シナリオはネイキッド。
難易度は生存奮闘。
ストーリーテラーはMODのラヴクラフト御大。
開始したマップは、大きな丘陵の砂漠。洞窟あり。東端が海岸。
・宇宙歴5500年 春
どうも。
餓死という、遭難して以来最大の危機を乗り越え、たくましくなりました。
カサバルです。
『まだ三日目ですが』
嘘は言っていない。
そんなことより、今後について考えないと。
改めて思い知ったけど、行動の優先順位を少しでも間違えたら、ポックリ逝ってしまう。
とりあえず効率の悪い釣りはやめる。
夜になったら、また虫の巣に忍び込んで食料を取ってこよう。
共生するのって大事なことだよね。
『アリとアブラムシみたいな関係ですね。こちらは一方的に盗むだけですが』
俺は昆虫以下と?
しかし、食料以外にも気がかりなことが一つ。
『何でしょう』
ここ、医者もいないし、薬もないですよね。
病気になったらどうしようかな、って。少しは医術の心得はあるんだけども。
『現状、“十分な知識あり”レベルですか。薬がなくても応急処置はできますが、絶望的ですね』
でしょう。
なんとかできないんですか?
『ヒールルートという植物から薬草を採取できますよ』
それなら、コメと同じように植えればいいな。たしか、まだ土の土壌が残っていたはずだし。
『残念ですが、ヒールルートは育成の難しい植物です。“プロ”レベルの栽培スキルが必要でしょう。素人では植えることすらできません』
よし、できた!
『……はい?』
普通に植えられましたよ。
なんというか、こう。フィーリングに従って。
『驚きました。すでにプロ並みの栽培スキルを持っているとは』
昔から、なんか得意でしたから。
これで順調に育ってくれたら、少しは病気や怪我にも対応できそうだ。
『収穫できるまで、命があるといいですね』
どうしてそんなこと言うの?
畑を作ってから数日。
遺跡から見つけたテーブルを持って帰って、簡単な椅子も自作した。
だんだんと文化的な生活というものを取り戻しつつありますな。
『文化的(全裸)』
うるさい! そっちが服を取り上げたんでしょ!
『それはさておき、生活水準を整えるのも重要です。見苦しく不衛生な環境での生活は、深刻なストレスを与えます。もし過度のストレスに耐えられなければ、メンタルブレイクを起こすでしょう』
メンタルブレイク?
『つまり発狂です。軽度のものならば、ひきこもりや過食症。深刻になれば、殺人衝動なども引き起こします』
何それ、怖い。
まあ、大丈夫でしょう。俺に限って、まさか発狂するなんてことは……。
『むしろ、アナタのストレス耐性は通常より低いようです。早急に対策しなければ、ポンポン発狂することでしょう』
ポンポンって、アンタ。
……!
『どうしました』
いや、遠くに人影が見えるような……。こっちに近づいてくる。
『こちらでも確認できました。どうやら、RimWorldの住民との初接触となりそうですね』
とうとう来たか、この時が。
不安だ。
話を聞く限り、ヤバい人たちしかいないように思える。普通の人間の姿をしているかどうかすら怪しい。
頭が二つあったりしないよね。
なんか、予想以上に異形なんですけど。
『水中での生活に適応した種族のようですね。戦闘の意思もないようですし、ただの旅行者でしょう』
信じていいんですよね?
触覚みたいなの生えてるし、しっぽもあるし。人の言葉を話せるかどうかすら分からないんですけど。
あ! 向こうもこっちに気づいた。
いざとなったら、いつでも逃げだせるようにしないと。
「アンタ、ここの住民の人? おいっすー」
あら、フランク。
「ポッドで落ちてきたの? あるあるー」
あるんだ。そんなに普遍的な現象なんですかね。
「宇宙船が事故にあったり、宇宙海賊――宙賊に襲われたり、けっこう降ってくるよ。たいていは大怪我してるから、そのまま死んじゃうけどねー」
のんびりした笑顔で殺伐としたこと言いますね。
命の価値が低すぎない、この世界?
「でも、気をつけなよ。ここら辺、よく宙賊や蛮族がコロニーを襲撃してるからさ。あいつら、資産が多いとこほど、大人数で来るんだよねー」
怖い。
でも、俺のところは大丈夫かな。襲っても、金になるようなものなんて持ってないし。
「アンタがいるじゃない。健康な人間ってだけでアイツらの標的だよ。奴隷にするとか、モツ抜きするとか」
モツ抜きってナニ!?
「まず、生きたままお腹を開いてー」
もういいです。
「で、
もういいって言ったじゃない!
『彼女は去りましたか。大変有益な情報を得られましたね』
そうだね。余計、将来に希望が持てなくなったけど。
しかし、襲撃かぁ。
あの人が嘘をつく理由もないし、やっぱり来るんだろうな。
防衛するって言っても、なんもできることがなさそうなんですけど。何かいい案がありませんか?
『やはり、こちらも武装するのが一番でしょう。簡単な武器なら、木材から弓と矢を作ることができます』
んじゃ、それで。
『が、今の工芸スキルでは不可能でしょう。簡単とは申しましても、最低限の知識と技術は必要です』
上げてから落とすスタイル。どうかと思います。
『もしくは、相手が踏んだ瞬間に作動するトラップを設置するというのは? 原始的なものであれば、こちらも木材で作れます』
……けれど?
『こちらも建築スキルからいって不可能ですね。むしろ、アナタは何ができるのでしょう』
花の世話とか、すごく得意ですよ? あと動物の世話も。
『現実的な手段として、投石用の石を用意するのをお勧めします』
……ないよりマシかぁ。
・宇宙歴5500年 夏
最近、暑くなってきたなぁ。
『もう夏が始まりましたからね』
季節、変わってたのか。
石を武器にするために磨いてたり、トイレ作ってたり、なんかあっという間だったなぁ。
しかし、警戒していたけど、襲撃なんて来ないぞ。
あれから何度か旅行者が訪問してきたけど。
『今も、RimWorldの住民が拠点の周囲に滞在していますね』
うん。交易途中のキャラバンらしいよ。
話も通じるし、敵対的でもないし、思ったより普通の人たちだったな。
……顔がネコだったから、最初びびったけど。
『あちらはあちらで、廃墟としか見えないボロボロの建物から、全裸の原人が出てきた時はギョッとしてましたが』
廃墟って言わないでください。夢のマイホームだぞ。
それと、誰が原人だ。原人って言う方が原人なんです。
しっかし、この調子なら、慌てて戦闘に備える必要もなかったかな。
せっせと準備した石ころが、部屋の片隅で山になってるし。正直、邪魔だ。
『そんなアナタに報告があります』
はい、なんでしょう。
『ナイフを持った中年女性が、こちらの様子をうかがっています。おそらく、ここを襲うつもりかと』
…………。
『本部に報告。実験体No4は、数日に渡って生存するも、現地住民に襲われた末に死亡を確に――』
まだ死んでない!
そうだ。今はキャラバンの人たちもいるから、一緒にここを守ってもらえれば。
『残念ですが、彼らは先ほどここを立ち去りました』
なんてこったい。
……よし。敵はまだ俺に気づいてない。
コッソリ距離を詰めて……くらえ!
よし、足に当たった!
こっちに来るけど、びっこを引いてる。
この調子で、距離を取って石を投げて。また距離を取って石を投げて。
『なんという原始的な戦闘でしょう。とても宇宙歴の光景とは思えません』
こっちは必死なんです!
フッハハハ!
生きてる。無事に撃退したぞ。
いやー、俺にかかれば瞬殺でしたね。
『記録を捏造しないでください。日付けが変わるまで、見苦しい追いかけっこを続けたでしょう』
いいんだよ、勝ったんだから。
『おまけにストレスからメンタルブレイクを起こし、半日以上フラフラうろついていました』
ああ、道理で敵が倒れた後の記憶がないと思った。
それにしても、襲撃と言っても、大したことはない。
この俺を襲うなら、せめて一個師団は必要であると知るがいい。
『分かりやすく天狗になっていますね』
勝利の余韻にひたっている、と言ってください。
最悪のデッドエンドを回避したんだから、それぐらい許されるでしょ。
『そんなアナタに報告があります』
あれ、デジャヴュ?
『こん棒を持った全裸の中年男性が、こちらに近づいています。襲撃です』
あれから二日しかたってないのに!?
落ち着け、前回とおんなじ要領でやればいい。
まずは慎重に忍び寄って、足に石をぶつける。それから、退いては投げてを繰り返せば……。
あ、外れた!? こっち来てる!
撤退、撤退ッ。
いったん拠点の中に引きこもって態勢を立て直してから……。
あああ、ドアが閉まる前に入って来たぁ!?
モツ抜きは嫌ぁ!
『――それから行われたのは、まさに死闘でした。
全裸の男性同士が、こん棒と石で殴り合い、時には噛みつく。遥か太古の昔、文明の光が刺す以前の時代を思い起こさせる、あまりに剥き出しの暴力。
そして、鈍い殴打の音と、みっともない命乞いの悲鳴がひとしきり交差したのち、ついに決着はついたのでした』
かッ、かッ……。
勝ったぞおおお!
『運動能力がおよそ三十パーセントまで低下しています。もう一撃を受けていればダウンしていましたね』
実際、死んだかと思った。
『ところで、戦闘の経過を実況風に記録してみたのですが、ぜひご感想を』
命乞いの部分はカットでお願いします。
『やめ、やめてください! 腎臓、腎臓一つなら、抜いてもいいですからぁ!』
リピートしないで。
それにしても、身体はボロボロだし、拠点は血だらけだし。
どうしたらいんだろう、この地獄絵図。
まあ、とりあえず。
『おや、倒れた敵の応急手当てですか。優先順位は高くないと思いますが』
さすがに目の前で死なれたら、気分が悪い。
俺の医術技能の練習にもなるし、損にはならないでしょう。
『捕虜を有効活用するならば、医術の練習と金策を兼ねて、モツ抜きを――』
しないよ!
格闘スキル0で勝てたのは奇跡。