「あの男が持って行った箱。その中は、神々の力を封印したものだったんです。」
「どういうことですか?」
ザーっと雨が降る。
「わたしは、太古の昔、秩父を支配していた神です。」
「神様…」
「私のいた世界では、外国からやってきた仏という神々が急に支配を強引に進め、我々を追い出そうとしてきました。」
オオカミ、銀次、カジカ、ヤマメ、庭の銅三、僕、母、義姉さんでぐるりと一周している。
「秩父の神々は、その強引な態度に整然と立ち向かいました。しかし、そこに立ち塞がったのが、あの箱です。」
宮地の柿沢通りで買ってきた、両手に余るほど大きなまんじゅうを一人一個手に持っている。
「あの箱は、神々の力を吸い込み、我々の戦力を削ぎ落とすのです。しかし、私の側室が決死の特攻を仕掛け、あの箱を奪取することに成功しました。しかし、本人は捕まり、いまどうなったか分かりません…」
真ん中には、同じ店で買った串に刺さった味噌まんじゅうもある。
「そしてわたしは、正妻の力を借りて、その時代から逃げ、起死回生を狙おうとしたわけです。銀次から話を聞く限り、わたしは未来にやってきたようだ。ただ、あの箱をとっとと開けて、自分を強化すれば良かったのに、味方に力を返してやろうと取っておいたのですが、すべての力がハハソに移ったようだ。」
「すなわち、銀次さんは、神の力が使えるということですか!?」
「銅三、そうだ。なにも間違えていない。君は、神の力が封印された箱を開けたことで、神の力を手に入れたんだ。」
「……うん…」
「…〜〜〜。」
「フゥー。」
「なんという…」
「僕が…」
「まぁ………」
「………。」
お父さん、お母さん。僕は、昔の秩父にそっくりな江戸時代で、神に等しい力を手に入れてしまいました…
「ワハハハハハハ!」
急に外から声が聞こえた。
銀次さんは、いろりを飛び越え、外に出る。
それに続き、みんなバタバタと外に出た。
「な!」
「あれは?」
「どうなってるんですか?」
「ワハハハハハハ!」
笑い声は屋根の上からした。
茅葺き屋根に槍が垂直に立ち、刃の上に鎧を着た男があぐらをかいている。
目を細め、グッとこちらを睨んでいる。
すなわち、尻に槍が刺さっているはずである。
「痛くありませんか?」
ヤマメさんが思わず言った。
「!……フッ」
槍の上の男は失笑した。
「カジカ、服を持ってきてくれ。」
「はーい。」
銀次さんは、男から目を離さず、小声でカジカさんに指示した。
「虚空蔵から連絡があって、自分のところにオオカミが出現して、箱を奪った。しかし、中身がなかったから、それを奪取せよと言われて、半分嘘だと思っていたが、本当にオオカミではないか。」
この男、胸当てをして、スカートのようなものを履いている。
「貴様、箱の力を使わずに、とっととお縄を頂戴して、我らの軍門に降れ。」
「んっ?」
「!……っ…」
「(チラッ)…。」
「………。」
あいつ、箱の中身を吸ったのはオオカミの方だと思ってるらしい。
「オオカミ。よく聴け。貴様、箱の中身を吸い取ったとはいえ、見たところ接近戦でなければ歯が立たんようだな。なにか武器はないのか?俺だって、人間を巻き込みたくはない。」
「……チッ…」
オオカミは左手を服のなかに入れて、刀を出した。しかし、三十センチぐらいしかない脇差だった。
「!?……アッハハハハハ!逃げ出すのに必死で武器を全て置いてきたんだな、この慌て者め。」
「慌てたんじゃない。置いてきたんだ。」
「でも仕方がないから、それで相手になるよう手加減してやるぜ。その四天王の一人、多聞天が貴様に引導を渡してやる。」
槍の上に片足で多聞天が立つ。右手を空に向けると、手の少し上に太陽のようなものが実現した。
「あー!なんだあれー!」
「太陽が現れた。」
「オオカミ!さらばだ!『火弾』」
手のひらサイズの火の玉がオオカミ目掛けて落ちてくる。
脇差を逆手に持ち、腰を低くしている。
パッと火の玉に向かって走って、ジャンプ。ただ、無言で火の玉に脇差の刃を当てた。
火の玉は二つに割れて、全然関係ないところに落ちた。
「まぁ、オオカミともあろう奴があのぐらい技も使わず止めるとは思ったよ。では次はどうかな?」
多聞天の後ろから今度は、人の三倍も四倍もある火の玉が現れた。ちょうど家の影で作っていたらしい。
「これは斬っても貴様が死ぬぞ。ではさようなら。」
また火の玉が落ちてくる。
「ちくしょう…」
オオカミが思わず、上段持ちに脇差を持ち替えた時、僕は
「ちくしょう…こんなところで、死ねるか!」と走ってオオカミから脇差を奪うと、火の玉に向かってジャンプ。そして、脇差を突き出しながら、別に技も知らないのにそうやってしまった。
ただ、こう願い、声に出した。
「僕の体に宿った神様!かの人たちを助けてください!」
すると、剣先から大量の水が消防車の放水のように吹き出した。
しかも水の勢いが尋常じゃなく、あの大きな火の玉を一瞬で包み込むと、一瞬で鎮火して消えた。
「なに!?…そうか…箱の中身は、オオカミじゃなく、貴様が吸ったのか」
ハハソは、屋根の上に、多聞天から見て右側に着地した。
「面白え。人間がどこまでやれるか見せてもらおうじゃないかよ。」
ハハソを睨みつけながら、左手で座っていた槍を引き抜き、僕に構えようとした瞬間、多聞天の左半身に鳥の羽が突き刺さった。
「なに!?」
多聞天は自分の左肩を見た。確かに羽に見えるが、金属のように硬い。
「誰が…」 ボン!
左を確認しようと、大きく体を捻った瞬間に、多聞天の首が飛んだ。
「…フクロウか」
多聞天は右手を伸ばし、自分の頭をキャッチした。
「ここは…」
その時、銅三さんが、多聞天に向かってゲンコツを繰り出した。
「逃げた方が良さそうだ…」
当たる瞬間に、パンチのスピードと同じスピードで後ろに逃げて、上空に飛んでいってしまった。
その時の僕は、ただ、ボーッと銀次さんの美しさに見惚れていた。
その時の銀次さんは、フクロウや猛禽類をイメージしたであろう鼻まで隠すゴーグルをつけ、頭はインディアンの羽飾りのようなものをつけて、上着は、鳥の模様を模した陣羽織のような服を着ているが、和装の袖が羽になっている。
多聞天に刺さった羽は、腕を大きく降って、手裏剣のように羽を飛ばしたものであり、首を吹っ飛ばしたのも、袖の羽で斬ったものであった。
「大丈夫か?ハハソ?」
「あっ!はい!大丈…ぶ……」
ブラックアウトしたように、身体が動かなくなり、目の前が真っ暗になってしまった。