辺境の世界からSOS   作:銃病鉄

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5503年・春~夏 「もっとおいでよネオ・サラゴサ町」

・宇宙歴5503年 春

 

 

 ふーむ、ほむ。ペタペタ。

 

「うみゅー。カサバルさん。あんまりバフィの顔を触らないでほしいですぅ」

 

 ごめんごめん。あまりにビックリしたものだから。触らせてもらって分かったけど、本当に目が増えたわけじゃないんだな。

 

『ですから、磁気嵐の影響だと申し上げているでしょうに。他者からは目が4つあるように見えているだけです』

 

 そうなんだけど、さすがに同居している女子の目が増えたらびびるでしょ。いつまでこのままなの?

 

『分かりません。磁気嵐が終息するのを待つしかありませんね』

 

 そっかぁ。

 

「うっく、うへへ。まさかの四ツ目っ娘属性まで追加されるなんて。ああ、これ以上ボクを魅了してどうしたいんだいバフィお姉さま」

 

 どうもしないだろ。言ってる自分だって目が増えてるんだぞ。

 

「そのうち戻るですぅ。じっくり待つですぅ」

 

 うーむ、平常運転。これぐらい、騒ぐほどのことでもないのか?

 

 

 

 

 

 さて、畑仕事は一区切りかな。防壁がぐるっと囲んでいるおかげで、仕事中の安心感が段違いだ。野良の獣に畑を荒らされる心配もないし、苦労して建てた甲斐があった。

 

『よかったですね。正直、防壁を作るだけで3年もかかっているという事実に頭を抱えたくなりますが』

 

 頭無いだろ。しかし、もう3年か。俺がRimWorldに来てから、もうそんなになるのか。

 

『そうですね。気づけばアナタももう30歳です』

 

 うぐっ。そういえばそうだった。

 考えてみたら、人生の十分の一をRimWorldで浪費した計算になるのか。さようなら、俺の二十代。

 

『どうせ本国にいても、ただ替えの効く労働力として使い潰されるだけの惨めな生活だったでしょう。そんなアナタを選んだ我々に、少しは感謝してもよいのですよ?』

 

 あー、うん。感謝は……しない、けどさ。

 

『どうしましたのです。歯切れが悪いですね。いつもなら身の程をわきまえず反論していたでしょうに』

 

 俺だってさ、この星でみんなと一緒に暮らしている毎日に、思う所がないわけじゃないんだよ。

 

『ほう?』

 

 と、そんな話をしていたらネオ・サラゴサ町が騒がしくなってきた。何かあったのかな?

 

「カサバルさーん! お客さんですぅ。久しぶりにテナントさんが来てくれたですぅ!」

 

 なんと。

 

 

 

 モヨ?

 

「そうですぅ。青い肌で、触覚としっぽがあるですぅ。海の中でも暮らしている種族ですよ」

 

 あ、たぶん知ってるかも。RimWorldに来てから最初に出会った人たちのことだよな。懐かしい。

 右も左も分からなかった俺に、色々と親切にしてもらったんだよな。どんな人が来てくれたか知らないけど、今度こそ仲間になってくれたら助かるな。

 

 あ、あの人かな。こんにちはー!

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

「おう、てめえが噂のいかれ野郎か。よろしくな」

 

 スッポンポン! なんで服着てないの!?

 

「しかたねえだろ。ここに来るまで、宙族に襲われてズタボロになっちまったんだよ」

 

 だとしても、隠す努力をしてよ。ここには年頃の少女たちがいるんですよ、このヘンタイ!

 

「…………」

「…………」

「…………」

 

 ちょっと、みんな。どうしてそんなジト目で俺を見るのさ。

 

「なんだか気が抜ける集団だな、おい。こいつは選択を間違えたか?」

 

 いきなり失礼だな。いくら客だからってあんまり調子に乗ってると、こっちだって黙ていないぞ。ね、ウサイヌさんにクロウサさん。

 

「ワフッ!?」

「バウッ!?」

『プライドをかなぐり捨てた動物頼り。これにはフレンチブルドッグたちもびっくり』

 

 まあ、言いたいことはあるけど、それはいったん飲み込んで。

 ようこそ、俺たちのネオ・サラゴサ町へ。精一杯の歓迎をさせてもらいましょう。

 

「おう、よろしく頼む。ガッカリさせてくれるなよ。いつも悲鳴と流血が絶えない地獄の一丁目って聞いて、はるばる足を運んだんだからな」

 

 ウチって、そんなに評判悪かったの!?

 

『逆によく来ましたね。アナタ』

「へへっ。俺は血が流れるのが何より好きだからなあ。早く誰かを血みどろにしたいし、自分もなりたくてたまらねえぜ」

 

 危険思想! 今からでもお帰り願いたい!

 

「あー、“流血嗜好者”でありましたか。ならば納得でありますな」

「うへへ。ちょっぴりワイルドな青肌イケメンの全裸。プブッ、たバらんへェ」

 

 スパロウ。鼻血でむせながらしゃべるのやめなさい。流血の噂って、絶対これのせいだろ。悲鳴の方はたぶん俺とレモンだけど。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

「おー、すまねえな。布切れ一枚でも、ないよりゃマシだ。さっそくメシまでもらえるとは、至れり尽くせりじゃねえか」

 

 ぐぐぐ……。まさか俺よりも先に衣服が支給されるとは……。キャラバンに売ろうと大事に毛皮を取っておいたのに。

 とりあえず簡単な一枚布を、レモンにお願いして用意してもらったけど。

 

「ピィイイイイイ!? は、針が指に刺さって……。自分は、もうおしまいでありますぅううう!」

 

 うんうん、痛かったねぇ。ツバでもつけときなさい。

 

 それにしても、久々にテナントを迎えることができた。今度こそ勧誘できるだろうか。成人の男手が増えると、正直死ぬほどありがたいんだよな。

 種族としての特徴はどうなの、アイちゃん。

 

『彼らはモヨ。ウミウシの遺伝子を組み込まれた人工種族です。陸上での移動速度は緩慢ですが、頑丈な身体を持っています。そして、最大の特徴は優れた医療技術です』

 

 医者ッ! とうとう星くずサバイバーズに待望の医療従事者が!?

 

「俺が医者なんてできるように見えるのか?」

 

 ま、無理だよね。むしろ、患者を増やす側の人間ですよね。

 

「てめえ、分かってんなあ!」

 

 褒めてない。

 

 ところで、そろそろ自己紹介を。俺はカサバル、この星くずサバイバーズのリーダーです。

 

「俺はTrofim──トロフィムだ。よろしくな。……それにしても、ここで出される飯はうまいな。てめえが作ってるのか。すごいじゃねえか」

 

 おだてても、なんにも出ないですからね。あ、これは秘蔵のカサバル印のミントキャンディと紅茶です。ごゆっくりどうぞ。

 

『ちょろい』

 

 ちょろくない。できるだけいい気分になってもらって、あわよくば星くずサバイバーズの一員になってもらわないと。

 グフフ。美食を味合わせた次は温泉にご案内だ。ネオ・サラゴサ町のアメニティは以前の比ではないぞ。

 

 ……食い扶持が増えたから、いったん宿屋はストップかな。通信機があるおかげで、周辺派閥への周知が簡単で助かるよ。

 

『どこまでいっても食料問題はつきまとうんですねぇ』

 

 い、今だけ。この苦しい時期さえ乗り越えれば、バラ色の未来が待っているはず……!

 もうすぐおコメが収穫できる。それまではスパロウの狩猟とインセクトゼリーの備蓄で乗り切るんだ。

 

「カサバルさーん。テナントさんですぅ」

 

 うん? トロフィムさんなら、今は食事中だよ?

 

「違うですぅ!」

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

「二人目のテナントさんですぅ。たくさん人が来て嬉しいですぅ」 

 

 く、空前のテナントブーム到来ッ。

 

 

 

 えー。ようこそ、お越しくださいました。

 

 俺たちは星くずサバイバーズ。こうしてあなたと出会えたことを、心より嬉しく思います。どうかご満足いただくまで滞在してください。

 

「ありがと。私はKsenia──クセニアよ」

 

 クセニアさんですか。いいお名前ですね。

 

「なんかよぉ、俺の時とは態度がずいぶん違うよな?」

『しかたないですね。ムッツリ全裸ですから』

 

 ささ、どうぞ拠点の中に。

 

「んー? 星くずサバイバーズっていうと、なんか聞いたことあるなー」

 

 あれ、俺たちの拠点だって知らずに来たんですか?

 

「旅の途中でたまたま立ち寄っただけだからねー。ラットキンの子に声をかけたら、テナント募集中って聞いたからちょうどいいと思って」

 

 なるほど。そういうパターンもあるのか。でも俺たちのことは聞いたことあるんですね。

 

「んー。どっかの地域で何とかいう拠点を中心に活動してて、何か色々と有名だって聞いたかも」

 

 な、何一つ情報が含まれていないッ。それ、本当に俺たちのことですか?

 

「違ったかも。そもそも、いつどこで噂を聞いたんだっけ。んー?」

 

 知らんがな。

 

『ふむ。これは相当に“物覚えが悪い”ようですね』

 

 ま、まあここで出会えたのも何かの縁ということで。ゆっくりしていってください。

 

 

 

・宇宙歴5503年 夏

 

 ふー……。さすがに6人になると夕食の準備も大変だったな。今は栽培の仕事にできるだけ集中したいし、料理ができる人も欲しい。

 2人もテナントがきてくれたし、あれから数日は穏やかに過ごせているし。さすがにどっちかは仲間になってくれるよね?

 

『どうでしょう。今回も中々に癖が強いですからねぇ』

「おじさん。そろそろ寝るんだから、静かにしてよ。夜更かしは美容の天敵なんだ。大理石と見紛うばかりのボクの肌が荒れたら、世界の損失だよ」

 

 む、ごめんごめん。それじゃ、電気を消すよ。

 

 みんな、おやすみー。

 

 

 

 

 

 ────ァ……。

 

 

 

 ……■ァ。

 

 

 

 イァ、……イァ。

 

 フングルイ、ム■ルウナフ……。ク■ゥル■、ル・リ■……ウガ■ナグル、フタグン……── 

 

 

 

 

 

 起きたら、タブレットに覚えのない文章が表示されている。これって……。

 

『アナタの寝言ですね』

 

 やっぱり。っていうか、前にもこんなことあったような覚えがあるんだけど。

 すっごい嫌な予感がする。今のうちに準備をしといた方がいいのかもしれない。

 

『準備と言っても、何をするのです』

 

 生贄を捧げます。

 

『…………ハ?』

 

 いけにえを。

 

 いけ、に、えを生贄をイけにエヲイケニエを大地の底深くおわす主に捧げささゲさサげ──

 

『電気ショック、起動』

 

 いけヌァアバッバババババー!?

 

『正気に戻りましたか?』

 

 あなたのとった方法は、本当に最適解でしたか? 痛みも苦痛もなく済ませる優しい方法が、もっとあったんじゃないですか? どうか考えてみてください。

 

 それはそれとして、なんかおかしかったぞ俺。いったい、何が?

 

 ハッ。バフィたちは大丈夫か!?

 

「カサバルさぁん! 生贄といけにオクスリおくすり気持ちいオクスリでブチ上がるですぅ!」

「ピィイイイイイイ!? 自分はもうダメであります。死んでしまうのでありまーす!」

「生贄になるボクもカワイイ」

 

 困った。異常が起きているのかどうか、判断が難しい。おかしくなってるとは思う。たぶん。メイビー。

 

『スキャン完了。どうやら、あれがこの事態の原因のようですね』

 

 え? あれって……。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 ナニアレー!?







神話生物「来ちゃった♪」
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