河童は不思議な生活がしたい   作:東風ますけ

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第45話「俺たちが出会った日」

 

「……って感じだ。俺たちはルーザが魔王になるまでのこの1ヶ月を出来るだけ活用して、願いを集めようと思う」

 

「わかった。ヒューズにも伝えておこう。……いやはや大義であったぞ。……いやーやっぱ、せんだいまおうの古代遺跡への封印はちとやりすぎたかのぉ?」

 

「おいチョウチョ。コイツ今とんでもないことに言いやがったぜ」

 

「えぇ、しっかりと聞きましたよルーベルトさん」

 

「お、お主ら……国王に向かってコイツって……」

 

「うるせぇ! 自分は家族と過ごしておいて、ルーザは父親がいないも同然だったんだぞ! 親がいない辛さをテメェは考えたことがあるのかよ!」

 

「そうですよ! ロッテンマイヨーさんもせんだいまおうさんがいなくなって寂しそうでした!」

 

「ご、ごめんて……」

 

「うるせぇ! ごめんで済んだら王国兵士はいらねぇんだよ!」

 

「だいたいエリックさんは……」

 

 チョウチョが追撃しようとした時、玉座の後ろの扉から。

 

「あらあらあなた? そんなことをダルスモルスの方々にしていたのですか?」

 

「フ、フェリア!」

 

「「あっ(察し)」」

 

「エリック? ちょっと一緒に寝室に行きましょう?」

 

「はい……」

 

 エリック王はファリア王妃に手を引かれて後ろの扉から出て行った。

 

 夫婦のはずなのに、エリック王のうなだれた後ろ姿は、お母さんに叱られる子供のそれであった。とルーベルトチョウチョは思ったのだった。

 

■■■■■■

 

 報告を終えた俺たちは王城の扉を出て帰路についていた。

 

「いやー! 大冒険でしたね! ルーベルトさん!」

 

「そうだな〜。しっかしやっぱりクルブルクはのどかだねぇ。家も空に浮かんでないし、ちょっと酔う転移魔法陣もないし、水は美味いし、やっぱりここが一番住みやすいぜぇ〜」

 

「ですね〜。あっ、ルーベルトさん。どうせなら少し女神像に寄って行きませんか?」

 

「おっ、いいぜ〜。俺たちが出会った場所だしな!」

 

「……そういえばルーベルトさんって私と会う前は何をしていたんですか?」

 

「ん? 話してなかったっけ? そうだなぁ、まぁ特に夢もなくなんとなく生きていたぜ? 俺の人生が動き出したのは、お前と初めて出会ったあの日だよ」

 

 俺はそう言って、あの日のことを思い出していた。

 

■■■■■■

 

 俺がユエリアと初めて出会ったあの日。

 確か俺がギルドマスターから河童のライセンスを受け取っていた時だった。

 

『とりあえずエリック王が待ってるかもしれねぇから、とっとと行ってこい』

 

 そう言ってギルドマスターは俺を……

 

『きゃー!』

 

 女の子の叫び声が聞こえた。

 

『だれかー!たすけてチョウだーい!』

 

『おいこら!ダジャレなんて言ってねぇで待ちやがれ!』

 

『逃がさないっす!』

 

『誰かー!助けてー!』

 

『ルーベルト。行ってこいよ』

 

「……って感じだったんだよユエリア」

 

「私ってそんなダジャレ言ってますか?」

 

「おう。正直言って見た目が美少女だからスルーされてるけど、最近は中身おっさんなんじゃ無いのかって思ってるよ」

 

「酷い! ルーベルトさんのミドリムシ!」

 

「お前もチョウチョだしあんま変わらんやろ。というか光合成可能な方が生物としてお得では?」

 

「なんかレスバに負けた気がするのでつづきお願いします」

 

「わかった」

 

 俺が外に出ると一匹の光り輝くチョウチョにガラの悪い二人組が絡んでいた。

 

『オラ! オレたちはリッチが欲しいんだ! 痛い目に合いたくなかったらさっさと出しな!』

 

『さっさと出すっス!』

 

『ひえええぇ! 私リッチなんて持ってません!』

 

『何? リッチを持ってないだと? じゃあお前を捕まえて売ることにするか。ハッポ、そいつ捕まえちまえ』

 

『了解っスアニキ! さあ、大人しくするっスよ!』

 

『ど、どうすれば……あ! そこのお方! 助けて下さい!』

 

 光る喋るチョウチョに助けを求められた。

 ……しょうがねぇな。

 

『あん? オイお前、俺たちはそこのチョウチョを捕まえてリッチを稼ぐんだ。さっさとどきな!』

 

『さっさとどくっス!』

 

『……なあ、たかが一匹のチョウチョじゃねぇか。コイツを捕まえたってせいぜい数十リッチってところか? そもそも喋るチョウチョなんて不気味で買い取ってくれないかも知れないぜ?』

 

『うるせぇ! その道のマニアに売りつけるんだよ!』

 

『モンスターをペットにしてる富豪にでも売るっス!』

 

『…………やめろ。金持ちの道楽の為にこんなことするだなんて、不毛だ』

 

『通りすがりの方……! すみません! 私がなんとかしてみます!』

 

『あーもう! ゴチャゴチャうるせぇな! さっさと捕まえちまえ!』

 

『了解っス! さあ! そのチョウチョを差し出すっス!』

 

『やっぱり助けてください!』

 

『そうなると思ったぜ……ったく……あー、なんだ。このチョウチョは俺の知り合いでな。あいにくだが、どっか行ってくれねぇか?』

 

『……いいだろう。だけど、お前の有り金は全て頂くぜ?』

 

『かまわねぇよ』

 

『よし、ハッポ! そいつの有り金全部とってこい!』

 

『……あ、アニキ! コイツ、1リッチも持ってません!? 持ってるのはキャンディーの袋だけです!』

 

『な、なんだと!? オレたちより貧乏だって言うのか……しょうがねぇ、その袋だけとってずらかるぞ』

 

『了解っス!』

 

 そう言って二人組はどこかへ去っていった。

 

「ハッポとグルッチェ、なんだかんだ言って腐れ縁だよな」

 

「そうですね。ルーベルトさんと出会えたのもあの二人とのやり取りのお陰でもありますし! 今では感謝してますよ!」

 

「……そういえばよぉ、なんで揉めてたんだ?」

 

「……願い集めをしようと思って」

 

『将来の夢はありますか?』

 

『あん? そんなものより今のリッチだろ』

 

『あ、あの今のライフとかでもいいんですけど……』

 

『無職なんだけど……テメェ煽ってんのか!!』

 

「……って感じですね」

 

「ちょっとだけグルッチェに同情したわ。確かにそりゃ無職でリッチ不足のところに高値で売れそうなやつ来たらああなるかもな」

 

「え! そんなですか!」

 

「世の中、わからねぇものよ。いつ自分が、どうなるかもわからねぇんだから。ま、普段は気楽に生活すればいいんだけどな。いざっていう時の覚悟は大事だぜ。まあだからって人を傷つけるのはダメだけどな。……って、お前はチョウチョだったわ!」

 

「そういえばそうでした……。……でも、あれからもう、1ヶ月くらいですかね?」

 

「そうだな。この女神像の前で俺たちが出会ってちょうど30日くらいか。思えばいろんな旅をしたな。世界を巡って、強敵と出会い、友達も出来た。とても濃密で、人生の中で1番輝いていた30日だったな。……ま、俺は河童だけどな!」

 

「ふふっ……。……あら?」

 

 女神像の前で話す俺たちのそばに近寄って来た一人の老人。

 

「お、しるべじいさん。久しぶり!」

 

「お久しぶりです!」

 

「二人とも久しぶりじゃの。元気じゃったか?」

 

「ああ!」

 

「ばっちりです!」

 

「そうかそうか。お、ルーベルト。お前さん、ワシが前に渡したチャーム、まだ付けてくれてたのか」

 

「ああ。チョウチョと出会ったばかりの頃に女神像について教えてくれたときに貰ったな」

 

「大切にしてくれてて嬉しいのぉ……。……時にルーベルト、お前さん、夢はもう決まったかの?」

 

 前に会った時、しるべしいさんに夢を聞かれた。その時は答えられなかった。でも、今は──。

 

「……決まったけど、言うのはもう少し後だ」

 

「そうかそうか。聞くことのできる時を楽しみにしとるよ。チョウチョちゃんは?」

 

「私はまだ全然です」

 

「それもいいさ。悩むことは若者の特権じゃからな。……さて、ルーベルト。また今度、アップルフィッシュでもとってきてくれな」

 

「いやもう2メートルのやつはこりごりだよ。俺雲の上まで行ったからな」

 

「ホッホッホ。ありゃこのクルブルクのぬしじゃからな。手強いぞ?」

 

「釣りは釣り人にやらせときゃいいんだよ。今度アイザックでも生贄にするかな」

 

「ははは……ほどほどにな。……じゃあ、ワシはそろそろ失礼するよ」

 

「おう! またな!」

 

「またです!」

 

「ああ、またな」

 

 そう言ってしるべじいさんは去っていった。

 

「ルーベルトさん、今は言えない願いなんですか?」

 

「ああ。この夢はもっと色んな景色を見尽くしてから言いたいからな。逆にチョウチョは無いのかよ」

 

「本当に全然思い浮かばないんですよ……まぁ私が夢を言うのはルーベルトさんの願いを聞いたらにしましょうかね?」

 

「逆の方が面白そうだな! お前の願いを聞いたら教えてやるよ!」

 

「あ! ルーベルトさんずるいです!」

 

「ふっ! なんとでもいうがいい! ……疲れたな」

 

「ですね」

 

「帰るか。俺たちの家に!」

 

「はい!」

 

 俺たちはメグおばさんにただいまを言って、夜更けまで、今までの旅を語り尽くした。

 

 

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