俺たちはバラードの酒場を後にして、商店街の広場を歩いていた。コンガス食堂の前あたりだ。
「いやぁ、中々楽しかったな!」
「酒場なのにりんごジュースしか飲めませんでしたね私たち」
「おいおい冗談はよしてくれ。ちょっと自分が酒飲んでるところを想像してみろよ? 周りから見たらチョウチョがアルコール摂ってるんだぜ? なんだよその世紀末」
「実際あと1ヶ月で世界が滅ぶかもしれないので、世紀末であってると思うんですけど」
「だまらっしゃい」
「ルーベルトさんって自分がレスバ負けそうになるとすぐ逃げますよね」
「おだまり」
「あっ、ルーベルトさん! 見てくださいよ!」
チョウチョが浮かんでいる方角を見ると、そこにはサーカステントがあった。
「サーカスか。寄ってくか?」
「……でも、隣の小さなテントの方が気になりますね。見てくださいルーベルトさん。隣のテントの方には行列ができてますよ?」
「ホントだな。じゃ、先にサーカスを見て、その後に隣のテントに寄るってのはどうだ?」
「いいですね! もしかしたらその頃には行列がなくなってるかもしれませんしね! そうと決まれば善は急げです! 早速サーカスを見に行きましょう♪」
「うっしゃあ! 行くか!」
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「ソミーナちゃんの歌声すごく綺麗だったな」
「周りで色んな芸をやってましたけど、結局ソミーナさんに注目しちゃいましたね」
「そりゃしょうがねぇよ。あんなに歌上手いんだもん。あの子は伸びる! この敏腕プロデューサーのルーベルトさんが保証するぜ! 目指せスノウちゃん超え!」
「流石に無理じゃないですか? いや、人の夢を貶したい訳では無いんですけど、世界的アイドルであるスノウさんと比べるのは酷というものですよ」
「まー確かになー。あーあ。スノウちゃんに一度でいいから会ってみてぇなぁ」
「ですね〜。……あ! ルーベルトさん! 私たちすっかり目的を忘れてます!」
「おっと。そういやそうだったな。いくか、隣のテント」
「はいっ!」
行列が落ち着いた小さなテントの中には紫色の長い髪を持つ女性と、キラキラと輝く水晶玉があった。
「いらっしゃい。私はトロアンナ。占い師よ。ルーベルトちゃん。ユエリアちゃん。アナタ達の旅路は時々水晶玉から覗かせてもらったわ」
「「……てことは」
「俺とユエリアがハグしたり!?」
「私とルーベルトさんが一緒のベッドで寝ているのも!?」
「「いつも見られてた!?!?」」
「……見てないわよ」
おかしいな。目が合わないぞ。俺とユエリアが訝しむような目で見つめ続けると、トロアンナさんは話題を変えた。
「私、最近寝不足なんです。 ……あぁ! あのダルスモルスにあるという罪深き椅子さえあれば、私はきっと安眠することができる……お願いですルーベルトさん、チョウチョさん。世界を救う貴方たちならきっと椅子を手に入れられます!」
「露骨な口調の変化は嫌いじゃないぜ」
「これってつまりサブクエストってことですね!」
「メタイぞユエリア。『みんなからのおねがい』と言え」
「ルーベルトさんも大概じゃないですか」
「こほん。と、いうわけで私は夕方からいつもバラードの酒場にいるから、よろしくね!」
というわけで罪深き椅子を頼まれた!
「じゃ、私はいつもここからアナタ達を応援してるわ。二人とも、頑張ってね!」
「おう!」
「はいっ!」
トロアンナに手を振って俺たちはテントを後にした。
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「む! そこにいるのはルーベルトじゃないか! たのむ! 後生の頼みじゃ! ワシにエレクシールを持ってきてくれないか?」
俺たちがさっき見たサーカスの座長。マルセルさんに頼まれた。
「エレクシール? あぁ! 思い出したわ!」
「ヒューズさんが沢山持ってた奴ですね。ちなみにマルセルさんは何に使うんですか?」
「髪じゃ」
「「………」」
(お、おい。ユエリア。コイツ伝説の霊薬を髪の毛に使おうとしてるぜ)
(る、ルーベルトさんも使えばその頭頂部も治りますかね?)
「これは皿だよ!!!!! 河童の、皿!!!!!」
「ど、どうしたんじゃ急に」
「あぁ、すまん。ちょっとこのメスガ……チョウチョが生意気なこと言いやがったのでつい。……よし、決めた。マルセルさん、アンタの頼み、聞き受けるぜ!」
「ルーベルトさん!?」
「おぉ! ありがとうルーベルト!」
エレクシールを頼まれた!
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「いやぁ。なんか今日はサブクエストって感じの1日だったな」
「これもねがいあつめの一環なので、気長に頑張りましょう!」
「だな。さーて、今夜の晩御飯はなにかなー!」
「私はビーフシチューに賭けます!」
「お! じゃあ俺はラーメンで!」
和気藹々と喋っているといつのまにか家に着いた。
「今日は私が採ってきたゴールドドラゴンステーキよ」
「「マジかよ」」
メグおばさんは、俺たちが思っているよりもずっと逞しいのかもしれない。
本当に……本当に…………うん。
俺とユエリアはいつもよりナイフとフォークをカチャつかせながら恐る恐る味わったのだった。