今回は、独自設定が多めになりました。全く話が進まない。
・宇宙歴5501年 秋
どうも。
遭難してから1年と半年。ずっと派閥とは名ばかりの2人暮らしでしたが、とうとう3人目のメンバーが加入しました。
これを機に、ネオ・サラゴサ町を活気あふれる場所にしたいと思います。
カサバルです。
「レモンちゃん、ちっちゃくてかわいいですぅ」
「ちっちゃくないであります。自分の種族では普通であります」
うーん。なんか、この空気、派閥というよりかは……。
『完全に小学校ですね』
まぁ、俺の心の癒しにはなるからオッケーで。
バフィ、仲良くしてあげてね。
「……」
バフィ?
「……ジュルッ」
ヨダレ垂れてる! お腹がすいたの!?
「ち、違うですぅ。ただ、レモンちゃんのネズミの耳としっぽを見てたら、つい」
キツネの本能がうずいている。
「ちょっとだけかじってもいいですぅ?」
「チューッ!?」
やめなさい!
『こんな調子で、サバイバルを続けられるのですか?』
正直、不安。
なぜか子供ばっかり増えていくし。
「心配無用であります、隊長!」
隊長って、俺のこと? 会った時から気になってたけど、軍人みたいな話し方するね。
「自分の両親は、軍の将校でありました。軍人としての精神と技術を、昔から叩き込まれているのであります」
「戦闘技術はもちろん、工作や建築、社交。自分に任せていただければ、安心であります」
え、すごく頼もしい!?
「さらに、動物の世話は誰にも負けないのであります!」
あ、それはいいかな。俺とバフィも得意だから。
「ヂュ!?」
しかし、思った以上にハイスペックな子だった。
『奴隷商から買う際に、スペックを確認していなかったのですか?』
うん。なんと言うか、ほとんど脅迫されて引き取ったようなものだし。
『あまりに無計画です。あんなにあった貯金が、もう3シルバーしか残っていません。』
いいの。どうせメンバーは増やさないといけなかったんだから。
それに。
「やったであります! もう自分は奴隷でないであります!」
あんなに喜んでくれてるなら、後悔なんてするはずがない。
大丈夫ですよ、お金なら、また稼げばいいんですから。
『よいことを言っている風ですが、稼ぐ手段は、虫の食料をネコババするだけでしょう』
それを言ったらオシマイだよ。
「隊長、この恩は忘れないであります。きっと恩返しをさせてもらうであります」
恩なんて、おおげさだなぁ。
「ところで隊長、実はお願いがあるであります」
お願い? 俺に叶えられることならいいんだけど。
「お風呂に入りたいであります。実は、もうずっと入浴できていません。我慢の限界であります」
風呂、ないよ。
「…………え?」
風呂なんて作る余裕もないし。
井戸から汲んだ水で体を洗ってるけど、それで充分だよ。
「隊長、今生のお別れであります。今までお世話になったであります」
恩返しはどうした!?
別にいいでしょ、風呂ぐらいッ。
「お風呂のない生活なんて、嫌であります! 1日に3回はお湯に入らないと、すぐに身体が汚れて死んでしまうであります……。ピィイイイイ!」
そんなんで人は死にません! 泣くのをやめなさいッ。
『どうやら、かなりの“きれい好き”で、“いくじなし”のようですね』
きれい好きにも、限度があると思うんだけど。
なんか、またクセのある子が加入したなぁ。
「ピィ……」
ふう。いつかはお風呂を作るって約束して、ようやく泣き止んでくれた。
「できればジャグジーもつけてほしいであります」
そして、けっこうずうずうしい。
とにかく、これからは3人で力を合わせてがんばっていこう。
それじゃあ、さっそく役割分担を見直さないとな。
バフィはこれまで通り、研究をメインで。あと、ウサイヌさんの世話をお願いね。
「ですぅ」
春まで栽培はできないから、俺は物資の調達かな。特に建材が必要だ。
アレが欲しいな。なんだっけ、砂漠にいた時にも使ってた…………。
『ストーンカッターですね。石塊を加工し、建築に利用できるようになります』
それだ。
材料はあるから、さっそく設置しよう。頼んだよ、レモン。
「了解であります」
頼もしい。
『建築を任せられる人材の加入は、大きなメリットですね。今はアナタより建築スキルが低いですが、すぐに追い抜くでしょう』
本当に助かったよ。来年から俺が栽培に専念できるから、食料問題も改善するだろうし。
建築以外の時間は、拠点の掃除をしてもらおう。きれい好きなレモンにはピッタリだ。
「あ。自分、掃除はできないであります」
なんでさ。
苦手でも、最低限のことだけしてくれたらいいからね。
「苦手ではなく、軍人として育てられた自分は、掃除そのものができないのであります。チリ取りを手にしただけで、身体が拒否反応を起こすのであります」
そんな極端な育児ある!?
『どうやら、彼女に掃除をさせるのは不可能なようですね』
えぇ…………。
「隊長、ストーンカッターが完成したであります!」
ありがと、レモン。
もう夕方だし、今日はもう仕事はいいよ。バフィと一緒に遊んでおいで。
「ハッ。失礼するのであります」
拠点に帰ったら、ちゃんと手を洗うんだよー。
……ふぅ。どうしたものか。
『何かお悩みですか?』
レモンにしてもらう仕事のことですよ。
建築を任せると決めたものの、建材を用意するのに時間がかかりそうで。
子供だから運搬できる量は少ないし、あまり拠点から離れてほしくないし。掃除はピッタリだったんだけどな。
仕事の割り振りが難しい。
『それでは、採掘を任せるのはどうでしょうか』
でも、あんな小さい子に採掘させても、うまくいくとは思えないし。
『彼女は、ネズミの遺伝子を配合させられた人工種族です。採掘は通常の人間より得意なはずですよ』
へー、そんなこともあるんだ。すごい。
んじゃ、採掘をお願いしてみようかな。
ところで、ちょっと質問があるんですけど。
『なんでしょう』
あの、今さらなんですけど…………。
人工種族って何ですか?
『…………本当に今さらの質問ですね。1年近くもケモロリジャンキーと暮らしてきたのに、アナタときたら』
だ、だって、それどころじゃなかったし。
なんか、いて当然みたいに話すから、恥ずかしくて尋ねられなかったというか。
『だとしても、サバイバルで無知は命取りです。“聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥”ですよ』
アッハイ。すみません……。
『まあ、これはクリアランスレベルA以上の機密情報。アナタが知らなくて当然ですが』
じゃあ、何ですか。今のやり取り。
俺をおちょくってるんですか。そうですか。
『宇宙開拓時代、植民惑星における労働や生物兵器、特権階級の愛玩のために作られたのが人工種族です。人間と動物の遺伝子を組み合わせ、様々な種類のものが生み出されました』
へー。
『しかし、そのテクノロジーを危険視した中央政府により研究は凍結。人工種族たちもほとんどが処分され、一部の生き残りが外宇宙で生存しています』
ひどい話だ。
『全くです。いくら体制を揺るがす危険があるとはいえ、優れた技術を破棄するなど。この暴挙のため、遺伝子工学は中世レベルにまで退行してしまいました』
なんか、微妙に話が噛み合ってないような気がする。
『だいたい、中央政府は臆病なのです。現行の政治制度を守るために、テクノロジーの発展を大きく抑制しています。停滞は後退と同じです。ですから、我々の組織は危険を冒してでも、こうして外宇宙に活動場所を求めて――』
あ、すいません。
その話、けっこう長くなる感じ?
『……話を戻しましょう。その人工種族の末裔が、彼女たちです。アナタ、RimWorldの人工種族と接して、不自然なことに気づきませんでしたか?』
そう言えば、なんか男が少ないと思ってたんですよ。
男女比率がおかしいような。
『人工種族にかけられたセーフティですね。もし管理を逃れても、人口を増やさないように男女比率がかたよっているのです。まあ、異種族同士でも子供を産めるので、元気にRimWorldで繁栄していますが』
うーん、ガバガバセーフティ。
科学者って、そんな人種しかいないの?
「とにかく、これからもメンバーを増やしていくのでしょう。個人の性格だけでなく、種族の特徴にも注意することです。場合によっては、完全に内部崩壊を起こしますよ」
怖い。
『現状、ただでさえ不安な者しかいないのですから』
失礼な。
バフィもレモンも、ちょっとアレなだけで、頑張り屋さんのいい子です。
『この反応、ナチュラルに自分は違うと考えていますね』
何か言った?
『いえ、何も』
……思えば偶然の出会いだったけど、仲間になったのがあの2人で良かったと思っています。
星くずサバイバーズなら、どんな危機にも負けませんよ。
そう、俺はあの子たちを信じていま――。
「オォォクスリィィィィィ!」
「隊長、バフィ殿がメンタルブレイクで乱心しております! 助けてほしいであります!」
…………。
「バフィ殿が暴れて、自分も泥だらけであります。早く洗わないと死んでしまうであります……。ピィイイイイ!」
……。
…………。
あの子たちを、信じたいんです。
『なぜ言い直したのですか』