辺境の世界からSOS   作:銃病鉄

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5503年・春 「癒しをアナタに」

・宇宙歴5503年 春

 

 

 どうも。

 

 こうして年始の挨拶をするのも、もう3回目になるんですね。着々と成長しつつある我ら星くずサバイバーズ、一同の力を合わせ、今年こそは安心安全のサバイバルにしたいと思います。

 

 カサバルです。

 

 …………。

 

『──』

 

 いつもは来るはずのツッコミが来ない。またマッドたちとの会議が長引いてるのかな?

 まあ、静かな分にはいいから文句はないんだけれど。

 

「ちょっとおじさん、何を一人でブツブツ言ってるのさ。最近、たるんでるんじゃないのかい」

 

 やかましいぞ、スパロウ。俺だって色々と忙しいんだ。

 

「そうかい? なんだか、ボクたちが集めた物資の運搬も遅れているようだし、どうも勤労意欲に乏しいよね」

 

 くっ。こんなガキンチョにネチネチ仕事の進捗を責められるなんて。俺がいったい何をした。

 

「何もしてないんだよ」

 

 何もしてないは言いすぎ。

 

「しっかりしてほしいね。ただでさえ労働力がたりないんだから」

 

 ううむ。俺がさぼっているかどうかは置いといて、たしかに人手は足りないな。なんだか、もう何年も同じことを言っているような気がするけど。

 ネオ・サラゴサ町もだいぶ大きくなってきたし、これ以上の拡張はキャパシティを超える可能性が高い。しばらくは現状の設備でがんばりつつ、新メンバーの勧誘を待とうか。

 

 

 

 とは言うものの、ただ受け身の姿勢では生き残れないのがRimWorld。そこで本日お披露目するのは、バフィが開発に成功したこの技術!

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 マイクりょッテレにスス基礎ぎじゅちゅだ!

 

「マイクロエレクトロニクス基礎技術ですぅ」

 

 盛大に噛んでしまった。めっちゃ言いにくい。

 

 で、この技術はどんなことができるのかな。なんだか、今までのものとは違った雰囲気はほのかに感じるんだけど。

 

「電子工学の基本となる技術ですぅ。小型の電子部品を必要とする、色んな装置を製作することができるですぅ。この技術を取得しているかどうかが、派閥の発展具合を測る目安にもなるんですよ」

 

 ふむ。具体的なことは何一つ分からんが、めでたいな。

 

「けど、この技術を活かすならスチールとコンポーネントがいっぱい必要ですぅ」

 

 だろうね。まあ、拠点の機能を向上させていくのは長い目で考えればいいでしょ。現時点でそれなりに暮らしやすくはなっているし。

 

「ですけど、バフィにはどうしても作っておきたいものがあるですぅ。きっとサバイバルに必要になりますぅ」

 

 じゃあ、とりあえずそれは作っておこうか。いったんレモンと相談かな?

 

「隊長、大変であります!」

 

 そんなことを言ってたら、大騒ぎするネズミっ子の声が聞こえてきました。

 どうしたのさ、レモン。そんなに慌てて。

 

「チューッ。きょ、拠点の周りを散歩していたのでありますが……」

 

 

 

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「謎の怪物が追いかけて来るのでありまぁああす! ピィイイイイイ!?」

 

 何コイツ!?

 

 え、ウマ? ウマというカテゴリーに当てはめて正解なの?

 

 なんだか身体がドロドロしてるし、すごく甘ったるい匂いがプンプンしてくるんだけど。

 そういえば、この特徴に当てはまる人物が最近までいたような。

 

「この子はミンチョラテホースですぅ。ミンチョの人たちのコロニーで飼われているのを見たことあるですぅ」

 

 やっぱり、ヨットさんと同じ系統の存在なのか。

 

 こんな時は、アイちゃん! 解説プリーズ!

 

『──』

 

 まだ反応がない。肝心な時に活躍しない人工知能だ。普段は活躍できてるとは言わないけど。

 

「そうですねぇ。バフィも詳しくないですけど、普通のウマみたいに荷物を運んでくれるとは思うですぅ。あとは、ヨットさんみたいにタフじゃないですかね?」

 

 一応は、ウマの扱いでいい……のか?

 役に立ってくれるなら、俺たちで面倒を見てあげる選択肢もあるけど。

 

「ミヒィーヒィヒヒンミ」

 

 え、鳴き声?

 

「ずいぶんと隊長に懐いているようでありますな。頭をすり寄せて甘えているのであります」

「良かったですね、カサバルさん」

 

 俺のお腹、ベッチョベチョになってるんだけど。アリにたかられそうで嫌だ。

 

「それじゃあ、この子の世話はお願いしますね」

 

 俺が面倒見ないといけないの!?

 

 

 

 

 

 ぜえ、ぜえ……。ちょ、ちょっとタンマ。

 

「カサバルさん、お疲れみたいですぅ」

 

「ちょっと休憩を取るのが多くないかい?」

 

 す、少しだけ休んだら物資を運搬するから。時間をちょうだい。

 

「あんまり無理はしないでくださいね。バフィたちは先に拠点に戻ってるですぅ」

 

「あ、待ってよバフィお姉さま!」

 

 あー、しんどい。

 

 それにしても作業効率がガタ落ちしているな。これじゃあ、スパロウだって文句の一つも言いたくなるか。

 これから暖かくなって働き時だっていうのに、まいったな。

 

『──やれやれ。ようやく会議が終わりましたか』

 

 おかえり、アイちゃん。グッバイ、平穏。

 

『ワタシの存在など、誤差でしょうに。平穏のへの字も縁がない集団ですよアナタたち』

 

 やかましい。

 

『……ふむ? ほうほう。なるほど、これはこれは』

 

 急にどうしたのさ。相も変わらず、電子音声のくせに底意地の悪さがにじみ出てるな。

 

『アナタの身体をチェックしましたが、ずいぶんとお困りのようですねぇ。心が洗われます』

 

 人工知能の心ってナニさ?

 

 そんなことより。どうやら気づいているみたいだけど、バフィたちには秘密にしといてよ。あんまり心配はかけたくないし。

 

「あの、隊長」

 

 キィイヤァアアア!?

 

「そ、そんな絹を裂くような悲鳴を上げなくても」

『近くの木にとまっていた鳥たちが飛び立ちましたね』

 

 ご、ごめん。誰も近くにいないと思っていたから。

 

「そんなことよりも、隊長。お願いがあるのでありますが」

 

 お願い?

 

「チュー。これから大至急、石材を大量に集めてほしいのであります」

 

 石材か。大理石のブロックがだいぶ集まっているから、それをプラスして集めればいいかな。しばらくは使い道もなかったし、使い切ってもいいけど。

 何に使うつもりなの?

 

「秘密であります。ただ、星くずサバイバーズのためになると確信しているのであります」

 

 分かった。そこまで言うなら、準備しよう。

 

 おーい、みんなー! 石材を集めるぞー!

 

 

 

 

 

 というわけで、石材をたくさん集めたわけだけど。 

 

 

 

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「ヂュウウウウウウ!」

 

 

 さっきから、レモンがとんでもない勢いで石材を敷き詰めていってるんだけど。あれは、いったい何をしているの?

 

「さあ。ボクたちも詳しくは聞いていないんだ」

「ふふふ。できてからのお楽しみですぅ」

 

 ム。バフィは知ってるっぽい反応。

 

「キャラバンにいた時に何度か見たことがあるですぅ。レモンちゃんは優しい子ですぅ」

 

 ……?

 

「完成であります!」

 

 

 

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 え、これはプールなのか?

 

『いえ、違います。あれは間欠泉を利用した温泉ですね』

 

 温泉……。初めて聞く言葉だ。

 

「地面から自然に湧き上がるお水を使っているですぅ」

「へえ、あれが。ボクも見るのは初めてだよ」

 

 ただのお風呂とは違うの?

 

「チュー! 全然違うのであります。それではさっそく、この温泉のすごさを説明いたしましょう。隊長、湯船にダイブであります!」

 

 え、今から!?

 

 

 

 はぁ、あったかぁい。身体がポカポカする。

 

「で、ありますな」

 

 いや、なんでレモンも一緒に入ってるんだよ。おかしいでしょ。

 

「ご心配なく。タオルを巻いておりますので」

 

 全裸にしか見えないんですが。

 

『RimWorld周辺宙域で起こる磁気嵐のせいです。視覚に異常を起こし、あるはずのタオルが見えなかったり、身体がピンクの光に包まれたりします』

 

 似たような説明を、大昔に聞いたような気がする。

 

「隊長、温泉はすごいのであります。温泉に入ると、一定時間の間は寒さに対する耐性がつくのであります。仕事をする前に温泉に入れば、隊長が冬季に活動する際にも安心であります」

 

 おお、それは助かる!

 

「そして、温泉は腎機能も強化してくれて、怪我や病気の回復を早めてくれるのであります」

 

 温泉ってすごい。医者不足が足を引っ張りまくってる星くずサバイバーズには大助かりだ。

 

「隊長。自分もこうしてサポートいたしますので、あまり無理はしないでほしいのであります」

 

 ど、どうしたのさ。急に。

 

「バフィ殿も心配しておりました。サバイバルは助け合いであります。しばらく、この温泉にゆっくりつかって身体をいたわってほしいのであります」

 

 あー。ひょっとして、2人とも気づいてたの?

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 俺の左脚、ボロボロになってるの。

 

「隠してはおりましたが、ふとした瞬間に歩くのが辛そうな様子がありましたので」

『深きものたちと戦った後遺症ですね。移動能力が80%近くまで低下しています』

 

 あっはい。おかげで、物資の運搬にも時間がかかっちゃって。

 

「自分たちに心配をかけたくなかったのでしょうが、頼ってほしかったでありますな」

 

 すみませんでした。後でバフィにも謝っておくよ。

 

「まぁ、辛気臭い話は後であります。今は温泉を堪能するであります」

 

 そうだね。せっかく作ってもらったんだから、俺も今は純粋に楽しませてもらおう。

 いやー。それにしても、本当に温泉っていいね。身体が温まって、治療もできるなんて。リラックスできて心も身体もピカピカだ。

 

「あっ。温泉にはいくら入っても身体はきれいにならないので、お風呂は別に入るのであります」

 

 なんで!?




とうとう主人公が後遺症を負う。
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