Ver1.3、難易度と語り手は変わりません。
・宇宙歴5501年 春
うぉおおおおお!
『さて、新たな1年が始まりましたね。今度はどのようなデータが取れるのでしょうか』
よし、伐採完了!
近場の木は全部切り倒したッ。
「カサバルさん、あっちに遺跡があったですぅ! でも、壁が少し崩れてて」
任せて、この木材で補修する!
『この周辺には、砂漠地帯にはいなかった種族や生物が存在しています。植生や気候の変化もありますし、以前とは全く異なるサバイバルの計画が必要でしょう』
壁を建てるぞ!
バフィは焚火用の木材を用意して!
「はいですぅ!」
急げ、急げー!
『人の話に耳を傾けようともしないとは。一体、どうしてそんなに急いでいるのでしょう』
全裸で凍死寸前だからだよ!
な、なんとか間に合った。
うう。床で寝るの、固くてしんどい。
「でも、ちょうどいい遺跡があって、良かったですぅ」
ホント。
もし拠点を確保するのがもう少し遅れていたら、死んでいた。
外気温がマイナス20℃って、殺意しか感じられない。
『それがツンドラです。以前の実験体たちは、ほとんどが夏を迎えるまでに倒れていきました。一体、何が原因だったのでしょう』
ヒント、全裸。
『冗談はさておき、初日は突破できましたね。素早い建築、お見事です』
そう言えば、壁を建てるのもすごくスムーズだったな。
1年前は、ボロボロ失敗してたのに。なんでだろ。
『これをご覧ください』
これは、俺のデータ?
でも、俺ってこんなに建築スキルが高かったかな。ド素人だったはずなんだけど。
『これは、1年間のサバイバルを観察し、ワタシが編集したものです。サバイバル以前のものと比べると、違いが一目瞭然でしょう』
なるほど。
拠点を建築する中で、俺のスキルが成長していたのか。
『アナタたちをツンドラに連れてきたのは、それも理由です。1年の実験で、素人のサバイバルスキルがどれほど成長するかというデータが取れました。1つの石で、2羽の鳥を落とす。なんと効率的なのでしょう』
モルモットどころか、石扱いされ始めた。
まあ、今さらか。
明日からはまた物資の調達がてら、周りの状況を見てみよう。
「カサバルさん、帰ったですぅ」
おかえり、バフィ。
『幼女を働かせ、自分は屋内でくつろぐとは。鬼畜ですね』
働いてたよッ。
ただ、ずっと外にいたら凍死確定なので、ちょこちょこ拠点に帰らないといけないだけです。
それでバフィ、どうだった。
食料とか木材とか、なんとかなりそう?
「食料は、野イチゴがたくさん生えてたですぅ。しばらくは大丈夫そうですよ」
良かった。氷点下でも枯れないもんなんだな、野イチゴって。
「ただ、寒さのせいか、木が思ったより少ないですぅ。あんまり木材は手に入らないと思いますぅ」
それはまずい。
もし焚火ができなくなったら、バフィはともかく俺が死ぬ。
まあ、もう春なんだから、気温はだんだんと上がっていくだろう。
そう悲観することもないか。
『この時、彼は自分の楽観的な考えを深く後悔することになるなど、想像もしていなかったのです』
不穏なナレーションつけるな。
だいたい、なんで毎回こんな植物の少ない場所に落とすんですか。
土がなかったり、寒さが厳しすぎたり。俺の栽培スキルが腐ってるでしょ。
適材適所って言葉、知ってます?
『バカにしないでください。私のプログラムは完璧です』
すごいなー。
人工知能様は、通信回線を間違えることも、完璧にこなせるんですねー。
『そんなにツンドラが嫌なら、土や植物すら存在しない極限の砂漠や氷海にご案内しましょう』
カサバル、ココ、好キ。
素敵ナ場所ニ案内シテクレテ、アリガトウ。
『どういたしまして』
さて、ここは前向きに考えよう。結局、やることは変わらないんだ。
「カサバルさん。サラゴサ町には戻れないですけど、新しい拠点の名前はどうするですぅ?」
そうだな。ここの名前は分からないし、自分たちで考えよう。
……よし。
ここは、新たな星くずサバイバーズの拠点、「ネオ・サラゴサ町」だ!
かっこいいでしょ、バフィ。
「えッ。……か、かっこいいですぅ」
でしょ。
『今、幼女にすごい気を使われてますよ、アナタ』
かっこいいだろ!
ふう。
だいぶ、拠点もサマになってきたな。
ベッドも作って、トイレも用意して、必要最低限だけど。
それにしても、野イチゴが自生していたのは本当に助かった。食料はいつもギリギリだったからなぁ。
『2倍の量を消費する置物がいますからね』
回虫が悪いんだ。
せっかく一度は俺を回収したんだから、回虫ぐらい治してくれてもよかったのに。
『失敬な。RimWorldの回虫は、貴重な資料です。もちろん手術して回収してあります』
えッ。
『そして可能な限り以前の状況を再現するため、別の回虫を用意してアナタの胃に移しました』
ウンガァアアアア!
「あぅ。カサバルさん、どうして怒ってるですぅ?」
気にしないで、バフィに怒ってたわけじゃないから。
ごめんね。俺が本調子じゃないせいで、バフィに頼りっきりで。
「カサバルさん。そんなの気にしないでほしいですぅ。回虫はいつか治りますよ」
バフィ。
「それにバフィだって、オクスリをキメ過ぎた時は、虫が身体を這っているのが見えるですぅ」
やめなさい!
「あと、さっき虫さんの巣からインセクトゼリーを取ってきましたよ」
ありがとう。
バフィは、偉いなぁ。まだ8歳なのに。
「もう、いつの話ですか。バフィは11歳ですよ」
そうかそうか。もうそんな歳に。
子供の成長はあっという間だなぁ。
……。
…………。
11歳!?
半年前は8歳って言ってたじゃないッ。
『彼女は人工種族ですから。労働や愛玩のために作られた人工種族は、一定の年齢まで成長するのが早いのです』
ああ、人間の闇が見える。
『ちなみに、RimWorldの人間も入植時に遺伝子を改造されています。同様に子供時代が短いので、安価な労働力になりますよ』
もう聞きたくないです。
ちなみに、画像にあるケモロリジャンキーというのは?
『全裸セラピストと同じく、実験体としての通称です。私が考えました』
かわいそうでしょ。
今すぐ取り消しなさい。
『本人はすごく気に入ってますよ』
「えへへー」
若い子の感性って、オニイサン分からないな。
あとは、ここをこう組み合わせて……。
よし、完成。
『木製のスパイクトラップですか。貴重な木材を使って、よろしいのですか?』
本当は嫌なんだけど、しかたない。
襲撃された時のために、用意をしておかないと。死ぬ。
あーあ、武器さえ取り上げられてなかったら、木材を消費しなくてよかったのになぁ。
『今のところ、投石用の石さえありませんからね』
武器さえあればなぁ。
『けっこうネチネチしてますね、アナタ』
まあ、そんなに心配はしてないけども。
今までの蛮族とか、ずっと全裸で襲ってきてたし。こんな寒い場所までわざわざ来ないでしょ。
『この時、彼は自分の楽観的な考えを深く後悔することに――』
それはもういい。
さて、このトラップはリーサルウエポンとして、ここぞという時に使おう。
「カサバルさん、大変ですぅ!」
どったの、バフィ。
「こん棒を持った女の人がやって来るですぅ。襲撃ですぅ」
暖かそうな恰好しやがって、ちくしょう!
『さて、どうします?』
……トラップだ。
我々のリーサルウエポンを投入する!
『初手から投入される最終兵器とは、一体』
よし、拠点の入口にトラップを設置した。
「でも、トラップだけじゃ無理ですぅ。バフィたち、武器も持ってないですよ?」
大丈夫だ、バフィ。
武器が足りないなら、頭脳で補う。俺には作戦がある。
「作戦ですぅ?」
……というわけで。
行くぞ、バフィ!
トラップで弱った相手が来たら、この丸太でブン殴るんだ!
「それ、作戦って言わないですぅ!?」
『原始人だって、もっと頭を使いますよ』
やかましい。
『敵、接近。…………トラップ、発動』
くらえ!
勝った!
これが、知性の勝利だ!
『知性とはいったい』
しかし、こんな序盤からトラップを消費してしまうとは。
この調子じゃ、木材が早々に枯渇してしまう。何か手を考えないといけないな。
「あの、カサバルさん」
うん?
「あの人、まだ生きてるですぅ。どうするですか?」
……まあ、目の前で死なれたら後味悪いし、手当てしようか。
動けるようになりしだい、出ていってもらうけど。
「それなんですけど、囚人にしたまま勧誘することもできますよ」
勧誘?
「そうですぅ。勧誘に成功したら、仲間になってくれるですぅ」
ううむ。
まあ、今回はパスで。
食料にもそれほど余裕がないし。もっと備蓄が増えてきたら考えよう。
「了解ですぅ」
しかし、囚人の説得か。考えたこともなかったな。
食料に余裕ができたら、検討してみようか。
『勧誘せずとも、囚人を有効活用する手段はありますよ』
なんです?
またモツ抜きしろとか言わないでしょうね。そんな外道は却下です。
『ご安心ください。もっとソフトな提案です』
ソフト?
『あの暖かそうな衣服をはぎ取りましょう。アナタが着るなり、キャラバンに売るなり、有効活用できます。そして、動けるようになったら、氷点下の屋外に放り出すのです』
どこがソフトだ!
ロールプレイ重視で、囚人のモツ抜きや奴隷商への販売はしない方針です。