お読みになってくださった方がいたら、申し訳ありません。
あー、あー。
マイクテス、マイクテス。
……おお、本当に声に出しただけで文章が入力されてる。
いいのかな、こんな高そうなタブレットもらっちゃって。俺の給料何年分だろう。
まあ、くれるんならもらうけど。
せっかくの記念日だから、日記でもつけてみようか。
・宇宙歴5500年 春
これから、俺は人生初の宇宙旅行へ旅立ちます。
宇宙だよ、宇宙。信じられないけど。
娯楽としての宇宙旅行は、Bランク以上の国民にしか許可されてなかったと思うけど。
知らない間に娯楽カテゴリーの見直しでもされていたんだろうか。
人類が外宇宙の開拓をしていた時代は、毎日のように移民をシャトルで打ち上げてたらしいけど。何千年も前の話だもんなぁ。
人生、何が起こるか分からない。
献血に参加しただけで宇宙に行けるなんて、ホントにいい時代になったもんだ。
正直、「アンケートに答えて豪華景品が当たる」とは聞いてたけど、そんなに期待してなかったんだよね。
たまたま職場の近くでやってたから献血しただけだし。
今は宇宙港の中で、シャトルの発射を待っている。
宇宙港なんて始めてきたけど、なんかイメージと違うんだよね。真っ暗で、よく分からない機材がゴチャゴチャしてるし。
しかも、スタッフさんたちが全員黒いスーツにサングラスしてるもんだから、最初びびったよ。
どこなんだろう、ここ。
来るときも目隠しと耳栓して車に乗せられたから、全然見当がつかないんだよな。
行先もエキゾチックなリゾートとしか言われてないし。ミステリーツアーってやつかな?
「失礼します」
あ、スタッフさん。
ありがとうございます。こんなタブレットまでもらって。大切にしますね。
でも、このタブレットって、だいぶランクが高いテクノロジーが使われていませんか?
俺の階級Dランクなんで、もしCランク以上のテクノロジー扱っているの見られたら、最悪処刑されるんですけど。
「ご心配なく。今後は、問題になりませんから」
そうですか。なら安心。
ところで、そろそろ出発の時間ですか?
「出発の前に、こちらを」
これって、献血の時に答えたアンケートですよね。
再度、内容の確認ですか。分かりました。
――年齢
27歳。
――性別
男。
――職業
セラピスト。
――階級
Dランク。
――病気や怪我はありますか
ないです。
――得意なもの
植物の栽培。あとは動物の世話ですかね?
――あなたの特性はなんですか
人からよく言われるのは、『庭師の才能』、『イイ人』、『いくじなし』ってところです。
――家族の有無
両親は死んでるし、兄弟もいません。
――その他、あなたと親しい親族はいませんか
いませんね。
――発信機や通信機など、誰かに位置を特定されたり連絡できたりする機器をインプラントしていませんか
ないです。
――サバイバル、もしくは戦闘の経験はありますか
まったく。
今さらですけど、なんか後半変な質問ばっかりですね。
あ! ところで、ここ俺しかいないみたいなんですけど、他の参加者はどこにいるんですか?
「手術中です」
……え、なんですかソレ。
手術なんて、聞いてないんですけど。
「宇宙空間に出るにあたって、必要な処置でして」
はあ、そうなんですか。
簡単にすむならいいですけど。
あの、スタッフさん?
気のせいかもしれませんけど、隣の部屋がちょっと騒がしくないですか。誰かが暴れているみたいな。
「気のせいです」
なんだ、気のせいか。
いやいやいや。
やっぱり、「放せー!」とか「だましたなー!」とか、誰か叫んでるっぽいんですけど。
明らかに何か事件が起きてますよね、あれ。
「モルモッ……いえ、お客様がはしゃいで騒いでいるようですね」
なるほど。
気持ちはわかるな。
俺も、昨日はワクワクしてなかなか眠れなかったもの。
あ、そうだ。
よかったら、俺が見てきましょうか。
「けっこうです」
いえいえ、遠慮しないでください。
駆けだしですけどセラピストなんで、何か役に立てるかもしれませんし。
ス、スタッフさん?
ええと、なんでそんなに怖い顔して注射器取り出してるんでs
ちょ、なんで俺を拘束しようとするんです!?
やめてぇ! 乱暴しないでえぇぇ!
あー、あー。
マイクテス、マイクテス。
念願のリゾートにやってきたぞ!
雲一つない青空に、透き通るように澄んだ海。
俺の立ってる浜辺に波が打ち寄せるたびに、しぶきが足にかかってヒンヤリ気持ちいい。
あ。今、沖の方で魚がはねた。
本当に魚って海を泳いでるもんなんだな。
水槽で養殖されてるとこしか見たことなかったや。
後ろに目を向けると、そっちは地平線の向こうまで広がる砂の海だ。
ところどころ生えているサボテンの間を動く影は、ラクダだろうか。
でっかいネコみたいなのもいる。たしか、ライオンだったかな。
いいね。エキゾチック。
きれいだなぁ。こんなリゾート、夢みたいだ。
せっかくだから写真を撮りたいんだけど、カメラがないんだよなぁ。
カメラどころか、サイフも時計もないんだけど。それどころか服も下着もないや。
潮風が吹くたびに、全身がスウスウ涼しいです。
もしかして……。
ここってヌーディストビーチ!?
まあ他に誰もいないんだし、こんな開放的な格好もいいか。
いや、人どころか、どこにも建物や人のいる形跡すら見当たらないんだけど。
かたわらを見ると、俺を乗せてきたんだろう一人用の宇宙ポッドの残骸を、カニが珍しそうにつついている。
もう使えないだろうな。もはや、ただの鉄クズだものアレ。
……あんまり考えないようにしてたんだけどさ。
ひょっとして。ひょっとしてだけど。
……俺、だまされた?
というわけで、こいつが遭難します。
【挿絵表示】
今後もスクリーンショットを挿入していくつもりですが、ゲームでは多くの作者様が作ったModを利用しています。
確認した限り、商業利用ではない画像の利用は可能なはずなのですが、もし何か不備があった場合、スクリーンショットの利用はやめるつもりです。