・宇宙歴5502年 春
全員、点呼!
「1ですぅ」
「2であります」
「さーん」
よし。星くずサバイバーズ3人と援軍のヨットさん、集合。
現在、ネオ・サラゴサ町に脅威が迫っている。敵の襲撃を撃退する作戦について、レモンから説明をお願いします。
「ハッ。敵は3人。これまでの襲撃と違い、南と北に分かれて侵攻しております」
どうしよう。俺たちも2つに分かれる?
「いえ、自分たちはネオ・サラゴサ町で敵を待つのであります。なぜなら、各個撃破のチャンスだからであります」
各個撃破。よく分からんけど、かっこいい言葉だ。
「北側には、すでに防壁を建築しておりますので、敵は迂回しなければいけません。進軍は大きく遅れるはずです」
なるほど。敵の到着するタイミングがずれるのか。
「なので、自分たちは戦力を集中させるべきであります。南から襲ってくる2人の敵を速やかに撃退した後、態勢をたてなおして北から遅れて来る敵を攻撃。4対3ではなく、4対2と4対1の戦いとする。これが兵法であります」
了解!
みんな、分かったね。拠点にこもって襲撃者を待ち伏せするぞ。
「敵がきたらどう動くですぅ?」
医者がいない俺たちは、できるだけ無傷で勝たないといけない。そのための作戦はレモンと一緒に考えてある。
敵が来たらウサイヌさんとクロウサさんに足止めをさせて、バフィとレモンが援護射撃。敵がある程度ダメージを負ったら、俺とヨットさんが突撃してとどめをさす。
ウサイヌさんたちには悪いけど、これが最も被害を抑えて勝つ戦法だ。
みんな、目標は無傷での勝利。星くずサバイバーズとゲスト1名、作戦開始!
『と、作戦を考えるまではよかったのです。しかし、ほぼ素人の彼らが理想的に動けるはずもなく。案の定、ガバりました。
獲物が拠点内にこもっていたため、敵は物資の略奪を優先。慌てて飛び出した全裸セラピストたちをスルーし、拠点の破壊にかかります』
『1人は足止めできましたが、片方を取り逃がします。そして、よりによって風車が攻撃されました。唯一の発電装置を守るために全裸セラピストとヨットが追って格闘戦をしかけます。結局、戦力が分散されていますね』
『そしてなんとか南からの敵を撃破。が、同時に北の敵が到着。動物たちを盾にすることもできず、そのまま殴り合いに移行しました。
結論から述べますと、今回の襲撃はしりぞけたのですが──』
『全裸セラピストは全身がズタボロになった上、見事に感染症にかかりました。以上、見るに堪えないグダグダっぷりに、ダイジェストで報告いたしました』
いしゃぁ、医者を呼んでください……。
『いません。自己治療でがんばるしかありませんね』
自己治療だと、手当の品質が落ちるんだよ……。貴重な医薬品を使っても、間に合うかどうか。
『しっかりしなさい。ワタシとしても、アナタにはこのようなことで死んでほしくはありません。がんばりなさい』
アイちゃん……。
『感染症での死亡など、とっくにデータは得られていますからね。どうせ死ぬなら、未知のウイルスに冒されて生きた死体になるぐらいの気概を見せなさい』
知ってた。あと、そんな気概は一生見せない。
そういえば、ヨットさんは大丈夫なんだろうか。俺と同じで、かなり傷を負っていたけど。
『彼女ならとっくに全治して、家畜たちと追いかけっこを楽しんでいますよ』
強い。生命体としての格が違う。
『とにかく治療の質が期待できない以上、アナタにできるのは寝ていることだけです』
え、ダメだよそれは!
畑の世話もしないといけないし、料理だって作らないと。俺の仕事は山積みなんだ。
『ワタシの計算によると、アナタが感染症への免疫を得るのは間に合います。ただし、養生に専念すればです。死ぬのが嫌なら、言うことに従いなさい』
…………。
ソワソワ。
……よいしょっと。
『対象、全裸セラピスト。自爆装置、作動準備』
ストォップ! なに考えてるの!?
『それはコチラのセリフです。絶対安静だと釘を刺したはず。なのに、ベッドを抜け出してどうしようと言うのです。もっと命を大事にしなさい』
え、なんで俺を爆発四散させようとしといて、命の価値を説教できるの? サイコパスなの?
『バフィとレモンから頼まれているのです。アナタが動かないように、見張っていてほしいと』
人選ミス。人に自爆装置埋め込むような奴に、看病させないで。
まあ、たしかに軽率だったけどさ。畑の様子が気になって。
そろそろおコメが収穫できるはずなんだよ。栽培係の俺が働かないと、食料が手に入らない。ちょっと様子を見るだけだから。
『心配しすぎですよ』
だって……。
バフィはオクスリ大好きで、すぐに理性をなくして暴れだすし。レモンはお風呂狂いで、口では立派なこと言う割にちょっとしたことで泣き出すし。
俺が見てないところで、どんな暴走を起こすか。
「チューッ。様子を見に来たら、すごい暴言を吐かれているのであります」
あ、レモン。それにバフィとヨットさんも。
「バルバルー、げんきー?」
「今日のお仕事が終わったから、お見舞いにきたですぅ」
みんな。俺が何もできないばかりに、苦労をかけてごめんね。
「そんなこと言わないでほしいですぅ。困った時は助け合いですぅ」
「そうであります。隊長殿が奮闘したから、自分たちは無傷で済んだのであります」
ああ、人の温かみ。
トマホークで全身をザクザクされて、肩にはクロスボウの矢が刺さったけど、この子たちを守れて本当に良かった。
……あれ?
襲撃者はトマホークとこん棒しか装備してなかったよね? それに思い返せば、矢は後ろから飛んできたような。
あの場でクロスボウを持っていたのは、たしか──
「た、隊長! 実は、報告があるのでありますッ」
「冷凍庫の建築が、完了したのであります」
冷凍庫?
「すっごおくヒンヤリしている建物だよー」
いや、それは分かるんだけども。
「栽培を行う隊長が倒れているので、食料を得るために自分が動物を狩ることにいたしました。しかし、生肉は野菜よりも保存がきかないので」
「この中なら、動物さんのお肉でも新鮮なまま保管できるですぅ。タケが余っていたから、レモンちゃんと相談して建てたですぅ」
なるほど。そういうことか。
「隊長殿には治療に専念していただきたく、事後報告となったのであります。申し訳ございません」
いや、2人はよくやってくれているよ。
俺が回復したとしても、冷凍庫は役に立つ。むしろ、必要な設備だ。
「動物を狩れば、さらに皮などの物資も手に入るであります。これをキャラバンに売れば、軍資金も入手できます」
そこまで考えて、行動していたなんて。
2人とも、いつの間にか立派になって。
『これで理解できたでしょう。今のアナタがすべきなのは無理ではなく、しっかり休むことなのです』
「やっぱり、無茶しようとしてたですぅ?」
「アイちゃん殿に監視をお願いして、正解でありましたな」
そうだね。病死の代わりに、爆死の危険が迫っていたけど。
「バルバルー、ごはんだよー。みんなで食べよー」
あら、おいしそう。いただきまーす。
「おいしーねー」
それにしても、ヨットさんは料理ができたんですね。熱が出てるせいで味は分かりにくいんですけど、ありがたくいただきます。
「つくったの、あたしじゃないよー?」
え、じゃあ誰が?
……。
…………。
ア、アバー!?
「お、お腹が痛いでありますぅ。ピィイイイイ!?」
『健康状態、チェック確認。食中毒です』
しまった、ポイズンクッキングだ!
「コォオオオオン!?」
『食中毒、1名追加です』
自分でも耐えられない毒を生み出すな!
「おかわりちょーだい!」
なんで平気なの!?
あ、やばい。大声だしたら、一気に気分が悪くオゴゴゴゴゴ。
「オロロロロ」
「デロロロロ」
ネオ・サラゴサ町が、見る見る間にゲロに覆われていく。これが地獄か。
『真の脅威は、味方にいたということですね』
やだよ、そんなオチ。
食中毒発生
→拠点がゲロまみれになる
→掃除しないまま料理する
→食中毒
RimWorld名物の食中毒スパイラル