

残ったのは美しい結晶だ。

 

「騒動も収められましたし!入れ物も手に入りましたし!一石二鳥ですね!ルーベルトさん!」

 

「………」

 

「ルーベルトさん?」

 

………ドクロ石が世界の平和が終わる合図ならば、より大きなドクロ石が落ちてくると言うことは、世界の終わりが刻一刻と近づいて来ていると言うことだ。

 

「………俺たちが思っているよりも、終焉(おわり)はすぐそこまで忍び寄って来ているのかもな」

 

「そう………ですね」

 

タイムリミットはあと3ヶ月だ。

オンラインのキャラをもっと出していいかい?

  • 花京院の魂を賭けよう(OK派)
  • 魔術師の赤は許さない。ダメだね(NO派)
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