辺境の世界からSOS   作:銃病鉄

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5502年・夏~秋 「お風呂の時間であります!」

・宇宙歴5502年 夏

 

 

 カサバル、復活。そして、収穫だー!

 

 

 

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 初めて植えたトウモロコシ、大豊作。1つあたりの収穫量がコメとは段違いだ。

 

『フム。成長が予想以上に早いですね。肥えた土とトウモロコシの相性が、ここまで良いとは』

 

 おまけにコメよりも保存性が高い。もうすぐ秋だし、冬に備えて大事にとっておこう。

 ズタボロの身体に鞭打ってがんばったかいがあった。

 

「おーい、全裸ブリッジおじさん」

 

 カサバルだ。自称天才のキツネっ子。

 

「それならボクだってスパロウだよ。そんなことより、ボクに芸術品を作らせずに拠点の掃除をさせようだなんて、どういうことだい!」

 

 俺は栽培で忙しいし、バフィには研究があるし。レモンは、レモンだし。消去法で。

 

「冗談じゃない! 宝の持ち腐れだよ。ボクが作品を完成させるたびに、世界は輝いていくんだ!」

 

 やかましい! 芸術で腹が膨れるか!

 

「何言ってるのさ。天才のボクが作った芸術品なら、誰でも喉から手が出るほど欲しがるに決まってる。ジャンジャカ稼いで、食料も武器もいくらでも買えるとも」

 

 それ、ホントぉ? レモンからも名の知れた芸術家とは聞いたけども。

 芸術以外に、何か得意なことはないの?

 

「射撃だね。この前の戦闘をみただろう?」

 

 たしかに。正直なところ、かなり活躍していた。

 

「そして、なんといっても“可愛い”! あとは“小走り”で足が速いよ。そして“禁欲”さ」

 

 お前のどこが禁欲なんだ。

 

「さらにボクには、性別の垣根に囚われない愛がある」

 

 “両性愛者”ね。ま、個人の趣向に口は出さんけど。

 

 しかし射撃がうまいのはありがたい。掃除をしてないときには狩りをお願いしようかな。獲物を選びながらだけど。

 これで食料問題も解決だ。

 

「だからさぁッ。ボクは芸術を産み出したいの!」

 

 ムググ、なかなかに強情。

 

『これまでの2人は素直でしたね。むしろ、この星では珍しい方かもしれません』

 

 さて、どうしたものか。

 

 

 

 

 

 というわけで、コチラ、夜の洞窟です。

 

「おじさん、誰と話してるんだい」

「たまにこうなるですぅ。気にしなくていいですぅ」

 

 さて、スパロウ。

 これから、星くずサバイバーズにおいて最も大切で、歴史ある作業を教えます。

 

「洞窟でする作業って何? 入りたくないよ。虫がいたらどうするのさ」

 

 いるよ。ガッツリ。

 

「え?」

 

 今から、虫さんたちを起こさないように巣に侵入。そして、抱えられるだけのインセクトゼリーを持って、素早く脱出するんだ。起こしちゃったら生きたままモグモグされるから、気をつけてね。

 

「頭おかしいの? このおじさん」

『改めて考えると、人食いの虫の巣に子供を送り出すの、なかなかに狂ってますね』

 

 これも生きるためだから。

 

「そんな仕事、天才のボクにふさわしくない。絶対に行くもんか」

 

 バフィ、打ち合わせ通りにお願い。

 

「スパロウちゃん、バフィお腹が減っちゃったですぅ。どこか近くに食べ物があったらいいのに」

「了解! すぐ取って来るねお姉さま!」

 

 鼻血を垂らしながら突撃していった。キラッキラの笑顔だったな。

 

「それじゃあ、バフィは研究に戻るですぅ」

 

 ん、ありがと。

 あの自称天才少女の扱い方も分かったよ。

 

「でも、芸術品も作らせてあげてくださいね?」

 

 ああ、うん。そのうち。

 

『生返事』

 

 

 

 

 

・宇宙歴5502年 秋

 

 

 ウーム。

 

 

 

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『これは、春に植えていた植物ですか』

 

 

 うん。バイオ液化燃料による金策を考えて植えた、ケムルートちゃんたち。

 こうしてスクスク育ってくれているんだけど。

 

『秋に入っても、成長度は約50パーセント。これは……』

 

 冬に間に合わないな、完全に。この計画は失敗だ。

 なんてこった。いずれはこの星のエネルギー産業を支配する俺の夢が。

 

『もっと自分のことを見くびりなさい』

 

 アイちゃんにだけは言われたくない。

 

 ん? レモンがすごい勢いで走ってくる。

 

「隊長! お喜びください!」

 

 わーい、わーい。で、何があったの?

 

「とうとうお風呂が完成したのであります!」

 

 ああ、なるほど。

 

「隊長たちに出会ってから、苦節1年。こんなクソザコ貧乏集団に拾われてどうなることかと思いましたが、とうとう自分は愛しの入浴にたどりついたのであります」

 

 おめでとう。内心、そんなボロクソに思ってたんだ。

 

「浴槽はとりあえず、宿泊室に設置しております。ぜひ、隊長にも入浴してほしいのであります」

 

 そうさせてもらおうか。なんだかんだ、俺も2年以上お風呂に入れてないんだよね。

 

「……」

 

 コラ、急に距離を取るなレモン。ちゃんと井戸水で体は洗ってたでしょ。

 

「体を清潔に保つことは、心情面にも大きなプラスとなります。バフィとアナタにとっても、入浴の恩恵は大きいでしょう」

 

 金策には失敗したけど、生活面は改善していってるな。この調子で、いつかは豪邸で左うちわの暮らしを手に入れて見せる。

 

『先は長いですねぇ』

 

 

 

 採取できたばかりのミントをこねて、こねて。完成、ミントキャンディ。

 

 どうぞ、ヨットさん。

 

「わーい」

 

 さらに、もう一発。畑で実った新鮮な茶葉と、沸きたてのお湯をティーポットに投入。その日の気分で蒸らしたら、これをカップに注いで。

 これがネオ・サラゴサ町の新商品。カサバル印の紅茶です。

 

 

 

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「しあわせー」

 

 気に入ってもらえたようで、何より。

 

 いやー、我ながら本当においしい紅茶だ。何杯でも飲めちゃうね。

 ……ところで、なんで取ったばかりの茶葉で紅茶ができるの? 普通は緑茶だよね?

 

『ここはRimWorldですから』

 

 摩訶不思議なり、RimWorld。

 

 しかし、“ヨットさん幸せ監禁計画”も、未だに成果が出ない。ぜひとも仲間になってほしいんだけど。

 

『これは、相手しだいですから。確実に仲間にするなら、一度囚人にしてから説得する方法もありますが』

 

 今までは、手間やら食料事情やらでできなかったけど。

 

『囚人を説得するのは、最も確実な人材確保の手段です。食料も安定してきたのですし、一考の価値はあると思いますが』

 

 どうしたものか。

 

 実際、最近は医者がいない弊害が無視できない。俺とか、今年になってから倒れてばっかりなんだよね。一番医術スキルが高いのに。 

 

 捕虜の中に医者がいたら考えてみるか。

 もっとも、これも襲撃が来てからの話だけど。ここ最近は連続で来てたし、当分は来ないでしょ。

 

『この時、この油断が破滅を招くということを、彼は想像もしてい――』

 

 久々のナレーション芸、やめて。

 

 

 

 じゃあ、みんな。今日も1日お疲れ様。

 

 ベッドに入る前に、歯磨きは終わらせたかな? オネンネする前にトイレに行かなくて、大丈夫かな?

 

「おじさん、うるさい」

 

 カサバルだ。いい加減、名前で呼びなさい。

 

「それより、この拠点って個室はないの? プライバシーってものがないよ」

 

 いいだろ、みんなの寝室だぞ。

 

「しかし、個室はたしかにほしいでありますな」

「バフィも自分のお部屋があったらいいですぅ」

 

 ……オヤスミ。

 

『必要な労力を計算して、聞かなかったことにしましたね』

「個室ほしいですぅ」

「こしつー」

 

 サッサと寝なさい!

 

 

 

 ……。

 

 …………。

 

 しまった。ついつい紅茶を飲みすぎたせいで、全然眠気が襲ってこない。

 

『カフェインを摂り過ぎましたか』

 

 目がギンギンに冴えわたっている。

 というか、こんな時間でもアイちゃんは起きているんだ。スリープモードとかないの?

 

『たった今、解除したところです。不審な生命反応をキャッチしたので』

 

 え! まさか、襲撃!?

 

 こんな時間に来やがって。スヤスヤタイムだってのに。

 

『寝てなかったでしょう』

 

 それで、どの方角から接近してる? 

 

『もうアナタからも見えていますよ』

 

 え?

 

 

 

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 あ、どうも。

 

 

 

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 クケェエエエエ!

 

 

 

 

 

 カサバル、復活!

 

『はいはい、お帰りなさい』

 

 雑な扱いだなぁ。

 

『今年だけで何度も何度も死にかけられたら、こうもなるでしょう』

 

 もはや、レモンもバフィもお見舞いに来てくれていない。

 

『今までと比べると、かなり軽傷でしたからね。今回は相手のナイフに塗られた麻痺毒のせいで倒れましたが』

 

 あんまり覚えてないけど、なんか頭にツノがあったよね。

 初めて見る人工種族だったけど、まさか、寝室まで侵入してくるとは。人間、生きててアサシンに狙われるなんて、そうそうないよ。

 

『訂正しておきますが、彼らは人工種族ではありません。鬼人と呼ばれるRimWorldの先住民です。人間よりも優れた身体能力を持っており、戦闘と生産の両方に秀でています。非情に好戦的で、よく周囲の拠点に攻撃を加えて略奪をしていますね』

 

 蛮族かな? 先住民なんていたんだ。なんて恐ろしい奴らだ。

 

『しかしながら、技術水準が劣っていたのが不幸でした。入植初期に彼らの主な居住地のほとんどは焼き討ちにあい、鬼人は狩猟の対象とされました。現在では、奴隷やはく製にされることを逃れた生き残りが、散り散りとなって過ごしています』

 

 おぞましや、人類。宇宙のがん細胞かな?

 

 

 

「隊長、どうでありますか。自分が作った浴槽での入浴は」

 

 ふぃー。ああ、数年ぶりのお風呂だ。

 この大理石製の浴槽も、すばらしい。すんごい贅沢な気分になれる。

 具体的にどこがいいとか、聞かれても困るけど。

 

「約束の通り、隊長に一番風呂を入ってもらえて、自分も感激であります」

 

 ところでレモン、捕虜にした鬼人の様子はどうかな?

 

「チュッ。頑丈な体のおかげで、もうすぐ回復するかと。部屋が余っていないので、とりあえず宿泊室に閉じ込めております」

 

 そうか。囚人をぶち込むスペースも必要なのか。完全に盲点だった。

 そこらへんも準備していかないとな。

 

 それはそうと、レモンさんや。そろそろ言いたいんだけどさ。

 

 

 

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 どうして俺は吹きさらしの野外で、水風呂に入らされているの?

 

「チュッ。まだボイラーが完成しておらず、お湯が沸かせないのであります。宿泊室も捕虜を閉じ込めているので、ひとまず水道管の通っている野外に設置いたしました」

 

 外気温-5℃なんですけど。正直、寒すぎてもう身体を動かせないレベルまできてる。

 っていうか、話している間にも水が凍っていって、ホントに動けないんだけど!?

 

「……そうでありますか、やっぱり。少しでも早くお風呂に入りたくてワンチャン試してみたのですが、残念であります」

 

 俺で試すなッ。早く解凍してよぉ!




お待たせいたしました。
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