「フッ! お前たちアレを見よ!」
「魔王の塔だな」
「魔王の塔ですね」
「……そう! 魔王の塔、魔王の塔だ!」
「なんで2回言ったんだよ」
「なんで2回言ったんですか」
「……おまえら吾輩に対して当たり強くない?」
「そうか?」
「そうですか?」
「……まぁいい。とにかく魔王の塔! すなわち魔王城へ乗り込むぞ!」
会話からわかる通り俺たちは魔王城へ向かっている。といっても最近はこの辺りをかなり歩き回っていたからラグナローほどハイテンションにはなれない。
「そういえばラグナローさんは34話で門前払いされてましたね」
「そういえばそんなこともあったな」
「それよりもチョウチョよ。34話とは?」
「「ラグナロー(さん)は知らなくていい(です)」」
「お、おう。触れちゃいけないやつだな?」
「正解だぜ。…さて、メタい話を続けていたら着いたな。魔王の塔」
たしか100メートル以上あるルーザの実家だ。
「うおおおお! 吾輩の中に眠っていた勇者の魂が疼くぞ!」
「やべぇ、俺も疼いてきた」
「私も疼いてきました!」
…ツッコミ不在の恐怖とはこのことか。
「とりあえず入ろうぜ」
「うむ」
「はい」
ギギギと重い音を立てる扉を押すと、中には1人の老人が立っていた。
「しっ、死神パンコネル!?」
「「死神?」」
「ホッホッホ。私のあだ名ですよ。といってもただ門番を50年続けていたら勝手についた異名ですがね」
パンコネルさんは優しいおじいちゃんだ。
頭にコックさんのような長い帽子をかぶっていて、最近はルーザのペット兼、相棒兼、家族の番犬ケルベロスのエサ係を担当している。
「ワン!」
「お〜ケルベロス。1日ぶりか?」
「ワン!」
「ワンちゃんって本当に可愛いですよね。ルーベルトさん。私たちも飼いませんか?」
「いやうちには既に光るしゃべるチョウチョがいるからダメだな」
「それって私のことですよね!?」
「じゃあルーザのところに行くか。ラグナロー」
「ああ。よろしく頼むぞパンコネルさん」
「ホッホッホ。まかせてくだされ」
「無視ですか!? 確かに私はムシですけど!」
なんか寒くなってきたな。そろそろタンクトップをやめてシャツにしようかな。
「心の声聞こえてますよ! まるで私の渾身のギャグが寒いみたいじゃありませんか!」
「事実だろ」
「表出でくださいルーベルトさん。今日こそ決着をつけましょう」
物騒なチョウチョは置いといて、パンコネルさんに魔王の間まで行ける魔法陣に案内してもらった。
「では。ルーザ様のことをよろしくお願いしますぞ。ルーベルト殿。チョウチョ殿。ラグナロー殿」
「ふっ! まかせてください!」
「わかりました!」
「勇者の友が魔王というのもカッコよくていいな!」
三者三様の俺たちのリアクションを聞いたパンコネルさんは、孫を慈しむ表情をした後、ふっと微笑んだ。
「また、いつでも来てくだされ。私はずっとこの塔の門番を続けますから」
「「「はい!」」」
「ワン!」
ケルベロスはパンコネルさんの足元でクルクルと喜びながら回っている。
俺たちは優しい死神と可愛らしい番犬に手を振って魔王の下へと転送されていった。