辺境の世界からSOS   作:銃病鉄

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5502年・冬 「サヨナラだけが人生だ」

・宇宙歴5502年 冬

 

 

 レモン、防壁の隙間を急いで塞ぐんだ!

 

「ヂュゥウウウウ!」

 

 よし、間に合った。

 

 

 

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 ウギギギギ。

 

 あの怪物たち、周囲にいる生き物をかたっぱしから食ってる。拠点を防壁で囲っていなかったら、俺たちも危なかった。ギリギリ間に合ってよかった。

 

「何も良くないよ。ボクたちの食料にする予定だった獲物が、いなくなってしまう。このままじゃ、バフィお姉さまが栄養失調になっちゃうじゃないか」

『これは興味深い。まさか、“黒き仔山羊”と遭遇するとは』

 

 黒き仔山羊?

 

『組織でも未だに噂でしか確認できていなかった生物です。深き者との類似性も指摘されていますが、全く別種の生物ですね。群れが通った後は更地だけが残るとか』

 

 なんてこった。

 一応の安全は確保したけど、防壁の外に出れないぞ。

 

「チュー。とてもではありませんが、今の自分たちに対処できる相手ではありません。よそに行くまで、やり過ごすしかないのであります」

『しばらくは防壁の内側にこもらなければいけませんか。全く作業が進みませんね』

 

 そうなんだよ。差し迫ってやらなきゃいけないこともなかったから、別にいいけど。

 

「隊長! 拠点から離れられなくても、すべきことは無数にあるのであります。バケモノたちが眠る夜の間に、物資を蓄えましょう!」

 

 なんだか、レモンがやる気に満ち溢れている。不安。

 

 

 

 うぅん。改めて備蓄している食料を確認したけど、きついな。最後に近くにいたヘラジカの群れを狩猟すれば、余裕で春まで過ごせるはずだったのに。

 もったいないけど、インセクトゼリーで食いつなぐことになりそうだ。

 

「おーい、おじさん」

 

 カサバルだ。

 

「細かいなぁ。そんなことより、ボクの芸術活動が妨げられている現状についてなんだけど。材料はどこに行ったのさ」

 

 何それ。今ならタケが余ってるから、それを使ってよ。

 

「タケなんて全然残ってないよ」

 

 うぅん!? そんなはずは……。

 

 

 

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 おーい、レモンさんや。どうせ近くにいるんでしょ、すぐに来なさい。

 

「チュッ! お呼びでありますか」

 

 とりあえず、いつの間にか拠点に増設されている、この建物について弁明を聞かせてもらおうか。

 

「ハッ。至極の入浴には、相応の環境が不可欠であります。ご覧ください、大理石の浴槽を二つに増やし、床にはタケとタタミを贅沢に使用。限定された物資の中でアメニティを追及した、最高傑作であります!」

 

 浴場の案内を聞きたいわけじゃないんだよ! ネオ・サラゴサ町にバケモノがやってきて右往左往しているっていうのに。拠点の規模に対して、浴場の占める割合がおかしいでしょ。

 っていうか、よく見たら髪もシットリしてお肌もツヤツヤだし、もう堪能してただろ。

 

「カサバルさん。あまりレモンちゃんを責めないでください。こんな時だからこそ、みんなの平常心が大切ですぅ」

 

 バフィ、それも一理あるけど。

 

「うわあ。バフィお姉さま、しっぽの毛艶が全然違う。美しいよ」

「分かるですぅ、スパロウちゃん」

 

 しっかり楽しんどるんかい。

 

「でも、カサバルさん。レモンちゃんのおかげでバフィたちの生活は、とても充実してるですぅ。少しぐらい大目に見てあげてください」

 

 まあ、それは否定できないけどさ。

 

 実際、あれだけメンタルブレイクを連発していた俺とバフィが、新しい寝室ができたぐらいのタイミングからかなり安定している。生活面が改善されている恩恵は、たしかにある。

 お風呂を作ることも約束してたしね。

 

「ムフー」

 

 だからといって、無断でやったことは怒ってるからね? 

 ドヤ顔で胸を張るのはやめなさい。

 

 

 

 あー。コッテリしつつも、後味がスッキリしてる。久々にインセクトゼリーを食べたけど、やっぱりうまい。

 

『組織の方でも、匹敵する保存性と栄養価を兼ね備えた食品を作ろうとしているのですが、難航しているようです。これほどのものを虫たちが作っているとは、生命の神秘です』

 

 すごい。

 

 思い返せば、このインセクトゼリーのおかげで餓死せずに済んだんだよな。虫さんたちにはバケモノや襲撃者を倒してもらったし、色々と助けられた。モグモグされたダメージもでかかったけど。

 

 ……ホント、お世話になったな。今まで。

 

 

 

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 とうとう、最後の巣も全滅かぁ。

 

『手当たり次第に生物を捕食する黒き仔山羊には、さすがにかなわなかったようですね』

 

 ついにネオ・サラゴサ町の周りから動物がいなくなってしまった。

 

『獲物がいなくなったことで、黒き仔山羊たちもこの場を離れ始めましたね。良かったではありませんか、とりあえずの安全が確保できて。これで屋外での作業を続けられますね』

 

 …………。

 

 

 

「ああ、こうして芸術品を作っている間にも、自分のスキルが研ぎ澄まされているのを感じる。さすが、天才のボク」

 

 ねえ、スパロウ。

 

「なんだい、おじさん。今いいところだから、簡潔に頼むよ」

 

 この彫刻、もらっていいかな? お願い。

 

「かまわないよ。存分に、天才であるボクの作品を鑑賞してくれたまえ」

 

 ありがと。

 

 

 

 よいしょっと。ここでいいかな。

 

 

 

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 さようなら、虫さんたち。安らかに眠れ。

 

『まさか自分の作品が虫の慰霊碑にされるとは、スパロウも思わないでしょうね……』

 

 しっかし、これは困った事態になったぞ。インセクトゼリーがもう手に入らないとは。

 保存食としても売り物としても、かなり便利だったのに。今後のサバイバル計画も、大きく見直さないといけないかも。

 

『売り物としてはともかく、食料確保の手段が1つ潰れたのは大きな損失ですね』

 

 そうなんだよ。これまで以上に、俺ががんばるしかないか。

 

「あ、カサバルさん。こんなところにいたですぅ」

 

 バフィ、どったの?

 

「カサバルさんに見せたいものがあるですう」

 

 見せたいもの? 

 

 

 

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 これは、虫さんたちの巣!?

 

「ハイドロゼリーファームですぅ。虫の巣の残骸を元にレモンちゃんが作ってくれました。インセクトゼリーを一定時間で作成してくれるんですぅ」

 

 お、おおおお! すごい!

 

「でも、ずっとじゃないですぅ。ある程度の時間が経過したら、自然と崩れちゃうですぅ」

 

 そうなんだ。

 

 でも、今後の計画を見直す時間はできたな。来年からどう動くべきか、じっくりと考えよう。

 

 

 

 

 

 はい、というわけで。これより第7回ネオ・サラゴサ会議を始めます。

 最初に前回までの決定事項を確認しておきますが、「お風呂に関する発言は1人につき5分のみ」、「オクスリの製造は決してウチでは認めない」、「派閥もしくは拠点の名前の変更は視野に入れてない」、「畑に新しい作物を植える場合は事前に相談すること」。

 以上のことを念頭において各々発言してください。

 

「隊長現在の浴場の規模は未だ不充分であります自分はより一層極上の癒しを提供す」

 

 レモン。5分の間に早口で言えってことじゃありません。今回はもう発言禁止ね。

 

「……こぉーん」

 

 バフィもほっぺた膨らませてないで、何かお願いします。

 

「……じゃあバフィ、ちょっと拠点の資産が気になっているですぅ」

 

 資産?

 

「アイちゃん、お願いですぅ」

 

 

 

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 ほむほむ。これが現在のネオ・サラゴサ町の資産状況か。

 

「そうですぅ。特にアイテム資産の価値が伸びていっているですぅ。けど」

 

 喜んでばかりもいられないな。資産が多ければ多いほど、敵の襲撃の規模が大きくなる。こればっかりは、しょうがない部分もあるけれども。

 まあ、冬の間に食料を消費するから、ある程度は余裕がありそうだ。

 

「でも、資産管理は重要だね。この上、ボクの芸術品が増えていけば、その輝きはあらゆる者の目を奪うだろう。罪作りなボk」

 

 はい。では、次の発言ある方、どうぞ。

 

「はーい!」

 

 あ、ヨットさん。オネンネはもうちょっと待ってください。

 

「ちがうよー。あのねー、おしらせあるけどー」

 

 ん?

 

「ヨット、そろそろサヨナラするねー」

 

 はい!?

 

 

 

 

 

 ヨットさん、どうぞ。お弁当ですよ。

 

「ありがとー」

「ああ。ヨットお姉さまが出ていってしまうなんて」

「チュー。テナントの宿命とはいえ、寂しいでありますな」

 

 これからどこに行くんですか、ヨットさん。

 

「おもしろそうなとこー。ここもすっごくおもしろかったけど、ほかの“しらない”をさがしにいくね!」

「ヨットさん、楽しそうですぅ。バフィもキャラバン暮らしのころを思い出すですぅ」

 

 まったく。あの手この手で勧誘してやろうとずっと引き留めていたっていうのに。

 

「じゃーねー! みんな大好きだよー!」

 

 

  

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「行っちゃったですぅ。また会えますよね?」

 

 それは分からないけど。RimWorldでお互いに生きてるなら、そのうち会えるかもしれない。

 なんかあの人、死ぬところがイメージできないし。いつか帰ってくる日のためにも、ネオ・サラゴサ町を守らないとね。

 

『守ると言いますが。今までヨットが前衛で敵の攻撃を引き付けてくれたのですよ? これから襲撃があった際はどうするのです』

 

 ……。

 

 俺が2倍がんばればいい。

 

『不安ですねぇ』




「UAが10,000を突破した +30」
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