脳内選択肢が俺のヒーローアカデミアを全力で邪魔している   作:目から豆腐

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ヒーローアカデミア

 

 人は、いずれ死ぬものだ。

 

 そんなことは分かっている。

 

 どうせ人間は死ぬものだとこれまで生きてきた。

 

 家族との会話もどこか空虚で、マネキンと喋っているように感じていた。

 

 そして、自分もどうせ空っぽの人間だと思っていた。

 

「ねぇ……佐藤くん……」

 

 だが、俺は。

 

「また、会えるよね……?」

 

 最後の最後に、死を受け入れることはできなかった。

 

 

 雨が降る夜、俺は彼女の頬に手をあてる。

 

 肌は冷たくて青白くなっていた。

 

 まるで、生命を感じないかのような、マネキンのような冷たさだった。

 

「ああ……!絶対に、絶対に会いにいってやる……!」

 

 小さく微笑む彼女を、そっと抱きしめる。

 空っぽだった俺に、たくさんのモノを与えてくれた。

 喜びを、悲しみを、怒りを、楽しさを、なによりも、愛という感情を。

 

 俺は、まだ彼女にこの気持ちを伝えていない。

 何年も、隠し続けたこの感情を打ち明けるのには最低な場所かもしれないのだ。

 ここが、最後の機会。

 彼女との、最後の時間だ。

 

「藤池さん……俺は、君のことが――――――ッ!?」

 

 開いた口が、何かによって塞がれる。

 

「……にひひ。ファーストキス、もらい」

 

 儚げに笑う彼女の顔が、ボクの目の前にあった。

 誰よりも愛おしくて、誰よりも美しい彼女の顔が。

 

「泣かないで、佐藤くん……」

 

 彼女の手が、俺の頬に触れる。

 

「笑ってよ、佐藤くん……」

 

 口角を、無理やり上げてくる。

 

「ねぇ……佐藤くん……」

 

 潤んだ目で俺と視線を合わせてくる。

 

 

「私、死にそうなのに、心臓がすごくうるさいの……なんでかな」

 

 

「ああ……、俺もだよ」

 

「ふふふ、何でだと思う?」

 

「それは」

 

「私はね、やっと気づけたよ」

 

 藤池さんが頬を雨で濡らしながら呟く。

 

 

「これは、恋だったんだね、佐藤くん」

 

 そう言って彼女の手は俺の頬から離れた。

 

「あ…………」

 

 そんなこと、分かっていた。

 何年も前から君のことしか目に映らなかった。

 ヒーローを目指したのも、君にカッコつけようとしただけで本当の理由は君だったんだ。

 カッコよくなって、有名になって、そしたら君が俺に惚れるかもしれないと考えていたんだ。

 ずるい、ずるいよ。

 君はいっつも俺を出し抜いてくる。

 

 

 雨が、冷たいな。

 

 

「ああ……あああっ、あああああああ!」

 

 

 

 

 

 このときから俺は壊れ始めたのだろう。

 

 

 

『問:彼女を生き返らせることができる代わりに、どんなモノでも代償にできるか』

 

『①Yes』

 

『②No』

 

 

 

 俺は、縋るように上を選択した。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 やあ皆。この度雄英学校に入学することになった千託(センタク)示威(シイ)だ。

 

 新品の制服に身を包み意気揚々と雄英の門をくぐったわけだが……。

 

 

 入学早々ピンチなう。

 

「机の製作者方に申し訳ないと思わないのか!?」

 

「思わねーよ、おめーどこ中だよクソメガネ!」

 

 スマホで構内図を確認しながら俺が入ることになる一年A組に向かっていたのが、教室の中ではイガグリ頭の少年と真面目そうなメガネ少年が言い争っていた。

 

 すっっっっっげぇどうでもいいことで喧嘩してる気がするんだが。

 

 これどうすればいいんだ?

 ヒーロー育成学校だっていうのにコイツらのせいで教室の中の風紀が乱れてしまっている。 

 ま、まさかこれも雄英の試練なのか!?

 いかなる状況であっても臨機応変に対応することがヒーローに求められるのモノ……。

 よし、まずは声をかけて――――

 

『① お前ら、静かにしなよ』

 

『② お口はチャックだぞ☆』

 

 唐突に二つの選択肢が視界に現れる。

 

 はい出てくるよね。

 知ってた。

 これが俺の個性『脳内選択肢』。

 どう判断しているかは分からないが時々こうやって邪魔してくる面倒臭い個性だ。

 この個性のせいで何度女性に頬を叩かれたか……。

 

 まあ、これのおかげでテストは楽なんだけどな。

 入学試験のときにはお世話になったものだ。

 まさかノーベンで合格できるとは思ってなかったけど、試してみたら一発合格。

 え?試験会場で個性の発動は禁止?

 ははは、いやーごめんなさいね。 

 この個性常時発動型なんですよ。

 

 迷わず①を選択する。

 

「お前ら、静かにしなよ」

 

「あ?てめぇブッ殺すぞアホ毛!」

 

 ひぇぇぇ、逆ギレされたぁ、理不尽だぁ。

 

 そもそも俺は好き好んで注意したわけじゃないんだよ。

 個性に強制されたっていうか、別に選択しなくてもいいのだが視界の邪魔になるので諦め半分で選択しただけなんだよ。

 信じてちょ。

 

 でも、バカにされたのはムカついたので

 

「アホ毛って……鏡見たことあります?」

 

「喧嘩売ってんのか!」

 

「バーゲンセール中でぇーす」

 

 くっ、これは選択肢のせいなんだ。

 断じて、俺が自発的に言っているのではない!

 信じてちょもらんま。

 

「君たち!ここは最高峰である雄英高校だぞ。もっと穏やかに話せないのか?」

 

 メガネ参戦。

 さっきまで激しく口論してたのアンタじゃなかったっけ。

 

「穏やかに話せないから戦争があるんじゃないか」

 

 俺が応戦。

 

「しゃしゃり出てくんじゃねぇ三下!」

 

 イガグリ、それは暴言だぞ。

 

「……お前ら、少しは静かに出来ないのか」

 

 ホームレス参戦……って、え?

 

 

 声がした方を見ると、気だるげそうな顔をした男が寝転がっていた。廊下に、寝袋を着て。

 

 

「ここはヒーロー科だぞ」

 

 あ、いやそれは知ってます。

 

 

 

 

 

 

 なんかめっちゃ睨まれたんだが、もしかして声に出てたかな。もしそうだったら謝っとこう。

 

「はあ……とりあえず、コレ着てグラウンドに出ろ」

 

 寝袋の中からもぞもぞと青色の上下服……体育服を出す。

 まさかソレ着ろってことか?

 嘘だろ、野郎の臭い付きの服なんて誰得だよ。

 

 

 

 

 

 あれ?皆さんなんでそんな目で俺を見るんですか?

 もしかしてまた声に出ちゃったかな。

 流石に謝った方がいいか……入学早々ボッチなんてことは嫌だしね。

 

 席に座っている彼らの方を向き、

 

 

 

  

『①やっべ……漏れちまった』

 

 

『②俺得だよ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――さようなら俺の青春アカデミア、こんにちは俺の灰色アカデミア。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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