・宇宙歴5502年 夏
全員、点呼!
「1であります」
「さーん」
「お、おクシュりぃ」
「4だよ。……何、このノリ」
よし。星くずサバイバーズ4人と援軍のヨットさん、集合。
現在、ネオ・サラゴサ町に脅威が迫って以下省略!
『分かりやすく追い詰められていますね』
こんなの余裕だし。俺が何度、この星で修羅場くぐってきたと思ってるんだ。
『足がガクガク震えていますが』
武者震いだし。
「ボクのせいだ。ラックルたちから逃げ出して、ここに駆け込んだから、こんなことに」
それは違うよ、やたら態度がでかいキツネの子。こうなったのは誰の責任でもない。
「いや、ボクのせいさ。誰よりも才能に恵まれているうえに、こんなにもかわいいから。いっつも争いのもとになってしまう。ボクは魔性の女なのさ」
ちょっとでも慰めようとした自分をブン殴ってやりたい。
「隊長。敵はバン種族が5人であります。彼らも優れた身体能力を持つ種族であります」
『今は様子見していますが、すぐに攻めて来るでしょうね』
うぐぐ、最悪だ。盾になるはずのウサイヌさんたちは、前の戦闘でボロボロなのに。
「こぉん、こぉん」
おまけにバフィは禁断症状で、白目をむいて鳴き声を発するだけの置物になっている。
こんな時は……。レモン、なんとかしてくれ!
『大人としてのプライドをお持ちでない?』
仲間は助け合うためのものなの!
「チュー。一応、作戦は考えておりますが……」
なんだっていいよ、この状況なら。おしえてちょうだい。
「隊長、敵の武器をご覧ください」
え?
……ほとんどが銃を持ってる。ウソでしょ。こっちは弓で戦っているってのに。
「逆に考えるのであります。格闘戦に持ち込めば、銃火器と言えど役立たずとなります。つまり、最初から格闘担当が突撃し、敵の銃を封じるのであります」
なるほど。
アレ? もしかして、俺に特攻しろって言ってる?
「まあ、近接武器を持っているのが隊長だけなので……。今までお世話になったのであります」
「さようなら、おじさん。いい人だったと思うよ、知らないけど」
すでに死ぬ路線で話が進んでいる。
「ヨットもとつげきしようかー?」
……いえ、ヨットさんはさっきの戦いで怪我をしています。危険な一番槍は俺の役目です。
RimWorldに連れてこられて、もう2年。命の危機なら何度も乗り越えてきた。こんなところで死んでたまるか!
「隊長、敵が向かってくるのであります」
1人だけナイフを持っている敵がいるな。アイツを真っ先にしとめて、すぐに銃持ちに向かう。
いくぞ、チェストぉ!
「チュッ、自分たちも射撃開始であります!」
フンッ。ハッ。グエェッ。
「さすがボク。もう1人倒したよ」
痛い! ちょ、タンマッ。
『ふむ。銃とはいっても、原始的なフリントロックではこの程度ですか。問題なく弓で対抗できていますね』
イヤーッ! グワーッ! グワーッ! グワーッ! イ、グワーッ!
「あの、隊長……」
「全く敵の銃撃を阻止できていないのでありますが」
「いつまでナイフの相手をしてるのさ」
ちょっと待って! コイツ、強すぎる!
『アナタが弱すぎるだけです』
アバーッ!?
うぅ、全身がズタボロだぁ……。
『見事に上から下までボッコボコにされましたね』
結局、ヨットさんやクロウサさんたちにがんばってもらって、なんとか追い返した。
俺は打撲ばっかりだからいいけど、クロウサさんたちの出血量がヤバい。自分の手当ては後回しだ。地獄。
「カサバルさん、がんばるですぅ」
ありがと、バフィ。できれば、もうちょっと早く復活してほしかったかな。
「やっぱりお医者さんがほしいですぅ。あの逃げてきた子も、医療は知らないって」
きついな。応急手当ができるだけでだいぶ助かるのに。
そういえば、あの子は?
「今、レモンちゃんが拠点を案内してるですぅ」
医者は無理だったけど、その他のスキルに期待しよう。なんか、天才らしいし。
レモンちゃん、案内は終わったですぅ?
「バフィ殿にアイちゃん殿。今、終わったところであります」
「予想を裏切らないオンボロ建築だった。正直、僕みたいな天才にはふさわし、く…………」
あう、バフィの顔に何かついてるですぅ?
「……あの、さっきの戦闘中にずっと棒立ちしていたお姉さんだよね?」
たぶんそうですぅ。
「白目で泡を吹いていたから気づかなかったけど、これは……ゴクリ」
?
『バフィ、全裸セラピストの伝言を』
あ、そうだったですぅ。レモンちゃんに研究室兼キッチンに来てほしいって、カサバルさんが。
「了解であります」
みんなそろったら、自己紹介ですぅ。楽しみですぅ。
「……すみません、ちょっとよろしいでしょうか」
新人ちゃん、敬語なんて使わなくていいですぅ。これからはお友達なんだから、気楽にしてほしいですぅ。
「ンッ! 天使のような優しさ!」
もう、大げさで──。
「バフィ殿ぉ、大変であります!
「隊長が倉庫でブリッジ姿勢をとったまま、ピクリとも動かないでありまぁああす!」
カ、カサバルさんッ。カサバルさんも、おクスリがきれたですぅ!?
『チェック完了。痛みと空腹のダブルパンチでメンタルブレイク。カタトニーを起こしたようです』
カタトニー?
『緊張病とも呼ばれるものです。極度の興奮状態になることもありますが、今回は違いますね。一定の姿勢を保ち続けたまま固まってしまいます』
それでずっとブリッジしてるですぅ……。
なんとか、カサバルさんをベッドまで運んだですぅ。
「チュー。寝室でずっとブリッジされているのは、シュールな光景でありますな」
「ずっと視界の端におじさんのナニがちらつく。控えめに言って、目が腐りそう」
カサバルさんが動けないのは残念ですけど、やっと自己紹介ができるですぅ。
「そうだね。まずは助けてくれたお礼を言うよ。ありがとう」
どういたしましてですぅ。
「そして、僕の名前はSparrou──スパロウだよ」
「ふむ、スパロウ殿でありますか。自分はレモンであります」
バフィですぅ。よろしくですぅ。
「よろしく、レモンにバフィお姉さま」
お姉さま?
「うん。そう呼びたいんだけど、ダメかな?」
いいですよ。妹ができたみたいで嬉しいですぅ。
「あ、ありがとう」
「あの、一応自分も年上なのでありますが。なんでバフィ殿だけ? ……チュッ。スパロウというと、たしか」
レモンちゃん、どうしたですぅ?
「自分が奴隷商のキャラバンにいた時、聞いた覚えがあるような。たしか、新進気鋭の芸術家だとか」
「その通りさ! ボクは“世に出始めた芸術家”、いずれはこのRimWorld中に名前をとどろかす美少女さ!」
すごいですぅ。でも、どうしてラックルさんたちに追われていたんですぅ?
「あいつら、ボクに無理やり作品を作らせて金儲けしようとしたんだ。だけど、ボクの才能を一部の人間のために使うなんて、宇宙の損失。隙をついて逃げ出して、ここにたどりついたのさ」
「チュー。それは災難でありましたな」
無事でよかったですぅ。
「ぐすっ。ボク、本当に怖かったよ。今でも、身体の震えが止まらないんだ」
かわいそうですぅ。涙まで流して。
「チュー。さっきまで、メチャクチャ元気そうでありましたが」
元気を出すですぅ、スパロウちゃん。
「ああ。こんな時、ボクと同じクーリンで、ちょっと年上のオットリしたお姉さまに抱きしめてもらえたら」
「ずいぶんと具体的でありますな」
抱きしめてほしいですぅ? はい。
「ああ、暖かい。ありがとう、お姉さま……。背中もポンポンして」
ぽんぽん。
「あ、あぁ……。ウヘヘ、たまらん。プフッ、鼻血が」
「バフィ殿、バフィ殿! 今すぐに離れるであります!」
レモンちゃん、急にどうしたですぅ?
「スパロウ殿から、あからさまに邪念を感じるのであります」
でも、女の子どうしですよ。
「お姉さま、そんなの関係ない!」
「美しいものを愛でるのに、男女で区別するなんてもったいない! 男だろうが女だろうが、かわいいボクはいつでもどこでもバッチコイだよ!」
よく分からないですけど、スパロウちゃんは心が広いですねぇ。
「見境がないだけであります!?」