河童は不思議な生活がしたい   作:東風ますけ

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第24話「海賊王と7つの頭の秘密」

 

 

「な、なんだ!?黒影怪物(シャドウモンスター)から影が抜けていくぞ!?」

 

兵士たちから驚きの言葉が聞こえて来た。

 

「ね、姉さん……!これって──!」

 

「──あぁ。ルーベルト達だ!ルーベルトとチョウチョがドクロ石を壊したんだ!」

 

長かった夜も、もうじき明けそうだ。

………本当に長い夜だった。

 

「母さんのお墓、守れたね」

 

「あぁ。ありがとうなアンディ」

 

「姉さんこそ。………ただ──」

 

「言うなアンディ。父さんは後悔なんてしてないさ。ほら、あの顔を見ろよ?」

 

「………うん。とっても綺麗な死に顔だね」

 

父さんは、海賊王エイハブ・クラップは、母さん、エリーゼ・クラップの墓の前で死んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最愛の、エリーゼのために──。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前らよくやったぞ!」

 

「「父さん!?」」

 

父さんの死体があった場所を見ると……あぁ、もう死体がなかった。

そうだよな。この世界、モンスターに殺されても生き返るもんな。

 

「とりあえずはビーチの壊されたものの片付けからだな!ガハハハハハ!!」

 

父さんは母さんのお墓から離れてビーチの方へ行った。

 

「………やっぱり、父さんは凄いね。普通は死んだ後あんな動けないはずだよ?」

 

「あぁ、アタシたちじゃまず無理だな。さすが『海賊王』だ。………まぁ、コレからは『元海賊王』になるかもしれないけどな」

 

「………姉さんそれって!」

 

「あぁ、アタシは、『海賊になる』!!!!!」

 

■■■■■■■■■

 

「あ”あ”あ”あ”あ”〜〜〜!!!っかれた!!!マジ疲れた!!!!!」

 

「お疲れ様ですルーベルトさん!サマーネクター飲みます?」

 

「のむ!……ゴキュッゴキュッゴキュッ。………生き返るわ〜」

 

「本当にお疲れ様ですルーベルトさん。ルーベルトさん1番働いてましたもんね」

 

「おん。まあ1番力が強いからな。瓦礫の除去作業はうってつけだな」

 

郊外の建物や木々を回収するのに駆り出された俺は兎に角、馬車馬のように働いた。チョウチョの言った通り1番俺が荷物を運んでいた。徹夜で5時間くらいぶっ通しだ。

 

………まぁ俺は兎でも、馬でもなくて、河童だけどな?

 

………まぁいい。

 

ソレが今、やっとひと段落ついたわけだ。

俺はサマーネクター片手にビーチサイドに座っている。

 

そんな俺に近づいてくる人影が。

 

「お疲れ様でしたルーベルトさん」

 

「あぁ、アンディか。お前もお疲れ様な」

 

「いえいえ、私はあくまで現場の指示をしていただけですから」

 

「そっか。………そういえばオリビアはどうした?」

 

「『海賊になる』そうです」

 

「そっか。アイツも気づいたみたいだな。『7つの頭』に隠されたメッセージに」

 

「えぇ、ですからその答え合わせを灯台でしたいので、呼んでこいと言われてきました」

 

「了解。いくぞチョウチョ」

 

「はいっ!」

 

■■■■■■■■■

 

俺たちが灯台に着くと、そこにはもうみんなが居た。

 

………?なんだアイツ?

 

「なぁチョウチョ。あんな奴いたっけ?」

 

「あれ?見覚えがありませんね?」

 

「バルトだよ!!お前俺と戦っただろ!?」

 

「あぁ、いたわそんなやつ」

 

「そういえばいましたね」

 

「………オイお前ら、お前らがお嬢と、エイハブさんの知り合いだから俺は我慢しているんだぞ?俺がその気になればお前らなんて……」

 

「ガハハハハハ!バルト、お前ルーベルトに3対1で負けたんだって!ガハハハハハ!こりゃエリーゼが聞いたら笑うぜ!ガハハハハハ!!」

 

「………( ゚д゚)」

 

バルトは凄い顔でこちらを見つめて来た。

こっちみんな。

 

「ガハハハハハ!バルト、テメェはやっぱり面白いな!また俺と海にでも出るか?」

 

「か、勘弁して下さい!?エイハブさんと一緒になんて、命がいくつあっても足りません!?」

 

「ガハハハハハ!命は無限なんだから気にするな!ガハハハハハ!」

 

このシュールな光景を見ていたチョウチョが唐突に。

 

「なんかエイハブさんってルーベルトさんに似てますね」

 

「は!?お前から見た俺ってこんな戦闘ジャンキーみたいに見えてるの!?」

 

マジかよ、お前俺のことこんなふうに見ていたんだな…!?

チョウチョの何気ない言葉に、俺はちょっぴりショックを受けた。

 

そしてそんな俺のフォローをしてくれる人物が入り口から入って来た。

 

「たしかにエイハブ様は戦闘ジャンキーではありますが、ルーベルト様はそうではないかと」

 

「ルチアーノさん!」

 

「ご機嫌麗しゅうございますチョウチョ様。そしてルーベルト様。(わたくし)ルチアーノ、クラップ家の執事長として馳せ参じました。………さて、チョウチョ様はルーベルト様のことを、エイハブ様と似ていると仰りましたが、一つ、大きな差異がございます」

 

「そ、ソレは一体なんですか!?」

 

俺も気になる。大きな差異ってなんだ?

 

「それはですね………ズバリ『経済力』です!!」

 

「オイ待て。ルチアーノさん、今なんて言った?」

 

「えぇ、ですからルーベルト様とエイハブ様の大きな差は『経済力』かと………」

 

「なるほどです!!私、とっても納得しました!」

 

「オイ待て。ちょっと待て。本当にま………(来てくれたか!ルーベルト!!)」

 

上からオリビアが降りて来た。まだ抗議の途中なんだが………まあここは一旦退いてやるか。後でルチアーノさんとチョウチョには、俺がいかにリッチの工面に死に物狂いかを書き綴った原稿用紙400枚を口に詰め込んでやろう。そうしよう。

 

さて、そんなくだらない思考は黙らせておく。オリビアの顔が本気の顔だからな。こちらが茶化すのは無粋だ。

 

「………ルーベルト。チョウチョ。アタシ、やっと『7つの頭』の隠されたメッセージに気づいたんだ。2人は気づいていたが?」

 

「あぁ」

 

「はいっ!」

 

「そうか、やはり2人はすごいな。流石クルブルク代表の使者なわけだ。………さて、答え合わせに行こうか!」

 

俺たちの長い長いポルトポルトの旅が、終わりに向かいした──。

 

オリビアが本を読み上げる。

 

「著者:エイハブ・クラップ

 

【海賊の7つの教え】」

 

エイハブさんは目の前で自分の本が読まれて嬉しそうだし、なんだか少し小っ恥ずかしいみたいな顔をしている。

 

「その1

 

かいぞく船とはちいさなひとつの国家と思え」

 

 

たしかに俺も自分の本を目の前で読まれたら恥ずかしいかもな。

でもいつか本を書いてみたいな。

 

「その2

 

いついかなるときでもとりあえずは胸を張れ」

 

 

ルチアーノさんは本を読み上げるオリビアを見て涙ぐんでいた。きっと小さい頃から見ていたから、成長が嬉しいんだろう。「エリーゼ様…」とルチアーノさんが呟いたところを俺は見逃さなかった。

 

「その3

 

ぞっとする怪物にぞっとされるくらいになれ」

 

 

ぞっとする怪物ってなんだろうな?ドラゴンか?精霊か?

わかんないけど、それより俺も強くならないとな。

世界の為に、チョウチョの為に。

 

「その4

 

くるしくても泣くな。母の夢を見たとき以外は」

 

 

バルトが可愛い刺繍のハンカチを取り出して鼻をかみ出した。めっちゃ泣いている。ちょっかいかけて様子を見に行くくらい、オリビアのことを気にかけていたのだろう。いいな〜オリビアは。こんなにもみんなから愛されているんだもん。

 

「その5

 

にげたきゃにげろ。陸ガメになりたいのならば」

 

 

チョウチョが「アナタも愛されていますよ」っていう目で見てきた。ははっ!そうかもな!クルブルクに帰ったらみんなに会おう!

 

「その6

 

なかまを守れ、じぶんを守ってくれるなかまを」

 

アンディも姉の成長を黙ってただ見つめるだけではないだろう。きっとアンディも、いつかはオリビアのように心躍る冒険を求めるのかもな。

 

「その7

 

れいぎを重んじろ。ただし海賊のやりかたでだ」

 

そしてオリビアは全てを読み終えて目を閉じた。

 

「………『7つの頭』の解き方は、その名前にあったんだ。【海賊の7つの教え】、その『頭』を読むんだ!………読み上げるぞ?

 

「か」いぞく船とはちいさなひとつの国家と思え

「い」ついかなるときでもとりあえずは胸を張れ

「ぞ」っとする怪物にぞっとされるくらいになれ

「く」るしくても泣くな。母の夢を見たとき以外は

「に」げたきゃにげろ。陸ガメになりたいのならば

「な」かまを守れ、じぶんを守ってくれるなかまを

「れ」いぎを重んじろ。ただし海賊のやりかたでだ

 

『海賊になれ』だ!!!!!

 

コレが、母さんのメッセージだったんだ!」

 

オリビアは大きく目を開く。

 

謎は解明された。これが、これこそが海賊王と7つの頭の真実だった。

 

「………皆さま、上へ参りましょう」

 

ルチアーノさんの指示にみんな従って、灯台の明かりが出ている展望台の所に登った。

 

「エリーゼ様は、お嬢様が海賊になることに大反対でした。あの温厚なエリーゼ様が、エイハブ様とこの灯台で何十回も言い合いをして、私はその度にエリーゼ様を慰めていました。………そしてエリーゼ様が病に伏した時、エリーゼ様は、「もし私の謎が解けたのなら、オリビアには海賊になって欲しい」と、この『7つの頭』を考えました。それをお嬢様は見事、解明したのです」

 

ルチアーノさんは、どうやら最初から知っていたらしい。

 

「母さんは、姉さんに、心のどこかでは『海賊になって欲しい』と、思っていたのかもね」

 

アンディの言う通りだ。

 

「あぁ。アタシもそう思うよ。………水平線が、綺麗だなぁ…。………母さん、見てくれてるかな?」

 

「絶対エリーゼさんは喜んでますよオリビアさん!」

 

「あぁ!間違いねぇ!ここまで準備するくらいだ!きっと喜んでるさ!」

 

「チョウチョ…!ルーベルト…!」

 

会ったこともない、顔も知らない人だけれども、暖かさだけは、ぬくもりだけは、ハッキリと伝わってくる。

 

「………水平線が、綺麗ですね。お嬢」

 

バルトが呟いた。もう、朝日が海から顔を出し始めている。

 

「あぁ。あの美しい海が明日からアタシのモノになると思うと、ワクワクが止まらないさ!」

 

もうすっかり、言動も思想も『海賊』なオリビアを見て、エイハブさんは──。

 

「………ガハハハハハ!………………エリーゼ、見てるか?………………お前のメッセージは、オリビアに伝わったぜ………」

 

エイハブさんが大粒の涙を流したと同時に、俺たちのいる灯台に、潮風が吹いて来た。

 

俺はなんだが、その瞬間。

 

天国にいるエリーゼさんが、そっと微笑んだ気がした。

 

 

オンラインのキャラをもっと出していいかい?

  • 花京院の魂を賭けよう(OK派)
  • 魔術師の赤は許さない。ダメだね(NO派)
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