なんか揉めてる。
「とっ、通せ!お前らは魔王と勇者の物語を知らんのか!?」
「はいはい。帰った帰った。魔王様は忙しいんだ。クルブルクの国王ならともかく、貴様のような素性のわからない不審者を通すことは出来ない。わかったなら早く帰れ」
「きっ!キサマァ!我を誰だと思っている!勇者ラグナローだぞ!」
「………なあ、お前知ってるか?」
「さぁ?聞いたことないか…」
「なんだと貴様ら!?」
魔王軍の兵士達になんかへんなヤツが突っかかっている。名前はラグナローとか言うらしい。
「あ、お取り込み中すみません……」
「「「チョウチョが喋った!?」」」
いつものテンプレを挟んで、チョウチョは語る。
「すみません、私たち、クルブルクからの正式な使者なんですが…」
「「「!?」」」
俺がエリック王から受け取っていた親書を兵士に見せる。
「確かにコレはクルブルク王家の紋章………わかりました。お二人はどうぞこちらへ…」
「ま、まてっ!なあお前たち!よく来てくれた!」
いきなり何を言い出すんだコイツは。
「良くぞ我の為に王から手紙を受け取って来てくれた!」
「………ルーベルトさん」
「………おう」
どうやらコイツは困っているみたいだし……。
「「どなたですか?」」
「………」
「………お前はこの不審者を連行してくれ。俺は客人を連れて行く」
「了解。さ、アンタは抵抗せずついて来てくれよ?」
「ぬおおおお!?お前ら!少しくらいは助けてくれてもいいじゃないかあああああ!?」
こうして自称勇者の不審者は連れて行かれた。
「いやはや、お見苦しいものをお見せしました」
「いえいえ。兵士さんも大変ですね。ね?ルーベルトさん!」
「あぁ、本当に大変だな。あんな変なヤツがいつもいつも絡んでくるなんて、俺じゃ耐えられないな」
「ハハハ。自分の気持ちが分かっていただけてなによりです」
兵士さんと談笑しながら俺たちは魔王城への道を歩く。ここから魔王城までは少しかかる。大きな一本道の細長い橋を渡って行くんだ。
魔王城は縦長の塔のような形になっていて、そうだな。ココから概算しても100メートルくらいはあるんじゃないか?ファンタジールの建造物の中では1番高い建物だった気がする。
てっぺんの方はまるでコウモリの様な羽が生えている。
禍々しい、紫を基調としたデザインが、魔王の強大さを物語っている。
………やがて、魔王城へと着いた。
「こちらの魔法陣が魔王の間直通になります。魔王様に、優しくしてあげて下さいね…?」
「「優しく…?」」
はて?魔王と言えば強く、恐ろしいイメージがあるんだが…?
そういえばこの国の人間も和気藹々としていて、魔王が恐怖で統治しているようには見えなかったな。案外穏健派なのかもしれない。もしそうなら話が進み易くて助かるなー。と俺は勝手に妄想する。
「自分はココまでとなります。帰りの際はまたお呼び下さい!」
「兵士さん!ありがとうございました!」
「ありがとうございました!」
俺たちは案内してくれた兵士に礼を告げ、遂に魔王と出会う。
魔法陣の中に入り、瞬きをすると、気付いたらもう魔王の間へとワープしていた。
まず目に映ったのはその禍々しく、強大な玉座。
魔力が込められているのだろうか。背もたれに、紫色の光がグラデーションを奏でながら光り輝いている。
次に目に入るのは紫色の炎が轟々とゆらめく金の燭台。玉座が真ん中にあって、その両隣に3つずつ置かれている。
最後に目に映ったのは俺たちの真横に立っている、大きな暗黒の鎧……
「「うわああああ!?」」
「………」
「こっ、殺される!?」
「………ルーベルトさんルーベルトさん。よく見てください」
「………え?」
よく見てみると、それは俺たちを砂漠への谷で助けてくれた暗黒騎士のものと一致している。つまり。
「………」
「あ!あの時の!」
「………」
「ルーベルトさん。まずはごめんなさいしましょ?ね?」
「お、おう。そうだな。すみませんでした!」
俺が謝ると、暗黒騎士は首を横に振った。どうやら許してくれるらしい。
「………スタスタスタ」
暗黒騎士は俺たちをリードする様に、魔王の玉座へと歩き出して行く。
「ルーベルトさん。魔王さんに挨拶しましょう!」
「あぁ。あの件も伝えないとな」
「………ピタッ」
暗黒騎士は魔王の右隣に立って、まるで石像のように動かなくなった。
「………あれ?魔王ってどこにいるんだ…?」
「姿が見えませんね?」
「………ここにいるぞ!」
玉座の色に紛れて気が付かなかったが、玉座の上に魔王が座っていた。
マントをしていて、後ろ向きに立っていたから完全に玉座と色がかぶっていた。
いや、でも、色と言うより、そもそも……
「あなたが魔王さんですか?」
「如何にも。我が名はルーザ。ルーザ・デイモン。父上に代わり今は魔王だ」
「………若いな」
歳は15くらいか?俺と同い年に見える。背も低く、目の下に不健康そうなクマがでている。お世辞にも魔王とは呼ばない。そんなイメージが俺を支配した。
「………オイ客人。あまり舐めていると我の強大な魔力が…」
っ!?マズイ!相手の反感を買いすぎたか!?
魔王はこちらを睨んで、手に紫色の魔法の玉を出している。
「………なんてね」
ボンッ。というコミカルな音に合わせて魔法の玉は消えた。
「堅苦しいのはやめよう。キミたち、名前は?」
「び、ビビったぁ……(俺の名前はルーベルト)」
「私はチョウチョです!あとルーベルトさん、心の声漏れてます」
「え?マジ?」
「大マジです!」
しまった。魔王の前でこんなふざけた態度を取ったらどうなるか──!
「………………あははははは!君たち面白いね!いやぁ、君たちみたいな子がクルブルクからの使者でよかったよ!」
「……どうも」
「やりましたねルーベルトさん!ファーストコンタクト成功ですよ!」
「そうかなぁ?」
「あははははははは!!!」
なんか俺が想像していたよりも、魔王ってのは明るいらしい。
「じゃあ早速だけど、君たちの今までを聞いてもいいかな?」
「「はいっ!」」
でも、中々嫌いじゃないぜ!