辺境の世界からSOS   作:銃病鉄

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「人工知能による本部へのレポート No21」

 このレポートを読んでおられる、スタッフの皆様。

 

 本日、我々の外宇宙開拓プロジェクトの最終実験が、とうとう3年目に突入しました。

 RimWorld全域に降下させた実験体たちですが、多くが早々に命を落としております。やはり、外宇宙に我々の新天地を求めるという目的は、困難であることが再確認できました。

 

 しかし、未だにサバイバルを継続している者もいます。

 

 今回の主題は、現在プロジェクト内で最も注目を集めている実験体No4、通称“全裸セラピスト”です。

 そして、彼の作った派閥である“星くずサバイバーズ”。このレポートは、彼らの現状やステータスの成長に主眼を置いたものです。

 

 可能な限り――可能な限り、主観を取り除き、客観的に報告いたします。

 

 

 

 

 

 星くずサバイバーズは、メンバー3名。

 ネオ・サラゴサ町という、命名者の壊滅的なネーミングセンスゆえに、悲しみを背負って誕生した拠点で活動しています。

 

 

 

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 まずは、最も新しいメンバーであるレモンをご紹介しましょう。

 

 ラットキン種族の少女で、昨年の秋に奴隷として買われました。“いくじなし”という特性のためにストレス耐性が低く、メンタルに問題を抱えています。

 

 加入してから日は浅いですが、ご覧のように建築スキルが大きく伸びています。生来の建築への情熱に加えて、工程の多い石材による建築を行っていたためです。

 建築スキルは、すでに全裸セラピストを追い抜いています。彼女の存在は、拠点の拡張を目指す星くずサバイバーズとして大きな追い風となるでしょう。

 

 他にも、その戦闘スキルも素晴らしいです。

 特に格闘スキルは、加入時点でプロ並みです。これまでは戦闘面において不安しかなかった星くずサバイバーズですが、彼女が加わったことで、ある程度は短所を克服できました。

 

 ただ、彼女の活躍だけで今後の襲撃をしのぎ切れるとは断言できません。

 

 元々、ラットキンは戦闘が苦手な種族です。加えて12歳の少女。

 前線に出すには、ためらわれます。格闘スキルを活かせる時が来るのか、疑問の余地が残ります。

 

 

 

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 続けてご紹介するのは、クーリンのバフィ。2人目のメンバーで、まだ砂漠に拠点を置いていた頃から活動しています。

 

 特性の中では、“ドラッグ中毒者”の文字が燦然と輝いていますね。慢性的に中毒症状によって心情を害しており、メンタルに問題を抱えています。 

 

 加入時と比べると、知力スキルが著しく成長しています。

 情熱を持っていないにも関わらず、消去法で研究担当をさせられているためですね。彼女も研究にはウンザリしているようですが、解放される日は来るのでしょうか。

 

 フレンチブルドッグなどの調教も行っているため、地味に動物スキルも上がっています。

 家畜たちは星くずサバイバーズにとって貴重な戦力です。間接的に、彼女もかなり戦闘面で派閥に貢献していますね。彼女の活躍が、危機を救う場面もあるかもしれません。

 

 他には、格闘と社交、芸術の分野に素質が見られます。

 特に芸術のセンスには光るものがあるようです。この分野に専念すれば、高額でトレードされる芸術品も作成できるようになることでしょう。

 が、現状ではそのチャンスに恵まれそうにありません。いろいろな意味で不憫な少女ですね。

 

 

 

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 そしてこの生物は、皆さまご存じの全裸セラピストです。

 

 救いようのない“いくじなし”のために、ストレス耐性が絶望的に低いです。メンタルに爆弾を抱えています。

 そのうえ、ワタ……我々の崇高なプロジェクトにも悪態をつくような野蛮人の分際で、衣服を着用できないという贅沢すぎる不満を抱いております。

 メンタルブレイクの回数は、この1年で4回。堂々のトップです。

 

 2年前は戦闘能力など皆無で、襲撃の際には、耳障りな悲鳴を上げながら逃げ惑う醜態をさらしていました。

 ですが今では、ほんのりと射撃と格闘のスキルが伸びています。

 

 度重なる襲撃を生き延びた成果です。おかげで襲撃を受けても、耳障りな悲鳴を上げながら醜い悪あがきができるようになりました。

 

 お気づきのことと思いますが、全裸セラピストの格闘スキルは、星くずサバイバーズでワーストです。

 

 バフィにも劣っていますし、レモンに至っては比べるのがおこがましいほどです。正面から殴り合えば、まず勝てません。

 そんなミジンコのような戦闘力を自分で把握できていないのか、奇跡的に襲撃を退けた際にはたいてい「最強」を名乗って有頂天になるという、残念な習性があります。

 

 その他、建築や調理、医術などのスキルが向上しております。

 現時点では、完全に器用貧乏なステータスへと向かっています。プロフェッショナルが来れば、真っ先にいらない子扱いされる不遇なポジションですね。

 

 注目していただきたいのが、社交スキルです。

 

 何を血迷ったのか、この実験体はセラピストを自称してはばかりません。

 たしかに、スキルは星くずサバイバーズでバフィと並びトップです。ですが、ジャンキーの少女と同程度のコミュニケーション能力は、見る者の涙と失笑を誘います。

 

 おまけに、全裸セラピストは星くずサバイバーズで唯一、社交に情熱を持っておりません。

 仮に社交スキルが必要な時が来ても、交渉役を任せるメリットなど存在しません。バフィやレモンなら、軽々とこの野蛮人の社交スキルを追い抜くでしょう。

 

 さて、以上のようにサバイバルにこの上なく不向きな全裸セラピストですが、長所もあります。

 

 それはやはり、栽培スキルです。

 

 サバイバル開始時から優れたスキルを持っていましたが、“庭師の才能”という特性のために、植物を扱わせれば他の追随を許しません。

 植物に対して大きな情熱を持つ全裸セラピストは、全く屋外での活動に向かない格好で拠点を飛び出しては、ニタニタと身の毛のよだつような笑顔を浮かべながら狂ったように栽培活動に従事します。

 

 “植物性愛(デンドロフィリア)”かもしれません。子供たちへの悪影響が心配ですね。

 

 彼の異常性癖はともかく、砂漠やツンドラといった環境で、インセクトゼリーを除く食料のほぼ100パーセントを生産している点は事実です。

 サバイバル生活に少なくない貢献をしていることは、認めてもよいでしょう。

 

 

 

 

 

 以上で、実験体No4についての、限りなく私情を排除した公平なレポートを終えます。

 

 これまでの彼らのサバイバルを見ていた皆様は、どのような結末を想像していらっしゃるのでしょうか。

 絶望的な災厄を前にして、力及ばずに倒れてしまうのでしょうか。それとも、ほんのささいなアクシデントをきっかけに、ポックリ命を落とすのか。

 

 

 ――あるいは?

 

 

 未来は不確定です。何一つ、たしかなことはありません。

 

 何が起きてもおかしくない。

 それだけが、このRimWorld(辺境の世界)における真理なのですから。

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