・宇宙歴5501年 春
……。
…………。
あ、どうも。
カサバルです。
『元気がないですね』
だって、虫さんの巣が1つなくなっちゃったんですよ。
これからも食料採取と金策で、お世話になる予定だったのに。
おまけに。
「こぉーん……」
バフィは、意識不明だし。
『命が助かっただけ、上々でしょう。後遺症の心配もありません』
なら、いいんですけど。
とりあえず、俺は仕事に向かおう。
『作物を植えるんですか?』
そうです。
ようやく植物が育つまで、気温が上がりましたから。冬が来るまでに、できるだけ食料を確保しないと。
あれ?
なんか、遠くに人影が見える。
『どうやらキャラバンのようですね』
ホント、多いな。
さて、今度はどんな人たちが……。
…………。
それは、タルのような胴体に翼を備えた生命体だった。ウミユリ状の頭部についた眼は、冒涜的なまでの知性を宿し、同時におぞましいほどの頽廃と堕落の痕を宿しているのだった。ッテ言ウカナニアレバケモノ怖イヨアア窓ニ窓ニテケリリ。
『SANチェック失敗。一時的発狂。キャラロストです』
勝手に終わらすな。
『おや、早い復帰でしたね』
発狂には慣れてますから。
それより、ナニアレ!?
バケモノの集団がやって来た!?
『あれはElderThings――古のものとも呼ばれます。れっきとしたRimWorldの住人ですよ』
えぇ……。
もはや、人じゃないでしょ。どんだけ闇鍋なんですか、この星。
……いや、落ち着くんだ、カサバル。
別に襲ってくるワケじゃないし、今までの種族と同じように対応すればいいんだ。
言葉を交わせば、分かりあえるはず。
よし!
皆さん、こんにちわー!
「uy7、bkiea7y・fq@t7y:」
ようこそ、ネオ・サラゴサ町へ。
ゆっくりしていってくださいね。
「7tjde0・cjzumy、npysewh;.t」
…………。
何言ってるのか、分かんないよォ!
・宇宙歴5501年 夏
ふう。
夏になったら、さすがに暑くなってきたな。
『外気温も30℃近くまで上がりましたね』
おかげで、畑を作ることができました。
しかも、拠点の近くに農業向きの土壌があったんですよ!
ここなら作物も早く育つはずです。
『肥えた土ですね。たしかに通常の土よりも栽培に適しています。しかし、コメの隣に植えているものは何ですか? 食べられる作物には見えませんが』
あー。
まあ、今のところは秘密で。
うまいこと育ってくれるかも分からないし。
ただ、無事に収穫できれば、きっと役に立ちますよ。
『フラグでしょうか』
違います。
ん?
「……カサバル、サン」
バフィ!
もう意識が戻ったのかッ。
よかった……。
でも、無理して動かないでいいんだよ。傷が全快するまで、ベッドで休んでいて。
「……カ、ガ……タデ、スゥ」
へ?
「オナカガヘッタデスゥウウウウウ!」
いやぁあああ!
バフィが、手あたり次第に食料をがっつき始めた!
『メンタルブレイクですね。過食症になっています。この拠点の食料をむさぼり尽くすまで、彼女は止まらないでしょう』
やめてッ。ただでさえ少ない食料がァ!
『季節が変わってもグダグダですね』
「お腹が苦しいですぅ……」
まあ、あんだけ食ったらそうなるよ。
「ケプッ。ところで、カサバルさん。いつの間にか、拠点が広くなってるですぅ」
気づいたかい、バフィ。
せっせと建築をして、部屋を1つ増やしたんだよ。
今までは寝室に置いていた物資を移して、倉庫にしている。屋外に置きっぱなしだった研究台も、ここに移動させるからね。
「それに、弓矢やこん棒まで用意してるなんて。武器をキャラバンから買ったですぅ?」
エ、ウン。ソンナトコ。
『火事場泥棒してました』
シーッ!
「え、なんですぅ?」
ナンデモ、ナイヨ。
ところで、バフィ。
しばらく雑用はしなくていいから、バフィには研究に専念してもらいたいんだ。
『バッテリーの研究ですね。と、いうことは』
そう!
星くずサバイバーズの当面の目標は、拠点の電化だ。
バッテリーに電気を貯めて、電気ストーブや電気コンロを活用する。これに成功さえすれば、ネオ・サラゴサ町での生活は、新たなステージに突入する!
『偉そうに言っていますが、正直、着手するのが遅すぎます。いつまで原始人プレイをやっているのですか』
だって、餓死しないようにするので精一杯だったし。
とにかく、電化による最大のメリットは、木材依存からの脱却です。
暖房や調理に木材が不要となれば、浮いた分をトラップや建築に振り分けることができる。大きな前進ですよ。
「バフィ、がんばりますぅ」
がんばって!
『さて、そう順調にいくでしょうか』
ウヘ、ウヘヘ……。
『気持ち悪い笑いですね。いつも以上に変質者に見えますよ』
やかましい。
俺のどこが変質者だって言うんですか。
『ファッション』
ネオ・サラゴサ町だと、これが正装だから。
『ここを変態の巣窟にするつもりですか』
ま、そんなことは置いといて。
見てください、この収穫したばかりのおコメの山を!
ウヘヘ……。肥えた土、すごい。成長するスピードが全然違う。このままいけば、冬が来たって毎日おコメざんまいですよ。
『栄養がかたよりそうですね』
アレ?
よく考えたら、畑からコメが取れるのって、なんかおかしいような……。
『ここはRimWorldですから』
RimWorldならしょうがないな。
「カサバルさーん」
あ、バフィ。それに、ウサイヌも。
「ガルルルルッ」
どうして、コイツは俺を見るなり、ヤる気満々なの?
『まあ、飼い主の近くに全裸の原始人がいれば、威嚇もするでしょう』
俺も飼い主なんだけど。お前の食べてるエサだって、俺が作ってるんだぞ。
いつか上下関係を分からせてやるからな。
『アナタでは無理です』
どういう意味ですか。
「カサバルさん。バフィたち、ちょっと北の方を散歩してくるですぅ」
いってらっしゃい。
あまり遠くまで行っちゃダメだよ。
ふう。バフィも、もうすっかり回復したなぁ。
一時はどうなることかと思ったけど、これなら安心だ。なんか、見ていると俺まで元気になるような気がしてくる。
『発言がオジサンですね』
オジサンじゃないもん!
まだピッチピチの28歳ですよ。
最近は、ホントに身体が軽いというか。お腹の痛みもなくなって、吐き気も収まったし。すごい快調。
……ん?
もしかして、これって。
やっぱり!
とうとう回虫がいなくなった!
『長かったですね』
去年の秋からずっとでしたからね。
ああ、なんだか生まれ変わった気分。体に羽が生えたようだ。
『舞い上がっていますね。そんなアナタに報告があります』
……なんだか、この流れに既視感が。
『北から、武器を持った人物が接近しています。襲撃です』
え、北から!?
北って、今はバフィが散歩にいってる方角じゃないですかッ。
『両者の位置を見るに、襲われるのは時間の問題です』
す、すぐに行かないと!
うぉおおお、間に合えー!
「カサバルさーん、こっちですぅ!」
バフィ!
ウ、ウサイヌが、ウサ耳のオバサンと戦っている!?
『共食いでしょうか』
襲撃者と戦っているんですよ!
そうか。前回の襲撃の時は間に合わなかったけど、あれから一緒に戦えるまでバフィが手なづけたんだ。
「カサバルさん、もうウサイヌさんが限界ですぅ!」
分かったッ。
くらえええええ!
か、勝った。やっつけたぞ。
「ウサイヌさんが倒れてるですぅ!」
任せて、すぐに手当てをするッ。
ウサイヌ……。
こんなにボロボロになるまで、戦ってくれるなんて。バフィを守ってくれて、ありがとう。
謎生物だの色々言っちゃったけど、立派な星くずサバイバーズの一員だよ。
『それ、名誉なのか不名誉なのか、微妙ですね』
あ、今いいシーンなんで黙っといてもらえます?
……よし。応急手当はできた。
これならすぐに元気になれるよ。
「よかったですぅ」
しかし、襲撃者も全身噛み傷だらけだ。よくこんなになるまで粘ったな。
『ウサギの特徴を持つ人工種族ですね。当然、人間よりも身体能力に優れています』
そんな相手に、ほぼ1匹で戦ってたのか。
これからは、敬意を込めてウサイヌさんと呼んだ方がいいのかもしれない。
……なんか、俺にはなつかなくて怖いし。
『どんどんヒエラルキーが下がっていきますね、アナタ』
ほっといてください。
Ver1.3になってから、家畜の仕様が大幅に変わってますよね。
慣れるまで大変でした。