「なんだか歴史的な瞬間に立ち会ってる気分だぜ。具体的に表現するなら、10年以上続編を待ち侘びていた本の新作が、ついに今日発売するって感じの気分だ」
「うぅ……なんだかグルグルしてきました……」
「お? 自分に酔ってんのか?」
「船に酔ってるんですよ……うぷ」
海。そう。俺たちは今、大海原のど真ん中で船に乗っている。それも、宴付きの。
ふと甲板の中央を見てみると、音楽団たちが思い思いに演奏している。一緒に乗っている海賊たちは酒樽の周りで大はしゃぎだ。
「俺も酒飲みてぇなぁ…。お前、飲めるんだろ? ユエリア。だってお前年齢不詳だもんな」
「いい加減にしないとぶっ飛ばしますよルーベルトさん……オロロロロロロロロ!」
「わあ。流石女神の子。ちゃんと虹色補正かかってんじゃん」
「砂糖水飲みすぎました……」
なるほど。ありゃほぼ100%砂糖水か。
「……にしてもこれでゲロイン属性もゲットだな。あとゲットしてないのはなんだ?」
「真っ先に思いつくのはヤンデレとメンヘラですね」
ユエリアはそう言いながら懐から肉包丁を取り出した。
「こっち見ながら言うなよ」
「河童肉って美味しそうですよね。不老不死にもなれそうですし」
「そりゃ人魚の肉だろ。いやまあ確かに俺は生足魅惑のマーメイドだけどさ」
「ルーベルトさんの足なんか見ても別になにも……オロロロロロロロロ!」
ああ! レインボー砂糖水がこぼれ落ちてく!
「オロロロロロロロロ!」
おっと? この声は?
「姉さんもう飲めないです……オロロロロロロロロ!」
「なんだよアンディ! アタシの酒が飲めないって言うのか!」
「なんで兄弟でアルハラしてんだよ」
アンディがワインをリリースしていた。
俺がボマーだ……! ……いや、普通にヤークさんの方がボマーだな。うん。
「ほら! ルーベルトも飲めよ!」
「お酒は二十歳からだからさ」
「ん? 別にある程度大人になったらいいはずだろ?」
「早くから飲むとアルコール耐性が弱くなるからな。がぶ飲みしたいから我慢してるってわけ」
「ガハハハハハ! よく知ってるなルーベルト! その入れ知恵はエリックか?」
「いや。せんだいこくおうですね」
「ガハハハハハ! あの人はこのファンタジールきっての物知りだからな! 若い頃はよく冒険してたみたいだぜ!」
「まあそうですよね。実際、孫ですら冒険好きですし。ホラ」
俺はラウラの方を指差す。
「ほぉ。あの小さなお姫様があんなに大きくなったのか。懐かしいぜ。オリビアとアンディとラウラとルーザの四人で、小さい頃はよく遊んでたからなぁ」
「へぇ…!」
そうかぁ……やっぱりみんな知り合いなんだなぁ。
「ぐれん、したぴりぴりする」
「昨日のステーキか? ほら、見せてみろ。……まひなおし塗ってやるから動くなよ?」
「わふぉった(わかった)」
グレンがラウラの口の中にまひなおしを手際よく塗っている。
なんだあいつらてぇてぇか? ラブラブなのか?
じゃあ! おれも──!
「オロロロロロロロロ」
……だめだ。ゲロインしてる。
「ガハハハハハ! この宴はあと7日は続くぞ! ガハハハハハ!」
海賊も、貴族も、王族も、女神の子も分け隔てなく過ごせる宴。
ポルトポルトのおもてなしは、なかなか楽しいな!
「オロロロロロロロロ……」
タイムリミットまであと1ヶ月と半月。
しかし、船上の宴は終わらない。
……最低あと7日はな。
「まあ、でも」
こんな平和な時間が、ずっと続けばいいのに。
俺は頬杖をつきながら、青い海を眺めて。
ウミネコの鳴く声を、ただ静かに聴いていた。
「オロロロロロロロロ」
「飲み過ぎだろ砂糖水!」
かっこつかねぇぜ!
「……なぁユエリア。世界を救ったら、またこの宴をしようぜ」
「もちろんです! ……オロロロロロロロロ!」
「やっぱりかっこつかねぇぜ!」