辺境の世界からSOS   作:銃病鉄

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なんとか3月中に投稿できました。


5501年・春 「リスクを背負うということ」

・宇宙歴5501年 春

 

 

 どうも。

 

 襲いかかる襲撃者を、指先一つ動かすことなく撃退しました。

 もはや、俺たちがRimWorld最強といっても過言ではないでしょう。

 

 カサバルです。

  

『過言です』

「過言ですぅ」

 

 そんな全否定しなくていいじゃない。

 

『むしろ、なぜ肯定されると思ったのでしょう』

 

 それはさておき、キャラバンの皆さん。

 俺たちを狙った襲撃に巻き込んでしまって、すみません。

 

「別にいいわよ。襲撃なんていつものことだわ。むしろ、たった一人ヤるぐらい、いい退屈しのぎよ」

 

 うぅん。日常がバイオレンス。

 

 やっぱり、RimWorldを旅するのには、大きな危険があるんですね。

 

「どうしても、拠点と比べて無防備になるのよね。キャラバンの規模が大きかったり、物資の価値が高くなるほど襲われやすいわよ。アンタたちも、交易で出かける時は気をつけなさい」

 

 キャラバンか。

 でも、こうしてよそから来てくれるんだし。そんなに危険なら、わざわざ出かける必要はないよね。

 

「それは違いますぅ」

 

 あ、バフィ。

 そう言えば、キャラバンにいたんだっけ。

 

「はい。キャラバンは、どうしても運べる物資が限られるですぅ。せっかくキャラバンが来ても、欲しいものが売ってなかったり、逆に売りたいものを買ってくれなかったりするのも、珍しくないですぅ」

 

 そうなんだ。

 

 こっちから他派閥の拠点に行けば、売買できる自由度が増すってことか。

 

「そういうわけだから、どこもリスク背負って交易してるのよ。武器に医薬品、食料。この世界で生きるには、いくらあっても足りないわ」

 

 なるほど。多少の危険は、覚悟の上、と。

 

 でも、キャラバンを組むのもいつの話になるかな。

 見れば分かると思いますけど、売れるようなものなんて何も持ってないんですよね。

 

「ああ、ちょうどいいわ。そのことなんだけど」

 

 はい、なんでしょう。

 

「この近く、虫の巣がいくつかあったわよね。もしかして、インセクトゼリーを持ってないかしら」

 

 ああ、ありますよ。

 毎晩毎晩、命がけで虫さんたちの巣から取ってきています。

 

「ホント? あれ、けっこうな値段で取引されてるのよ。売ってちょうだい」

 

 インセクトゼリーか。

 

 …………。

 

 いいですよ。

 持ってるのは、全部売ります。

 

『意外ですね。アナタが食料を手放すとは』

 

 まあ、砂漠にいた時は考えられなかったんですけど。

 ここなら野イチゴもあるし、そろそろ暖かくなって畑も作れそうだし。

 

 ちょっとリスクは増えるだろうけど、今後のことを考えるなら、売っておこうかな、と。

 お金を持っていたら、選択肢が増えるだろうし。

 

『アナタが、長期的な視野を持つとは……。これが、知性の芽生えなのでしょうか』

 

 元から持っとるわ。知性。

 

 そうだ。キャラバンの皆さん、こっちも商品を見せてもらっていいですか?

 

「もちろん、いいわよ」

 

 バフィ、何か欲しいものはない? 買ってあげるよ。

 

「本当ですか!?」

 

 噓なんてつかないよ。

 いつもがんばってくれてるから。あまり高いものは買えないけど。

 

「ありがとうですぅ!」

 

 スキップしながら商品を見に行った。

 人工種族でジャンキーでも、やっぱり子供だなぁ。

 

 何を買うんだろ。オモチャかな? お菓子かな?

 

『さて、ワタシは何にしましょうか』

 

 シレッと買い物に加わろうとするな。

 人工知能なのに、何が欲しいんですか。

 

『未知の物品なら、なんでもです。RimWorldの物は、全て研究資料となりますから。情報の収集こそ、ワタシの存在意義なのです』

 

 なるほど。人工知能としてのあり方、というわけですね。

 買いません。

 

「カサバルさぁん」

 

 あ、バフィ。

 欲しいもの、決まった?

 

「はいですぅ! えっと、このトリップできるマッシュルームにぃ、ハイになれる白い粉にぃ――」

 

 あ、すみません。

 こちらの商品なんですけど、クーリングオフさせてもらいますね。

 

「え…………」

 

 そんなハイライトの消えた眼で見つめられても、ダメ。

 

「…………」

 

 ダメ。

 

 

 

 

 ね、ねえ。バフィさん?

 

「…………」

 

 えっと。今夜も、虫さんたちからインセクトゼリーをもらってきて欲しいかな……なんて。

 

「…………」

 

 どうしよう。

 

 あの日から、ずっと口をきいてくれない。

 

『心に傷を負ってしまったのでしょう。汚い大人に裏切られたせいですね』

 

 裏切る以外にどうしろと。

 

 それにしても、思ってたよりインセクトゼリーが高く売れて驚いた。

 袋いっぱいの銀貨を渡された時は、目が点になっちゃったよ。

 

『およそ600シルバーですか。大した金額ではありませんが、これまでのことを考えると、前進と言えるでしょう』

 

 まあ、文字通り一文無しだったからね。

 このお金は、できれば武器を買うのに使いたいな。やっぱり、拳銃とか飛び道具があるのとないのとでは大違いだし。

 

 ……ところで、思ったんですけど。

 

『なんでしょう?』

 

 虫さんたちって、ひょっとして星くずサバイバーズの守り神的なサムシングなのでは?

 

『まもりがみ』

 

 だって、食料は恵んでくれるし、敵は撃退してくれるし。

 おまけに、こうしてお金まで手に入れられるなんて。

 

 いやぁ、思い返せば、一目見た時から神々しいものを感じていたんですよ。

 

『ログを見返してみます? 思いっきり、気色悪いと発言していましたが』

 

 あ。俺、過去は振り返らない主義なんで。

 

『本来、あの虫たちは生物兵器が管理下を離れ、野生化したものです。今は偶然アナタたちのメリットになっていますが、甘く見ていると痛い目にあいますよ』

 

 分かってますって。

 

 今後も、ちゃんと注意して――

 

「コオオォオオン!?」

 

 な!?

 

 い、今のキツネっぽい悲鳴は?

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 イヤアアアアアアア!

 

 バフィが虫さんたちにモグモグされてるぅ!?

 

『早いフラグの回収でしたね。うっかり虫たちを起こしてしまったようです』

 

 バ、バフィッ。 

 

『むやみに飛び出すのは危険です。……と、話も聞かずに行ってしまいましたね』

 

 うぉおおおおお、バフィ回収!

 

 って、俺も狙われてる!?

 

『さて、全裸セラピストが虫たちと追いかけっこしている間に、本部への報告を済ませましょう』

 

 助けてぇ、食い殺される!

 

『本部へ報告。全裸セラピストはツンドラの寒気もやり過ごし、気温も栽培可能なまでに上昇しました。食料については、少なくとも冬まで安定するでしょう』

 

 来ないでぇええ!

 

『しかし、依然として戦力や物資の不足など、課題は山積みです。以前と変わらない生活を送っていては、進展は見込めないでしょう』

 

 ああああ、囲まれたァ!?

 

『現状、食料には余裕が生まれそうです。その余裕の中で、将来を見据えた布石を打つことができるのか。注目されます』  

 

 

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 なんとか、救助と治療が間に合った。

 

 けど。

 

「…………」

 

 うぅ……。

 

 バフィ、ウンとかスンとか言っておくれ。

 

「ウン……スン……」

 

 言ってくれた。

 

『余命4時間の中、よく間に合いましたね。しかし、当分は意識不明のままでしょう』

 

 本当にギリギリだった。

 

 ……やっぱり、どこか気が緩んでいたのかな、俺。

 危険なことは分かっていたけど、これまでなんとかなってたし。バフィが死なずにすんだのは、本当に幸運だった。

 

『では、もう蟲の巣に行くのはやめますか?』

 

 ……。

 

 …………。

 

 いえ、それはできません。

 

『ほう』

 

 現状、やめるという選択肢がないんですよ。

 長期に保存できる食料は貴重ですし、何より、今のところ唯一の現金収入の手段です。

 

 安定した食料生産と、収入源の確保。

 

 少なくとも、この2つをどうにかしない限り、危険を冒してでもインセクトゼリーはもらいに行きます。

 

 それに。

 

『それに?』

 

 多少のリスクを背負うのは、覚悟しないといけないと思うんです。

 

 キャラバンの話もそうですけど、この過酷なRimWorldを生き抜くには、安全策だけじゃ行きづまる。

 リスクとリターンを計算して、ギリギリを見極める。それが必要な局面が、きっとこれから何度もあるでしょう。

 

 今は、あえてリスクを背負う時なんです。

 

『おお。アナタが虫たちから逃げ回る動画が、組織のスタッフに大うけです。良質のモンスターパニックだと』

 

 俺、すごくかっこいいこと言ってたよ?

 

 ……ん?

 

『どうしたのです』

 

 なんか、さっきから外が騒がしくない?

 大勢でドッタンバッタンしてるような音が。気のせい?

 

『たしかに、生命反応がありますね。これは北の洞窟のあたりです』

 

 洞窟……。

 

 まさか!?

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 ナニやってるのぉ!?

 

『たまたまキャラバンが虫たちの近くを通り、そのまま戦闘になったようです』

 

 やめてくださいッ。

 争わないでぇええええええ!

 

 

 

 

 

 う、嘘でしょ。

 

 虫さんたちが、全滅した。

 

『まあ、普通の人間にとって、単なる駆除対象ですから。まだ2つも巣は残っているのですから、いいではありませんか』

 

 そうなんだけどさ。

 

 バフィもしばらくは意識不明だし、虫さんの巣は潰れるし、なんか散々だなぁ。

 

『落ち込んでいる場合ですか。アナタには今、やるべきことがあるでしょう』

 

 ……そうですね。

 戦いの中で、キャラバンの人が何人か倒れている。

 

 すぐに拠点に運んで治療しないと。

 

『不正解です』

 

 え?

 

『見なさい。倒れたキャラバンの構成員が、武器を落としています。今の内にネコババしましょう』

 

 そんなことだろうと思ったよ!




ハイエナはRimWorld住民の基本(偏見)



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