ダルスモルス郊外には小さな湖と、砂漠地帯の木であるシュガーの木と、ダルスモルス金が採れる小さな鉱脈がある。
そのため採取系のライフの人がよく集まっている。
フィールドに出て採取をすることもあるため、製作職と比べれば比較的、モンスターなどに対応できるとは思うが、今回は
そんな人たちを助けるのが俺の今回のミッションだ。
っと、早速逃げ遅れている人を見つけた。
カマキリみたいな黒影怪物に襲われてる。ズボンのお尻のところが破けてパンツが見えてるな。
「俺が時間を稼ぐ!」
「……えっ?ルーベルト?」
「ロック!奇遇だなこんなとこで会うなんて」
採掘師のロック。採掘師のライフマスターデグダスの弟だ。
「あ、危ない!」
カマキリみたいな黒影怪物が俺の甲羅めがけて鎌を振り下ろして来た。
……が、まあ、残念だったな。
「キシャッ!?」
「ああ、悪いなカマキリさん。俺の甲羅は伝説の鉱石。ダイヤモンドよりも硬いんだぜ?」
敵の攻撃を無力化した俺がよほど輝いて見えたのか。ロックはキラキラと子供のような期待の眼差しでこちらを見ている。
「る、ルーベルトってこんなに強かったんだな!」
「他のライフマスター連中と比べたらまだまだだよ」
「確かににいちゃんなら素手でもモンスターに勝てそうだもんね」
「俺も素手だけどな?…………っと、茶番はこのくらいにしとくかな。ロック、お前は魔王城の方に逃げろ!街までは黒影怪物は追ってこない筈だ!」
「わ、わかった!……勝てよ!ルーベルト!」
「あぁ、勿論だぜ」
…………さて、さっさと
「『
全身の水分を攻撃のために背中に集中させる。
「シャアアアアア!?」
カマキリさんも少しは感じ取れるのか?今の俺の強さが。
「悪いな、ソッコーで終わらせてもらうぜ」
「シャッ!?」
俺は思いっきり地面を蹴って、相手との間合いを一瞬で縮めた。
「せいっ!」
渾身のパンチを腹にお見舞いしてやった。
「シャアァァァ…」
2、3秒ほどふらついた後、カマキリは倒れた。が、さて。
「隠れてないで出て来いよ。言っとくけどバレバレだったぜ?」
俺は木に向かって話しかける。
5秒ほどして、相手もやり過ごせないと判断したのだろう。隠れていたモンスターがゾロゾロと出て来やがった。
…………おっと、参ったな。
「20匹くらいいるぞ……?」
「「「「「フシャアアアアアア!!!」」」」」
「あはは……マジかよ!?」
カッコつけなきゃよかった!俺っち超ピンチ!
……一方その頃。ダルスモルスの最前線では。
■■■■■■
ルーベルトがルーザと話している頃。
「うぐっ!?……ぜーはー。……ぜーはー」
我輩の名前はラグナロー。
クルブルクの勇敢な勇者だ。
今は黒いモンスターと戦っている。
魔王に挑むため魔王城に向かったのだが、入り口で門前払いされた。あいつら勇者と魔王の伝説を本当に知らないのか?知っとけよ魔王の部下だろお前ら。
そして、魔王軍の兵士にこの郊外まで追い払われたその時だった。
「な、なんだ?この景色は……?さっきまで活気付いていた飛行船降り場になんでモンスターが……?魔王軍の兵士はどうしたんだ?」
我輩が言葉を失い、呆然と立ち尽くしていると、黒いモヤのようなものを纏ったモンスターが襲いかかって来た。
「グギュルァ!」
「ぐっ!?………ひぃぃぃ!やっぱり怖い!」
我輩、モンスターと戦うのは大の苦手なのだ。魔王ならまぁ、最悪ちょっとちびるくらいで済むが、モンスターは命を刈り取られる可能性がある。
死というものは本当に恐ろしい。
痛いし、苦しいし、いいことなんて一つもない。
いくら生き返られるからといって、好き好んで死ぬバカはこのファンタジールにはいないだろう。
…………い、居ないよな?流石に…?
「キュシャア!」
「うおっと!危ない!?いかんいかん、こんなときに妄想癖が……我輩の悪いクセだな。……よーし、とりあえず逃げるか!」
我輩はなんか黒いヤツを蹴っ飛ばして、怯んでいる際に全力ダッシュで逃げて来た。
鎧が重くてバテてきた時、なにやらドンパチやってる音が聞こえて来た。
恐る恐る覗きに行くと、そこには白いほっかむり少女と、暗黒騎士オデオンが黒いモンスター相手に交戦していた。
どうやら苦戦中のようだ。
……まさかあの魔王軍兵士長暗黒騎士オデオンが苦戦するとは。いやはや、黒いモンスター……なんたる脅威か。
……このダルスモルスでオデオンより強い者など片手で数えるほどしかおらん。
…………我輩が行ったところで足手纏いになるだけだ。
「──ッ!」
「大丈夫ですかオデオンさん!今回復します!」
「……感謝する」
……ほぅ、あの少女。攻撃は光魔法を使い、さらに傷を癒すか。
…………あの少女の魔法の残数次第にはなるが、もしもまだまだ使えるのなら…………。
………ええい!何を迷うことがあるのか!我輩は勇者!勇者ラグナローだッ!
異国だろうと人を守るのが勇者だ!
「助太刀するぞ!」
「あ、貴方は!なんか勇者だとか言ってた人!」
「ラグナローだ!あと、その言い方だと我輩がイタイ奴みたいじゃないか!?」
「事実じゃないですか?」
「なにおう!言わせておけば!」
「……二人とも、遊びはあとだ」
周りにはジリジリと黒いモンスター達が近づいて来ている。
「……あぁ。──暗黒騎士オデオン。我輩の名はラグナロー。勇者、ラグナローだ」
「……わかった。ルーザ様の側近としてではなく、この国を守る一人の兵士として、感謝する。ラグナロー殿」
うわっ!マジか!あの暗黒騎士オデオンに殿付けされた!
クルブルクに帰ったら自慢しよう!やべぇテンション上がって来たァァァァ!!!
「我輩は最前線でモンスターを食い止める。二人は街を頼む!」
「……了解」
「わかりました!」
……こうして我輩は黒いモンスターがたくさん来る方。つまりポツン島方面へと走り出した──!
■■■■■■
……しまった。俺としたことが死んで宿屋に送られちまった。にしても……。
「「全身がイテェ」」
ん?誰かとハモったぞ?
俺はふと隣を見る。するといつしかの自称勇者が立っていた。
「お、お前は我輩を差し置いて魔王に挑んだ変なヤツ!」
「お前こそ魔王の城の入り口で門前払いされてた可哀想なヤツ!」
まさかこんな場所で再会するとは。
「……っていけね!早く郊外へ戻らないと!」
「我輩も急いでポツン島へ向かわなければ!」
……えっ、コイツ戦えるのか?
俺が不安気に自称勇者を見つめていると、こちらに向き直って話しかけて来た。
「……たしか、ルーベルトと言ったな?」
「あ、ああ」
「我輩が最前線でモンスターを食い止めるから、民を頼んだぞ。お前ならいけるだろ?──河童の少年!」
「──!ああ!わかったぜ!前線は任せたぞ!『勇者』!」
今日俺にまた一人、友達が出来た。
まさか同じ日に魔王と勇者と友達になるなんて、このファンタジールでも俺だけじゃないか?
……さぁて。友達が頑張ってるんだ。俺も頑張るぞッ!