夜。
銀次さんの家になんとかたどり着き、夕食でなにがあったのか喋ったあと、二階に上がった。
カジカさんが色々説明してくれたらしく、みんな付いてきたり、疑問に思ったりしなかった。
二階はまぶしがカラカラ回っている。
頭の上になにか落ちてきた。
「ネブッチョウか?」
背中をゾゾゾゾ!となにか這って右腕に巻き付いた。
見ると、小さい蛇だった。
「約束を果たしに来たよ。」
「ニャハハハハ!本当に話に来たんか!ニャハハハハ!」
梁を見ると、オーサキがもう人間化していた。
「君も聞きたい?」
「ニャーは、おミャーが約束を守るか見たかっただけにゃ。約束を守ったなら興味はないニャ。」
そう言うと、外に出ていった。
「ネブッチョウ。実はね、今日は…」
僕は右腕に巻き付いたネブッチョウに話し始めた。
手持ち無沙汰になり、二階をぐるぐる歩き、外が見えるところで腰を下ろした。
「…と言うことがあったんだ。急にいろんなことを知ったから、何日も寝ていないみたいだよ。」
月が綺麗で、武甲山もシルエットがボヤーと浮かんでいる。
そして、
僕は、
こう声を出した。
「僕はどうしてここに来てしまったんだろう。」
その時、夜空が急に、ビュンビュンと流れ星が流れ出した。
まるで雨が降るように。
アイドルを応援するペンライトが一斉に光ったように。
本当に急にたくさんの流れ星が現れた。
二階から身を乗り出し外を見る。
「なんだこれ!?」
覗いている南側から、北側に移動する。
すると、とにかく他の流れ星と比べ物にならないほど大きい。尾を引く彗星のように大きな星が北極星の方向から飛び、グングン近づいてきた。
「落ちるかも…」
そう思ったが、体が蛇に睨まれたカエルのように動かなかった。
これは伏せた方が良いと思っても、体が動かない。
星はどんどん落ちる。
「どうしよう…あんなこと思ったばっかりにこうなったの?」
そうに思った。
星はドンドン落ちて、目と鼻の先にある山の麓に落ちた。
大きな音はしなかった。
まるで、寸前にブレーキがかかったようだった。
「落ちた…人が巻き込まれたかもしれない!」
僕は慌てて一階に降りて、外に飛び出した。
すぐ走ったら、すぐ見つかった。
星は光っていた。しかし、民家がなく、見つかり辛いところに落ちたので僕が一番だった。
「ここなら、誰か巻き込まれた心配もないだろう。」
そう思っていたが、その光っている光源(隕石だと思う。)の近くに人が倒れていた。
「あっ!大丈夫で…す……か?…」
最後は声にならなかった。
だって、夢の中の爆発から飛び出し、僕の手を握ってくれたあのお兄さんだったのだから。
「…あっ!大丈夫?」
うつ伏せの体を、仰向けにしようとひっくり返した時、彼の胸もとからなにか箱が落ちた。
すると、その箱が緩んだのか蓋が開いて、中から虹色の煙が現れて、僕を包んだ。
「わっ!なんだ!?ゲッホゲッホ…」
しばらくして、僕は気絶してしまった。
「ばっ!あっ!」
と目を覚ます。
またあの銀次さんの家の天井である。
ただ、それだけでは「あっ!」とは驚かない。僕が驚いたのは、枕元にカジカさんと、銀次さんがいたのだ。
「僕、もしかして死んでどっかに戻ったの?」
「なにを言ってるんだい、ハハソくん。君は昨日夜に人をたすけにでも行ったんじゃなかったんかい?」
「そーだよ〜。急〜にいなくなった〜と思ったら〜銀次兄さんが〜ふた〜りを、背負って〜帰ってきたから〜びっ〜くりしたよ〜。」
僕は、死に戻りをしたわけではなさそうだ。
「二人を背負ってきたと言うことは、もう一人の方は?」
「安心して〜銅三〜とヤマメと〜お義姉さんに〜見てもらってるから〜。」
「体に異常はないか?」
「はい。…おそらく。」
「なら良かった。」
僕たちがいる部屋から庭は丸見えだった。もう一人の人は銀次さんの部屋にでもいるのか、奥の襖が閉まっていた。
「ごめんください。」
その時、庭から声がした。
「は〜ぃ?…」
カジカさんが振り向きながら返事をした。しかし、元気がなくなった。
僕もカジカさんの体の間からお客さんを覗き込んだがギョッとした。
気持ちが悪いというか、冷たい風がヒンヤリと体を突き抜けたような感覚に襲われた。
その男は、ゆっくりねっとりとした不協和音を基本とする音楽を、ホラー漫画家が聴きながら、「立っているだけで身の毛もよだつ男を描いて欲しい」と注文をされたような男であった。
男と言ったが、頭からすっぽりと毛布のようなものを被り、前も隠しているため、顔は見えない。
ただ、立っているだけでその周りが凍るような人物であった。
「なんの御用でしょう?」
銀次さんが近づいて喋る。
「実は、昨日の流れ星のことを調べていまして…ー
「その前に、お名前を伺ってもよろしいでしょうか?」
「申し訳ございません。上の虚空蔵菩薩の使いで参りました。泥と申します。内容としては、昨日の流れ星の調査と、ある箱を探しています。」
「箱を?」
「はい。ご存知ないですか?」
「箱は見たことないな。」
「そうですか。では、そちらのお嬢さんは?」
「わた〜しもわからないかな〜。」
「ふむ…では、布団で寝ていらっしゃる方は?」
昨日の夜に虹色の煙に巻かれた時、煙が出たのは、
「箱は…見ました。」
「なな、なんと!どこで?」
「昨日、流れ星の落下点に行った時に、人が倒れてて、その人が持ってました。」
「その方はどちらに?まさか…」
「?……」
僕は首を傾げたが、銀次さんが、
「落下点にわたしが行った時、この人ともう一人倒れていたので連れてきました。」
「なんということだ!」
冷静さがなく、肩を震わせ興奮している。
「そうだったんですか。そうでしたか。では、箱はその方が…」
「はい。懐に戻しました。」
「では、その方はこちらの家に…」フゥフゥ…
「はい。」
「そちらの奥の部屋に?」ハァハァ…
「はい。」
「では…」と言って、右手を前に出して、衝撃波を撃った。
空気砲を食らったような圧力の空気が、巨大扇風機の前に立たされたように全身に受けた。
銀次さんは右手を出した瞬間にカジカさんを庇うように倒れた。
僕は布団に叩きつけられた。
ふすまが奥の部屋に向かって、レールを外れて、ボン!と飛んだ。
僕は仰向けの状態で上を見た。すると奥の部屋が逆さまに見える。
そこには、昨日会った男の人がヤマメさんを左手で抱えて、右手に剣を高く振りかざし、こちらを見ていた。奥の庭に銅三さんがいて、ふすまをヒョイと持ち上げていた。
「見つけた!オオカミだな!」
右手を前に出して、不吉な男は不吉な雰囲気のままこちらを睨んでいる。
「待て。ここの人たちを巻き込むことはやめろ。」
「ならば、あの箱を渡せ。」
「箱か?欲しけりゃくれてやる。」
口で刀を咥えて、懐から箱を出した。
手の上に乗るほどな小さな箱。
頭の上に掲げ、男に投げた。
届かず、手前で落ちると思ったが、そこからグンっと持ち直し、男の手に収まった。
男は気持ち悪くニヤリと笑うと、
「いきなりきてこのような粗相を働きすみませんでした。この償いといってはなんですが…」
と言って、金の大粒を縁側に置いて去っていった。
銀次さんが、後ろを追っていって本当に虚空蔵様に帰るのか少し追いかけて行ったが、すぐ戻ってきた。
「あいつ。本当に寺に入って行ったよ。」
「銀次さん…」
「やぁハハソ。君にきちんと説明しなかったことを詫びたい。すまん。カジカから聞いていると思うが、オレは今妙見宮の薗田宮司と宝物を探している。その途中、昨日の流れ星を見て、自分の家の方だったから気になってやってきたら君と見かけない青年を見つけて、ここへ連れてきたというわけさ。」
銀次さんは次に、刀を納めている青年を声をかける。
「お怪我はありませんか?」
「私は大丈夫です。ただ、家が…申し訳ございません。」
「謝らないでください。先制攻撃はあちらですから。この後文句を言ってきますよ。
銅三さんが手を伸ばし、ふすまをレールに乗せている。
「わたしはこの家の銀次と言います。あなたは?」
「…オオカミと呼ばれている。」
「オオカミ…」
銀次さんが続けようとしたが僕は遮ってしまった。
「どうして、夢の中のあなたがここにいるのですか?」
「夢?…それは分からない。」
「ぼく、いや私、一昨日の夢であなたに出会ったのです。爆発の中から助けていただきました。」
「爆発の中から助けた?…爆発で助かったのは私の方なのに…」
「えっ?」
「いや、こちらの話です。ところであなた、身体は大丈夫ですか?」
「…昨日の煙のことですか?とくに、不調はありませんが…。」
「やはりあれを吸い込んだのはあなたですね?」
「どうなんでしょう?」
僕はゆっくり銀次さんを見る。
「俺が駆けつけたときに倒れていたのは二人だけでした。」
「そうですか。中身の煙を確実に吸ったのはあなたなんですね。」
「はい…それがなにか?」
「実は本当に申し訳ないことをしているんです。」
外がガラガラビシャン!と雷が鳴り響きだした。
「異世界モノは俺つえ~状態にするモノだ。」と聞かされた私。
どうしようか考えたあげく、神様から与えられるということにしました。
しかし、ペナルティや弱点なしというのは、自分の性に合わないので、ある弱点を追加してあります。