「な、なんだ!?
兵士たちから驚きの言葉が聞こえて来た。
「ね、姉さん……!これって──!」
「──あぁ。ルーベルト達だ!ルーベルトとチョウチョがドクロ石を壊したんだ!」
長かった夜も、もうじき明けそうだ。
………本当に長い夜だった。
「母さんのお墓、守れたね」
「あぁ。ありがとうなアンディ」
「姉さんこそ。………ただ──」
「言うなアンディ。父さんは後悔なんてしてないさ。ほら、あの顔を見ろよ?」
「………うん。とっても綺麗な死に顔だね」
父さんは、海賊王エイハブ・クラップは、母さん、エリーゼ・クラップの墓の前で死んだ。
最愛の、エリーゼのために──。
「お前らよくやったぞ!」
「「父さん!?」」
父さんの死体があった場所を見ると……あぁ、もう死体がなかった。
そうだよな。この世界、モンスターに殺されても生き返るもんな。
「とりあえずはビーチの壊されたものの片付けからだな!ガハハハハハ!!」
父さんは母さんのお墓から離れてビーチの方へ行った。
「………やっぱり、父さんは凄いね。普通は死んだ後あんな動けないはずだよ?」
「あぁ、アタシたちじゃまず無理だな。さすが『海賊王』だ。………まぁ、コレからは『元海賊王』になるかもしれないけどな」
「………姉さんそれって!」
「あぁ、アタシは、『海賊になる』!!!!!」
■■■■■■■■■
「あ”あ”あ”あ”あ”〜〜〜!!!っかれた!!!マジ疲れた!!!!!」
「お疲れ様ですルーベルトさん!サマーネクター飲みます?」
「のむ!……ゴキュッゴキュッゴキュッ。………生き返るわ〜」
「本当にお疲れ様ですルーベルトさん。ルーベルトさん1番働いてましたもんね」
「おん。まあ1番力が強いからな。瓦礫の除去作業はうってつけだな」
郊外の建物や木々を回収するのに駆り出された俺は兎に角、馬車馬のように働いた。チョウチョの言った通り1番俺が荷物を運んでいた。徹夜で5時間くらいぶっ通しだ。
………まぁ俺は兎でも、馬でもなくて、河童だけどな?
………まぁいい。
ソレが今、やっとひと段落ついたわけだ。
俺はサマーネクター片手にビーチサイドに座っている。
そんな俺に近づいてくる人影が。
「お疲れ様でしたルーベルトさん」
「あぁ、アンディか。お前もお疲れ様な」
「いえいえ、私はあくまで現場の指示をしていただけですから」
「そっか。………そういえばオリビアはどうした?」
「『海賊になる』そうです」
「そっか。アイツも気づいたみたいだな。『7つの頭』に隠されたメッセージに」
「えぇ、ですからその答え合わせを灯台でしたいので、呼んでこいと言われてきました」
「了解。いくぞチョウチョ」
「はいっ!」
■■■■■■■■■
俺たちが灯台に着くと、そこにはもうみんなが居た。
………?なんだアイツ?
「なぁチョウチョ。あんな奴いたっけ?」
「あれ?見覚えがありませんね?」
「バルトだよ!!お前俺と戦っただろ!?」
「あぁ、いたわそんなやつ」
「そういえばいましたね」
「………オイお前ら、お前らがお嬢と、エイハブさんの知り合いだから俺は我慢しているんだぞ?俺がその気になればお前らなんて……」
「ガハハハハハ!バルト、お前ルーベルトに3対1で負けたんだって!ガハハハハハ!こりゃエリーゼが聞いたら笑うぜ!ガハハハハハ!!」
「………( ゚д゚)」
バルトは凄い顔でこちらを見つめて来た。
こっちみんな。
「ガハハハハハ!バルト、テメェはやっぱり面白いな!また俺と海にでも出るか?」
「か、勘弁して下さい!?エイハブさんと一緒になんて、命がいくつあっても足りません!?」
「ガハハハハハ!命は無限なんだから気にするな!ガハハハハハ!」
このシュールな光景を見ていたチョウチョが唐突に。
「なんかエイハブさんってルーベルトさんに似てますね」
「は!?お前から見た俺ってこんな戦闘ジャンキーみたいに見えてるの!?」
マジかよ、お前俺のことこんなふうに見ていたんだな…!?
チョウチョの何気ない言葉に、俺はちょっぴりショックを受けた。
そしてそんな俺のフォローをしてくれる人物が入り口から入って来た。
「たしかにエイハブ様は戦闘ジャンキーではありますが、ルーベルト様はそうではないかと」
「ルチアーノさん!」
「ご機嫌麗しゅうございますチョウチョ様。そしてルーベルト様。
「そ、ソレは一体なんですか!?」
俺も気になる。大きな差異ってなんだ?
「それはですね………ズバリ『経済力』です!!」
「オイ待て。ルチアーノさん、今なんて言った?」
「えぇ、ですからルーベルト様とエイハブ様の大きな差は『経済力』かと………」
「なるほどです!!私、とっても納得しました!」
「オイ待て。ちょっと待て。本当にま………(来てくれたか!ルーベルト!!)」
上からオリビアが降りて来た。まだ抗議の途中なんだが………まあここは一旦退いてやるか。後でルチアーノさんとチョウチョには、俺がいかにリッチの工面に死に物狂いかを書き綴った原稿用紙400枚を口に詰め込んでやろう。そうしよう。
さて、そんなくだらない思考は黙らせておく。オリビアの顔が本気の顔だからな。こちらが茶化すのは無粋だ。
「………ルーベルト。チョウチョ。アタシ、やっと『7つの頭』の隠されたメッセージに気づいたんだ。2人は気づいていたが?」
「あぁ」
「はいっ!」
「そうか、やはり2人はすごいな。流石クルブルク代表の使者なわけだ。………さて、答え合わせに行こうか!」
俺たちの長い長いポルトポルトの旅が、終わりに向かいした──。
オリビアが本を読み上げる。
「著者:エイハブ・クラップ
【海賊の7つの教え】」
エイハブさんは目の前で自分の本が読まれて嬉しそうだし、なんだか少し小っ恥ずかしいみたいな顔をしている。
かいぞく船とはちいさなひとつの国家と思え」
たしかに俺も自分の本を目の前で読まれたら恥ずかしいかもな。
でもいつか本を書いてみたいな。
いついかなるときでもとりあえずは胸を張れ」
ルチアーノさんは本を読み上げるオリビアを見て涙ぐんでいた。きっと小さい頃から見ていたから、成長が嬉しいんだろう。「エリーゼ様…」とルチアーノさんが呟いたところを俺は見逃さなかった。
ぞっとする怪物にぞっとされるくらいになれ」
ぞっとする怪物ってなんだろうな?ドラゴンか?精霊か?
わかんないけど、それより俺も強くならないとな。
世界の為に、チョウチョの為に。
くるしくても泣くな。母の夢を見たとき以外は」
バルトが可愛い刺繍のハンカチを取り出して鼻をかみ出した。めっちゃ泣いている。ちょっかいかけて様子を見に行くくらい、オリビアのことを気にかけていたのだろう。いいな〜オリビアは。こんなにもみんなから愛されているんだもん。
にげたきゃにげろ。陸ガメになりたいのならば」
チョウチョが「アナタも愛されていますよ」っていう目で見てきた。ははっ!そうかもな!クルブルクに帰ったらみんなに会おう!
なかまを守れ、じぶんを守ってくれるなかまを」
アンディも姉の成長を黙ってただ見つめるだけではないだろう。きっとアンディも、いつかはオリビアのように心躍る冒険を求めるのかもな。
れいぎを重んじろ。ただし海賊のやりかたでだ」
そしてオリビアは全てを読み終えて目を閉じた。
「………『7つの頭』の解き方は、その名前にあったんだ。【海賊の7つの教え】、その『頭』を読むんだ!………読み上げるぞ?
「か」いぞく船とはちいさなひとつの国家と思え
「い」ついかなるときでもとりあえずは胸を張れ
「ぞ」っとする怪物にぞっとされるくらいになれ
「く」るしくても泣くな。母の夢を見たとき以外は
「に」げたきゃにげろ。陸ガメになりたいのならば
「な」かまを守れ、じぶんを守ってくれるなかまを
「れ」いぎを重んじろ。ただし海賊のやりかたでだ
『海賊になれ』だ!!!!!
コレが、母さんのメッセージだったんだ!」
オリビアは大きく目を開く。
謎は解明された。これが、これこそが海賊王と7つの頭の真実だった。
「………皆さま、上へ参りましょう」
ルチアーノさんの指示にみんな従って、灯台の明かりが出ている展望台の所に登った。
「エリーゼ様は、お嬢様が海賊になることに大反対でした。あの温厚なエリーゼ様が、エイハブ様とこの灯台で何十回も言い合いをして、私はその度にエリーゼ様を慰めていました。………そしてエリーゼ様が病に伏した時、エリーゼ様は、「もし私の謎が解けたのなら、オリビアには海賊になって欲しい」と、この『7つの頭』を考えました。それをお嬢様は見事、解明したのです」
ルチアーノさんは、どうやら最初から知っていたらしい。
「母さんは、姉さんに、心のどこかでは『海賊になって欲しい』と、思っていたのかもね」
アンディの言う通りだ。
「あぁ。アタシもそう思うよ。………水平線が、綺麗だなぁ…。………母さん、見てくれてるかな?」
「絶対エリーゼさんは喜んでますよオリビアさん!」
「あぁ!間違いねぇ!ここまで準備するくらいだ!きっと喜んでるさ!」
「チョウチョ…!ルーベルト…!」
会ったこともない、顔も知らない人だけれども、暖かさだけは、ぬくもりだけは、ハッキリと伝わってくる。
「………水平線が、綺麗ですね。お嬢」
バルトが呟いた。もう、朝日が海から顔を出し始めている。
「あぁ。あの美しい海が明日からアタシのモノになると思うと、ワクワクが止まらないさ!」
もうすっかり、言動も思想も『海賊』なオリビアを見て、エイハブさんは──。
「………ガハハハハハ!………………エリーゼ、見てるか?………………お前のメッセージは、オリビアに伝わったぜ………」
エイハブさんが大粒の涙を流したと同時に、俺たちのいる灯台に、潮風が吹いて来た。
俺はなんだが、その瞬間。
天国にいるエリーゼさんが、そっと微笑んだ気がした。
オンラインのキャラをもっと出していいかい?
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花京院の魂を賭けよう(OK派)
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魔術師の赤は許さない。ダメだね(NO派)