河童は不思議な生活がしたい   作:東風ますけ

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第52話「船上の宴は終わらない」

 

「なんだか歴史的な瞬間に立ち会ってる気分だぜ。具体的に表現するなら、10年以上続編を待ち侘びていた本の新作が、ついに今日発売するって感じの気分だ」

 

「うぅ……なんだかグルグルしてきました……」

 

「お? 自分に酔ってんのか?」

 

「船に酔ってるんですよ……うぷ」

 

 海。そう。俺たちは今、大海原のど真ん中で船に乗っている。それも、宴付きの。

 

 ふと甲板の中央を見てみると、音楽団たちが思い思いに演奏している。一緒に乗っている海賊たちは酒樽の周りで大はしゃぎだ。

 

「俺も酒飲みてぇなぁ…。お前、飲めるんだろ? ユエリア。だってお前年齢不詳だもんな」

 

「いい加減にしないとぶっ飛ばしますよルーベルトさん……オロロロロロロロロ!」

 

「わあ。流石女神の子。ちゃんと虹色補正かかってんじゃん」

 

「砂糖水飲みすぎました……」

 

 なるほど。ありゃほぼ100%砂糖水か。

 

「……にしてもこれでゲロイン属性もゲットだな。あとゲットしてないのはなんだ?」

 

「真っ先に思いつくのはヤンデレとメンヘラですね」

 

 ユエリアはそう言いながら懐から肉包丁を取り出した。

 

「こっち見ながら言うなよ」

 

「河童肉って美味しそうですよね。不老不死にもなれそうですし」

 

「そりゃ人魚の肉だろ。いやまあ確かに俺は生足魅惑のマーメイドだけどさ」

 

「ルーベルトさんの足なんか見ても別になにも……オロロロロロロロロ!」

 

 ああ! レインボー砂糖水がこぼれ落ちてく!

 

「オロロロロロロロロ!」

 

 おっと? この声は?

 

「姉さんもう飲めないです……オロロロロロロロロ!」

 

「なんだよアンディ! アタシの酒が飲めないって言うのか!」

 

「なんで兄弟でアルハラしてんだよ」

 

 アンディがワインをリリースしていた。

 俺がボマーだ……! ……いや、普通にヤークさんの方がボマーだな。うん。

 

「ほら! ルーベルトも飲めよ!」

 

「お酒は二十歳からだからさ」

 

「ん? 別にある程度大人になったらいいはずだろ?」

 

「早くから飲むとアルコール耐性が弱くなるからな。がぶ飲みしたいから我慢してるってわけ」

 

「ガハハハハハ! よく知ってるなルーベルト! その入れ知恵はエリックか?」

 

「いや。せんだいこくおうですね」

 

「ガハハハハハ! あの人はこのファンタジールきっての物知りだからな! 若い頃はよく冒険してたみたいだぜ!」

 

「まあそうですよね。実際、孫ですら冒険好きですし。ホラ」

 

 俺はラウラの方を指差す。

 

「ほぉ。あの小さなお姫様があんなに大きくなったのか。懐かしいぜ。オリビアとアンディとラウラとルーザの四人で、小さい頃はよく遊んでたからなぁ」

 

「へぇ…!」

 

 そうかぁ……やっぱりみんな知り合いなんだなぁ。

 

「ぐれん、したぴりぴりする」

 

「昨日のステーキか? ほら、見せてみろ。……まひなおし塗ってやるから動くなよ?」

 

「わふぉった(わかった)」

 

 グレンがラウラの口の中にまひなおしを手際よく塗っている。

 

 なんだあいつらてぇてぇか? ラブラブなのか?

 

 じゃあ! おれも──!

 

「オロロロロロロロロ」

 

 ……だめだ。ゲロインしてる。

 

「ガハハハハハ! この宴はあと7日は続くぞ! ガハハハハハ!」

 

 海賊も、貴族も、王族も、女神の子も分け隔てなく過ごせる宴。

 ポルトポルトのおもてなしは、なかなか楽しいな!

 

「オロロロロロロロロ……」

 

 タイムリミットまであと1ヶ月と半月。

 しかし、船上の宴は終わらない。

 ……最低あと7日はな。

 

「まあ、でも」

 

 こんな平和な時間が、ずっと続けばいいのに。

 

 俺は頬杖をつきながら、青い海を眺めて。

 

 ウミネコの鳴く声を、ただ静かに聴いていた。

 

「オロロロロロロロロ」

 

「飲み過ぎだろ砂糖水!」

 

 かっこつかねぇぜ!

 

「……なぁユエリア。世界を救ったら、またこの宴をしようぜ」

 

「もちろんです! ……オロロロロロロロロ!」

 

「やっぱりかっこつかねぇぜ!」

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