・宇宙歴5501年 秋
ええ、と。
この配線は、ここに接続すればいいんだっけ?
「違いますぅ。こっちですぅ」
ありがと。
よし。これで完璧…………のはず。
『頼りないですね』
しかたないでしょ、こっちは素人同然なんだから。
「カサバルさーん、もういいですぅ?」
いいよ、バフィ。スイッチ、オン!
「ですぅ!」
お、おお……。
風車の発電量も、まずまず。ストーブもキチンと作動している。
とうとう、拠点の電化に成功したぞーッ。
『ほう。拠点も、だいぶ雰囲気が変わりましたね』
その通り。
まずは、この電気ストーブ。焚火に代わって、ツンドラの寒さから俺たちを守ってくれる生命線です。
焚火をやめるので、調理のためにカマドを作りました。今まで肉やコメを焼くぐらいしかできませんでしたけど、もっと手の込んだ料理だって作れますよ。
「すごいですぅ。研究をがんばってよかったですぅ」
これは、まだまだスタート地点だよ。バフィ。
俺たちの力を合わせて、もっとネオ・サラゴサ町を発展させていこう。
『ところで、少し疑問なのですが』
はい、なんでしょう。
『なぜ風力発電機ではなく、風車を建てているのですか。あれは発電量がひかえめですよ』
あ、はい。
『それに、あれだけ騒いでいたバッテリーが見当たりませんが。これでは、電力供給が不安定です』
…………フッ。
建設に必要なスチールを、準備できませんでした。
『結局、そういうオチですか』
しかたないじゃない。
最近はメンタルブレイクを連発したり、オオカミにモグモグされて怪我したり、ドタバタしてたから。
スチール集めに時間を割けない間に、気温がマイナスに突入しちゃったんですよ。
『それで木材メインの風車で、その場しのぎですか。アナタらしい』
やかましいわ。
ふぅ。ストーブ、あったかぁい。
「あったかいですぅ」
『完全にマッタリムードですが、バッテリーがない以上、いつ停止してもおかしくありませんよ』
分かってますって。
寒くて栽培ができなくなったから、俺はスチールの採掘を最優先でしますよ。バッテリーを作るのに、そんなに時間はかかりません。
『アナタの採掘スキルは、ほぼ最低値ですが』
しかたない。鉄製の遺跡は、もうほとんど解体しちゃったから。
バッテリーには、そんなに多くのスチールは必要ないし、大丈夫でしょ。
「でもカサバルさん。拠点を大きくするなら、もっとスチールが必要になるですぅ」
『加えて、春になれば、またアナタは栽培をしないといけないのです。物資を確保する時間が取れなくなるでしょう』
ムムム。
うすうす分かっていたことだけど、人手不足だなぁ。
ネオ・サラゴサ町の発展に乗り出してから、一気に作業量が増えた。
『それまでは、生きるのに必要最低限のことしかしていませんでしたからね』
そうなんですよね。食料と木材さえ集めていればよかったから。まあ、それでもギリギリだったんですけど。
生活に余裕ができてから、新しく課題が見えてきたってところか。
『それに、拠点が豊かになれば、それだけ襲撃の規模が大きくなります。2人と1匹では、いつまでも防ぎきれません』
ですよねー。
なんとか人を増やせないものか。
方法としては、襲撃者を捕虜にしてから勧誘するぐらいですかね。
『それとも、ケモロリジャンキーのように、ここに住みたいという狂じ――もとい、物好きが来るのを待つか』
チョット待て。今、狂人って言いかけた?
なんですか。わざわざネオ・サラゴサ町に住みたい人間は、マトモじゃないって言いたいんですか。
『逆に尋ねますが、仮にアナタが部外者だったとして、ここに住みたいですか?』
……。
…………。
さ、今は目の前のことに集中しよう。
『嫌みたいですね』
「嫌みたいですぅ」
仲いいね、キミたち。
「ところで、カサバルさん。バフィ、いい方法を知ってるかもしれないですぅ」
マジで!?
できたよ、バフィ。
「ありがとうですぅ」
ところで、何コレ? ポストみたいな形してるけど。
「メールボックスですぅ。バフィたちが、テナントさんを募集している目印ですぅ」
テナント?
「RimWorldを1人で旅してる人の中には、ちょっとの間だけ住むところを探してる人もいるですぅ。バフィたちがご飯と住居を世話して、代わりにお金をもらうですぅ」
つまり下宿人みたいなものか。
でも、俺たちの仕事は手伝ってくれないんでしょ。解決策にはならないような。
…………あ、もしかして!
「はい。もしテナントさんがネオ・サラゴサ町を気に入ったら、星くずサバイバーズに加わってくれるんですぅ!」
なるほど。
仲間になってくれるか分からないけど、可能性は増える。今なら食料にも余裕があるから、試して損はないかもしれない。
こんな方法があったなんて。バフィ、えらい!
「えへへー」
『さて。実のところ、他にも入植者を増やす手段はあるのですが。今は黙っておきましょうか』
よし、バッテリーも完成。これで風が吹かなくても安心だ。
『あっさりと完成しましたね。またトラブルがあれば、おもしろかったのですが』
おもしろくてたまるか。
しかし、目標だった電化もひとまず終わったし。これからどうしようかな。
先のことを考えて、もっとスチールを貯めておこうか。それとも拠点の拡張を優先するか。
……いや、ヘタに資産を増やさずに現状維持がいいのか?
ああ、頭が痛い。考えないといけないことが多すぎる。
『本当に大変そうですね』
完全に他人事。
ああ、故郷の生活がなつかしい。
生まれた時には、どんな人生を送ればいいのか、中央政府が全部決めてくれていたもの。管理してくれてる通りに暮らしていれば、何も悩まなくてよかったのに。
『母体の中にいる時点で割り当てられた国民ランクごとに、職業や娯楽も制限されますからね』
うん。
『……アナタは本当に、そんな生活に戻りたいと思っているのですか?』
当然でしょ。誰だって、
『そう、ですか』
…………?
『おや、多数の生命反応が近づいてきますね』
キャラバンか。
ちょうどよかった。インセクトゼリーが高く売られるおかげで、お金が貯まってきてるんだよね。
RimWorldに放り出されてから、初めて買い物ができそう。シルバーを持ってこないと。
『ケモロリジャンキーを呼ぶべきでは? アナタだと、幸運になれる壺とかホイホイ買わされそうです』
俺って、そこまでバカだと思われているのか。
『口車に乗せられたり、一時の情に流されてはいけませんよ。しっかりと役に立つものを買わなくては』
大丈夫ですって。
見せてあげますよ。俺にできる、完璧な買い物術ってヤツを。
『フラグが立ちました』
ええっと。まだキャラバンが見えないな。
ホントに来てるんですか?
『当然です。その辺りにいるはずですよ』
ここらへん、岩場が大きいから視界が効かないんだよな。
ん? あんな所に、女の子がいる。
「チュッ!? 全裸のおじさんがいるであります!」
お兄さんだ。
えっと、お嬢ちゃんは、キャラバンの子かな?
「そうであります。お客さんでありますか?」
そうなんだよ。大人のいるところまで、案内してほしいなぁ。
『完全に誘拐の現場ですね』
うるさい。
「案内するであります。こっちであります」
ありがとう。ところで、歳はいくつ?
「11歳であります」
バフィより、少し下か。
この子、ネズミっぽい耳としっぽがついてる。見たことある人工種族だ。
バフィもそうだったけど、こんな小さい女の子が働いてるんだな。
あ、キャラバンが見えた。
こんにちわー!
「兄ちゃん、お客さんかい? ここらに新しいコロニーができたってのは、本当だったんだな」
なんか、ものすごくマッチョで、細長いあご髭のご老人に迎えられた。
俺たちは、星くずサバイバーズです。よろしくお願いします。
「おう、よろしくな。こんな場所でも、あきらめずに生きるなんて、たいしたモンじゃねえか。サービスさせてもらうぜ?」
あ、イイ人っぽい。
そうそう、この子に案内してもらったんですよ。
元気で親切で、とってもいい子ですね。
「そうだろう。まったく、子供は宝だぜ」
俺もそう思います。
「そんなに気に入ったんなら、そいつを買うかい? お安くしとくからよ」
…………へ?
この子を、買う?
「ハッハァ! 俺たちは、奴隷商のキャラバンだからな。そいつは仕入れたばっかりの、新鮮な商品だぜぇ」
えぇ……。
「ちなみに値段は……これぐらいだな」
えッ、高い! ちょっと、今、俺の持ってるシルバーの量を確認してから値段決めたでしょ!
「いらないってんなら、別にいいぜ。こんなガキでも、モツ抜けばいい金になるからよ」
……。
…………。
えー、というわけで。
今日から、俺たちに新しいお友だちが増えました。
自己紹介をお願いします。
「自分は“ラットキン”種族のレモンであります! 粉骨砕身、がんばるであります!」
「バフィですぅ。よろしくですぅ!」
…………。
『というわけで、完全にカモにされて、貯金がスッカラカンになったのですが』
後悔はしてない。
子供の方がスキル少ない分、安いんだよなぁ(本音)。
ちなみに今回のテナントというModなのですが、自分がプレイしてから更新があったみたいで、だいぶ仕様が変わっていました。
現行で導入している人からすると、今後は違和感がある描写があるかもしれません。