がっこうぐらしー守るべきものー   作:三坂

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武闘派との決戦を終えた学園生活部、穏健派
新たな仲間が加わり賑やかになってきたころ
目的地であるランダルコーポレーションの、本社ビルへ向かうことに


第四十一話 えんせい

武闘派との決戦から数日後‥ 

 

 

荒廃した巡ヶ丘市内を2台の車が走行していた。一台はキャンピングカー、そしてその後ろにはトヨタクラウンアスリートの高速隊仕様の警察車両が続くように走っていた。

 

 

「‥‥ふぁぁ‥(あくび)」

 

 

そのアスリートの車両の助手席では雪が眠たそうに目を擦っていた。どうやら寝起きのようだ。

 

 

「あら、おはよ。よく眠れた?」

 

 

「おはようございます‥先輩‥(ウトウト)」

 

 

「まだ寝ぼけるわね‥(汗)」

 

 

そんな雪を苦笑いで見つつ、ハンドルを握る睦。武闘派がいなくなり、キャンパスの安全が確保されたことから

すこし遅くなったが遠征組はランダルコーポレーションの本社ビルに向けて出発することに。

そして‥新たな仲間も‥ 

留守番組には新たに元武闘派のシノウが加わり、戦力が大幅に強化されていた。

それは遠征組も同様、新たに彩月睦、そして理学棟の研究者である青襲椎子が加わっていた。

 

 

「この先左〜」

 

 

「了解〜」

 

 

キャンピングカーでは、圭が穏健派から貰った地図を活用して道案内をしており、それにしたがってキャンピングカーを美紀が操っている。そしてその後ろでは

日野が各員の銃のマガジンに弾を込めておりその隣では理琉も手伝っていた。そしてベットでは胡桃と由紀がじゃれ合っており、テーブルでは椎子がノートパソコンをつついており、その音がBGM代わりになっていた。

 

 

「にしても、まさか雪さんの先輩と出会うとは思いませんでしたよ〜」

 

 

地図を見つつ圭がふとバックミラーでクラウンをみてそう口に出す。それに賛同するかのように他のメンバーも口々に話し始める。

 

 

「たしかにな〜、よくここまでこれたよな?確か横須賀からだろ?」

 

 

「聞く限りじゃ判断力がなかなかいいらしいからそれ頼りで生き延びた感じやろうな」カチャカチャ

 

 

「それより警察車両魔改造してましたけど‥あれパンデミック前ならもれなくアウトですよね‥(汗)」

 

 

出発前、クラウンの車内に積んであったニトロボンベを見させて貰ったときのことを思い出して思わず苦笑いになってしまう美紀。

 

 

「まあ、今なら咎める人いないから大丈夫でしょ」

 

 

「そうゆう問題ですか胡桃先輩‥(汗)」

 

 

「でも♪新しく仲間が増えたのはいいことじゃん♪」

 

 

「まあ、それもそうだな」

 

 

 

 

 

 

「疲れたぁ‥!」

 

 

 

あれからしばらく走った後、休憩のため一同はセブンイレブンのコンビニに寄ることに。そして着くなり思いっきり背伸びをする雪。

 

 

「やれやれ、こんな長期的ドライブは大学に来るとき依頼だな‥」

 

 

胡桃も同じように背伸びをしつつ周囲を見渡している。

 

 

「よし、とりあえず俺と理琉、胡桃と由紀で中の確認をしてくるからここを頼んだぞ〜」

 

 

「わかりました〜」

 

 

「任せなさい!」

 

 

「手土産期待してますよ〜?」

 

 

「ワン!」

 

 

 

「うっひょぉ‥こりゃ酷いな」

 

 

コンビニの中に入ったのはいいもののやはり店内は荒らされており、血痕なども飛び散ってる有様であった。

 

 

「すでに先客がいたんだね‥」

 

 

「この感じだと‥物資が少ない中で取り合いになったんだろうな‥」

 

 

「それ以前にここにはあんまり物資無いように思えるがな‥っと」

 

 

そう言いつつ、近くに転がっていたペットボトルの麦茶5本を見つけて手に取る理琉。

 

 

「中身はあるな‥、まあないよりかはマシだろ」

 

 

「ねぇ‥?マーくん‥」

 

 

「ん?どうしたんだ?由紀」

 

 

ふと、袖を引っ貼られて振り向くとそこには店の奥を指差す由紀の姿が。それを見て3人は察する。

 

 

「これは‥いるな‥」

 

 

「あぁ‥」

 

 

「由紀、何体かわかるか?」

 

 

「そこまで声がしないから‥そんなに多くない‥けど‥足跡が多い‥」

 

 

由紀に何体いるか問いつつ素早く銃を取り出して構える。数分後店の奥から数体ほど彼らが現れる。

 

 

「おそらく、物資の取り合いをしてた連中だな」

 

 

「あぁ‥遺体がないときかからおかしいとは思っていたが‥やはり彼ら化してたか‥」

 

 

そう話しつつ3人はトリガーを引いて、現れた彼らを制圧していくのであった。

 

 

 

「ちょっといいかな?」

 

 

「‥はい?どうされました?」

 

 

その頃外の駐車場では見張りをしていた睦に椎子が声をかける。

 

 

「君は確か‥公安にいたと言っていたな?」

 

 

「えぇ‥そうですが‥」

 

 

「パンデミック前からランダルコーポレーションについて何か聞いてないのか?」 

 

 

椎子の質問に一瞬考えた睦だが、すぐに首を振りつつ否定する。

 

 

「いえ‥、うちにはそんな情報は全く‥。いや‥確か過去に1軒‥」

 

 

「あるのか?」

 

 

普段はあんまり喋らなそうにしている椎子だが、このときは珍しく食いついて来ていた。それに驚きつつも話を続ける。

 

 

「といっても‥、あんまり詳しくとまではいきませんが‥今から数十年前1968年‥巡ヶ丘市の旧市名

男土市で人口が半減したという原因不明の事案があったそうです。そのときにうちの公安が調査のためランダルコーポレーション含めた巡ヶ丘市内の会社にに立ち入り調査を行ったという記録が‥」

 

 

「確か、新聞にもそれについて報道する文書があったな。それで、調査した結果はどうなんだ?」

 

 

「そのときは‥特に異常が見られなかったそうです。」

 

 

「なるほど‥ありがとう。貴重な情報をもらったよ」

 

 

そう言い残して再びキャンピングカーへと戻っていく椎子、そんな彼女を不思議そうに睦は眺めていたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

「なるほどね〜、中に先客がいたんだ」

 

 

「そう言っても、簡単に制圧できたがな」 

 

 

その日の夜、キャンピングカーの車内では今日の戦利品の確認。そして見張りの報告と雑談をしていた。

 

 

「にしても驚いたよ〜。由紀ちゃんって五感いいんだねぇ」

 

 

「えへへ〜♪」

 

 

「倒したのはアタシらだけど、見つけたのは由紀だもんな〜」

 

 

「さすが、おれの相棒だナ」ナデナデ

 

 

「んにゅ〜」

 

 

そんなこんな話している中、美紀と圭は今日手に入れた麦茶のペットボトルを飲み物の入った箱に入れる作業をしていた。

 

 

「ん?」

 

 

箱詰めしている最中、圭がある水の入った大きなペットボトルを見つけて取り出す。

 

 

「どうしたんですか?圭」

 

 

「いや、これいつのやつだろって思って」

 

 

聞いてきた美紀にそう返しつつ、キッチンで作業している雪に声をかける。

 

 

「雪さん〜ちょっといいですか〜?」

 

 

「ん〜?どうしたの〜?」

 

 

 

「この水っていつのかわかりますか‥?麦茶しまってたら見つけたので‥」

 

 

「あ〜、それ高校の災害用貯水タンクから持ってきた最後の水だね。もしものために大きいペットボトルに入れて保管してたのよ」

 

 

「なるほど、じゃあこのまま閉まっときますね?」

 

 

「ほいほい〜」

 

 

その日の夜、一同が寝静まったあと布団の中では睦がスマホで何か調べていた。とは言ってもパンデミック後ではろくに通信が通ってないので、もともとある公安用の警察記録のアプリを使っているようだ。

 

 

「‥‥あった‥!」

 

 

記録を探していると1軒の情報がヒットする。そこには 

「1968年男土市で人口が半減する不可解な現象が発生

政府及び公安など、各機関が当時の男土市の企業に立ち入り調査を実施という異例の事態に」と書かれていた。

 

 

「やっぱり‥このときになにかあったんだ‥。それと‥今回のパンデミック‥、なにかありそうね‥」

 

 

そうボヤきつつ、しばらくの間情報収集に熱中しているのであった。

 

 

 

翌日‥

 

 

「(カキカキ)‥」 

 

 

「ん?美紀何書いてるの?」

 

 

みんなよりすこし早く目が覚めた雪の視線に映ったのは

何か真剣に書いている美紀の姿だった。

 

 

「あっ‥おはようございます‥」

 

 

「おはよ、ってこれって‥」

 

 

布団から出つつ、美紀が書いている内容を見てみるとそこには遺書らしき文書が書かれていた。

 

 

「‥この先‥どうなるかわからなくて‥。たどり着けなかったときを考えてたら‥。」

 

 

「‥‥」

 

 

美紀の話を聞いてると雪ももしもの時を考えてしまう。たどり着けなかったとしたら‥もしたどり着けても悪夢が終わらなかったら‥。そのたびに警察官だからしっかりしなきゃと割り切ってるものの、そんな考えは離れずについてくる。

 

 

「‥もしも‥そうなっても‥あなた達は何がなんでも守る‥。命をかけてでも‥」

 

 

「‥‥」

 

 

 

そして一同が全員起床し、軽く朝食を食べながら雑談をしていた。そんな中椎子がふと質問する。

 

 

「ところで‥君達に聞きたいのだが‥」

 

 

「ん?なんだ?」

 

 

「この事件のきっかけが想像できるかな?」

 

 

「う〜ん‥」

 

 

朝から小難しい質問が出され、一同は首を捻って考えつつそれぞれの仮説を立てる。

 

 

「ほら、あれじゃないか?バイオハザードみたいに研究所から細菌が漏洩したとか」

 

 

最初にいい始めたのは胡桃

 

 

「そうだとしても‥下手すれば生物兵器になりかねないやつを本社ビルに置くか?」

 

 

続いて日野がいい始める

 

 

 

「まあ確かにアンブレラ社でも巨大な地下施設で厳重にしてたよねぇ‥」

 

 

雪も乗っかるように話に加わる。

 

 

「それ以前にそんな大きなことしてたら政府とかにバレそうな気がするけどな‥」

 

 

「いや、もしかしたらうまいことかわしているのかもしれない。そうゆうけいの会社ってだいたいそうかその市長とか政府に賄賂わたしてるやつが多いし」

 

 

ある程度みんなの意見を聞いた上で再び椎子が話を再開させる。

 

 

「まあ、だいたいそんなものだろうな。わたしも同じ意見だ‥。」

 

 

「正解は何〜?」

 

 

由紀が前のめりになりつつ聞いてくる。そんな彼女を見つつ窓の外に視線を移す。

 

 

 

 

 

 

「その正解の‥答え合わせに行こうではないか」

 

 

 

 

 

 

 

そういった彼女の視線の先には、巡ヶ丘市中央にそびえ立つランダルコーポレーションの本社ビルの姿があった‥。

 

 

「ここがアイツラの拠点か‥」

 

 

 

 

いよいよ本社ビルに到着した一同はまず敷地の周囲確認をすることから始めることに。敵の拠点であった建物プラスショッピングモールなどと同様に一階入口に彼らがたむろってないのかの確認をするためであった。

 

 

本社ビルの向かい側の立体駐車場の屋上からバレットで確認を行う美紀、そしてアシスタントをする圭

 

 

「どう?美紀」

 

 

「建物敷地内及び周囲にあいつらはいない。侵入は二階からハシゴが出てるのでがあるのでそこから行けそうです。」

 

 

「了解、それじゃ戻ってきて」

 

 

そしてしまっていた門を開けて2台は敷地内へ侵入。すぐに出れるようにハシゴ前に車を止める。

 

 

「よぉし、んじゃ上がるか。足元気をつけろよ〜?」

 

 

そう言いつつ日野が先には上り、中に彼らがいないことを確認しつつ室内に入る。それに続いて理琉、由紀、胡桃、圭、美紀、椎子、雪、睦の順にハシゴを登る。

 

 

「しっかし‥もぬけの殻だなこりゃ‥」

 

 

廊下の左右を見つつそんなことを言う日野。確かにそのとおり、ランダルコーポレーションの本社ビルなら誰かいてもおかしくないはずなのだが誰一人もいない。ましてや警備がない時点でおかしい。

 

 

「‥何あるな‥」

 

 

 

 

「とりあえず二階には奴らはいない。というかそもそも奴らが入れるような場所はないからひとまずは安心だな」

 

 

それから少しして見張りがある程度住んだため一同は仮眠室に集まっていた。ちなみに椎子は情報収集のためここのパソコンと睨みっ子最中のためいない。

 

 

「となると落ち着いて探索ができそうですね」

 

 

イスに座りつつ睦がそう言う。それに頷いて理琉が話を続ける。

 

 

「それと、ここにも非常用発電システムがあるらしい(マニュアルを机に広げつつ)シャワー室もあるのか‥、こいつら準備だけは一人前にしてるんだよなぁ‥」ポリポリ

 

 

「それで‥これからどうするんですか?」

 

 

太郎丸に餌を与えつつ、理琉に今後の動向を聞く圭、その横では美紀も頷いている。

 

 

「今日はもう遅いから寝るとして‥、明日は2班に分かれて探索する。片方は地上階の探索、もう片方は地下の探索だ。」

 

 

「メンバーはこっちで決めさせてもらった。

地下は俺と理琉、由紀と圭、そして美紀

地上班は雪と睦、胡桃にわかれてもらう。それと地下には椎子さんが同行するそうだ。」

 

 

メンバー表を見せつつ説明を付け足す日野。彼の説明に一同はうんうんとうなずいていた。

 

 

「まあ、今日は各自ゆっくりしててくれ。長旅で疲れてるだろうし」

 

 

こうして説明が終わりとりあえず今日は各自自由に過ごすことになった。

 

 

「美紀〜、お風呂入ろ〜?」

 

 

「そうしましょうか‥♪」

 

 

「日野〜、ちょっと雪借りるわよ〜?」

 

 

「へいへい、ってなんで借りるんだ?」

 

 

「秘密〜」

 

 

「ちょ‥先輩?」

 

 

「今日はとことん聞いてやるからな〜?」

 

 

「胡桃まで‥(汗)//」

 

 

「マーくん〜、一緒にゲームしよ〜?」

 

 

「どっから持ってきた‥(汗)まあいいか、よし!やろう!今日は負けないからなぁ?」

 

 

「私だって‥♪目指せ!三連勝!!」

 

 

その頃‥椎子はランダルのパソコンで何か調べているようだ。少しすると画面表示が変わりある表示が出てくる。

 

 

「ピピピ システム キドウカクニンシタヨ ランダルコーポレーションAIシステム サイキドウ」

 

 

「ふふ‥やはりな‥」

 

 

パソコンから何やら機械式音声が聞こえてきて、確信したように椎子が薄暗い中笑みを深めていた。

 

 

 

同時刻‥太平洋沖

ランダルコーポレーション指揮下

強襲揚陸艦コメット

パンデミック指揮統制室

 

 

「‥!少佐!これを!」

 

 

指揮統制官であり、ランダルコーポレーションを支配下においているアンブレラ社のCSA少佐ティモシー・ケインがオペレーターの一人に声をかけられ画面を見る。

 

 

「これは‥?」

 

 

「先ほど巡ヶ丘市のランダルコーポレーション本社でAIシステムが再起動しました」

 

 

「再起動‥?本社の生き残りか?」

 

 

「いえ、発生源の本社で職員とは考えられないかと」

 

 

「そうなると‥、他のところから来た生存者‥。だが民間人で何も知らないのにここにくるとは考えづらい‥」

 

 

「つまり‥、数週間前に巡ヶ丘高校に送り込んだ精鋭軍を壊滅させた人物‥」

 

 

「それに、その精鋭軍が行った妨害作戦でアメリカ陸軍特殊作戦群所属の2名がその高校の生存者によって救助されている。そして聖イシドロス大学の内部抗争を利用した作戦も失敗させた奴らが一番怪しいな」ピラ

 

 

そういって一枚の紙をポケットから取り出して見つめる。そこには由紀達が飛ばして、メンバー達が描かれている絵手紙が丁寧に保管されていた。

 

 

「しかし‥私には到底彼女達に精鋭軍を倒せる力があるとは考えられません‥。たとえ銃を持っていたとしても‥」

 

 

「それはどうかな‥。普通の人が意外な潜在力を隠し持ってるのは確かだ。あの中には‥現役の軍人、そして警察官がいるんだ。彼らが主軸になってるのかもしれん」

 

 

「確か‥この本社ビルには‥」

 

 

「あぁ、例の試作兵器があったはずだ。とりあえず本社ビルの防犯カメラを起動させろ。それとカメラは動かすな。生存者がいるならそいつらにバレるかもしれん」

 

 

「わかりました」

 

 

そういった後、自身は足早に指令室を後にしつつどこかと無線で交信する。

 

 

「はい‥、こちらケイン少佐です。先ほどランダルコーポレーション本社ビルにて‥‥はい、はい。わかりました。B1計画を始動させます」

 

 

彼の言っているB1計画‥それはなんのことだろうか‥

しかし、それを知らない遠征組はのんびりと過ごしていたのであった‥。そんな彼女達を再び悪夢が襲うととは知る由もなかった‥‥。

 

 

 




ランダルコーポレーションを支配下においている世界的企業アンブレラ社
彼らは計画を始動させます‥。
そんなことを知る由もない学園生活部と椎子はいよいよ探索に乗り出すのであった

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