・宇宙歴5502年 春
どうも。
平素は格別のご愛顧を賜り、誠にありがとうございます。
コチラは、つい先日よりツンドラに誕生した桃源郷。生き馬の目を抜くRimWorldの旅路において、憩いの時間をもたらすユートピア。
ホテル・ネオ・サラゴサでございます。
今も4名のお客様にご利用いただいております。
それではお客様、ご感想をどうぞ。
「旅の休憩所として、重宝しているわ。え、ホテル? あばら家の間違いでしょ」
「ベッドの数が2つだけって冗談でしょ。床で寝るのは嫌だなぁ。野宿よりはマシだけどさ」
「明かり、ない。真っ暗。……不気味」
「シンプルに名前がダサい」
……うーむ、微妙。
一度に4人もお客さんが来てしまったせいで、さすがのホテル・ネオ・サラゴサもキャパオーバーしてしまった。
『もうホテルやめなさい』
始めたばっかりなのに。
「チュー。とりあえずは、旅の休憩には使えてもらっているのであります。印象は上りも下がりもしていないのでありますな」
いつか、来た人をビックリさせるほどリッチな施設を造りたいなぁ。
「まずは自分たちの生活を向上させるのが先であります」
アッハイ。
と、いうわけで。
気温も上がったので、楽しい楽しい畑仕事の時間です。
「ヂュッ! 兵糧はサバイバルの要。この自分も手伝って、速やかに終わらせるのであります」
自信満々だけど、レモンって栽培も上手なの?
「何を隠そう、自分たちラットキンは農業が大得意なのであります。自分がいれば百人力であります」
なんて頼もしいんだ。
『それで、どうするのです。今年も主食はコメですか』
うん。一番安定してるし。
ただし、俺たち星くずサバイバーズは新メンバーを募集している真っ最中。これから増えていく人口を養うためにも、食料増産は欠かせない。
なんだかんだ、この冬もけっこうギリギリだったし。
なので、今年はおコメに加えてトウモロコシを新たに植えていきます。
「トウモロコシ? てっきりジャガイモだと思っていたのであります」
フッフッフ。では、なぜトウモロコシをチョイスしたのか、教えてあげよう!
『肥えた土があるからでしょう。ジャガイモは痩せた土地でも育ちますが、反面、養分の豊富な土で育ててもメリットが少ないのです。なので、成長が遅くても収穫量の多いトウモロコシを選んだのですね』
…………ぜんぶ説明された。
『かっこつけてもったいぶるからです』
「とにかく植えていくのであります」
あ、うん。
んじゃ、ホイホイホイっと。
「チュッ!?」
どったの、レモン。
「いやいやいや! なんでありますか、今の手の動きは。一瞬でコメが植えられているのでありますッ」
何って、普通におコメを植えていっただけだけど。ホラ、こうやって。
「チュー……。明らかに異常なスピードで、畑が完成していくのであります」
『まあ、本当に唯一の長所ですから。これぐらいはできなければ、ただやかましいだけの露出狂です』
「隊長は、ただの変態ではなかったのでありますな。栽培がすごく得意な変態であります」
聞こえてるぞ!
や、やったですぅ!
『とうとう、あの研究が完了したのですね』
そうですぅ。バフィが年末からずっと取り組んでいた研究。
精密工作機械の研究が終わったですぅ!
『おめでとうございます、バフィ。以前と比べて、研究の進む速度が段違いですよ。研究スキルが上昇している証拠です』
本当は研究以外のことをしたいですけど、がんばった成果が出るのは嬉しいですぅ。
このテクノロジーで、バフィたちの生活も良くなりますよね?
『今までよりも高度な機器の作成が可能になります。ただ、物資も技術者もいない現状では、宝の持ち腐れですが』
えッ。
『しかし、いつかは役に立ちますよ。精密工作機械は、様々なテクノロジーの研究に不可欠なものです』
えへへー。カサバルさんやレモンちゃんも、きっと喜んでくれるですぅ。
早く、2人とも畑から帰ってこないですかねぇ。
「バ、バフィッ」
あ、カサバルさん。
ちょうどよかったですぅ。聞いてください、実は研究が終わったですぅ。
「ごめん! 今はそれどころじゃないんだ!」
「いつの間にか、虫さんたちの巣が1つ壊滅してるんだよぉおおおお!」
「春になったとはいえ、まだ動物が少ないでありますからな。飢餓状態の肉食動物に襲われたようであります」
えぇ……。
「巣が壊れる前に、急いでインセクトゼリーを拾ってこないとッ。報告があったら、レモンに言っといて!」
……。
…………こぉーん。
『色々と、間が悪い少女ですね』
この間は、ホントにゴメンね、バフィッ。
俺も焦ってたからさ。バフィががんばってくれてたのは、ちゃんと知ってるから!
「謝らなくていいですぅ。悪気はなかったって、バフィ分かってるですぅ」
ありがと、バフィ。また口をきいてくれなくなるかと思った。
「バフィも、もう14歳ですぅ。いつまでも子供じゃないんですぅ」
いや、まだ子供だけども。
しかし、もう14歳なのか。2年前は8歳だったのに、3倍ぐらいのスピードで歳を取っている。
これって、いつかは俺より年上になっちゃうんじゃ。
『ご心配なく。14歳になったことで、労働適齢期を迎えました。成長の促進はストップしています』
これからは普通に1年で1歳か。なら安心。
それじゃ、俺は出かけてくるから。
「物資を集めるですぅ?」
それもあるけど、ちょっと試したいことがあるんだ。
そして来ました。拠点の南にある沼地です。
『いったい誰に説明しているのでしょうか』
気分だよ、気分。
実は、ここにもあるんだよね。肥えた土が。
いよいよバフィの研究してくれた、植樹の技術のお披露目だ。とりあえず10本くらい、適度な距離を保ってマツの木を植えていく。
そして植樹が終わったところで、余ったスペースにコレを投入だ。
『おや、ケムルートですか』
そうそう。
タブレットのデータベースを流し読みしてたら見つけてさ。なんでも、成熟したケムルートからは、バイオ液化燃料なるものが採取できるそうで。
『しかし、今のアナタたちにとって、燃料なんて無用の長物でしょう』
俺たちが使うんじゃなくて、キャラバンに売れたらいいなと思って。
インセクトゼリーを定期的に生産してくれていた虫さんたちの巣も、もう最後の1つ。インセクトゼリーがなくなったら、現状、俺たちには売れるものがない。これは大きな問題だ。
『それで、バイオ液化燃料を商品にすると?』
その通り。
これが計画通りにいけば、もうモグモグされる心配なしにドバドバ儲けられるぞ。武器も医薬品も買い放題というワケですなぁ。
んじゃ、スクスク育てよ、ケムルートちゃんたち。
『なぜでしょう。成功する気がしません』
おーい、バフィ。ペットフードができたよ。
「ありがとうですぅ。ウサイヌさんにクロウサさん、ゴハンですよぉ」
「……ワフ」
「バ、バウゥ」
なんだか、2頭とも元気がないね。
「この子たち、さっきまでヨットさんに追いかけられて逃げ回っていたですぅ」
なるほど。あの人、全身がミントチョコだから。
イヌにとってチョコはヤバイもんな。いや、ホントにイヌかどうか知らんけども。
災難だったね、お前たち。
「グルルルルッ」
「ガルルルルッ」
いい加減、俺になつけよ! メシ抜きにしてやろうか。
「バウバウバウ!」
「フシュルルル!」
あ、ごめんなさい調子に乗ってました。だから「てめえをメシにしてもいいんだぞ」みたいな殺意は収めてください。
「違うですぅ。なんだかこの子たち、様子がおかしいですぅ」
そうなの? いったい、どうしたんだろう。
『さすがに動物は勘が鋭いですね。敵襲です』
ム、敵襲か。
『おや、淡白な反応ですね』
だって、1人だけだし。こっちは3人だぞ。コテンパンにしてやる。
「隊長、敵襲であります!」
レモンも気づいたか。1人相手に焦らなくていいから、慎重にいこう。
「何を言っているのでありますか。北の敵は明らかに陽動であります」
「敵は分散し、南から本命が回り込んできているのであります!」
「あぅ、3人もいるですぅ……。バフィたち、勝てるでしょうか」
フッフッフ。レモン、どうやら“アレ”を使う時が来たようだね。
「そのようでありますな、隊長」
「え? アレって、なんのことですぅ?」
忘れたのかい、バフィ。
ネオ・サラゴサ町の防衛力を上げるために、この春に俺とレモンが全力を尽くしてきたことを。
「まさか、防壁ですぅ!?」
その通り!
どれだけの敵が、どこからやって来ようとも関係ない。弓矢だろうと銃弾だろうと、その堅固な壁を貫くことはあり得ない。
このRimWorldに存在する全ての危険から、俺たちを完璧に守ってくれる絶対の守護神。
その名も、“ウォール・サラゴサ”!
――というのが、いつかできる予定なんです。
「未完成ですぅ!?」
「チュー。今少しの時間と物資さえあればッ」
あと一歩のところで、襲撃に間に合わなかった。無念だ。
「惜しかったみたいな空気出さないでください。あと一歩どころか、スッカスカですぅ!」
防壁が足りない分は、俺たちのガッツで補うんだ。
『アナタたちの場合、そのガッツが最も不安なのですが』
やかましい。
さあ、みんな武器を取って。星くずサバイバーズ、出撃だ!
5時ごろに間違って最新話を投稿してしまい、削除しました。
プロローグから何も成長していない作者です。