辺境の世界からSOS   作:銃病鉄

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5502年・夏 「勧誘・ネコ・熱」

・宇宙歴5502年 夏

 

 

 どうも。

 

 季節の移り変わりは早いもので、RimWorldに放り込まれてから3度目の夏を迎えました。

 最近はナーバスになっていましたが、心機一転し、がんばっていこうと思います。

 

 カサバルです。

 

「バルバル、だれとはなしてるのー?」

「時々ああなるですぅ。気にしなくていいですぅ」

「正直、不気味でありますな」

 

 うるさい。気分だよ、気分。

 

『もうシリアスはよいのですか?』

 

 いい。

 

 というか、よく考えたらいつ全滅するかも分からない生活送ってるのに、脱出後のことなんて考えてられない。今は目先の仕事をがんばらないと。

 

『そんな思考だから目標を共有できていなかったのでは』

 

 宇宙船よりも今はご飯と薬だよ!

 

 俺が感染症でずっと倒れていたせいで、物資を全然集められていない。

 ようやく全快できたんだから、これからはフル回転で働きまくるぞ!

 

 バフィにレモン、現状で不足しているものを教えて。

 

「冷凍庫を建てたから、もうタケが無くなりそうですぅ。あと木材も」

「医薬品もカツカツでありますな。そして兵糧も尽きる寸前であります」

 

 つまり、サバイバルに必要なもの全部ね。ヨシ、星くずサバイバーズは平常運転だな。

 

『なんでまだ全滅してないんでしょうねぇ、アナタたち』

 

 とりあえず俺は野生のヒールルートを採取してくるから、バフィは研究、レモンは動物の狩猟をお願い。

 

「じゃー、ヨットはおそうじしてるねー!」

 

 お願いします。

 

 いやー、ヨットさんが雑用を手伝ってくれるから、大助かりだ。食事と住居を提供する見返りは充分ある。

 バフィのアイデアでテナント募集したけど、正解だったな。

 

「……カサバルさん。最初の目的を忘れてないですぅ?」

 

 目的?

 

「テナントさんを募集したのは、ネオ・サラゴサ町にずっと住んでくれる人を探すためですぅ。お手伝いさんを探すためじゃないですぅ」

 

 ハッ!?

 

 そうだった。忘れていたけど、星くずサバイバーズに加入してくれないと意味がないんだ。

 かれこれ半年ぐらい一緒だったから麻痺してたけど、現状、ヨットさんの気分次第では明日いなくなってもおかしくない。

 

 というより、あの幼女ぶりを考えたら、いつかフラッと出ていっちゃう可能性が高い。

 

「ですぅ。ヨットさんもここに馴染んでますから、もう一押しすれば加入してくれるかもしれないですぅ」

 

 もう一押しか。

 

 

 

 と、いうわけで。

 

 ヨットさん、正式に俺たちの仲間になりませんか?

 ご新規のメンバーには、毎日の食事と柔らかいベッドが無料で提供されます。しかも今なら、参加費100パーセントオフ。さらにご友人に星くずサバイバーズを紹介した場合、各種特典をもらえるというキャンペーン中です。

 

『薄っぺらいお得感でだまそうとするのはやめなさい。毎日の食事とベッドに至っては、すでに提供しているでしょうが』

 

 シーッ!

 

「きゃんぺえん? んー?」

 

 ダメだ。そもそも理解できていない。

 

 正直なところ、どうなんです?

 ヨットさんにとっても、RimWorldを放浪するよりここでずっと暮らす方がいいと思うんですけど。そもそも、どうして旅をしてるんですか?

 

「“しらない”が好きだから!」

 

 しらない……、知らない?

 

「しらないばしょにー、しらないひと! いろんなところへ行って、たくさんともだち作るのー!」

 

 …………なんて、純粋な瞳なんだ。

 

 俺にはまぶしすぎる。こんな無邪気な思いを、俺はいつから失くしてしまったんだろうか。

 

 とても、邪魔なんてできない。

 

 

 

 

 

 まー、それはそれとして。

 

 星くずサバイバーズのリーダーとして、簡単にあきらめるわけにはいかない。

 俺にいい考えがある。

  

『そうですか。今すぐ忘れなさい』

 

 ちょっとは期待してよッ。

 

『では、どうするのです』

 

 お菓子で釣ります。

 

『誘拐犯ですかアナタは』

 

 そしておいしいお菓子を食べさせたら、できたばかりの寝室に閉じ込める。

 

『誘拐犯ですかアナタは』

 

 きれいな環境の中にいてもらって、心情を高めるんだ。これでネオ・サラゴサ町から離れたくないと思ってもらえれば、こっちのものよ。

 

 幸い、ここには収穫したばかりのミントハーブがある。

 

 これを鍋でいい感じになるまでグツグツ煮込んで、いい感じに味付けしたら、いい感じに固めていって。

 

『解説が雑』 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 完成、カサバル印のミントキャンディ!

 

 ヨットさーん、いいものあげるよー!

 

「わーい」

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

「しあわせー」

 

 グフフ。俺の計画通り、まんまと幸せになっておるわい。

 明日の今頃には、星くずサバイバーズの一員になっておるとも知らずになぁ。

 

『人間って、ここまで心が汚くなれるんですねぇ。あと顔も』

 

 顔は関係ないだろ!

 

 

 

 ふぅ。ヒールルートの収穫はこれぐらいでいいか。砂漠と違って、ツンドラは自生してくれるからありがたいな。数少ない、ここに来てよかったと思える点だ。

 

 あとはこれを拠点に運んでから、木材の調達にいこうかな。

 

「カサバルさーん」

 

 あれ、バフィ。どうしてここに?

 

「研究が完了したから、カサバルさんのお手伝いにきたですぅ」

 

 おお、もう新しい研究が終わったのか。すごいなぁ、去年のことを考えたら速度が段違いだ。

 

「バフィもがんばってるんですぅ」

 

 えらいねぇ。んじゃ、この薬草を拠点に運んどいt。

 

「チューッ!?」

 

 ム、このネズミっぽい悲鳴はッ。

 

「隊長、助けてください! 猛獣でありまあああす!」

 

 猛獣!? 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 ただのネコだろ! なんで追いかけ回されてるの!?

 

『お互い、遺伝子に刻み込まれた本能があるのでしょう。ネズミはネコに捕食されるものだ、と』

「分かるですぅ。レモンちゃん、ちょっとおいしそうですもんね」

 

 バフィ!?

 

「ヂューーーッ!?」

 

 ああ、アホな会話してる場合じゃなかったッ。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

「ピィ、死んでしまうのでありますぅ……」

 

 よ、予想以上に間一髪だった。初動が遅れてごめん、レモン。

 

『ものの見事に、全身をズタズタにされていますね』

「あうぅ、血だらけですぅ」

 

 すぐに薬草を使って治療しないと。収穫が間に合っていてよかった。

 さあ、ベッドに連れて行ってあげるからね、レモン。

 

「た、たいちょー……」

 

 ん?

 

「隊長が、川の向こうで手招きしてるであります……」

 

 勝手に人を殺すな!

 

 

 

 

 

 さて、皆さん。

 

 ここツンドラは、年間の平均気温がマイナスに突入する北の大地です。当然、植物も育ちにくく食料供給が不安定。サバイバルを困難にしている要因です。

 なんとかしたいですよね。

 

『もう突っ込みませんからね』

 

 気分だよ、気分。

 

 とにかく、このツンドラの大地に、バフィが開発したばかりのコイツを投入だ。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

『ほう、スノウビートですか』

 

 なんでも、寒さに強いのが特徴らしい。普通の作物ならツンドラの寒さで枯れてしまうけど、こいつなら余裕で冬を越せる。まさに俺たちのためにあるような作物ですな。

 

『1つ注意をするなら、枯れないというだけで、寒さで成長はストップしますからね』

 

 うん。だから、植える時期には気を使わないと。ある程度成長した段階で冬を迎えて、春になったらすぐに収穫できるというのが理想かな。

 

 さーて、スノウビートの畑も完成したから、あと俺がやらなくちゃいけない作業は。

 

『木の伐採に、コメの収穫。そして岩石の加工に防壁の建築。そして4人分の食事を調理しないといけませんね』

 

 人を過労死させるつもりか、この人工知能。

 

『仕方がないでしょう。レモンが倒れた分、アナタが穴埋めをするしかないのですから』

 

 一応、この前まで生死の境をさまよってた男を酷使しないで。

 防壁の建築はこの際ストップしてもしょうがない。レモンが治るのを待とう。

 

『いつになったら完成するんでしょうね、防壁』

 

 

 

 

 

 レモーン、具合はどうだい?

 

「隊長、おかげさまで、だいぶ良くなってきたのであります。明日には働けるかと」

 

 ムチャはダメだよ。ケガと病気は治りかけが肝心なんだから。

 

「そうですぅ。レモンちゃん、ゆっくりしてるですぅ」

「ハッ。ではお言葉に甘えて」

 

 しかし、思ったより早く復帰できそうだね。もしまた感染症にでもなったらと、心配してたよ。

 

「隊長のおかげであります。去年と比べて、隊長の治療が上手になっているのであります」

 

 ああ。まあ、今年になってから色々あったからねぇ。色々と。

 

「カサバルさんが遠い目をしてるですぅ」

『医術スキルが上達する機会が多すぎましたからね』

 

 とにかく、これで一安心だ。

 

 明日から、またみんなでがんば、ろ……。

 

 ……。

 

「隊長?」

「カサバルさん、どうしたんですぅ?」

 

 ……。

 

 …………。

 

 うぼぁ。

 

「カ、カサバルさんが倒れたですぅ!?」

「すごい高熱であります!?」

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

『まさかとは思いましたが、インフルエンザにかかっていますね。しばらくは安静にさせましょう』

「またでありますか!?」

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