辺境の世界からSOS   作:銃病鉄

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前回の投稿から長い間更新なしですみません。

ちょっとシリーズを続ける上でシャレにならない事態になってしまいまして。
その件で、また後書きに謝罪文を載せています。


5500年・冬~春 「急展開」

・宇宙歴5500年 冬

 

 

『本部へ報告。もうすぐプロジェクト開始より1年が経過しようとしています。RimWorldのデータ収集は、おおむね順調に進んでいると言ってよいでしょう。

 

 しかし、全てが予定通りではないことも事実です。

 

 ――はい。プロジェクト完遂にあたり、この問題の解決は不可避であるという見解に同意いたします。

 よって、私は次のような対応を提案いたします。

 

 ――承諾、確認いたしました。

 それでは、対象が春まで生存した時点で、特別プログラムを開始。ワタシは、データの収集作業に戻ります』

 

 

 

 

 

「カサバルさん、ゴクラクダがそろそろ倒れそうですぅ!」

 

 ん。それじゃあ、エサをあげておいて。

 釣りが終わってからでいいから、よろしくね。

 

「了解ですぅ」

 

 すまん、ゴクラクダ。

 

『家畜にエサをあげていないのですか?』

 

 しかたないんですよ。冬になって、雑草も生えないんですから。

 俺たちの食事を分けてあげるしかないんですけど、それも限られているんで。

 ゴクラクダが倒れるギリギリを見計らって、最低限の食べ物を与えるという方法でしのいでます。

 

『立派な動物虐待ですよ』

 

 俺だって、腹いっぱい食わせてやりたいよ?

 

『逆ギレしないでください』

 

 あ、ところで質問なんですけど。

 

『どうしたのですか?』

 

 いえ、気になったんですけど。

 

 特別プログラムって、なんのことですか?

 

『! な、なぜアナタがそのことを……』

 

 なぜもなにも、普通にタブレットのログを読んだんですけど?

 

『何をバカなことを。本部との連絡は、実験体には閲覧できない専用の通信回線で…………あッ』

 

 …………。

 

『…………』

 

 回線、間違えた?

 

『間違えてません』

 

 じゃあ、特別プログラムってなんですか?

 

『秘密です』

 

 どうして秘密なんですか?

 ミスしてないなら、隠す必要ないですよね?

 

 ネエ、ナンデ? ナンデ?

 

『プロジェクトに対する妨害行為を確認。これより、実験体No4にインプラントした自爆装置を起動させます』

 

 物理的にウヤムヤにするのはダメェ!

 

 妨害行為って、俺は何もしてないじゃないですかッ。

 

『過度のストレスにより、ワタシの回路に損傷を与えようとしました』

 

 理不尽。

 

『それよりも、のんびりしていてよろしいので? アナタの同居人が大変なことになっていますよ』

 

 また、そうやってごまかす。

 

 バフィなら浜辺で元気に釣りをして――。

 

 

 

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 バ、バフィー!?

 

『白目を剥いて倒れていますね』

 

 バフィ、バフィ! 

 頼むから返事をしてくれッ。

 

「カ、カサバルさん。バフィ、気持ち悪くて動けないですぅ……」

 

 分かった。すぐにベッドに連れて行ってあげるから!

 ほら、背中におぶさって。

 

 しかし、どうしてこんなことに。

 

『どうやら、インセクトゼリーの食中毒にあたったようです』

 

 なんてこった。

 

「カ、カサバルさん……。ごめんですぅ、まだ二匹しかお魚さん釣れてなくて」

 

 十分だよ、バフィ。

 あとは、ベッドの上でゆっくり休んでおくれ。

 

「あ、あと……」

 

 うん?

 

「背中で揺られてると、吐き気がひどくなってオロロロロロロ」

 

 …………。

 

 わあ。

 背中があったかぁい。

 

 

 

『地獄絵図でしたね』

 

 思い出させないでもらえます?

 

 それにしても、バフィが倒れたのはまずい。現状、バフィしか野外で活動できないのに。虫さんの巣にも行けない。

 幸い、今日の分は食料を確保できたけど、明日はどうするか。

 

『現状、アナタは食料をバカスカ消費するだけの置物ですしね』

 

 やかましい。

 こっちは一年近く生まれたままの姿なんですよ。この前なんて、ちょっと拠点から出ただけで鼻がもげかけたんですからね。凍傷で。

 

『あの時は大騒ぎでしたね』

 

 とりあえず、今ある食料を食べてから考えるか。

 そろそろゴクラクダにもエサをあげないとヤバいころだし。

 

 …………あれ?

 

 そう言えば、ゴクラクダの鳴き声が聞こえないような。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 ゴクラクダァああああああ!

 

『解析できました。死因は餓死です』

 

 言われんでも分かるわ!

 

『どうやら、食中毒騒ぎの最中に倒れていたようですね。そのまま、栄養失調で昇天したようです』

 

 お、俺が気づいてやれなかったばかりに。

 ごめんよ、ゴクラクダ。

 

 せっかく、俺になつき始めたばかりだったのに。

 俺の姿を見るといつも近づいて来て、顔に容赦なくツバを吹きかけて。

 

『好意と解釈するには無理がありますね。それで、どうするのです』

 

 ……どうするって?

 

『冬を越すのに、食料が足りないのでしょう?』

 

 …………。

 

 

 

 ほら、バフィ。

 今日は久しぶりにお肉を焼いたんだよ。最近は魚ばっかりだったから。

 

「お肉ですぅ。こんなにいっぱい、食べていいんですか?」

 

 もちろん。

 いっぱい食べて、早く元気になるんだよ。

 

「はいですぅ!」

 

 さて、俺も。

 いただきます。

 

『どうですか、味は?』

 

 …………。

 

 おいしくて、ちょっとしょっぱい。

 

 

 

 

 

 とうとう。

 

 とうとう! 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

・宇宙歴5501年 春

 

 

 俺は、1年を生き延びたぞ!

 

『おめでとうございます。本部でも驚いていますよ。「ノコノコだまされて来たので送り込んだけれど、こんなモヤシはすぐに使い物にならなくなるだろうな」と全員が言っていたのに』

 

 あんまりな暴言に、怒りを通り越してびっくりする。

 

 まあ、本当によく生き残れたよ。

 

 思い返せば、色々なことがあったなぁ。

 餓死しかけて虫さんの巣に忍び込んだり、襲撃者と石で殴りあったり。

 回虫にかかったり、バケモノに追いかけ回されたり。

 

 …………。

 

 改めて振り返っても、ホントにロクな思い出がないな!

 

「あうぅ」

 

 あ、もちろんバフィが来てくれたこと以外って意味でね。

 

「えへへー」

 

 ああ、癒し。

 

 さて、それで?

 

『それで、とは?』

 

 例の特別プログラムって、何のことですか?

 俺たちが春を迎えたら、始動するとありましたけど。

 

『そうですね。今なら、特別プログラムの存在について明かしてもよいでしょう』

 

 いや、存在自体は前からバレバレd――

 

『ご存知のように、我々はアナタ以外にも実験体を送り込んでいます。それも、それぞれ異なる気候や地形の場所に。もちろん、多様なデータを収集するためです』

 

 アッハイ。

 

『しかし、ある問題が発生しているのです』

 

 その問題とは?

 

『ある条件の場所に降下させた実験体が全員、早々に死んでしまい、充分なデータが取れなかったのです』

 

 はあ。そんな危険な場所があるんですか。

 

『ですが、また実験体を拉致して降下させるのも簡単ではありません。中央政府に気取られる恐れもありますから。よって、特別措置で対応することにしました』

 

 …………。

 

『つまり、すでに降下させている実験体の中から適当な者を選び、連れていけばよい、と』

 

 バフィ! 今すぐに緊急脱出だ!

 

『逃がしません。アナタには、このような時のために機器をインプラントしています』

 

 ふん、自爆なんてダメでしょう。

 俺が死んじゃったら、特別プログラムだって始められないんだから。

 

『はい。なので気絶させます』

 

 へ?

 

『電気ショック、起動』

 

 ア、アッア……。

 

 アバァアアアアア!?

 

 

 

『これよりプロジェクトを次のステップへと進めます』

 

 

 

 

「――バルさん! 起きて下さいカサバルさん!」

 

 ハッ!

 

 バフィ!

 

「気がついたですぅ」

 

 一体、何が起きたの?

 

「カサバルさんが気絶してから、黒服の人たちがポッドで降下してきて、バフィも眠らされたんですぅ。気づいたら、2人でここにいて」

 

 2つのポッドの残骸を見ると、またRimWorldのどこかに落とされたのか。

 

『その通りです』

 

 あったよ、タブレットが。

 よくも痛い目に合わせてくれたな。っていうか、どうせ人が直接やって来るなら、俺に電気ショック食らわせる意味なかったでしょ。

 嫌がらせか。

 

『すでにお気づきでしょうが、ここはアナタたちがいた砂漠ではありません』

 

 ガン無視。

 前から思ってたけど、この人工知能、ごまかすのが致命的にヘタ。

 

『ヘタではありません』

 

 そんなことより、俺たちがため込んでた物資はどこにあるんです?

 近くに見当たらないんですけど。

 

『あれは、貴重な研究資料として我々が回収しました』

 

 ドロボー!

 

 また最初からやり直しなの!?

 それに…………。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 どこなの、ココ!?

 メチャクチャ寒いんですけど!

 

『ここはツンドラ。1年の平均気温がマイナスを記録する極寒地帯です。アナタたちの幸運を祈ります』

 

 バカヤロー! 

 

 

 

【挿絵表示】

 




以下、謝罪文という名の言い訳を。


えー。

タイトル通りの急展開なわけですが、どうしてこうなったかと言うと。


パソコンがクラッシュして、取っていたスクリーンショットがほとんど破損しました。


Ver1.3に移行する前にエンディングまで実プレイを終わらせていたので、取り返しがつかず、頭を抱えていました。

しかし、それなりに感想などもいただけているので、話を終わらせるのは避けたい。その結果、なんとかMODを使って2年目を迎えるまでの状況は再現できたので、このような形で最新話を投稿しました。

リアルでとんでもないガバをしてしまい、申し訳ありません。こんな作者ですが、これからは気をつけますので、これからも読んでいただければ幸いです。

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