「というわけですまんかった。ルーザ」
「いや、いいさ。古代遺跡には封印が施されているからね」
「封印?」
「あぁ、王家の従者によってね」
「じゃあなんでネクが入ってたんだ?」
「…………おかしいな。魔王軍でも指折りの術師だったんだけど……?」
「……というか俺ら、古代遺跡の入り口まで普通に行けたぞ?」
「…………あれ?これ結構マズい感じ?」
「……でもルーザよぉ。古代遺跡は広大なサンサン砂漠の1番奥だろ?もしこっちに
「なるほど。確かルーベルトは今まで何度もドクロ石を見てきているからね。君の仮説は信用に値する。……と、なると、別にそこまで大きな問題じゃないね。ボクが修行する時にちょっとキツくなるだけだし」
「まあドクロ石を見つけさえすればさっさと壊せるしな」
「だね。……ねぇ、ルーベルト。今暇かい?」
「ああ、まあ予定は特にねぇな」
「……じゃあさ」
ルーザは指を天に向けて突き立てた。
「ボクと話でもしないか?」
■■■■■■
ヒュウウウウウ──。
「高いな。何メートルだ?」
「ざっと100はあるよ。多分ね。まあ下は海だから大丈夫だよ」
「なんか知らんけどこの高さから落ちるとコンクリートくらい硬いんじゃね?」
「まずコンクリートってなんだい?」
「さあ?なんだろな?」
俺はたまに自分でもよく知らないことを口走る時がある。
もしかしたら赤子の時にでも聞いたんだろうか?
「……なぁルーザ」
「……なんだいルーベルト」
「ルーザはさ、なんで魔王になろうと思ったんだ?」
「…………うーん。…………期待……かな?」
「期待?」
「うん。ボクへの期待」
「国民からのか?」
「ううん。ボクが、ボクに期待してるのさ。魔王になれるって」
ほぉ。
「あくまでも自分ってことか?」
「うん。別に、いやいやだとか、血筋だとかにこだわったりしてないさ」
「…………そっかぁ。ルーザはスゲェなぁ……」
「ルーベルトだって──」
「いいや、俺はチョウチョのためだ。俺は自分のために努力できない人間だ。そういう、タイプなんだよ俺は。……ま、俺は人間じゃなくて河童だけどな?」
なんだか少し自虐気味な俺に対してルーザは。
「でも、ボクはルーベルトのそんなところが好きだな」
「…………ありがとよ。俺も、ルーザのそういう素直なところが好きだぜ」
「「………」」
なんだか褒め合うのが恥ずかしくて、俺たちは黙ってしまった。
でも、気まずさから生み出される沈黙とは違う。
言葉を交わさずとも心を重ねられる、優しい沈黙だった。
このファンタジールで、最も高い建物の屋上に訪れた平穏は。
「し、失礼しますっ!ルーザ様、ルーベルト様!」
魔王軍の兵士が階段を駆け上がってきた。
「何があった!?落ち着いて話すんだ!」
「は!郊外にて黒いモンスターが暴れており、オデオン兵士長と、謎の少女と勇者のような者が戦闘中!以前苦戦中です!」
笑えるくらいに恐ろしい出来事に塗りつぶされていった。
「わかった!今すぐ向かう!ルーベルト!キミは………?キミは一体何を!?」
「ルーザ。先行ってるぜ!」
『
………からの!
『
「そ、空に!?」
「ルーベルト!なんて速さだ!」
反対向きに撃って俺は空を飛んだ。
いやはや本当にラッキーだったぜ?
地上じゃまず俺のかかとがゴリゴリになるからな。
ここが世界一高い建物で本当に良かった!
「魔王様!我々も早く移動しましょう!」
「あぁ!ルーベルト!ボクもすぐ行く!それまで耐えてくれ!」
「了解!」
…………あっ、着地考えてなかった!?
……どうしよ。
■■■■■■
〜ダルスモルス郊外〜
「オデオン兵士長!傷が深すぎます!一度我々の後ろに!」
「……フリフリ」
「オデオンさん!私が回復します!」
「……コクッ」
「いきますよ!」
金色の鱗粉が舞うと、周りの人間たちの傷が癒えていく。
「……!」
「えっ?なんで私の手を──」
オデオンが少女の手を引いた意味が、すぐわかった。
「み、水……」
「る、ルーベルトさん!?一子相伝の暗殺拳の伝承者みたいに干からびてます!?」
俺は空を飛んだ。そしてミイラになった。で、死んだ。
「\チーン/」
「ルーベルトさん!?と、とりあえずそせいやくを!」
「…………はっ!?俺は一体何を!?ユエリア!何した!?」
「ルーベルトさんが空から降ってきたんですけど」
「……おはようユエリア。今日もいい天気だな」
「おはようございますルーベルトさん。やっと目覚めましたかこの寝坊助さん」
「ひでぇ言いよう……カッコ悪い登場とはいえ、一応助けに来たんだぜ?…………にしても、マジかよ。本当に街まで黒影怪物が来てんじゃねぇか!古代遺跡のドクロ石はそんなにもデケェのか!?」
もし本当に超巨大ドクロ石があったとしたら、この前のポルトポルトん時の何倍だよ!
「…………ルーベルトさん落ち着いて聞いてください」
「……おう」
「…………どうやら、彼らはドクロ石に影響されたモンスターではないようです」
「…………ありえんのかよそんなチート?」
俺は空いたクチバシが塞がらなかった。
今まではドクロ石を壊すことでなんとか終わらせていた。
それが、ない?ないだと?
「…………黒影怪物は、海を超えて来ています」
「海!?一体どこからきてるんだ!?」
「…………亜空間」
オデオンさんが口を開いた。
「「亜空間?」」
「ルーベルト。ユエリア。このダルスモルスの南西に『ポツン島』というものがある。巨大なサボテンと洞窟があって、1人とそのペットのドラゴンが住んでいるだけのただの島……というのが表向きの扱いだ」
「表向きの?どういうことですかオデオンさん?」
「……亜空間というのは、はるか昔。この世界に争いが続き、まだライフの女神ステラが人々にライフを与える前。実はモンスターは全て黒影怪物だったのだ」
「全て黒影怪物だと!?」
「……女神ステラはその状況を憂いで、地上のすべてのドクロ石をどこか一箇所に集結させたらしい」
「お母様が……」
「……お母様?」
「お、おいユエリア。それはマズい」
「あぅ…………」
「…………!!!!!!もしや、貴女は……。いや、この癒しの力。間違いない」
オデオンさん急にめっちゃ喋るじゃん!?
いや、まあそれくらい重要なことが起きてるんだけどさ!
「と、とりあえずそれは置いとこうぜオデオンさん!」
「……あぁ。わかった。……まあつまり、亜空間というのは女神ステラがドクロ石を一箇所に集め、その中心が空洞となっており、その穴に落ちたモンスターが黒影怪物となり、闊歩している魔境だ。……で、理由はよくわからないが、その亜空間と唯一繋がっている場所がポツン島。『封印の洞窟』なんだ」
「名前からしてわかったぜ!封印が解けちまったってことだなコンチクショウ!?」
「なにか解決法はないんですかオデオンさん!」
「…………一つだけ。魔王一族に伝わる切り札がある」
「どこに行けばいい!」
「『やみのじしょ』。ダルスモルス大図書館に封じられし大悪魔だ」
「じゃあ早速いきましょうルーベルトさん!」
「いや、その必要はない。ルーザ様がきっと説得して連れてきてくれるだろう」
「なるほど!じゃあ俺たちの目標は」
「とにかく耐えることですね!」
「だな。じゃあ俺は逃げ遅れている人を救助してくるから、オデオンさんとユエリアはここにいててくれ!」
「わかりました!」
「………コク」
魔王と河童の絆を黒影怪物たちに見せつけてやるぜ!