太陽が真上で俺たちを照らしている。砂漠の昼は想像以上に過酷だ。サンサン砂漠の南東にはオアシスがあるが、太陽に照らされているので割と熱い。
それに比べると今から向かう地底湖は避暑地だ。
「「ウッホー!」」
地底湖。サンサン砂漠の南にある洞窟。このサンサン砂漠の水分の大半はここに集まっている。
ドラちゃんのポケットの下部分みたいなカーブを下っていくと入り口がある。
鳴き声から分かる通り、2匹のゴリラが立っている。キンニクゴリラ。安直だが味わい深い名前だ。頭にターバンを巻いていて、思っていたよりもずっと文化が発展しているのかもしれないと驚いた。
とまあ色々解説したが。
「悪いな。少し寝ててもらうぜ」
「「ウッホー……」」
2匹の腹に同時に拳を打ち込んで気絶させた。立ったまま気絶してるから、どっかの世紀末のカサンドラの番人かもしれない。
「ルーベルトさんが普通に強くなってるの、なんか意外です!」
「そりゃ黒影怪物との戦いで散々ボコされてるからな。否が応でも強くなるぜ」
「にいちゃんよりも強いかもな!」
「デグタスさんより強くても、メアリーさんには絶対かてねぇよ。ロック」
「あはは。たしかに」
「地底湖というと……大地の大翼石ね! エメラルドとアースのカケラは制作職に高く売れるのよね」
緑色の宝石にアンジェさんはメロメロみたいだ。エメラルドやアースのカケラで作った武器は大地属性で、風属性のモンスターによく効く。それこそサンサン砂漠に生息する雷鳥サンダーバードや、風の大精霊カゼジーなど、活躍の機会は多いだろう。
「俺もなんか装備欲しいな〜」
「ルーベルトさんが武器を持っているイメージが湧きませんね。素手で頑張りましょうよ!」
「そういやお前も素手だな……」
「チョウチョに素手とかあるのか?」
「あ、ありますよそのくらい!! ほら、この羽の先端とか!」
「話すのもいいけれど、あまり足踏みしていると日が暮れるわよ? 砂漠の夜は昼以上に過酷よ」
「そうだな。暗くて寒いとか、そんなダブルパンチを喰らう前に、早くブヒーモスを討伐しようか」
「ルーベルトさんはキンニクゴリラさんにダブルパンチしましたけどね!」
「3人で美味しいビーフストロガノフ食べような!」
「「おおー!」」
「ごめんなさい! 私が悪かったですから先っちょだけ! スプーンの先っちょだけ……ああ待ってください! ギャグセンス磨きますから待って下さい!」
二人だとあんまりできないボケだから、中々楽しいぞコレ。
「腹がはち切れるまで食わしてやるよ。行こうぜユエリア!」
「ルーベルトさん! この世界で一番愛してます!」
「現金だね」
「現金だわ」
現金なやつだなこいつ。そこが俺も好きなんだけど。
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地底湖の奥。
「あたしとロックはここで大地の大翼石を採掘するわ」
「ルーベルトたちはブヒーモスを頑張って倒してね! 無理はしないようにね!」
「おう! 任せろ!」
「朝飯前ですよ! 晩御飯前ですけど!」
「ユエリア…」
「温かい目で見ないでくださいルーベルトさん。チョウチョにも黒歴史というものは存在するんです」
「そりゃ勉強になったぜ。女神様と、かみさまにも教えてあげないとな」
「お母様とお父様に言わないでくださいよ!? フリじゃないですからね!」
「「お母様? お父様?」」
「「あっ」」
しまった。最近素性を明かしてるやつが結構いるからついうっかり喋っちまったぜ……。
「ちょ、チョウチョは女神ステラとかみさまのことをすごく尊敬しててな、こういう呼び方をするんだぜ」
「そ、そうなんですよ」
「「なるほど」」
((信じてくれた! 優しい!))
俺はこの戦いが終わったら、昔チョウチョが勝手に買ったあの高級砂糖を使った極上の砂糖水を飲ませてやろうと、そっと胸の中で誓った。
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「ブモオオオオ!!!!!」
「体はデカいし、思ったよりもアクロバティックだが、攻撃力や守備力は黒影怪物と比べたらへっちゃらだぜ!」
「回復します! ルーベルトさん!」
「いや、回復は後回しでいい! 必殺技をうっちまえ!」
「わかりました! 光の流れ星!」
ユエリアの上空から光の玉が何発もブヒーモス目掛けて落ちていく。流れ星というより、流星群だな。十何発もあるぞ。
「ブモオオオオ……」
魔法使いのマスターくらい強いなコイツ。ククやネクより強いんじゃねぇか?
「ナイスユエリア! ブヒーモスも肉頂くぜ。明日の朝にゃ生き返るだろうけど、お前の命に感謝するぜ。安心してくれ、無駄にはしないぜ」
「残さず頂きます!」
「だな!」
モンスターは倒すと明日の朝には生き返っている。だからといって命への感謝は忘れてはいけない。このファンタジールを生きる仲間なのだから。
それはそれとして、黒影怪物も、元に戻って生き返っているのだろうか?
……亜空間。そこからきた奴らも、幸せに暮らせているだろうか?
世界は謎だらけだ。でもそんな不思議が俺たちにワクワクをくれる。
「帰って乾杯だな!」
「お酒は飲めませんけどね!」
ダルスモルスのみんなでこの肉を分け合って、仲良くなって、願い事を聞けるといいな。なんて、これからのことを思い描きながら、俺たちは帰路についたのだった。